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≪凱旋?≫

 故郷の村があるのは、サリスなどではメディルと呼ばれている最果ての島でした。クライスたちは船に乗ってメディルへ向かいます。
 そして島に着き、思い出の場所をめぐり・・・故郷の村が見えてきたとき、目を疑いました。焼き尽くされたはずの村が、再建されているのです。

 シリュン「オレ達は・・・夢を見ているのか・・・。」

 クライス「行ってみましょう!」

 村に着いた時、入口近くにいた女性が出迎えてくれました。女性の名はエレナ。クライスの妹にして、シリュンの婚約者です。

 エレナ「兄さん! シリュン! ・・・ずっと待ってた、二人の帰りを・・・。」

 なぜ滅びたはずの村が無事なのか。エレナの話では、フェイデルに襲われた日はゴブリンを警戒していたため、フェイデルを早期に発見することができ、全員教会の地下室に逃げ込めたのだとか。言われてみれば、考えられる可能性ではありました。

 シリュン「・・・オレたちがこれまでしてきたことって、一体なんだったんだろうな。」

 クライス「でも、何もしなければこの日は来なかったんです。私は無意味だったとは思いませんよ。」

 その後、懐かしい村を見て回ります。

 クライス「私の家も建て直してもらったんですね。」

 シリュン「お前の家じゃなくて、エレナの家だからだろ?」

 ファルナ&リュード「???」

 また出会った村人からは声を掛けられます。

 「クライス、今ごろ帰ってきても学校の仕事はないぞ。ちゃんと後継ぎがいるからな。」

 「クライスがおなごを連れて歩いとるとは・・・。まさか魔法でたぶらかしたのではあるまいな?」

 「おやおや、ずいぶん勇ましい格好で帰ってきたんだねぇ。人様に迷惑をかけて、よそへはいられなくなったんじゃないだろうねぇ。」

 「このところ地震が多くてねぇ。あんたたちが帰ってきたから、なんてことはないだろうねぇ。」

 歓迎の声とはとても思えません。喜んでくれているのは、クライスの教え子たちなどごくわずか。大人で好意的なのは、幼馴染の女性であるイセリア1人と言ってもいいくらいです。

 イセリア「エレナってすごいよね。誰とだって結婚できたのに、シリュンを選んだんだから。亡くなったとしか思えない人を、7年も待ち続けたんだから・・・。」

 ファルナ「7年も・・・シリュンは幸せ者ね。」

 シリュン「そんなんじゃ・・・ないよ。子供のころ、あいつはいじめられてばかりいた。あいつが心を許せるのは、オレとクライスだけだった。あいつには、オレしかいなかったんだ・・・。」

 一通り村を回ってから、クライスの家で休憩します。

 ファルナ「ねえ・・・聞きたいことがあるんだけど。」

 シリュン「聞きたいことってなんだ?」

 ファルナ「なんだ・・・って、それ、本気で言ってるの? あれだけ邪魔者扱いされて、よく平気でいられるわね!」

 リュード「俺も同感だな。お前ら昔、この村で何かあったのか?」

 シリュン「・・・クライスはこの村に住み着いた黒魔術師の子で、オレはクライスたちといつも遊んでいたというだけだ。エレナも若い男たちからはチヤホヤされているが、他の人からは、いや昔はすべての人からオレたちと同じ扱いを受けていた。」

 クライス「この島の人は閉鎖的なんですよ。見知らぬもの、見知らぬことを恐れ、知ろうとも、係わろうともしないんです。そして私のような者に係わることで、自分がつまはじきにされることも恐れているんです。」

 ファルナ「そんなことで・・・。」

 シリュン「そんなことで、だよ。だから言ってやったよ。クライスたちがお前らとどう違うんだ? こいつらと付き合いだしてから、オレがどこか変わったか? ・・・ってな。そしたらあいつらは、自信たっぷりに言いやがった。『見えないところが違うかもしれない。これから変わるかもしれない。前例がないのだから分かるわけがない』ってな。」

 クライス「その日、私たちは誓ったんです。前例がないのであれば、自分たちが前例になろうと。そして習慣を盲信する彼らに、自ら考え、自分の意思で生きることを知ってもらおうと。」

 ファルナ「・・・・・・。」

 シリュン「そんな顔しないでくれよ。子供の時の話だよ。」

 ファルナ「でも、今でも忘れていないんでしょ? その誓い・・・。」

 その後フェイデルから、この島にはドラゴンオーブがあり、それを誰かが使っているという話を聞きます。ドラゴンオーブは強力な魔術品であり、良識に欠ける者が使用していれば大変なことになります。そのため調査しようということになりました。


