とびっきりのスペイン情熱紀行

                                          2003・8/2〜8/10

世界遺産が一番多い国、スペイン。これまでの自分の旅したい国のイメージとはすこし異質な気がするが、旧都トレドの街を見てみたい、サグラダ・ファミリアにも登ってみたい、プラド美術館にも行きたい、パラドールにも泊まってみたいー多くの希望と新たな感動を求めて9日間の旅に出た。しかし、スペインはなんと遠いのだろう。1998年にイベリア航空が日本からの直行便を廃止したため、今回はアムステルダムを経由しての入国となった。また成田からの出国ということもあり、20時間近くかかったことになる。とにかく連日晴天続きで40度近くなる、まさに情熱的な旅だった。

  
バルセロナ  カタルーニャ州の州都。中世の面影を色濃く残す一方、独創的で斬新なデザインを取り入れた自由さを持つ。
 
朝から照りつける日差しが日本と違う。「痛い」といった感じがした。しかし湿度は高くなく、日陰に入ると、涼しく感じる。まず、「芸術の都バルセロナ」の象徴、アントニオ・ガウディの「サグラダ・ファミリア」を見学に行く。1882年に着工。初代建築家ピリャールの後を受け継ぎ、ガウディのライフワークと呼ぶにふさわしい作品といった言葉がぴったり。内部はさながら工事現場。完成は果たして100年後か、いつのことやら。それにしてもエレベーターで上がり、塔から眺めたバルセロナの街はすばらしかった。続いて、「グエル公園」世界遺産に向う。破砕タイルで装飾を施した波打つベンチで囲まれ、美しいハーモニーを奏でて、市民の憩いの場となっている。「ピカソ美術館」では、若き日のピカソの作品に触れることができた。
バレンシア   地中海に面するバレンシア州の州都。肥沃な土壌から果実・米を産する一大穀倉地帯。
観光地を巡るのもいいが、その土地の市場を訪れるのが楽しい。世界遺産にもなっている「ラ・ロンハ」世界遺産という交易取引所の真向かいにある「中央市場」に立ち寄った。1928年に建てられた面積8000uというヨーロッパでも最大規模を誇る市場の一つ。ここで、サフラン・カラスミ・生ハム(なかでもハモン・イベリコは最高級)・さくらんぼを購入したが、なにしろ日本で買うよりも半値で買えるのが嬉しい。もちろんその夜はスペイン名物パエリアで、セルベッサ(ビール)片手に、大鍋に魚介類一杯の美味を堪能した。
グラナダ   シェラネバダ山脈に抱かれた町。アルハンブラ宮殿がこの町のシンボル。
途中、盛りを過ぎたひまわり畑を眺めながら、ラ・マンチャの風車群で有名な「カンポ・デ・クリプターナ」に立ち寄った。ドン・キホーテが戦いを挑んだとされる風車だ。昼食は「ベンタ・デル・キホーテ」という旅籠で、ドン・キホーテの結婚式のメニューを賞味する。そして夕刻7時(といってもスペインは夜9時ぐらいまで明るい)、スペイン支配の最後の牙城「アルハンブラ宮殿」世界遺産を訪れた。ミスター川崎と称するこてこての日本語で笑わせてくれたガイドに付いていくのが精一杯。夏の離宮ヘネラリフェ庭園はスペインを代表するフラメンコダンサー、オヨスの公演があり、中へ入れなかったのが心残りであった。
ミハス  コスタ・デル・ソルの北西の白い村。驢馬タクシーの行き交うのどかな街並みが美しい。 

「ミハス」
は、小さな村で、徒歩で一回りしても1時間ほどの規模だ。ギリシアでみた風景とよく似ている。白い家並みが広がり、展望台から地中海とミハス山脈が一望できる。色鮮やかな刺繍入りの馬具で着飾った驢馬タクシーが雰囲気を醸し出している。そしてサンセバスチャン通りはポストカードにも使われる美しい通りである。
ロンダ  川の浸食によって二分された町。100mの断崖に架かるヌエボ橋がシンボル。

