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とあるバーで、一人の青年がグラスの水を見つめながら、宇宙空間を何万光年もかけてやってきた微粒子によって、チェレンコフ光という青い光りが見えるかもしれないという話を.するシーンがあります。その話しは、物理や化学が苦手の私にさえ、興味をそそられる化学的神秘に満ちていました。
グラスの中の水がその青い光りとどうシンクロするのか・・
チェレンコフ光とは、一体なんなのか?
その未知の響きを持つ青い光りの話しに辿りつくには、この光りをもたらすもう一つの主役であるニュートリノの話しをしなくてはなりません。
ニュートリノは、超新星の爆発の時に飛び散る、宇宙の至るところに存在する、とっても小さな素粒子の一種です。
超新星とは、太陽の約20倍の質量を持った星が、その一生を終えるときに起こす大きな爆発で、太陽が45億年間に放出したエネルギーの合計の1,000倍ものエネルギーがあり(と言われてもピンときませんが)その殆どを、たった10秒位の間に宇宙空間にニュートリノとして放出すると考えられています。
透明人間の様に、何とすれ違ってもぶつかっても何一つ作用せず、痕跡も残さないのでその姿を捕らえるのは、とても困難だったので、幻の粒子とも言われ、、長い事大きな謎とされてました。
そうしてニュートリノは、大気の中をすいすいとり抜け 、私達の住む地球に粉雪のように数限りなく降り注ぎます。
それも宇宙空間を何万光年という気の遠くなる時間をかけて地球に辿りつくのです。辿り着くと言うより、地球に留まる事なく突き抜けて行きます。
という事は、私たちの身体の中を、それだけのニュートリノが通りぬけているという事になります。
それがどれ位の数かというと、1秒間に何兆個ものニュートリノが通過しているということで、それは宇宙という概念と同じ様に,無限に等しい数字に思えます。なんだか人の体が神秘的な気さえしてきますね。
バーで見つめていたグラスの中の水の中も通りぬけていきます。
だとすると、通りぬけてしまう筈のニュートリノが何故青い光を発するのでしょう?ここでやっとチェレンコフ光の話しに辿りつきます
水中には電子がたくさんあるという事を化学の授業で教わったのは中学生でした。
光は,水などの異なる物質を通過するとき,屈折して進みます。
だから、水の中では光りの速度が落ちます。けれどもニュートリノは水中でも速度は落ちないので、光よりも早く進みます。
無数のニュートリノが水などの透明な物質の中を光よりも早く突き抜ける時、その衝撃で、ごくまれに水の電子と衝突し、気の遠くなるような時間と低い確立で生まれた青白い光それが「チェレンコフ光」です。
この現象が普通に起きていたら、地球は青い光りで溢れてる事になるのでしょうか?
ありえない事だけれど、ふとそんな情景が目に浮かびました。
「スティルライフ」〜BARでの一節 |
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