≪これまでの人生≫

 村を出ようとした時、息を切らせて村にやってきた男がいました。なんでも魔物の群れがこちらに向かっているのだとか。視力に優れるシリュンが目を凝らすと、確かに膨大な数の魔物が飛んでくるのが見えました。
 クライスは儀式による増幅版スターダスト・レインで迎え撃ちますが、わずかに撃ちもらしがありました。その魔物には村の近くまで接近を許しましたが、なんとか全滅させることに成功します。

 「あたしゃ、もっと悪いことが起こるような気がするんだよ。誰かがここにいる限りはね。」

 「7年前のドラゴンに続いて、今回の魔物・・・。全部お前らのせいじゃろう!」

 しかし一方で、見方が変わってきた人もいました。

 「あれだけの魔物を倒すなんて・・・お前ら一体、どんな人生を送ってきたんだ?」

 「ドラゴンが現れた日にいなくなり、魔物が襲ってくるときに戻ってくるなんて・・・お前らは疫病神なのか? それとも光の勇者なのか?」

 「あんたたち、本当にあの2人なのかい? あんたたちがこの村の生まれで、あたしゃ鼻が高いよ。」

 そんな中、また大変な事件が飛び込んできました。隣の村が地震で壊滅し、難民が押し寄せてきたのです。そんな地震が起これば、通常ならばこの村も壊滅しているはず。ならば魔法による局地的な地震という可能性が高く、そんなことができるのはドラゴンオーブの持ち主だろうということが推測できました。

 リュード「だとすれば、他の村も危ないかも知れんぞ!」

 クライス「エレナ! 自警団員には、すぐに他の村と連絡をとらせてください! 難民は、教会を開放すれば受け入れられるはずです! 私たちは元を断ちます!」

 そんな中、こんなやり取りもありました。

 村人「お前たちならこの村を守りぬけるよな? 頼む、助けてくれ!」

 シリュン「・・・自分たちの境遇さえ変えられなかった俺たちに、そんなことができると思っているのか? オレたちがどんなに頑張っても、あんたたちの変わろうとしない力には勝てなかった。それがどういうことか分からないのか?」

 村人「わかってる、もうあんなことはしない。だから・・・。」

 シリュン「違う! 一人一人の力は小さくても、それが集まればとんでもない力になるんだ! みんなが行動しなければ、あんたの力も合わせなければ、何もできやしないんだよ!」

 また別のやり取りです。
 
 イセリア「強いお酒って、消毒になるって言ってたよね!? 後は毛布と、食事と・・・。」

 シリュン「イセリア、お前やけに協力的じゃないか。何か悪いものでも食べたのか?」

 イセリア「失礼ね! 私だってこれくらい・・・。・・・無理もないよね、昔のわたしを知ってるんだから。でもわたしね、クライスの授業を聞いていたんだ。窓の外から、こっそりとだけどね・・・。クライス言ってたよね。友達との絆よりも、家族との絆よりも大切なものがあるって。人と人との絆・・・。あの時は何の事だか分らなかったけど、今なら分かる気がするんだ・・・。」


≪最後の戦い≫

 この島にただ1つだけある大洞窟。最も怪しいのはその奥です。クライスたちは元凶を倒すため、その洞窟に向かいます。
 そして最奥部、そこで出会ったのは見覚えのある男でした。人の王として生まれ、理想社会の実現のために社会を混乱に陥れたために追放され、その後魔王となったローディエルです。

 リュード「馬鹿な・・・貴様はこの手で・・・。」

 ローディエル「確かに余は死んだよ・・・だが蘇えった。不死の王として・・・。余は滅びるわけにはいかんのだ。この世のけがれを浄化するまでは、滅びるわけにはいかんのだ!」

 ローディエルは、創造していた人造翼竜リンドブルムをけしかけますが、クライスたちはそれを撃退。フェイデルの力を借りて全回復し、最後の戦いに挑みます。そして長い戦いの末、ローディエルを倒すことに成功しました。

 ローディエル「またしても・・・あぜ、邪魔ばかりするのだ・・・。」

 クライス「あなたの理想がなぜ受け入れられないのか、他人の立場で考えたことがありますか? 理想の世界がどんなものか、人によって違うことを知っていますか? その理由は様々です。性格の違い、知識の違い、視野の広さの違い・・・。それゆえ完成された世界とは、夢にすぎないのかもしれません。それでも、こんな世界であっても、人は小さな幸せを見つけることができるんです。この世界を愛しているからこそ、この世で幸せをつかむことを夢み、希望を持って生きていくことができるんです。全ての人が全ての人の夢がかなうことを願って暮らす、理想の世界・・・それはこの世の先にこそあると、信じてみることはできませんか?」

