その2 晩夏の思い出 「季節外れの花火大会」 後編 花火の光で、照らし出される引き締まった宍戸の身体は、彫刻のように美しい。 鳳は、畳の上に膝をつくと、シャツを捲くり、宍戸の背にも舌を滑らせた。 背中の筋肉の弾力を味わうように、ゆっくりと歯を立てる。そうしながら、相手のジーンズの ベルトを緩め、いっきに下着と共に膝まで引きおろした。 「長太郎! 」 宍戸の上げた驚きに溢れた叫び声を無視し、鳳は、剥き出しになった白い双丘を撫でまわし、 その場所にもキスをした。 鳳が指先でそっと左右に開くと、その中心には、薄桃色をした鳳の大好きな場所が ひっそりと隠されている。 まだ、窄まって硬くなっているその場所へ、鳳は無理やり、舌をねじ込むように入れてゆく。 唾液で濡れた感触を尻の入り口に感じたのか、宍戸が身震いを始めていた。 「そんな……。そんな場所、……汚いから止めてくれ! 」 鳳は、嫌がる宍戸を慰めるように、優しく何度も尻を摩りながら、狭い尻穴を解そうとしていた。 鳳は、早くこの中へ、自分の猛ったものを入れたくて仕方なかった。 打ち上げ花火が開始されたら、誰も室内には入らないように、使用人達には言い渡してあった。 今ならば、二人の大切な時を、誰にも邪魔される事はない。 恋人の宍戸へ愛撫を始めてすぐに、鳳のモノは大きく兆してしまっていた。 こうなっては、もう欲望を止める事はできなかった。 尻を責められて、恥ずかしがって逃げようと腰を揺すっている宍戸を、鳳は、強い力で押さえ込んだ。 そのまま、何度も、尻へと唾液を注ぎこみ、舌を差しこんでいるうちに、宍戸は、細い声をあげて 喘ぎはじめた。必死で声を押さえようとするので、宍戸の小さな身体が、痙攣するように 小刻みに震えている。 そんな意地を張るところも、鳳にとっては、愛しくてならない。 もっと、宍戸を感じさせようと、愛撫する腕にも、舌にも、力を込めていた。 ☆ 夜空に、花火が打ち上げられる度、川では、爆発するような大きな音が響いている。 その中で、鳳と宍戸も、後背位で激しく腰を打ち合わせ、バンバンと言う肉のぶつかり合う音を 船内で響かせていた。 宍戸は、下半身を剥き出しにし、上半身は胸元までシャツを捲くりあげられた姿のまま、 船の窓へ身を乗り出す形で、必死に木の窓枠へとしがみついている。 背後から、鳳が腰を打ち突けるたび、船外へ、宍戸の上半身は押し出されてしまう。 鳳は、ズボンのフロントを開いたまま、着衣は少しも乱していない。開襟シャツの胸元を少し 開けているので、その首筋には十字架を付けた銀色の鎖がサラサラと揺れていた。 船内はクーラーが効いているが、鳳の額には、うっすらと汗がにじんでいる。 ただ、必死で恋人へと、熱い楔を打ち込んでいた。 鳳も、宍戸の腰を掴んで固定しているが、あまりに激しく突き上げているので、宍戸は、何度も、 川面へと落ちそうになっていた。 「ああ、長太郎。もう、駄目だ。船から、落ちてしまう。怖い、助けてくれ。」 宍戸が、そう脅えたような声を出す度、鳳の砲身は、彼の尻に締め上げられた。 恐怖と興奮が、宍戸の尻の締まり具合を余計に良くしているのだ。 たまらず、鳳は、うめき声をあげていた。 「宍戸さん! 俺のモノが締められて苦しがっています。 ……こんなにされたら。俺、すぐに出てしまいますよ! 」 鳳は、苦しそうに、そう言うと、さらに宍戸の内部へ深く挿入するために、宍戸の両腕を掴み、 窓枠から引き離した。宍戸は、突然、鳳に、後ろ手に拘束されるようなスタイルにされてしまった。 鳳の胸元へ頭をのけぞらせるような姿勢になり、尻はさらに、鳳に対して突き出す形となり、 深く奥を突かれていた。 「うわあああああ! 長太郎ッ!! 」 窓枠に掴まって耐える事もできず、宍戸は、鳳に腰を打ちこまれるままに、上下、左右へと 身体を揺さぶられていた。 川面では、花火を打ち上げる爆発音が絶えず、続いている。 宍戸の頭の中でも、花火のような白い閃光が走り、耳鳴りのような轟音が響いていた。 自分は、間もなく、イクのだ。 このような人目のある場所で、射精してしまう。 恋人に立ったまま、尻を突かれて、感じてしまったのだ。 「うわあ、長太郎! ……もう、無理。苦しい。下へ落ちる、落ちるッ! あああ〜。もう、駄目だ!」 宍戸は、両目に涙を溢れさせると、限界まで身体を逸らせ、射精していた。 滑った白い液体が、窓枠へとかかってしまう。 しかし、勢いのある雫の大半は、窓を越え、船外まで飛び出してしまった。 