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≪別れ≫

 人間の世界のみならず、天使界や神の国をも脅かすガナン帝国。その存在を放っておくわけにはいかない。
 私は冒険仲間とともに帝国に降り立ち、皇帝を倒すことにした。ちなみに作戦は正面突破。無謀と思われるかもしれないが、リーダー兼参謀役が私なのだから、こうなるのは当然の成り行きだ。

 城の入口で変なやつ・・・もといゲルニック将軍をあっさり倒し、その後しばらく道に迷った挙句、いったん引き返す。その後何度か探索して道を覚え、ようやく最後の将軍ギュメイと対峙する。
 が、このギュメイ将軍が強い。というか、私たちのパーティとの相性が最悪だ。攻撃力が貧弱な私たちにとって、まともなダメージを与えられるのは戦士リカードのみ。しかしリカードは俊敏さに欠けるため、攻撃する前にギュメイ将軍の攻撃ですっ転ばされてしまうのだ。何度も何度もリカードが転ばされたためかなりの長期戦になったが、幸運なことにギュメイ将軍の魔人斬り(当たれば即死ダメージ)がすべてミスになったこともあり、なんとか倒すことができた。
 しかし、もうボロボロだ。皇帝はすぐそこにいるはずだが、いったん引き返そう。

 そして再挑戦。皇帝の前にやってきた私たちだが、そこには先客がいた。天使の果実を持ったイザヤール師匠だ。天使の果実はすでに神の国へ捧げているから、あれは師匠が作り出した偽物だろう。
 師匠の謎の行動。それは皇帝を油断させて倒し、捕らわれているエルギオス大師匠を救い出すための策略だったのだ。皇帝と二人きりになれる状況を作り出すことが、師匠の狙いだったのだ。
 しかし、師匠の願いはかなわなかった。単純な戦闘力の差。それによって師匠は倒された。くっ、私たちがもう少し早く来ていれば・・・。
 だが、師匠の想いは弟子が継ぐ!
 皇帝ガナサダイ、覚悟!
 そしてあっさり撃破!

 あれ? なんて手ごたえがない・・・と思っていたのが甘かった。人間の姿を捨てて本気で襲いかかってきたガナサダイに大苦戦。全員がボロボロになる大激闘。気力と魔力が尽きようとしていた頃、具体的に言えばMPの残りがわずか12.5%という状態になって、ようやく皇帝を倒すことができた。

 イザヤール「強くなったな、ヨシヒト。・・・くっ。捕らわれた天使たちを救うためガナサダイに従うふりをしてきたが、力及ばずこのざまだ。だが私は、自分の行いが間違っていたとは思わない。思わないが・・・・・・ただ、お前を欺き傷つけてしまったことだけが心残りだった。だがお前は、私の想像などはるかに超えて強くなっていたのだな・・・・・・。ヨシヒト、お前になら・・・・・・。」

 そして師匠はその師匠、エルギオスを救ってくれと言い残し、この地で星となった。


≪堕ちた天使≫

 帝国の最深部で見た者。それは鎖に繋がれた天使・・・いや異形の姿だった。そして彼こそが、一連の事件の黒幕だった。

 エルギオス「・・・・・・罪。存在そのものが・・・・・・罪なのだ。」

 300年も捕らわれたままとなっていたエルギオス。その憎悪は天使の姿と心を失うのに十分なものだったのだろう。
 自分勝手な人間。そんな人間を守ろうとした女神セレシア。人間を滅ぼそうとしながら放置した創造神グランゼニス。彼らに対する憎悪によって、彼は堕天使となっていた。

 エルギオス「犯した罪は裁かれねば・・・・・・。誰もやらぬというのなら、この私が手を下そう。問おう、翼なき天使よ。お前は人間に守る価値があると思っているのか?」

 私は天使の姿を失ってから、長らく人間の世界で人間として生きてきた。だから分かる。人間は・・・・・・
 ・・・一回くらい滅びた方がいいのかも知れない。
 いやいやいや、確かにそんな考えがちらっとよぎったが、滅びたものは復活しない。それに人間には素晴らしい部分があることは確かだ。
 そもそも人間というのは動物なのだ。無知で純粋な心を持って生まれるがゆえに、どんな大人に育つのかは環境によって大きく左右されるのだ。どんな大人になろうと本人に責任はない・・・とはさすがに言えないが、本人だけの力ではどうにもならないことも確かなのだ。性善説やら性悪説などというものが人間の世界にはあるが、実際にはそのどちらでもないというのが私の考えだ。
 だから断言できる。人間はほかの動物と同様に、生きていく資格があるのだと。だから天使は、彼らを見守っていくべきであるのだと。存在そのものが罪だなんて、そんなことはあり得ない!

