1ページ目/全3ページ 幼馴染み〜はないちもんめ記念日〜 ゾロ(八歳)は、近所に住むサンジ(八歳)と午後に市営プールへ行く約束をしていた。 約束をした……と言うよりも、約束をさせられた……と言った方が正しい。 ゾロの剣道の練習が今日は午前中に終わると聞いたサンジが、勝手にゾロの家から水着や、 タオルを持ってきて、剣道場へ迎えに来てしまったからだった。 サンジの強引さは出会った五歳の頃から変わっていない。 バラティエというレストランが誕生した日に、サンジもゾロのいる街へやってきた。 サンジの祖父であるぜフが、店のオーナーだったからだ。 サンジは、その身勝手で横暴な性格のせいで、三年たった今でも友達がいない。 ゾロも剣道ばかりしているので、ろくにクラスメートと友達づきあいをしていない。 だから、サンジがゾロを誘う理由は、彼ならいつも予定が空いているのを知っているせいだった。 そんなわけで、いつもサンジの都合で引きづりまわされるゾロは、良い迷惑だった。 しかし、ゾロは一度した約束を破る事の出来ない性分だったので、いつもサンジに 付き合ってしまう事になるのだ。 そんなわけで、夏の日差しが降り注ぐ暑苦しい午後に、二人連れ立ってプールへ向かっていた。 二人が近道の公園をつっきっていると、クラスメートの女の子たちに出会った。 クラス委員長でリーダー格のナミと、その親友でお嬢様のビビ、そして2〜3人の少女が 遊んでいる様子だった。ナミとビビの姿を見かけたサンジは、すかさず声をかけた。 「ナミしゃ〜ん、ビビちゅわ〜ん、何してるの? 」 サンジは、女を見ると必ず声をかけずにはいられない。 ゾロは一種の病気だと思っていた。 「あら、サンジ君、ゾロ。私達、遊んでいるんじゃなくて、宿題をやっているの。 《 伝統の遊び 》を調べているところなの。 本で探してみたり、地区による違いを 調査したりしているのよ。」 「あ〜なるほど、社会科の課題ね。」 ゾロもサンジもやっと思い出したが、確かにそんな宿題があったような気がする。 二人ともすっかり忘れていた。 ゾロは剣道の練習で忙しかったし、サンジも店の手伝いをしていたからだった。 「今は 《 はないちもんめ 》 を検証中なんです。」 ビビが丁寧な口調で説明してくれた。 ナミは、二人の男の顔を眺めると、こんな事を言い出した。 「ねえ、二人で手伝ってくれない? どうせ、宿題なんてやって無いんでしょ? 手伝ってくれたら、研究の協力者として名前を載せてあげるわよ。 宿題も終わるし、良いと思わない? 私達も人数が少なくて困る状況だったのよね。 これから、実際に遊びを体験するつもりなんだけど。協力していかない? サンジ君。 」 ナミはゾロではなく、サンジに聞いてきた。こういうところがナミのしっかりしたところだった。 ゾロは人に利用されるのが大嫌いだからだ。 この炎天下でやるのか、とゾロが文句を言う前に、サンジが即答してしまった。 「え? ナミさんと一緒に? もちろん、やります! 嫌だな〜当たり前じゃ無いですかぁ。な、ゾロ! 」 いつもの事だったので、ゾロは苦虫をかみ殺したような顔をしただけだった。 プールに行こうと強引に誘ったのは、サンジだと言うのに、このザマだった。 結局、ナミとサンジの強引さに負けて、ゾロも真夏の炎天下での 《 はないちもんめ 》 に 混ざる事になってしまった。 ![]() ![]() 小説目次ページへ戻る 2ページ目へ進む |