〜FINAL FANTASY 8 TALES vol.10.5〜
サイファーの帰って来られる場所。
あいつが安心して心を預けられる場所。
それは、多分、ここしかないんだ。
あいつが心より愛している場所。
いつでも、どんな時でも、帰って来たいと思っている場所。
それはここなんだと、俺は思う。
俺もそうだから。
俺もここが、唯一心から安らげる場所だから。
あいつもきっと、そう思っているはずだから。
だから俺は・・・。
あいつの居場所を、ここに作っておいてやりたいんだ。
あいつが安心して安らげる居場所を、残しておいてやりたいんだ。
あいつが世界にしでかしてみせたこと。
それは、決して許されることではないんだろう。
でも、それは本当に、あいつが責任をとるべきことなのか?
あいつだけが、責任を負わされなければならないことなのか?
俺には判らない。
俺には判らないけど。
それでも、何かが間違っている気がしてならないんだ。
何がどう、間違っているのか。
俺にはうまく言葉にはできないけれど。
それでも、それでも間違っているということだけは、何故だか理解できる。
あいつは『魔女の騎士』たらんとしていただけなんだ。
憧れていたものになるチャンスを逃すまいと必死だっただけなんだ。
あいつは、あいつの心のままに行動しただけなんだ。
いつもどおり、あまり深く考えずに、行動しただけなんだ。
あいつは・・・。
自分の心に忠実なやつだから。
あいつは・・・、サイファーっていう男は、そういう男なんだ。
そんなあいつの純粋な思いを、利用していなかったと、言い切れるのか?
一連の責任を、あいつだけに押しつけてはいないと、言い切れるのか?
あいつらは、ガルバディア軍のやつらは、本当にそう、言い切れるのか?
たった一人の人間に、総ての咎を負わせてしまって、それで総て済んでしまうことなんだろうか。
それで総てが済んでしまうというのならば、そんな世の中、俺はいらない。
そんな風にしか在れない世界なんて、俺は絶対に欲しくない。
俺は欲しくないんだ。
後先考えずに突っ走ったあいつに、責任が全くないとは、俺も思ってはいない。
でも・・・。
それでも・・・。
俺は、あいつが負うべきもの。
あいつが自ら負わなければならないものは、全然違うものだと思ってる。
あいつはそれをいつか自力で見つけられるやつだと、俺は思ってるから。
だから、あいつを守って欲しい。
あいつが愛する場所を見守り続けている貴方たちだから。
あいつの帰りを暖かく待っている貴方たちだから。
あいつを、あいつをスケープゴートと見なす奴らから、守って欲しいんだ。
・・・・・・。
俺は、いつもあんな風に行動できるあいつが、羨ましかった。
自分の心のままに振る舞えるあいつの強さが、羨ましかった。
俺には決してできないことだったから。
臆病な俺には、決して真似できないことだったから。
周囲とは一線を画しておきたい俺に、唯一平気で絡んでくるやつだったから。
干渉されるのが鬱陶しくて態度の悪い俺に、唯一大声で怒鳴ってくれるようなやつだったから。
俺は、あいつの居場所を作っておいてやりたい。
俺は、あいつの帰ってくる場所を作っておいてやりたい。
俺にできることは本当にちっぽけなことにすぎないけれど。
それでも、あいつの為にできることは何でもしてやりたいんだ。
俺にとってあいつは、かけがえのない仲間なんだから。
あいつが俺のことをどう思っていようと、あいつは俺たちの仲間なんだ。
この場所で、このガーデンで、一緒に時を過ごしてきたあいつは、俺たちの仲間なんだ。
だから、お願いだ。
俺の意見を聞いてくれ。
あいつが、サイファーが好きな場所を、あいつに残しておいてやれるように。
俺があいつの為に何かしてやることができるように。
俺の意見に耳を傾けて欲しい。
それが恐らく、俺がここでできる最後のことになるだろう。
だから、それを叶えるチャンスを与えてくれ。
END