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≪孤島の牢獄・改 制作後記(裏話)≫
 このページは、制作者による自己満足裏話です。ほかの人が読んで面白いかどうか怪しい上に、ちょっとしたネタバレがあります。


 孤島の牢獄の修正作業(改の制作作業)がひとまず終了し、これために中断していた次回作の制作に戻る準備をしています。でもその前に、孤島の牢獄・改の制作に関する反省点をまとめておこうと思います。ついでにどんなことを考えて制作していたのかも、いろいろと書いておこうと思います。

 このゲームで目指したのは、RPGらしい楽しさを求める人が、実際にそんな楽しさを味わうことができるというものでした。RPGらしい楽しさをどんなものだと考えるかは人によって大きく違うと思いますが、私は次のような考えを持っています。

 RPGにおける2大要素として、シナリオとシステムが存在します。この2つのバランスによって、同じRPGというジャンルであっても、まったく違うゲーム性になります。
 でも私はこの2つの上に、もっと重要な要素が存在すると考えています。その要素とは………いい表現が思い浮かびませんが、物語の主人公となってその人生を楽しむこと、と言えばいいでしょうか。

 もし冒険者や探偵となって様々な事件を解決していくRPGにしたければ、シナリオ重視になりやすいでしょう。最強の戦士を目指してひたすら戦い続けるRPGにしたければ、システム重視になりやすいでしょう。つまりシナリオもシステムも、主人公としての人生を楽しむための、手段に過ぎないのではないかと思うのです。そしてそのように作られたRPGをそのように楽しもうとすることが、RPGをもっとも楽しくプレイする手段だというのが、現在の私の考えです。
 この「RPGとは物語の主人公となってその人生を楽しむ娯楽である」という考え方は、私独自のものではありません。コンピュータRPGのもとになった、テーブルトークRPGと呼ばれるゲームのファンの間では、広く知られている考え方です。コンピュータRPGとテーブルトークRPGは似て非なるものなので、これを根拠に「これが正解だ!」などと断定することはできませんが、RPGだけでなく、小説やスポーツや学問など、様々な娯楽の魅力を知っている私が、市販作品だけでも100を軽く超えるRPGをプレイしてきて出した答えですから、信頼性は高いのではないかと思います。

 孤島の牢獄・改の場合、複数のキャラクターを作成して遊ぶゲームですから、明確な主人公というのは存在しません。でもキャラクターの1人を主人公と考えて遊んでもいいですし、全員をひっくるめた「二期生」という存在を主人公だと考えて遊んでもいいようにしています。一応は後者を意識した作りにしていまして、これはウィザードリィがそんな感じで遊ぶことが多いゲームだからです。

 孤島の牢獄の売りであるバランスに関しては、良いものにできたと思います。もっともバランスというのは裏方的な存在ですから、悪いと目立つけれど良くても理解されにくいため、問題がなければ十分という扱いになるのが普通なのですが。でも実装した魔法やシステムがきちんと意味を持つかどうかは、バランスに大きく左右されるわけですから、それぞれの魔法の使い勝手やそれを利用した戦術性を考えてもらえれば、私のこだわりが少しは分かってもらえるのではないかと思います。

 ただしこだわったといっても、悦に浸れるほどの出来ではありません。明らかな欠点と言える部分もありますから、その辺りを書いておきます。

 欠点の1つは、レベルアップのペースです。ノーリセットでプレイしている場合、マップを埋めてすぐに次の階へ行こうとすると、想定レベルには経験値が少し足りない、というくらいにしてあります。でも実際にこの通りになっているのは前半だけで、後半は意識して戦闘を繰り返さなければ、想定レベルに到達しません。
 これは階ごとの想定レベルが、前半は2ずつ上がっていくのに、後半は3以上上がっていくのが原因です。ゲームが進むほど出現するモンスターのパターンを増やしたかったので、必要な戦闘回数が増えるようにしていましたが、結果としてレベルが追い付かない現象が生まれてしまったわけです。これはダンジョンのボリュームを調節すればいいだけなので、次回作に欠点を引き継ぐことはないはずです。

 ちなみに孤島の牢獄は、元々は独自要素を強調するつもりはなく、深く考えずに設定していた部分が多々ありました。うつ病で頭がまったくというほど働かなかったときに、リハビリになるかもしれないと思って作り始めたものなので、今思うと本当に何も考えずに作っていると感じる部分も多いのですが、少しだけ頭が働くようになって見直したときに、「この出来では恥ずかしい」と思って作り直した現在の改も、いずれ本来の体調に戻ったときに見直すと、同じことを思うのかもしれません。そうではないと信じたいのですが。

