その3 誕生日の思い出 「楽園へ行きましょう!」 第2話 断続的に繰り返されている身体への刺激に、宍戸はもはや絶えられずに意識を 手放しそうになっていた。 浜辺から少し離れた木々の間で、宍戸は頭を雑草の間に押さえ込まれ、尻を高く 突き出した後背位で鳳に攻められていた。 全裸である宍戸の両手は、後ろに回され、ズボンのベルトで拘束されている。 鳳は、宍戸の腰を両手で掴み、叩きつけるように激しく交わっていた。 「頼む……長太郎。腕を……放して……。」 宍戸の腕は、感覚が鈍くなっている。ベルトで強く絞められているせいだ。 「……駄目です。そんな事をしたら。また、宍戸さんは、逃げるつもりでしょう? 」 確かに、一時間ほど前、白い浜辺で、宍戸は鳳に組み敷かれ、彼を突き飛ばして 逃げようとした。 鳳との性行為は普段から激しいのだが、今日は、いつもと違って、 恋人が怖くて堪らなかったからだ。 自分を抱く時は、優しい笑顔を絶やさない彼が、まるで別人のような形相をしている。 こんな恐ろしい顔の男は知らない。 宍戸は、ほんの数歩走っただけで、追いかけてきた鳳に砂地に引き倒された。 そのまま白い砂に塗れた衣服を無理やり引き剥がされた。ボロ布のようになった 衣服の切れ端が、波にさらわれて次々と浜から消えてゆく。 「宍戸さん。身体が真っ白に汚れましたねぇ。ははっ、キスしたら、俺の口の中まで 砂まみれだ。」 宍戸の頬を嘗めていた鳳は、顔をしかめて唾を吐き捨てると、宍戸を抱きあげて ザブザブと海の中へ入って行った。海水で砂を洗い落とすのだと言う。 「長太郎! 待ってくれっ! 」 今だに衣服を身につけたままの鳳は、ズブ濡れになり、胸の辺りまで海に浸かっていた。 そんな鳳にしがみつきながら、宍戸は大声を張り上げた。 砂浜で転んで打ちつけた膝に、塩水がピリピリと染みている。鳳を突き放したいが、 宍戸は、足がつかないのだ。プールでは上手に泳げたが、波のある海の中では 自信が無い。 鳳は、宍戸の苦痛の言葉を無視すると、彼の身体を抱き上げて自分の膝で陰部を 刺激してきた。 「うわっ! 長太郎ッ! 」 敏感な場所を、鳳が膝でリズミカルに押すたびに、宍戸の身体は、まるで電気に 打たれたようにビクビクと跳ねている。 「宍戸さん。もう、貴方のモノは立っていますよ。 この体勢……懐かしく無いですか? 一ヶ月前、俺の家でも同じ事がありましたよね? まだ、何もされていないのに、 ペニスを大きくして……もの欲しそうな目で俺を見ていましたよね? こんなに敏感で嫌らしい身体をしているのに。俺と別れて、一体、どうするんですか? 俺の代わりの男でも捕まえるつもりですか? 」 宍戸は、それを聞いて、辛そうに眉をひそめると、鳳の顔をみつめ返した。 「……お前。本気で、俺に……そんな言葉を言っているのか? 」 宍戸の目尻に涙が滲んだのを見て、鳳は顔を背けた。 そのまま鳳はズボンのフロントを緩めると、宍戸の下肢を両手で持ち上げるようにし、 開かれた恋人の秘所へ楔を差し入れた。ろくに慣らしていないので、粘膜が引きつれる ような抵抗があったが、鳳はかまわずに腰を激しく使った。 「ひいいいッ! 」 宍戸は、細い悲鳴をあげると、歯を食いしばって堪えていた。鳳が動くたびに、身体が ギシギシと軋み、全身の骨が砕けそうだ。 体のずっと奥地まで刺し貫こうとする鳳のペニスは、どこまでも貪欲に中を進んでいる。 「ああ、もう無理。駄目だ。そんな……。」 もう、それ以上は受け入れられない最奥を突かれている……そう宍戸は思った。 しかし、鳳は、彼の右下肢を肩に担ぐようにし、さらに腰を深く入れてきた。 「うわああああ〜! もう、裂けるッ! 」 宍戸の下腹部は、ギチギチに押し広げられていた。慣らしていない筋肉は硬い。 その部分を無理にこじ開けるようなセックスは辛いだけだった。 今まで、鳳に、こんな乱暴な扱いを受けた事は、一度も無かったように思った。 