 ローディエル「おろかな・・・。夢など見ていても、何も変わりはしないというのに・・・。」

 クライス「夢は見るものではなく、かなえるもの。かなえることができるもの。私はそう信じています。私の人生ですから・・・私の生きてゆく世界ですから・・・。私は決して、絶望したりはしませんよ。」

 ローディエル「余も若いころは・・・人であったころは・・・そう信じて生きていたよ。だが、崩すことができなかった・・・。理想と現実の狭間にそびえたつ、人の心にある壁を・・・。」

 クライス「崩す必要なんてないんですよ。心の壁には、窓も扉も付いているんですから。私は、壁の外にはより良い世界が広がっていることに気付いてもらえるよう、窓の曇りをぬぐい続けていくつもりです。より良い世界があることに気付いてもらえさえすれば、きっと誰もが扉を開けて、自ら出てきてくれるでしょうから。」

 ローディエル「扉を開けるのは本人の手で・・・か。ならば見せてみよ。愚かなる群衆あいてに、その思いが届くかどうかをな!」

 そいう言うとローディエルは、どこかへと去ってゆきました。
 その時、猛烈な地震が起きました。いえ、地震ではなく、洞窟が崩れようとしているのです。リンドブルムやローディエルとの激戦に、洞窟が耐えられなかったようです。

 リュード「くっ、この状態でテレポートは・・・」

 しかし自分の足で帰るのは不可能に思えました。

 リュード「やむを得ん! クライス、やるぞ! 2人ずつなら負担は少ない!」

 クライス「私がやります! 集団テレポートに慣れている、私一人のほうが確実です! リュードはみんなを守ってください!」

 そしてクライスはフェイデルを抜きながら、ローディエルが使っていたドラゴンオーブに向かいます。

 クライス「フェイデル、あなたたちの力を貸してください! テレポート!」 


≪英雄の帰還≫

 無茶がたたり、クライスは意識を失いました。そして目を覚ました時、そこは自分の部屋のベッドの上でした。ふと横を見ると、ファルナが泣きはらした顔でこちらを見ていました。

 ファルナ「クライス・・・良かった・・・。もう目を覚まさないんじゃないと・・・。いつも無茶ばかりして、心配ばかりさせて・・・少しは人の気持も考えてよ!」

 ファルナ「・・・あ、ごめんなさい。おかげでみんな無事だから。色あせていたフェイデルにも、輝きが戻ってきたしね。それにね、いい話があるのよ。クライスたちの夢、かなうかもしれないよ。」

 クライス「私たちの、夢?」

 ファルナ「そうよ。ほら、今回の事件での自警団の活躍で、村同士のつながりができたでしょう? そこでシリュンとエレナさんがね、今度の月見祭からは、全ての村が合同で行うっていう話をまとめたのよ。」

 クライス「・・・みんなまだ、心にしこりが残っているでしょうね。」

 ファルナ「そう思うんだったら、最後まで責任を持ちなさいよ。だって・・・全てはクライスたちの夢から始まったことなんだから・・・。」

 扉がノックされ、リュードが入ってきました。

 リュード「やっと目を覚ましたか、英雄殿。」

 クライス「英雄? 私が?」

 リュード「そういうことになっているぞ。今この村にレイバート達が来ているんだがな・・・。あの人が何をしているか、想像できるだろう?」

 クライス「まったく、あの人は・・・。」

 リュード「まあ、そう言うな。おかげでお前たちの評価は変わったし、お前は今や、独身女性のあこがれの的だ。」

 ファルナ「良かったわね、好きな女性を選べるなんて。クライスにもやっと春が来るのかな?」

 クライス「・・・・・・。ところで、シリュンは?」

 ファルナ「明日の主役だから、なにかと忙しいみたいね。月見祭で、エレナさんと踊るのよ。合同月見祭での記念の1組目になるからって、とても張り切っていたわ。それに、7年も待たされたんだもんね・・・。」 


≪月見祭≫

 司会「お待たせいたしました。いよいよ、本日の主役のご登場です! お二人が婚約したのは7年前、あの惨劇があった月のことでした。月の女神の祝福を受けることなく引き裂かれたお二人でしたが、それでもお互いを信じ続け、ついにこの時を迎えることができたのです。信じる心から生まれた奇跡・・・。この島の未来を象徴するお二人に、今一度、盛大な拍手をお願いいたします!」

 大勢の拍手に迎えられながら、シリュンとエレナが会場の中央に現れます。しかし会場の隅では、その様子を悲しげな表情で見ている女性がいました。ファルナはその女性に声をかけます。

 ファルナ「姉さん・・・シリュンのことが・・・。」

 エディ「・・・いいのよ。分かってたことなんだから。アタシ、落ち込んだりしてないのよ。男なんていくらでもいるんだから。アタシだって結構もてるんだから・・・。アタシにね、プロポーズしてくれた人もいるんだ。とっても素敵な人で、アタシも大好きだったけど・・・シリュンを忘れられなかった・・・。でも、やっと、気持ちの整理がついた・・・。」

