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   <第3話>プリンス様はレベル1



   ゾロは正直に言って、かなり困惑していた。

   城に入って、1万段もある階段を駆け上がり、最上階のこの部屋に

   辿り着いたのは良いが、室内の壁に書かれている文字には面食らった。

   確かにベッドには、《 金髪の王子様 》らしい男が眠っている。

   自分と、同じ年くらいだろう。

   立派な男性であり、顎の先には、ほわほわと産毛のような髭まである。

   (こんな野郎と接吻するのかよ? )

   今まで、ゾロが世界中を探索して、様々な困難にぶち当たってきたが、

   かつて、これほど悩ませる難問は無かったかもしれない。

   ゾロが部屋に入った途端、石で出来た扉は開かなくなってしまった。

   しばらく扉を押したり、引いたり、と頑張ってみたが、重い扉はびくともしない。 

   さらに、この部屋には明り取りの窓すら、一つも無いのだ。

   他に脱出経路があるとは、到底、思えなかった。

   部屋の中央に、ただ天蓋のついたベッドがあるだけで、その周囲がランプに

   照らされて、ぼんやりと光輝いていた。

   (やっぱり書いてある通りに、コイツに接吻しなきゃならね〜のかよ? )

   度胸の据わっているゾロも、さすがにこれには、躊躇していた。

   しかし他に方法も無く、しばらく悩んだ末、指示通りに事を起こしてみた。

   金髪王子の顎を掴んで仰向けにすると、ムニャムニャと寝言を言っている唇に、

   恐る恐る接吻をする。

   ゾロの目には、王子の奇妙な具合に巻いた眉毛が映っていた。

   (なんだ〜この眉毛は?? )

   ゾロが不可解に思って気を抜いていると、突然、その男が抱きついてきたのだ。

   驚いてそのまま固まっていると、今度はゾロの口の中へ王子の舌が進入してきた。

   (うわ〜なんだよ?! )

   (やめろよ! てめぇ! 舌を入れてくるんじゃね〜よ! 

    薄気味の悪い野郎だぜっ! )

   ゾロが引き剥がそうとした途端、舌先にチロリと男の柔らかい舌が当たってきた。

   その途端、ゾロの背筋から腰骨の辺りへ、ゾクゾクとした感覚が走っていった。

   さらに男の舌が、ゾロの舌へと激しく絡まり始めると、その感覚はダイレクトに

   腰のさらに下へと到達したのだった。

   見る間に、ゾロは股間が熱くなるのが自覚できた。

   (何だ?? こりゃ? )

   自分の腕を差し入れて、股間に触れてみると、明らかにゾロの局部は

   立ち上がっていた。それも、かなりの勢いでズボンの布地を押し上げ、

   脈を打つように拍動しているのもわかった。

   金髪の変な男と接吻しながら、自分はものすごく興奮しているらしい。

   そう言えば、しばらく荒野を放浪するばかりで、女を抱いていない事に

   気がついたゾロだった。懐には、商売女を買うような余計な金なんぞ、

   全く持ち合わせていなかったからだった。

   (こいつぁ〜マズイな。)

   ゾロは、止めないとマズイと思っていたが、離れるどころか、

   自分から男の身体をベッドへと押さえ込み、その温かい口内へ深く舌を

   差し入れて、何度も愛撫を繰り返していた。

   相手の金髪男は、フウフウなんて苦しげに息を乱している。

   間近で良く見ると、相手は、かなり整った綺麗な顔をしている。

   その眉をひそめた切なげに歪んだ表情や、快楽で真っ赤に上気した頬が、

   妙に色っぽく見えたりする。

   (コ、コイツは、かなり力を持った魔物かもしれねぇな。

    魔法には、チャーム(魅了)なんて技もあるからな。

    俺は、気がつかね〜うちに、コイツにそういう魔法をかけられたのかもしれねぇ。)

   そうで無ければ、初対面の男相手に欲情する自分の心理が説明できなかった。

   (くっそぉ〜!! 魔物なんかに、俺が負けるかよッ!! 

    俺は、世界一の剣豪になる男だっ! )

   ゾロは、普段でも恐ろしいと良く言われる顔を、ますます厳しい凶暴面に変えて、

   王子とまるで格闘でもするように、ベッドの上で組み合い、口づけを交わしていた。

   ゾロが抱き締めている相手の身体は、男とは、思えないほど華奢だった。

   王子は、サラサラしたシルクのような寝巻きを着ているが、ゾロは、その中へ

   強引に腕を差し込んで、スベスベしている腹や背中をさすっていた。

   時々、尖った乳首らしいモノへ、手の平が触れる。

   ゾロは、その柔らかな感触に驚きながらも、芯の硬い突起物へもっと触れようと、

   奥へと手を潜りこませていた。

   そのうちに、腕の中で暴れ始めた王子が、ゾロの腹部へ足蹴りを入れてきたので、

   その強い衝撃で、やっとゾロはベッドから後退した。

   その蹴りは、実に見事で、ヒットしたゾロのわき腹は、

   骨の隋までビリビリと痺れてしまった。

   (コイツ?! 優男の癖に、かなりの格闘センスを持ってやがる。

    なるほど。確かに、この森の化け物どもの親玉に違いない。

    コイツが、どうやら、ボスキャラらしいな。)

   ゾロは、いつでも、男に攻撃をしかけられるように、

   1歩分の間合いを取って対峙した。

   きっと、この男を倒すと、特殊なアイテムが入手できたり、

   レベル上げのヒントがあるのに違い無かった。



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