第4話 ワンコの上手なシツケ方 〜乾のデータテニスが敗れる時〜


   鳳長太郎が、ベッドの中でまどろんでいる宍戸亮へ腕を伸ばし、また抱き締めようとする。

   しかし、宍戸は先ほどまでの行為で汗ばんだ鳳の身体を、逆に押しのけようとした。

   「お前は、まだする気なのか!? 」

   「え? だってまだ二度しか愛し合ってませんよ? ほら、宍戸さん。俺はこんなに元気です!」

   ニッコリと笑って、自分の元気いっぱいな分身を、宍戸の手に握らせようとする。

   宍戸は思いっきり不快な表情で、鳳を睨みつけた。

   「良い加減にしろ! お前は、盛りのついたオス犬なのか? 」

   「そ、そんな、ひどいです〜宍戸さん! 」

   泣きそうな声を出す鳳に、宍戸は思いっきり困った表情になって、こんな事を言った。

   「お前は確かに元気かもしれないけどな。俺はものすごく疲れるんだよ。

    もうすぐ大事な青学との試合もあるしな。本当はこんな事をしている場合じゃ無いんだぞ!」

   真顔な宍戸に、鳳はやりすぎたな〜と反省していた。

   レギュラー発表で自分と宍戸のダブルスでの出場が決定した。

   その後、忍足&向日ペアと試合をし、それにも勝つ事ができた。

   今日は、二人で対青学戦の作戦を相談するために、部活帰りに宍戸の部屋へ寄ったのだった。

   しかし、鳳は宍戸と二人きりになると、つい嬉しくて、抱き締めてしまうのだ。

   おまけに、それ以上の事も必ずやりたくなってしまう。

   それが、宍戸には負担になっている事に気がつかなかった。

   あまりに幸せで、つい夢中になってしまうのだ。

   「すみません。宍戸さん。俺、宍戸さんの身体の事まで考えて無くて。

    宍戸さんと一緒にいると、どうしても堪らなくなってしまうんです 」

   涙まじりの鼻声でそんな事を言う鳳に、宍戸も切なくなってしまった。

   宍戸も鳳が嫌いなわけではない。

   夢中になってしまうのは、宍戸も同じだった。

   宍戸は、無言でしばらく考え込んだ後、鳳にきっぱりと言った。

   「そうだな。なら、はっきりと決めてしまおう。

    青学との試合が終わるまではセックス禁止にしよう。わかったな! 」

   驚いて、目を見開いてしまう鳳だった。

   「し、宍戸さ〜ん。それ、かなり難しいです。

    俺、宍戸さんの姿を見るだけで、こう、ムラムラ〜ときますから」

   「なら、見るな! 」

   (そ、そんな〜。俺、身体が持たないかも…… )

   ガクリと気を落とす鳳だった。

   しかし、宍戸がそう決めたのなら、鳳が反対する事も、無理強いするなんて事も

   出来るわけがない。

   「わかりました。青学戦が終わるまで我慢します。試合、頑張りましょうね 」

   「ああ、必ず勝とうな 」

   二人で勝利を誓い合った。

   それから、さらに鳳は何か言いたそうに宍戸の顔を覗き見た。

   しかし、言いづらい事なのかモジモジとしながら言葉につまっている。

   「あの〜宍戸さん。セックス禁止はわかりましたけど…… 」

   「あ? なんだ? 」

   鳳は毛布の上から、自分の下半身を指し示した。

   「今、立っているコレはどうしましょうか? 

   セックスは駄目でも、手か、口でしてもらえると嬉しいのですけど? 」

   申し訳なさそうに笑う鳳のおデコに、宍戸の拳が炸裂した。

   鳳は涙を流しつつ、一人でテッシュボックスを片手に、せっせと処理に励むのだった。


                                    


    「一球入魂! 」

   青学戦。

   乾&海堂ペアに対し、高速サーブを見事に決める鳳だった。

   しかし、その球にどれほどの思いが込められているのかを知る者はいない。

   (終わったらセックス、終わったらセックス、終わったら…… )


   データテニスを誇るあの乾にすら、そんな鳳の邪なオツムの中身まで

   推測する事は不可能だった。



                                      <第4話 了>



                     
第5話へ行ってみる→GO!


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