 ファルナ「・・・・・・。」

 エディ「アタシ、結婚するんだよ。喜んでくれないの?」

 ファルナ「う、うん・・・。おめでとう、姉さん。それで、相手は誰なの? 魔術師ギルドの方?」

 エディ「冒険者の人でね、旅先からでも時間を見つけては、テレポートで会いに来てくれてたんだ。」

 ファルナ「テレポートって・・・それってクライスじゃあ・・・。」

 エディ「アタシだって、あんたの気持ちくらい知ってるよ。もっと信用してよ。」

 ファルナ「でもあの魔法が使える人なんて、世界中を捜したって他には・・・あっ!」

 エディ「そういえば、クライスを見ないね。ファルナと一緒だとばかり思ってたんだけど。」

 ファルナ「わたしも朝から会ってない・・・。家には行ったんだけど、家の前に女の子が集まっていて入りにくかったから・・・。それに、シリュン達と打ち合わせがあるって言っていたし・・・。」

 エディ「でも、ここには来てないね。クライスのことだから、女の子の誘いを断れなかったのかもしれないよ。いいの、それで?」

 ファルナ「仕方がないよ! クライスは・・・この島の英雄だもの・・・。姉さんからの手紙で知ってから、ずっと憧れていた・・・。出会ってから、追い続けてきた・・・。私が一番近くにいるって思っていたけど・・・でも・・・手の届かないところに行ってしまった・・・。」

 エディ「考えすぎだと思うけどな。」

 2人のもとにリュードがやってきます。

 リュード「ん? ファルナ、クライスと一緒じゃなかったのか?」

 ファルナ「・・・もう・・・いいの・・・。」

 リュード「?」

 司会の声「皆様、今一度拍手を! さあ、このお二人に続く方はいませんか?」

 エディ「リュード、踊ってあげるよ!」

 リュード「そうか!」

 2人はステージに向かいます。

 ファルナ「おめでとう、姉さん、リュード・・・。私にも、もっと勇気があれば・・・。」

 そして2人の踊りが終わって一段落すると、司会者がファルナのところにやってきました。

 司会「おや? ファルナさん、お一人ですか? クライスさんが捜していましたが。」

 ファルナ「本当ですか!? それで、今はどこに?」

 司会「案内してあげますよ。用事も終わったことですしね。」

 通りすがりのレイバート「おや? ファルナさんが若い男と・・・。これはクライス殿に知らせなくては! ・・・しかし、クライス殿は一体どこに?」

 シリュン「あいつなら、何もかも知ってるよ。こんな賑やかな場所よりも、あいつらにふさわしい場所があるんだよ。だから2人だけにしといてやれよ。」

 レイバート「どいういうことですかな?」

 シリュン「あいつらの夢をかなえさせてやれってことさ。・・・オレは思うんだよ。英雄だの聖戦士だのって言われているあいつらだけど、やっぱりオレたちと同じ、ごく普通の人間なんだって・・・。幸せな人たちに囲まれて、ただ幸せに暮らしたいだけなんだって・・・。そんなあいつらの夢だけど、実現してほしいと思うから、一緒に夢を追い続けていきたいから・・・せめて今夜くらいは、2人きりにさせてやりたいんだ。」


≪2人だけの月見祭≫

 司会者とファルナは、森の中へ歩いていきます。どんどん歩いていき・・・ファルナは疑問を口にしました。

 ファルナ「あの・・・どこまで行くんですか? クライスは・・・。」

 司会者「ここにいますよ。」

 司会者はかつらをとり、眼鏡をはずし、口髭をとり、そして上着を脱ぐと・・・そこにはいつものクライスが立っていました。

 クライス「満月の夜は幻術が使えないので、シリュンに頼んで変装させてもらったんです。こうでもしないと、2人きりになれそうにありませんでしたので。・・・一緒に来てもらいたいところがあるんです。かまいませんか?」

 ファルナ「・・・うん。」

 二人は暗い森の中を歩いていき、やがて開けた場所に到着します。頭上には美しい満月が輝いています。

 ファルナ「ここは・・・。」

 クライス「この森で、唯一月が見える場所です。そして私たちの村が、これまで月見祭で使っていた場所でもあります。今日のために準備をしていたのでしょうが、島の人全員は入れませんからね。・・・もう、ここが使われることはないでしょう。やがて森と一つになり、人々の記憶から忘れ去られていく・・・でも、その前に。ファルナ・・・ここで、私と踊ってください。」

 ファルナ「・・・はい!」

 そして二人は月の女神に踊りを捧げ、その影はやがて一つとなるのでした。



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