≪冬の月、8日(月)≫
今日の依頼はしののめさんから。「企業秘密ですので」って、なんだろう。もしかして、公にはできないやばい仕事なのか!? 必殺仕事人な仕事なのか!?
と思ってびくびくしていたのに、実際にはきのこがどこで採れるのか知りたいというだけだった。そこで一緒に谷へキノコ狩りに行くことにした。
しかしキノコが好きってこと、別に隠さなくてもいいと思うのにな。もっとも毒キノコでもOKって言うのは、やっぱり隠しておいた方がいいかもしれないけどね。使い道を怪しまれるかもしれないからね!
キノコ狩りは大成功。いっぱい見つけられたため、普段はおしとやかなしののめさんが、めずらしく大はしゃぎ。「今度は家族一緒に来たいですなあ。」・・・か。家庭がある人はいいよな。こんな夢や生きがいを持つことができて。
・・・家族、か。家族がいれば、そんな幸せがあるんだな。
≪冬の月、9日(火)≫
今日の依頼はクルルファさんから。ウェルズさんに挨拶に行きたいので、付き添ってほしいという。交流祭以降、町でも集落の人をよく見かけるようになったけれど、まだ遠慮があるんだろうな。なにせ何十年もいがみ合ってきた間柄なんだから。そこで一緒に行くことにした。
そして軽い挨拶のあと、シアレンスの樹の話になった。交流が復活したのに、そして樹がさらに大きくなったのに、どうして花が咲かないんだろうかと。
足りないものがまだあるということなのだろうか。
「種族を超えたつながり」が花を咲かせるはずなのだ。しかしウェルズさんの話では、交流だけがつながりというわけでもないと言う。確かにそうだな。つながり・・・例えば・・・。
ウェルズ「ヨシヒト、おまえさん、クルルファと交際してはどうだ?」
ぶっ!
思わず吹いた。一体何を言い出すのかと思えば・・・。
しかし人とモンスターとのハーフである私がシアレンスの樹に大きな影響を与えたことを考えると、あながちズレた考えでもないのかもしれない。ぶっちゃけハーフである私ならば、相手が人間だろうと有角人だろうと鳥ハーフであろうと人魚だろうとエルフであろうと、種族を超えたつながりになるのではないだろうか。
でも・・・花を咲かせる手段として交際やら結婚やらを考えるのは、相手に失礼な気がする。もっとも先日結婚を勧められもしたし、私自身、それを考えていい時期になっているとは思うのだが・・・。
こんな話があったから思いついたというわけでもないのだが、3つも作ってしまった婚約指輪、試しに1つ出荷してみた。
出荷額0ゴールド。それどころか、出荷履歴にさえ残らないというのがすごく悲しい。もっともこんなものを出荷しても、買う人がいそうにないからな。仕方がないことなのだろう。
それとももしかして、出荷担当のカリンがこっそり盗っちゃった?
≪冬の月、10日(水)≫
さくや「ほんま大きなったなあ、シアレンスの樹。伝説がホンマなら、そろそろ幸せになれるかも知れへんで、ヨシヒトはん。」
今でも十分に幸せな気はするけれど、やっぱり家族と言うのは特別なものなのかもしれないな。
さて、今日の依頼はオンドルファさんから。クルルファさんが町の人からどう思われているか、こっそり調べてほしいという、探偵みたいな仕事だ。
しかしこっそり遠まわしに話を聞くというのは、私の性に合わない。というか、方法が分からない。そこで裏も表もないまっすぐな人に、直球ど真ん中な質問をしてみることにした。
・・・って、この町で裏表のない人って誰だ? えーっと、マリオン、ペルシャ、エリザさん、カルロス兄貴、ダリアあたりだろうか。でもこの人たちは裏表がないというよりも、ノーテンキって言うほうがいいような気がするぞ。まあいいや、片っ端から話を聞いてみよう。
ペルシャ「クルルファちゃんねっ! 早そうだよねーっ! あのつのなら、抵抗とか少なそうだもんっ!」
水泳の話らしい。
エリザ「クルルファさんですか。素敵な方ですよね。カブの葉のお洋服なんて似合いそうですよね♪」
モデルとしての話らしい。
カルロス「う〜ん、俺は・・・・・・。素敵なレディだと思うぜ。砂漠に咲く、一輪の花・・・・・・。ふっ。今日の俺は詩人だぜ。」
自分に酔ってるよ。
マリオン「クルルファ・・・・・・? ああ、あのツノの人ね! 生え変わらないのは分かったけど、削るくらいならどうなのかしらね?」
実験材料としての話らしい。
ダリア「クルちゃんの角♪ スペアを作ってあげようかしら♪ 先端が7つに分かれててえ、リンゴが生えててえ、しかも空を飛べそうなヤツ!」
何をどう答えればいいのやら。
結論。どうやら私は、人選を間違えたらしい。
そこで他の普通の人(いや別に、さっきの5人が普通じゃないというわけでは・・・)にも色々と聞いてみたが、予想以上に評判が良かった。これなら安心してオンドルファさんに報告ができるぞ。
というわけで、この依頼は無事に完了。交流祭が間違っていなかったことが分かって、私にとってもうれしい出来事だった。
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