トクトクトクトクトク



木村が琥珀色の液体をグラスに注ぐ



それを中居はぼーっと眺めていた。



「はい」



木村が中居にグラスを差し出す。



「飲んでみな」



「ありがと」



木村からグラスを受け取り、



そっと口を付けて一口飲む。



「あ、おいしいかも」



「だろ?」



「ちょっと強いけどね」



「あ、やっぱり?」



「でも大丈夫」



そう言って中居がグラスを差し出したら



木村が「ん?」って不思議そうな顔をした。



「乾杯」



「もう飲んだのに?」



「だって乾杯したのに飲めなかったら、かっこわりぃじゃん」



その中居の言葉に思わず木村が笑う。



「そっか。んじゃ、改めて乾杯!」



「かんぱ〜い」



軽くグラスを上げてから



また一口飲む。



「ねぇ」



「ん?」



グラスから口を離して木村が首をかしげる。



「今の乾杯って何に対しての乾杯?」



「う〜ん、そうだな…初めて2人でカクテル飲めることに、かな」



「あれ?そうだっけ?」



「そうだよ。中居の家来るといっつもビールか焼酎ばっかでムードも何もないっての」



木村が苦笑する。



「そっか、ごめんごめん」



俺も謝りながら思わずふきだす。



「本当にムードねぇよな」



「笑い事じゃないって。でも、まぁ今日飲めたからいいかな」



「だな。んじゃ、そういうことでかんぱ〜い」



「何回乾杯するんだよ」



「いいじゃん、何回しても。かんぱ〜い」



「中居、もう酔ったか?」



あぁ、確かにそうかも。



木村の言葉に改めて気付く、ふわふわした感じ。



「ったく、しょうがないな。」



木村がそう言って中居の背後に回る。



「ほら、支えててやるよ。人間座椅子」



「わ〜い」



それをいいことに中居は木村に思いっきりもたれかかる。



「楽ちん、楽ちん」



「はいはい、それはよかったです。でもあんまりもたれかかられると、俺が飲めないんですけど」



「いいのいいの。木村は俺の座椅子なんだから」



そう言って、中居はさらに深く木村にもたれかかった。



「…きもち〜」



「中居?」



「なんか安心する、木村の腕の中…」



「もしもし、中居さん?」



「ん〜?」



「ダメだ、寝るモードに入ってやがる」



木村はそう判断して中居の手からグラスを取り上げてテーブルに置くと、



中居を抱え込んだまま、コタツの布団をしっかり掛け直してやる。



「それにしても可愛いよな…」



すっかり夢の世界に入ってしまった中居の寝顔を眺めて呟く。



いつもこんだけ素直ならいいんだけど。



思わず独り言ちると、



腕の中で中居が身じろぎした。



そんな中居の姿に、ふふっと笑うと



まぁ、いつも素直じゃないとこがまた可愛いんだけどさ



と中居の前髪を掻き上げながらまた呟いた。



そしてそのまま木村も心地よい眠りに引き込まれていった。