初めて身体を合わせた時も、痛みでうめいている宍戸の背をずっと優しく撫でてくれた 鳳だったのに、今は、苦痛であげる悲鳴すら聞いてくれない。 「もう、止めッ! 長太郎ッ! 」 頬に涙を溢れさせた宍戸にかまわず、鳳は、ひとしきり激しく腰を揺すると、熱い迸りを 爆発させた。宍戸の温かな粘膜の中で、川の流れのように液体は進み、尻から 溢れ出したモノが澄んだ海の水を白く濁らせた。 「はあ、はあ。まだ……ですよ。宍戸さん。貴方には、俺が必要な事を教えてあげます。 俺と離れたら死んでしまう……そのくらい気持ち良くしてあげます。俺を忘れないように、 身体中で感じさせてあげます。一生、誰にも身体を見せられないくらい印を付けてあげます。」 そう言って、鳳は、宍戸の肩に歯を何度も強く当てた。それから、赤い筋のような噛み跡が 入った箇所を念入りに舌で清めた。 痛みで泣き声をあげる宍戸の口唇へも、その熱い舌を這わせたのだった。 ★ 海で冷えた身体を温めるため、鳳は、宍戸を抱き上げて林の中へ入った。 海の中で、一時間もかけて宍戸をじっくりと抱いた。 前戯が無かったせいで、下腹部が痛むのか彼はずっと泣いていた。しかし、最後は 自分から下肢を絡ませて、腰を妖しく揺すり、海水の中で射精したのだ。 この淫蕩な身体は、自分のためだけのモノだと思いたい。 もし、自分以外の人間が、彼を抱く事があったら。 気が狂うのに違いない。 それほど、彼の事が好きだった。 どうして、宍戸は、そんな自分から離れたいと思うのだろうか? 愛し方が足りないのだろうか? どういう愛し方をしたら、宍戸は満足するのだろうか? 鳳は、意識の朦朧としている宍戸を草の上に寝かせると、濡れた自分の衣服を乱暴に 脱ぎ捨てた。その時に、手に握ったベルトで宍戸の両手を後ろ手に縛った。 きっと、意識が戻った彼は、同じように走って逃げようとするのに違いない。 鳳は、自分にまるで自信が持てなかった。 宍戸に本当に愛されているのか、時々、不安でたまらなくなるのだ。 宍戸に何かしてあげたい。でも、何をすれば良いのか、鳳には、まるでわからなかった。 彼が空腹なら高級レストランでの食事をエスコートしたし、自宅のテニスコートも彼の望む ようにナイター設備にしたし、彼の好きな海外メーカーのラケットを特注して試合の前に プレゼントした……でも、宍戸は喜んではいない。 それは、鳳にも良くわかっていた事だ。伊達に一年の時から、彼を好きだったわけでは無い。 宍戸は、金や物には、全く執着していない。 そんな事で、物事の価値を計る人では無い。 だから、毎日、彼に愛を囁いて、少しでも時間があったら彼とセックスをしたのだった。 抱いている時だけ、宍戸は、自分の方を見てくれている。 彼が、自分だけの物だと実感できる。 それが、独りよがりの錯覚でもだ。 (宍戸さんは、一人で生きていける人なんだ。) (自分がそばにいなくても、あの人は、一人で人生を渡ってゆく人だ。) 宍戸亮がいないと、一日足りとも、生きていけない自分とは違うのだ。 鳳は、そんな事を考えていたら、目頭が熱くなってきた。 目の前で倒れている宍戸を抱き上げると、そっと閉じている目元に口づけをした。 それから、彼の細い下肢を両手で押し開いて、その赤く腫れた蕾にも舌を這わせた。 先ほどの自分の行為で少し切れているのか、錆びた鉄のような味が口内に広がった。 無茶をした事に心が痛んだが、それでも、鳳は、宍戸の粘膜の感触を味わう事に 夢中になった。 彼の身体が、全て愛しい。 宍戸の体温や鼓動をすぐ近くで感じると、鳳は、幸せで堪らない気分になる。 鳳が、深くまで舌を差し入れて体内を愛撫していると、宍戸がゆっくりと瞼を開いた。 「……お前? お前は。まだ……足りないのか? これ以上、俺に何をしたいんだ? 俺の身体が欲しいなら、好きなだけ犯せば良い。勝手にしろッ! 