あとがきです。

ある、夏の暑い日のことでした。
私の頭の中で、二人の天使が喋りだしました。
その会話がお話の元になっています。
シーズィエルは割りと思い入れのある子で、名前も、古き良き友人との十年以上昔の記憶から汲んできました。
朱色の羽根、情報を司る天使。
顔の傷と、容姿のコンプレックス。
全て、私がほんの子供だった頃の、懐かしい思い出です。(苦笑)

私の書くお話は、ファンタジーというよりは御伽噺なのです、多分。
恋愛と戦闘が苦手だなんて、字書きとしてもどうかと思います。
だから、いつも、ヒーロー・ヒロインが不在になってしまうんですね。
どこか大切なものがすっぽりと抜け落ちているような気もしますが。
大体のあらすじだけでも判っていただければ、嬉しいかな、と……。
以下、色々解説です。



片羽根

重大な罪を犯したが、まだ堕天はしていない天使に対する尋問手段の一つ。
殆ど生還者はいないので、人間の異端審問に近いです。(苦笑)

この世界の天使は存在の基盤を精神に持っており、羽根は精神体の根底に近い部分。
常にアストラル体を放出し、また取り入れる場所でもあり、天使は翼を完全に失うと、生きていることは出来ない。
片羽、もしくは羽無しになった天使の多くは、存在自体を侵食され、個々の意思を持たない悪霊と化す。(それが寄り集まって、レギオン(大勢のもの)と呼ばれる状態になることも)
また、運良く片羽に順応出来ても、その痛みやショックで殆どが堕天してしまう。


星鈴樹(リンゼア)

天界に多く存在する樹。常に薄藍色の花が咲き、小さな果実を実らせている。
祈りの時間になると、一斉に実を落とし、えもいわれぬ美しい音色を響かせる。
果実は食用にも適し、天界の鳥たちの好物。
ただし、地上などに持ち込むと、すぐに枯れてしまう。


天使の篭

卵から孵った天使が育てられる場所。
中には天界以外のまったく違う場所で生まれて、ここに辿り付かない天使もいる。

抗魔力の弱い、翼の未熟な天使が多く住むため、天界中でも警備の厳しい場所の一つ。
幾重もの結界に守られた美しい谷で、形状が鳥篭を思わせる。天界で最も無垢な花が咲き乱れる花園。
ちなみに、天使の誕生は神の管理下にあり、勝手に生み出すことも死ぬことも許されていません。


ラーシャエル

天界には名目上、能力や肌や髪や瞳や羽根の色での差別はないが、本人がまったく偏見を感じないか、というとやはりそういうこともなく。
ラーシャエルは、早くからツァドキエルが後見人のような立場に入ったため、伸び伸び育つことが出来た。

ツァドキエルが天界から姿を消したあと、約束通りジブリールに引取られますが。
前の上司を憂うあまり、自ら森に同化し閉じこもってしまいます。
天界唯一の、海の上に浮かぶ森に、とある少年が訪れるのは、遥か後のこと…。


黄金(きん)の鳥篭の鳥

私がむか〜し書いていた童話のタイトル。 アウローラと対になる”金の影”のお話。
天界になぜその本があるのかは謎。(笑)


魔王<ルシフェル>の欠片

世界観参照。
先の大戦でミハエール(ミカエル)に胸を貫かれたルシフェルの魂が、幾つもの欠片に分かれて飛び散ったもの。

今までは、欠片の存在が確認されても、天界の管理により覚醒にまで至らなかったのですが、初めて一つの欠片が目覚めて地上に現われました。
また、この世界の基本概念に”転生”はないのですが(一応、一神教をベースにしていますので)、魔王の欠片など重大な罪人に限っては、神のプログラムによって”転生”する(本来とは違う人間などの肉体で降ろされる)こともあります。
また、預言者など重大な役目を負った聖人も、天界から仮初の肉体で降臨した者が多いようです。

通常の罪人は”煉獄”で罪を償い、神に認められた者のみが天国の門を潜ります。
その一方で、魂すら溶かし尽くし一つの海に戻す”混沌(カオス)”は、復活を信じる神の使徒から恐れられていますが、それが本来の”死”の姿であると説く者もいます。


銀のアウローラ

天界と地上の狭間にある、”銀の塔”の主(あるじ)。
人間でも天使(天界人)でもなく、どちらかと言えば精霊に近い…らしい。
その生涯を、殆ど塔の最上階で過ごす謎多き人物。遥か後に、一人の子供を身ごもる。
…ちなみにアウローラ(暁)は呼び名です。


アカシック・レコード

全宇宙の完全なる記録。
天界では、収納しているというよりも、封印していると言った方が正しいかもしれません。
レコードの媒体として”記録者”と呼ばれるものが、あらゆる世界に点在している…とも言われています。
アカシック・レコードの使用は非常に危険を伴い、管理者の許可が必要です。







遠き道の果てに。
いつか終焉(おわり)が来るとしても。
それでも人は、歩き続ける。










戻ルノ?