目に見えない何かに恐れて
あいつと距離をおいた
その時間を今更になって悔やむ
あの時、あいつは1人で戦っていたんだ
俺に悟らせないように距離をおいて
そのことにもっと早く気付くべきだったのに




1.


「ねぇ」

「何?」

木村の変化に気付いてから3週間ほど経った日のこと。

慎吾が話しかけてきた。

「最近さ、木村くんの様子おかしくない?」

「あぁ、慎吾もそう思うか?」

どうやら、そのことに気付いているのは俺だけではなかったらしい。

「うん。中居くん、喧嘩でもした?」

「いや、別に。大体、最近は喧嘩するぐらい話してないし」

そう、ここ1週間はなんとなく俺からも話し掛けなくなっていた。

自分でも何を恐れているのか分からない。

でも木村が何かを隠しているということは確かだ。

「そっか。まぁ、木村くん風邪引いてるみたいだしね」

「風邪?木村が?」

「うん、知らない?なんかこの間も楽屋で苦しそうな咳してたよ」

そんなこと、全然知らなかった。

ちょっと前なら少しでも具合悪そうにしてれば気付いたはずなのに。

それだけ木村と距離が出来てしまったのか、と軽い衝撃を受ける。

そういえば以前は休憩中でも楽屋までは戻らなかった木村が、最近はよく楽屋で休んでるようだった。

「やっぱり風邪の所為なのかなぁ…ちょっと疲れてるっぽいしね」

「かもな」

慎吾に返しながら、俺はちょっとホッとしていた。

あの木村の態度が風邪の所為らしいということに。

「そっか…風邪か」

呟いて笑う。

「何?なんかひっかかることでもあったの?」

「いや、別に。なんでもない」

「そう?まぁ、なんかしらないけど、悪い方にばっかり考えてちゃダメだよ?」

「大丈夫だよ、サンキュ」

大丈夫。

木村はただ単に風邪を引いて疲れてただけなんだから。

今度、一度木村とゆっくり話そう。

そう、明日にでも。

いつまでも1人でうだうだ悩んでたって仕様が無いし。

そう思いついて少し気分が晴れた。

 

2003/3/27(HINATA)