」 冷たい視線を自分に投げて、そんな言葉を言う宍戸に、鳳は涙がこぼれそうになった。 必死でこらえてから、鳳は、宍戸にこんな言葉を返した。しょせんは強がりだったけれど。 「そうですか? 自由に犯して良いんですね? 宍戸さんに覚悟が出来ていて良かったです。 では、自分で尻を高く上げてください。これ以上、俺に面倒をかけさせないて下さいね。」 手を縛られた宍戸が、ノロノロと地面に這うと、鳳が右手で彼の尻を強く叩いた。 「もっと高く尻を上げてください。これじゃあ、いつまでたっても入りませんよ。」 鳳が、硬く立ち上がった砲身の先で、宍戸の尻の溝を擦りながら、 そんなキツイ言葉を吐いた。 宍戸は、雑草の中へ頭を擦るようにし、つま先立ちになって尻を掲げた。 鳳の視線の先には、蠢く宍戸の赤い粘膜が見えている。先ほどの海での性行為での 残滓が、白く内部に付着していた。 「ウグッ! うわあああ〜! 」 腰を鳳が進めると、何度も宍戸はうめき声を出していた。鳳は、狙いすませて、宍戸の 前立腺を何度も擦りあげた。 腰を深く丸めた姿勢は、前立線が内部へ特出しやすくなる。 わかっていて鳳は、この格好を宍戸にさせたのだ。 「さっきは、痛かったですよね? でも、今度は気持ち良過ぎてもっと泣きたくなると思いますよ。」 すでに、口唇から涎を垂らして土に染みを作っている宍戸へ、そんな残酷な事を言う鳳だった。 ゆったりと腰を動かして、宍戸を念入りに犯す。 明日も明後日も、ずっと宍戸を解放する気は、鳳には無かったのだ。 ★ まもなく夕暮れになる。 宍戸は、何度も襲ってくる快楽に泣き声を上げながら、心の片隅でそんな事を思っていた。 この時刻では、もう、今日は東京へは帰れないだろう。鳳も、自分を離す気は全く無い 様子だった。 (でも……早く帰らないと……。) 一日だけなら、うまく説明さえすれば、鳳の家族も自分の家族も、不信には思わない かもしれない。けれど、少しでも長引いたら、大変な事になってしまう恐れがある。 鳳が、どんな状態で家出をしてきたのかはわからないが、とにかく、彼を早く東京へ 帰してあげたかった。 無断で家を開ける事も、このままでは、学園を欠席してしまう事も、彼の将来に 良い事とはとても思えないからだ。 この島は、きっと無人島では無い。鳳が自分に嘘をついたのは、すぐに気がついた。 もし、本当に全て珊瑚礁ならば。土の地面があって、草木が生えるわけが無いからだ。 確かに小さな島だが、自分達が到着した船着場は綺麗に整備されていたし、荷物を 置いた木造のバンガローは、良く清掃されて、ずっと誰かに管理されていた様子がある。 きっと探せば電話もあるし、定期的に船が連絡しているはずだと宍戸は考えていた。 宍戸が、心配なのは、鳳の事だけだった。 彼の心の有様が心配でたまらない。 ずっと、一人で、この事を悩んでいたのだとしたら、どうして、一緒にいた自分は気が ついてあげられなかったのだろうか? 彼と気持ちが通じあったと思い、浮かれていた自分の罪のように思えて仕方が無い。 だから、もっと激しく犯して欲しかった。 彼が心から満足してくれるまで、自分の体内の熱で慰めてあげたかった。 彼を優しく、両手で抱きしめてあげたかった。 「長太郎。俺の腕を……解いてくれ。」 そうしたら、もっと、彼を愛する事ができるのに。 鳳は、そんな宍戸の言葉を無視したまま、後背位で、宍戸を失神するまで責めた。 そして、鳳は、宍戸の体内奥深くで、何度も射精した。 鳳は、島へ入ってから、ずっと宍戸の中で欲望を吐き出していた。宍戸も、そんな彼を 拒否しようとは思わなかった。 宍戸の体内では、熱い迸りが溢れている。 火傷しそうなほどに熱い、その体液は、今の荒れ狂う鳳の心そのままのように、 宍戸には感じられたからだった。 楽園へ行きましょう!第3話へ続きます。行ってみる→ ![]() 小説目次ページへ戻る ![]() |