イスラム支配の時代には、キリスト教軍を阻んだ自然の砦であった。18世紀末に完成した
「ヌエボ橋」の峡谷にそびえ立つ姿は圧巻である。それに魅せられ、リルケやヘミングウェイも訪れたという。またそばには直径66mの巨大な円形の「闘牛場」(闘牛博物館)があり、136本のトスカーナ様式の石柱が並び、歴史の重みを感じさせる。
セビリア  カルメンやセビリアの理髪師の舞台となった都市。闘牛やフラメンコの本場である。  

昨夜、フラメンコの情熱的なダンスを堪能し、その余韻が醒めやらぬうちに朝を迎えた。まず訪れた町のランドマーク的な存在である
「カテドラル」世界遺産(ヒラルダの塔)は、ゴシックとルネッサンスの混合様式で、世界三大カテドラルの一つである。この日は行事があり、中へは入ることができなかったが、代わりに「アルカサール」世界遺産を見学した。映画「風とライオン」の撮影が行われた王宮で、歴代の王により改築が行われ、様々な様式が混在している。支倉常長一行はここに宿舎を与えられたというが、セビリアで彼はダンスなどにも興じたのだろうか。
コルドバ  イスラムの古都。栄華を物語るメスキータがシンボルで囲むようにユダヤ人街が広がる。

とにかくこの時期スペインの暑さは格別。「熱い」の形容がぴったりだ。おそらく40度近くはあるだろう。その中を世界最大級のモスク、「メスキータ」世界遺産を訪れた。内部には馬蹄形のアーチの世界が広がり、見る者を圧倒する。ここも多様式の混在した異空間といえる。周辺に広がる「ユダヤ人街」世界遺産は迷路のようになっており、手入れの行き届いたパティオを見ることができる。通常「花の小径」とも呼ばれているが、今の時期暑さのため花も少なかった。
マドリッド  スペインの首都。人口790万人。プラド美術館・王宮などは旧市街に集まっている。

「プラド美術館」
では、グレコやゴヤ「着衣のマハ」「裸のマハ」の絵画が多い。ゴヤの「黒い絵」は特別室に展示されている。ベラスケスの「女官たち」「マルガリータ王女」を見る人たちで賑わっていた。「ソフイア王妃芸術センター」においては、ピカソの「ゲルニカ」を見ることができた。
セゴビア  ローマ水通橋・アルカサールとともに旧市街は歴史的に貴重な建造物が多い。

ヨーロッパの中で最も原形に近い形で残されている
「水道橋」世界遺産。全長728mで、花崗岩を積み上げて造ったローマ時代の建造物の中で芸術的にも技術的にも最もすぐれ、感動した。現在採択している現代文の教科書のグラビアにこの水道橋が載せられている。また旧市街の西に位置するディズニーの「白雪姫」のモデルになった「アルカサール」は優雅なたたずまいを見せていた
トレド  スペインの代表的な旧都。タホ川に囲まれた高台からの景観は魅力的だ。

今回スペイン行きを決めたのは、以前からこの
「トレド」世界遺産の街に惹かれるものがあったからだ。写真やパンフレットに見るこの街並みを同じところから見てみたかった。まさにそこからの景観をカメラに納めることができたのだ。それも何枚も・・・・・。そしてエル・グレコの作品が飾られた「サント・トメ教会」「カテドラル」と1時間あまり迷路のような町中を散策した
アビラ 中世の面影を色濃く残した城塞都市。聖女テレサの生まれた故郷。

この旅行のもう一つの楽しみはパラドール(スペインの国営ホテル86の内の一つ)に泊まれることだ。貴族の宮殿をホテルに改装してあり、調度品もクラシック。予約をとるのが難しいが、SARSの影響で旅行者が減ったおかげか?
「アビラ」世界遺産は、海抜1131mと高地にあり、保存状態のいい城壁に囲まれた旧市街を早朝に散策し、今回も思い出を多く刻み込むことができ、旅を終えた。