 ともかくゲームの規模も深く考えずに設定したことでして、10階層にするというのは、初期段階での決定事項でした。職業や民族も同様でして、魅力に乏しい設定になっています。特に民族は雑すぎで、魔法職と義賊と怪盗は、全部森の民でかまわないというデータになっています。設定していた時の考えとしては、「キャラクターのイメージにあった能力値にしやすい民族を選んでもらう」というものだったのですが、実際にそんな選び方をする人は滅多にいないでしょうし、私だって他の人が作ったゲームを始めて遊ぶときには、バランスがどうなっているか分からないのだから、余計な苦労をしなくて済むように、一番有利になりそうなものを選びます。

 この辺りは後からの修正が困難なので(今思うと民族は簡単そうですが)、改を作り始めるときに「直したいけど直さない」と決めていたことでした。例えばダンジョンの規模を大きくすると、イベントなども大幅に増やさない限り、スカスカな迷宮になってしまうからです。

 次はイベントに関する話です。
 3DダンジョンRPGでは、ダンジョン探索の楽しさが重要になります。通常は罠を仕掛けたり、所々に鍵付き扉などの障害物を設置したりするものです。でも私は、これらをほぼ無くしました。
 罠を無くした理由は、楽しさにつながる罠の設定が困難だったからです。罠を作るならばその対抗手段も用意するのが普通ですが、罠回避魔法があれば必ず使用した状態で冒険するでしょうから、罠はあってもなくても変わりません。それにウィズでよくある常駐魔法は、作業的で好きではありません(照明だけは雰囲気を味わってもらうために導入しました)。逆に回避不能な罠であればその場所へ行かないことがベストになりますが、マップを埋めるのが遊び方の基本の1つというゲームで、行ってはいけない場所を作るのはおかしな話だと思います。
 もちろん工夫次第では面白い罠を作ることもできるでしょうが、私には難しすぎることでした。障害物を何とかしようとしてダンジョンを駆け回ってもらうようにすれば、前述のレベルアップペースの問題を緩和させることもできたのですが、従来版の制作時には考え付かなかったことですし、改の制作は面倒なことはやらないという方針だったので、見送ることになりました。実をいうと1つだけ良さそうなアイデアが浮かんだため、次回作では採用してみようと思っていますが、実装は大変そうで、今から気が重くなっています。
 障害物の設定に関しては、3DダンジョンRPG初挑戦者にとって厳しいものになりそうということで、ごく簡単なものがいくつかあるものの、やはり実装を避けました。本当に初挑戦者のことを考えるならば、無くすのではなく少しずつ慣れられるような物を作るべきなのでしょうが、あまり深く考えずに別の手段で代用することにしました。

 その別の手段というのが、イベントを大量に用意するというものです。魅力あるイベントがダンジョンに大量に存在するならば、イベント目当てに探索を楽しむという形を作ることで、難易度の低さと探索の楽しさを両立させられるのではないかと考えたのです。
 実際のところは完成したマップを見てもらえば分かるように、(改で少し増えたにも関わらず)十分な数は用意できませんでした。せめて現在の1.5倍くらいあれば印象が大きく変わったと思いますが、現状では熟練プレイヤーにとっては、味気ないダンジョンだったと思います。もっともこれは、マップの構造が雑すぎたというのも大きかったでしょうけれど(最後の方のバージョンでマップに手を加えたため、それ以前よりはマシになっています)。
 振り返ってみると、ダンジョンの構造は体調不良の影響が一番大きく表れているように感じます。従来版の制作は、中盤ごろから体調が悪化し、寝たきりになる前に無理してでも完成させて公開しようとしたため、制作作業が非常に雑になっていたのですが、以前のマップを見るとそれがとてもよくわかります。

 それから十分な量にはできなかったものの、努力した痕跡と言えなくもない、改で追加された妖精英雄イベントですが、これに関しては想像以上のものになりました。
 もともとはスカスカな階の1つに、その階の特徴を利用した仕掛けとして数字入力イベントを作ってみただけだったのですが、気が付くと宝箱から妖精が飛び出してきたり、あちこちでおかしなことをしてくれたりと、十分な活躍をしてくれました。改での追加イベントはダンジョンの中身を濃くすることが目的だったため、メインストーリーとは全く関係のない賑やかしイベントにするつもりでしたが、一期生と絡ませることもでき、より良いシナリオになったと思います。

