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   <第1話>冒険者レベル99の男



   《 三刀流のロロノア・ゾロ 》は、諸国を巡りながら賞金稼ぎをしている。

   世界のシステムにのっとり、きちんとギルド(賞金稼ぎの組合)にも登録していた

   (正確には、同業者のジョニーとヨサクが面倒な手続きを全てやってくれた)。

   ギルドに登録しないと、タダの人殺しになってしまうので仕方無い。

   その時、窓口で《 ギルドメイツ 》なんて旅の心得の書かれた小冊子と、

   都心部にあるギルドの営業所が記載された世界地図と、それから、白い楕円形の

   変な機械を渡された。

   その卵型の機械は、賞金稼ぎの必需品。

   《 冒険者レベルカウンター 》と呼ばれていた。


   《 ギルドメイツ 》は、入手してから、十日程度で紛失した。

   たぶん寒中水泳をしていた時に、氷河にでも置き忘れたのだろう。

   しかし、腹巻の中に入れていた《 レベルカウンター 》は今も手元にある。

   これがまた、実に可笑しな代物だった。

   卵のてっぺんを押すと、花ビラのように上部が開き、中には数字がいくつか

   書いてある。それを見ると、まずゾロの名前が書かれてあり、その下には、

   《 冒険者レベル.99 》とある。

   敵と戦って勝利すると、少しずつ数字があがってゆくのだった。



  名前:ロロノア・ゾロ

  
性別:♂  

  年齢:19歳

  
仕事:賞金稼ぎ(経歴6年)

  特技:三刀流剣術

  
得意技:鬼切り

  趣味:昼寝(昼夜問わず)

  嗜好品:酒
   (飲めれば、何でもOK)

 
冒険者LV.99
 次のレベルまでに必要な経験値
     63562ポイント

 


























   その他にも、物理攻撃力、物理防御力、魔力、運、回避能力、すばやさ、などの

   多くの項目が記載されている。

   面白いのは、古城や地下道や森で迷子になると、やたら数字が上昇する事だった。

   (そういう場所には強ぇ〜敵がいるからな。)

   (早く腕を上げるには、一番良い場所だ。)

   旅を始めた十三歳の頃、ゾロの能力はレベル15程度だった。

   普通なら、レベル90まで能力を上げるには、数十年は月日がかかる。

   下手をすれば、その前に寿命が尽きる冒険者が大半だった。

   ゾロのように十代で、上級者ランクに到達する者は大変まれである。

   なぜかゾロは、恐ろしいほど強敵と遭遇する割合が高いのだ。

   早い話、ゾロの方向音痴が功を奏したと思われる。

   不幸なのか、幸運なのか、良くわからない男である。

   ただ、ここ最近になって、レベルが99から、いっこうに上昇しない。

   いくら戦闘をしても、経験値が上がらないのだ。

  (このままじゃ、いつまでもあの男には勝てねぇ。)

  (世界一ってのは、どのくらいのレベルのモノなんだ? )

   ゾロは焦りを感じる事があった。

   あまりに世界は遠いのだ。

   ゾロは、大陸の東にある生まれ故郷を出た時から

   ずっと 《 鷹の目の男 》を探している。

   倒さなければならない世界一の剣豪である。

   そしてゾロの父親でもあった。

   その昔、ゾロは十一歳の時に、ミホークとの親子喧嘩に負け、

   ばっさりと袈裟懸けに切られてしまった。

   全治二年の大怪我だった。今も胸にはその時の傷が残っている。

   (あのアホ親父、見つけ次第ぶった切る!! )

   ゾロはその怒りを全て修行への熱意へと変えていた。

   今日もまた、父の行方を探して旅を続けている。

   まさに父を尋ねて三千里(?)である。


                        ★



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