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   ゾロが緊張状態の戦闘モードで立っていると、目の前の王子様は、

   二本目の煙草を懐から取り出して、気分良さそうにベッドの上で

   プカプカとふかしている。

   ゾロが、そんな相手を睨みつけて、すでに二十分は経っていた。

   さすがに、忍耐強いゾロも待ちくたびれてきた。

   「おい。てめぇは、この城のボスキャラじゃねぇのか? 

    戦闘イベントは起きないのかよッ? 

    それなら、それで良いから。

    お前……何か特殊なアイテムや、情報を持ってねぇ〜のか? 」

   「あんっ? 」

   金髪王子は、眉間に皺を寄せると不快そうに、こう言った。

   「何で俺様が……凶悪面のくそマリモに、

    物を恵んでやらねぇ〜といけないんだよッ! 」

   そして、長い間、待っていたゾロの方へ、鋭い視線を向けて、

   さらにこう付け足した。

   「あのなぁ。俺は、プリンスなんだぜっ? 

    高貴な生まれのスペシャルな存在なんだよ。わかってんのか? 

    しみったれたお前みたいな男は、《 王子様の下僕 》に

    決まっているじゃねぇ〜か?

    貢ぎ物をお前が持ってくるなら、まだしも。

    何で俺様がお前に物をやるんだよッ! 」

   ゾロは、一瞬、この王子を真っ二つに切り殺そうと、腰の鬼鉄に手をかけた。

   王子は、それを見て、飽きれたように溜め息を吐いた。

   それから、ベッドから跳ね起きると、自分の着ていたシルクの寝巻きを

   手早く脱ぐと、ベッドの脇に置いてあった黒いスーツに着替え始めた。

   「とにかくだ。俺は、ここから外に出るつもりだ。

    マリモも、外に出ないとヤバイんだろ? 

    光合成は、植物には、絶対に必要だからな。

    ここは、俺の言う通りにした方が良いと思うぜ。

   マリモ男の生きてきた世界のルールは、俺にはわからねぇ〜けどな。

   この城にかけられた魔法の解き方は……俺様がちゃんと知っている。

   お前は、これから、俺と一緒に旅をするんだよ。

   お互い不本意だけどな。

   お前がそれを了承しないと、いつまでも、その石の扉は開かねぇ〜んだぜ。」

   金髪王子は、素早く身支度を調えると、入り口の扉を指さしてそう言った。

   その石の扉は、今も硬く閉ざされたままだった。



   ゾロは、王子の申し出に対して考えながら、懐から、

   《 冒険者レベルカウンター 》を取り出した。

   今まで、ゾロは、誰かと一緒に長期間旅をした事が無かった。

   自分よりも、レベルの低い人物は、当然、足でまといになるからだった。

   修行が目的で、危険な旅をしているゾロにとって、それは、自分の命を

   縮める行為だったので、この王子のレベルがどの程度が調べるつもりだったのだ。

   卵のようにツルツルした頭頂部を押すと、カウンター装置が開いた。

   それを目の前の王子にかざしてみると、こう書いてあった。



  名前:サンジ

  性別:♂  

  年齢:19歳

  仕事:王子
   (現在、廃業中)

  特技:?

  得意技:?

  趣味:?

  嗜好品:?

 冒険者LV.1
 
次のレベルまでに必要な経験値
     ?ポイント




























   名前、性別、年齢……ゾロとは、同じ年らしい。

   しかし、その下にあるの表示には、全て、謎マークが記載されていた。

   力も、物理能力も、魔力も、特技も、必殺技も、全て不明とされている。


   そして、最もゾロを驚かせたのは、王子の現在のレベル値だった。

   《 冒険者レベル1 》



   「いちぃ〜?? 何だ、そりゃあ? 」

   それは、弱いなんてシロモノでは無かった。

   まず、成人男性では、そんな数値の人間は見た事が無かったからだ。

   基本的には、戦闘などをしなくても、加齢による人生経験と共に

   レベルは少しずつ上昇する。

   どんなに安穏と生きている人間でも、十九歳ならば、レベル10以上は

   あるはずなのだ。

   《 レべル1 》とは、・・・。

  《 生まれたての赤ん坊 》しか持っていない数値なのである。



   ゾロは、あまりの事にガクリと肩を落としていた。

   (俺は、赤ん坊と一緒に旅をするのか? )

   しかし、考えてみると、そういうレベル上げの試練なのかもしれない。

   (冷静に考えて……コイツと一緒に行く事で、

    俺に良い事があるとは到底思えねぇ。

   でもなあ、この城から脱出しねぇ〜と、修行もへったくれもねぇ〜からなぁ。)

   ゾロは、サンジと言う名だとわかった王子様を睨みつけると、

   このように返事をした。

   「まあ、こうなりゃ〜仕方ねぇな。お前と一緒に旅でも何でもしてやるよ。

   ただし、お前が旅先でのたれ死んだとしても、俺には関係の無い話だからな。

   せいぜい、足をひっぱらねぇようにしろよ。アホの国の王子様! 」

   そう叫んだゾロの腹部へ、黒い靴を履いた王子の足蹴りが跳んできた。

   なかなか切れ味の鋭いスピードに乗った蹴りだったが、

   腰の位置で、ゾロは刀の鞘で防いだ。

   (どう考えても、この蹴りの威力でレベル1は、ありえねぇ〜んだがなぁ。

    故障でもしてんのか? )

   ゾロが、不可解な表情でレベルカウンターをプルプルと振っていると、

   ガチリと扉の錠前が外れる音がした。

   「ふん。扉が開いたぜ。行くぞ、アホ下僕! 俺様の後について来いッ! 

    王子のシモベが、城内で迷子になるんじゃね〜ぞッ!! 」

   そう言って部屋を飛び出したサンジの後に続いて、ゾロも慌てて走り出した。

   「誰が下僕なんだよッ! 勝手に決めるな、このドアホ王子。」

   確かに、自分は、良く道端で迷子になるが、金髪男の下僕になった覚えは無い。

   そういう突っ込みだけは、ゾロは忘れなかった。



        第4話 プリンス様の秘密へ続きます。作成中

                               


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