 一期生と言えば、従来版にはなかった「とある可能性」に気づいてくれた人って、どれくらいいるんでしょうか。私は隠し要素があまり好きではなく、ゲームに導入したすべてのことを知ってもらいたいと思っているので、露骨ではない程度に分かりやすいヒントを入れたつもりなのですが、こういうものは制作者の願望通りには伝わらないのが普通なので、ちょっと不安なのです。せっかくなので、露骨なヒントを掲載しておきます。白色で書いておきますので、見たい方は空欄部分をドラッグして、反転させてお読みください。

露骨なヒント
「フェアリーサークルを作る光るキノコは毒キノコ」
「妖精の国イベントで、フェアリーサークルを利用することで別の国へ行くことが可能であることが分かる」
「魔物の町にはキノコの群生地があり、ナンデモ屋の裏にある群生地には、毒キノコが多い」
「一期生は2人になったあと、ナンデモ屋に逃げ込んだ」
「このゲームでは6人パーティでそのうち4人が死んでいても、全員で移動することができる」


 それから、独自要素について書いておきます。
 1つはHPの回復が、自動回復が基本であるということです。これは戦闘の難易度を高くすることなく緊張感を生み出すために考えたことです。
 私の考えとして、死亡という状態は、最も避けるべきことだと考えています。ゲームでは簡単によみがえるキャラクターですが、ダメージによって死亡するというのは、実際にはとてつもなく恐ろしいことであるはずです。それに最重要パラメータともいえるHPは、この死亡に関するパラメータでもあります。ですから私は、どんなに蘇生が容易なゲームであったとしても、例えゲーム内表記が死亡ではなく気絶や戦闘不能というものであったとしても、戦闘で1人でも死亡者を出してしまえば、ゲーム的には勝利であってもプレイヤー的には敗北であると考えています。もし戦闘終了までに蘇生させることができたとしてもです。難易度はさほど高くないこのゲームですが、この考え方でかつノーリセットというプレイスタイルだと、ぬるさは感じないはずです。これはHPの回復手段が貧弱なので、敵の攻撃力がさほど高くなくても、それなりの脅威になるからです。
 しかしRPGの戦闘はHPの削りあいですから、HPの回復手段が貧弱だとゲームに支障をきたします。それゆえの自動回復です。
 自動回復には、もう1つのメリットがあります。それは初期状態では魔法がほとんど使えないという、システム上の欠点を改善できるということです。たとえ魔法が1回しか使えなくても、それが長時間持続する自動回復魔法であれば、通常の回復魔法10回分以上の価値になるからです。

 独自要素の2つ目は、消耗品に力を入れていることです。一番のメリットは序盤の魔法不足を解消できることで、これによりレベルアップ作業をしなくても、序盤から普通に探索することが可能になります。
 もう1つのメリットは、戦闘ではあまり役に立たない盗賊に、盗賊だからこその良さを持たせられることです。
 戦闘時に消耗品を積極的に活用するRPGは非常に少ないのですが、これは補充に手間がかかるため、魔法と違って面倒くさく感じるプレイヤーが多いというのが理由の1つだと思います。
 でも出発前には店によって消耗品を補充するというプレイスタイルは、どんな危険が待っているか予想して備えるということですから、ひたすら敵と戦い続ける作業的な遊び方をしている人に、「今の戦い方でいいのかな?」と戦術や戦略を考えてもらうきっかけになるかもしれません。そしてこれは、物語の主人公となってその人生を楽しむことにつながるとも思うのです。
 つまり魔法と消耗品は効果こそ似ていますが、ゲームにおける意味は同じではないわけです。

 次はモンスターの話です。
 出現モンスターの顔ぶれは、制作の初期段階である程度決めていました。実際の制作時にかなり手を加えてはいるものの、テキトーに設定した構想時のデータが、現在のバージョンにも強い影響を与えています。
 ようするにこれも、体調不良の影響を大きく受けている事柄でして、モンスターのパターンが少なく面白みに欠けるものになっています。
 実際のところ、モンスターのパターンにはある程度の単調さを持たせるつもりではありました。魔法を中心とした戦術を楽しむ戦闘にするためには、試行錯誤するための十分な戦闘回数が必要になるため、出現率の低い敵は単なる強化版が何度も出現するようにすべきだと思うからです。
 でも理想は「計算された単調さ」であって「見事なまでの単調さ」ではないわけで、孤島の牢獄における明らかな欠点の1つとなっています。

 えーと、今思いつくのはこれくらいかな。後で思いついたことがあれば、この後に追加していきます。その際にはトップページと専用ページの≪最近の更新≫でお知らせします。


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