黄山雪中行


黄山・屯渓・イ県・杭州の旅(2004・12/26〜30)

屯渓   杭州よりバスで4時間余り。白壁に灰瓦、煉瓦作りの典型的な徽州建築の商家が軒を並べる。
  「小上海」と呼ばれるだけあって、提灯や旗が軒先に揺れ、宋から明にかけての商店が軒を並べて、賑わいを見せている。上海と同じく「老街」という名称で親しまれている。徽州は「黄山毛峰」のお茶や硯の産地でもあり、一軒一軒冷やかしながら歩くのが楽しい。その中で胡麻をふんだんに使って作ったお菓子(一見すれば墨と見まがうほど真っ黒)をお土産として買った。                                                                
西逓村2000年に世界文化遺産に登録された。未解放地区で豪商たちが財力を注いだ民居群が残る。

 西逓村は黄山市の麓にある「舟形」をした村。唐代末、皇帝の子孫が難を逃れるため、胡姓に改め隠れ住んだ里と言われる。その中で役人に出世した胡文光を記念した門、「牌坊」が村の入り口に建てられている。家屋は狭い土地に建てられているため、2階建て。白壁と灰色の屋根瓦のコントラストが印象的。「追慕堂」や「桃李園」などの家廟や邸宅の歴史的遺構が多い。発展著しい中国にあって、どこか懐かしい日本の田舎を彷彿とさせる風景に出会った気がした。
宏村2000年に世界文化遺産に登録された。やはり徽州の匠たちの技術を振るった古民居はすばらしい。
 西逓村より北に位置し、「牛」の形をした村。明代に作られた牛の胃(沼や湖)腸(蛇行する用水路)に見立てた水利システムはなかなかユニークで、地下水や渓流を循環させ、朝飲み水とし、後は洗濯に使うという。見所は汪定貴が建てた「承志堂」。木彫と徽派彫刻の粋を集めた建築の一大絵巻は見事である。兵庫県佐用町に「平福」というところがあるが、村の雰囲気がどことなく似ている。
黄山1990年、世界複合遺産に登録。万里長城、桂林山水、北京故宮と共に中国十大名勝区に指定。
  中国の冬山を甘く見ていた。杭州も5年ぶりの雪。到着した26日朝、徽杭高速道路が開通し、日本人としては最初にその道路を通行できると思いきや、なんと通行止め(これは事故のため)。途中から通ることはできたが屯渓到着は遅れた。そして翌日黄山へ。雲谷寺停留所からロープウェーに乗り、白鵞嶺停留所まで約10分。そこから1時間半の雪中行が始まった。夕日もこの日は無理。次の日に期待をかけて・・・・。雪は止まない。ご来光も無理。午前中4時間かけて光明頂(1840m)まで雪中行。すると午後から雪が小降りに。夕日観賞に再度チャレンジ、その前に丹霞峰に登ってみよう。一瞬霧が流れ去り、すばらしい雲海が見えた。これだ! 思わずシャッターを切った。そして排雲亭に向かうと微かであるが、夕日に空が染まった。明日の朝はきっと良い天気だろう。朝日が拝めそうだ。そして西海ホテルに戻ると、前に赤い絨毯が敷かれている。我々のお出迎えかな。(そんなわけない)ガイドの唐さんに聞くと、元中国全人代No5のお偉いお方がお泊まりだそうな。お付きの人も大勢だ。ひと目見ておこうと待機していると、お出ましになった。なかなか笑顔よしの恰幅のいい老人だ。絶対明朝は朝日が期待できるぞ。5時半起床。始信峰に向かう。別のホテルからも人が集まってきた。負けじと歩く速度を上げ、ベストポジションを確保。日の出の時刻、7時05分。いよいよ空に曙光が差し、赤らんできた。山の稜線がシルエットを作り出す。この数分間に心が浄化されていくのを感じ取った。辺りが明るくなって、目の前には昨日にもましてすばらしい雲海が広がった。ガイドの周さんも唐さんも久しぶりの絶景だと声をはずませていた。1年のうち200日以上は雲や霧に覆われ、雨の多い黄山で思い描いてきた水墨画の世界に数分なりとも浸れたことは、やはり来てよかったということだ。おそらく「もう一度」はないように思う。それだけに今回の旅はこれまでの20数回の中国旅行の中でも印象深いものとなった。そして山を下りたが、雪で乗ってきたバスは迎えに来れず、シャトルバスに分乗して温泉風景地区まで下りることとなった。そして屯渓から徽杭高速道路の一部区間通行。しかし途中からはやはり雪で凍結。クローズとなっており、旧の山道を揺られ揺られて5時間近くかけて杭州へ。周さんは「お尻のマッサージ」と笑ってのけた。ホテルに戻って早速足裏・全身マッサージをしてもらった。気持ち良かったが、映し出されたテレビの画面では「海嘯(津波)」の被害の甚大さを伝えていて心が痛んだ。(後で聞いたことだが、翌日の東京からのJAL機は上海着に変更となり、前日かろうじて通行できた道も閉鎖され、屯渓で足止めとなったらしい)。
杭州 最近都市建設が進み、古くからの町並みは姿を消しつつあるが、西湖十景は有名である。

朝目覚めると雨。今回で杭州は2度目。「雨に煙るも良し」と蘇東坡は西湖をこう称えたが、霙混じりの天気で、美人の西施もこれでは台無しである。黄山の美しさを堪能した後では、西湖の山紫水明も及ばずといったところか。無事にANA752便の飛んでくれることを願わずにはおれなかった。