2ページ目/全2ページ ゾロが緊張状態の戦闘モードで立っていると、目の前の王子様は、 二本目の煙草を懐から取り出して、気分良さそうにベッドの上で プカプカとふかしている。 ゾロが、そんな相手を睨みつけて、すでに二十分は経っていた。 さすがに、忍耐強いゾロも待ちくたびれてきた。 「おい。てめぇは、この城のボスキャラじゃねぇのか? 戦闘イベントは起きないのかよッ? それなら、それで良いから。 お前……何か特殊なアイテムや、情報を持ってねぇ〜のか? 」 「あんっ? 」 金髪王子は、眉間に皺を寄せると不快そうに、こう言った。 「何で俺様が……凶悪面のくそマリモに、 物を恵んでやらねぇ〜といけないんだよッ! 」 そして、長い間、待っていたゾロの方へ、鋭い視線を向けて、 さらにこう付け足した。 「あのなぁ。俺は、プリンスなんだぜっ? 高貴な生まれのスペシャルな存在なんだよ。わかってんのか? しみったれたお前みたいな男は、《 王子様の下僕 》に 決まっているじゃねぇ〜か? 貢ぎ物をお前が持ってくるなら、まだしも。 何で俺様がお前に物をやるんだよッ! 」 ゾロは、一瞬、この王子を真っ二つに切り殺そうと、腰の鬼鉄に手をかけた。 王子は、それを見て、飽きれたように溜め息を吐いた。 それから、ベッドから跳ね起きると、自分の着ていたシルクの寝巻きを 手早く脱ぐと、ベッドの脇に置いてあった黒いスーツに着替え始めた。 「とにかくだ。俺は、ここから外に出るつもりだ。 マリモも、外に出ないとヤバイんだろ? 光合成は、植物には、絶対に必要だからな。 ここは、俺の言う通りにした方が良いと思うぜ。 マリモ男の生きてきた世界のルールは、俺にはわからねぇ〜けどな。 この城にかけられた魔法の解き方は……俺様がちゃんと知っている。 お前は、これから、俺と一緒に旅をするんだよ。 お互い不本意だけどな。 お前がそれを了承しないと、いつまでも、その石の扉は開かねぇ〜んだぜ。」 金髪王子は、素早く身支度を調えると、入り口の扉を指さしてそう言った。 その石の扉は、今も硬く閉ざされたままだった。 ゾロは、王子の申し出に対して考えながら、懐から、 《 冒険者レベルカウンター 》を取り出した。 今まで、ゾロは、誰かと一緒に長期間旅をした事が無かった。 自分よりも、レベルの低い人物は、当然、足でまといになるからだった。 修行が目的で、危険な旅をしているゾロにとって、それは、自分の命を 縮める行為だったので、この王子のレベルがどの程度が調べるつもりだったのだ。 卵のようにツルツルした頭頂部を押すと、カウンター装置が開いた。 それを目の前の王子にかざしてみると、こう書いてあった。
名前、性別、年齢……ゾロとは、同じ年らしい。 しかし、その下にあるの表示には、全て、謎マークが記載されていた。 力も、物理能力も、魔力も、特技も、必殺技も、全て不明とされている。 そして、最もゾロを驚かせたのは、王子の現在のレベル値だった。 《 冒険者レベル1 》 「いちぃ〜?? 何だ、そりゃあ? 」 それは、弱いなんてシロモノでは無かった。 まず、成人男性では、そんな数値の人間は見た事が無かったからだ。 基本的には、戦闘などをしなくても、加齢による人生経験と共に レベルは少しずつ上昇する。 どんなに安穏と生きている人間でも、十九歳ならば、レベル10以上は あるはずなのだ。 《 レべル1 》とは、・・・。 《 生まれたての赤ん坊 》しか持っていない数値なのである。 ゾロは、あまりの事にガクリと肩を落としていた。 (俺は、赤ん坊と一緒に旅をするのか? ) しかし、考えてみると、そういうレベル上げの試練なのかもしれない。 (冷静に考えて……コイツと一緒に行く事で、 俺に良い事があるとは到底思えねぇ。 でもなあ、この城から脱出しねぇ〜と、修行もへったくれもねぇ〜からなぁ。) ゾロは、サンジと言う名だとわかった王子様を睨みつけると、 このように返事をした。 「まあ、こうなりゃ〜仕方ねぇな。お前と一緒に旅でも何でもしてやるよ。 ただし、お前が旅先でのたれ死んだとしても、俺には関係の無い話だからな。 せいぜい、足をひっぱらねぇようにしろよ。アホの国の王子様! 」 そう叫んだゾロの腹部へ、黒い靴を履いた王子の足蹴りが跳んできた。 なかなか切れ味の鋭いスピードに乗った蹴りだったが、 腰の位置で、ゾロは刀の鞘で防いだ。 (どう考えても、この蹴りの威力でレベル1は、ありえねぇ〜んだがなぁ。 故障でもしてんのか? ) ゾロが、不可解な表情でレベルカウンターをプルプルと振っていると、 ガチリと扉の錠前が外れる音がした。 「ふん。扉が開いたぜ。行くぞ、アホ下僕! 俺様の後について来いッ! 王子のシモベが、城内で迷子になるんじゃね〜ぞッ!! 」 そう言って部屋を飛び出したサンジの後に続いて、ゾロも慌てて走り出した。 「誰が下僕なんだよッ! 勝手に決めるな、このドアホ王子。」 確かに、自分は、良く道端で迷子になるが、金髪男の下僕になった覚えは無い。 そういう突っ込みだけは、ゾロは忘れなかった。 第4話 プリンス様の秘密へ続きます。作成中 ![]() ワンピース小説目次へ戻る |