 エルギオス「ならばお前も我が敵・・・・・・。人も神もすべて、みな滅びるがいい!!」

 上級の天使に逆らえない下っ端天使である私は、コテンパンにされましたとさ。


≪天使として、人として≫

 闇竜バルボロスを召喚して神の国へと飛んで行ったエルギオス。その後にやってきたのは幽霊女性のラテーナだった。

 ラテーナ「エルギオスっ!! 今度こそ・・・・・・今度こそ会えると思ったのに・・・・・・。」

 そして彼女は語りだす。彼女とエルギオスを襲った300年前の出来事を。誤解が生んだ悲劇の物語を・・・。
 エルギオスの憎悪。それは300年も捕らわれていたことよりも、信頼していた彼女に裏切られたと誤解したことが大きな要因となっているのだろう。ならば誤解が解ければ?
 その誤解を解くために、そしてエルギオスの心を救うために、300年も人の世に縛られているラテーナ。彼女の苦しみは、エルギオスのそれをも上回るのかもしれない。

 人を守るのが天使の役目。そしてさまよえる魂を救うのも天使の役目。私は師匠からそう教わった。ラテーナの村の守護天使であるエルギオスが堕天使となっている以上、彼女を救えるのは私だけなのかもしれない。
 しかし私は下っ端天使。どんなに強くなっても、上級天使であるエルギオスとは戦えない。エルギオスと戦えるのはオムイ長老くらいだろうが、長老では勝ち目はない。

 悩みを抱えたまま天使界に戻った私は、女神セレシアに呼ばれて世界樹の下にやってきた。
 その時、奇跡は起きた。私がこれまで人間の世界を回り、多くの人を救ってきたことが、8つ目の天使の果実を実らせたのだ。
 人間が食べれば、ゆがんだ形で願いがかなう天使の果実。しかし天使にとっては奇跡の果実だ。私は迷わず口にした。願いは一つ。天使であることを捨て、つまり人間となって天使の理(ことわり)から外れること。エルギオスと戦うにはそれしかない。


≪星空の守り人≫

 神の城を魔城と化し、その支配者となったエルギオス。彼の下にたどり着くのは大変なことだったが、私たちはやり遂げた。闇竜バルボロスをも打ち倒し、私はエルギオスと再び向き合った。天使であることを捨てた二人が、最後の戦いを繰り広げる。
 そして・・・
 ・・・負けちゃった。

 えーい、再挑戦だ! エルギオスの戦闘パターンは把握したから、今度こそ勝って見せるぞ!
 そして今度は、エルギオスが膝をついた。

 その時、やっとラテーナが追い付いた。彼女が身につけている星空の首飾りが輝きだす。
 たしかあの首飾りは、天使が近くにいると輝くはず。するとエルギオスは、まだ天使であることを捨て切れていなかったのだろうか?

 エルギオス「・・・・・・ラテーナ・・・・・・。君は・・・私を裏切るはずなどなかったのだ。それに気づけなかった己の未熟さが恥ずかしい。・・・・・・ラテーナ。辛かっただろう。こんなにも長い年月を、愚かな私のためにさまよい・・・・・・。それなのに、あのころと変わらず、こんな私のために微笑みを返してくれるというのか・・・・・・。」

 天使としての役目を終えていたエルギオスと、人としての役目を終えたラテーナ。2人がこの世界にとどまることはないだろう。
 役目を終えた天使は星になるという。きっとイザヤール師匠は新たな星となって、星空の守り人としてこの世界を見守っていることだろう。
 だが天使であることを捨てたエルギオスや、人間であったラテーナはどうなのだろうか。星となって輝き続けることはできないのだろうか。もしかしたら恋仲であったのかもしれず、ガナン帝国の侵攻がなければ幸せな生涯を終えていたかもしれない2人の結末がこれでは、あまりにも悲しすぎるのではないか。

 その時、夜空を無数の流れ星が駆け巡った。きっとオムイ長老でさえも見たことがないであろう美しい星空。天空で永遠に輝き続けることはできなくても、それを見た人々の心の中で永遠に輝き続けるであろう流れ星。
 あの流れ星は・・・エルギオスとラテーナ・・・か?
 それは星となることが許されなかった2人に対する、どこかにいるのであろう神の慈悲であったのかもしれない。


≪夜明け前の月明かり≫

 天使とは、女神セレシアを復活させるために生み出された存在だった。つまり天使はすべて、その役割を終えていたのだ。天使界に戻った私はそのことに気づかされた。顔見知りの天使たちが、次々と星になっていく。
 だが私はどうなのだ。天使であることを捨てた私は、星にはなれないのだろうか。

 セレシア「ヨシヒト。あなたは人間として、人間たちの世界の守り人になってください・・・。」

 星空の守り人ではなく、人間たちの守り人・・・か。それも悪くないかもしれない。
 人間たちは愚かだ。だがそれでも素晴らしい。彼らを見守っていくのは、やりがいのある仕事だろう。

 人間の社会を一日に例えるならば、今は夜明け前といったところだろうか。
 朝が来ることを信じて頑張っているが、そのためにどうすればよいのか分からず、闇の中でもがき苦しんでいる人間たち。そんな人がいる一方で、闇に身を隠して悪事を働く人間たち。
 私には、太陽になることは無理だろうか。朝をもたらし闇を振りはらい、人間社会を明るく照らす、そんな太陽にはなれないのだろうか。
 ・・・いや、太陽になんてなれなくていい。一介の人間にすぎない私が太陽となることを望むのは、傲慢としか言いようがないのだから。そもそも私に、そんな力があるとは思えないのだから。
 それでも私は思うのだ。太陽にはなれずとも、せめて月になることを望むくらいは許されていいのではないだろうかと。闇の中で迷い続ける人々の足元を照らし、彼らが転ばずに歩いていけるように手助けすることくらいはできるのではないだろうかと。
 私は夜明け前の月明かりとして、人とともに生きていきたい。それが人間である私の、一番の願いなのだ。



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