まるで、花火が散るように、白い尾を引きながら、それは、夜空へと飛び散っていった。 「嫌だぁ。こんな……。こんな、恥ずかしい事……。何で、こんな……。」 そう言って、身体を震わせて泣きじゃくる宍戸を、鳳は優しく背後から抱きしめていた。 「宍戸さん、泣かないでください。イッタ時の宍戸さん、可愛かったですよ。 悪いのは、全部、俺ですから。どうか、泣かないでください。 まだ、花火大会のクライマックスは、これからなんですよ。せっかく来たのですから、 最後まで、楽しまないとね。」 鳳が示す通り、夜空を見てみると、そこには、赤い花や青い花が咲き乱れ、美しく夜空を 飾り立てていた。 「宍戸さん。俺も、まだ、これからなんですよ。 俺も、宍戸さんの中で、もっと気持ち良くなりたいんです。 一緒に、最後まで行きましょう。」 鳳が、優しい声でそう囁くと、宍戸の流した涙を手の甲で拭い、うっすらと笑ってくれた。 鳳のモノは、まだ、大きく天上へ向いたままだった。 宍戸は、それを見つけると、真っ赤に頬を染め上げた。 「長太郎。俺だって……。お前と一緒に気持ち良くなりたい。 ただ、怖いのも、恥ずかしいのも。俺は、嫌なんだよ。」 鳳は、うなづくと、宍戸の見ている前で、衣服を脱いだ。全てを取り去り、全裸になると、 仰向けに畳の上に横たわった。 「宍戸さん、これなら、どうですか? この姿勢なら、貴方からは、花火も見えるし……。 もう、怖くは無いですよね? 」 鳳は、宍戸の腰を抱き上げると、自分の身体を跨がせて、そのまま騎乗位へと持ち込んだのだ。 「宍戸さん。俺は、無理強いはしません。 今度は、宍戸さんの好きなように動いてみてください。」 宍戸は、最初、どうして良いのかわかならいので、呆然としていた。 しかし、鳳の股間から、大きく反り返ったモノがむき出してになっているのを見ると、 ゆっくりと震える右手で撫でてみた。 この大きな杭で、体内を突かれて、自分はイってしまったのだ。 自分の尻に先ほどまで、こんな硬く太いモノが挿入されていたなんて、信じられなかった。 「ああ、宍戸さん。気持ち良いです。」 宍戸にペニスを擦られて、切なそうに眉根を寄せ、うめいている鳳の顔を見て、宍戸は 興奮したようにゴクリと喉を鳴らした。 それから、おもむろに顔を鳳の砲身に寄せて、緊張で震えてしまう口唇を開くと、 そっと、膨らんでいる先端を咥えた。 「あっ、宍戸さん?! 」 今まで、宍戸は口淫をした事は無かった。しかし、いつも、自分のモノへ、鳳がしている様子を 思い出して、真似しているのだった。 大きく口を開き、喉の奥まで咥えてみた。 呼吸が苦しかったけれど、舌で砲身を優しく嘗めた。 それから、口唇をすぼめて、強く締めるようにしながら、外へ素早く引き出す。 自分がされて、いつも感じていた方法を、鳳にもしてあげたのだ。 何度もそれを繰り返すと、鳳は、快楽にひたりきった声を上げながら、腰を揺すり始めた。 鳳の気持ち良さそうな顔を見ている内に、射精したばかりの宍戸のモノも、また、 大きく育ってしまった。 宍戸は、一度身震いしてから、鳳の砲身を放す。 彼が、欲しくて堪らなくなったのだ。 それから、ゆっくりと彼の腹の上へまたがり、尻をその猛った杭へと下ろしていった。 今度は、自分の意思で、恋人のモノを受け入れたのだった。 「うっ! ああ、入る。長太郎のモノが、俺の中に……入ってくる!」 宍戸は、そんな声を上げながら、自ら腰を下ろし、体内の奥深くまで砲身を飲み込んだ。 限界まで飲み込み、自分の尻と、鳳の腹がぶつかると、今度は、不慣れな腰つきで、 ゆっくりと身体を動かし始めた。 何度か、体勢を崩しながらも、必死で、腰を上下させて、鳳のペニスを自らの体内で摩擦した。 「ウウ……、奥に入っている。お前のが……奥まで届いている。 ああ、どうしたら良い? 俺、どうしたら、良い? 」 鳳は、そんな切ない問いかけをしてくる恋人に、嬉しさのあまり頬を緩めていた。 宍戸が、自分から口淫をしてくれただけでも、嬉しくてたまらない。 そして、今度は、自分から、ペニスを体内へ迎い入れてくれたのだ。 それだけで、鳳は射精してしまいそうだった。 鳳のモノは、興奮のあまり、はち切れそうなほどに勃起している。 鳳は、必死で意識を他に向けて堪えているのだった。 宍戸のシャツの裾から腕を指し入れて、うっすらと汗ばんだ肌を優しく撫でていた。 「良いですよ、宍戸さん。それ、ものすごく良いです。 あなたの中は、最高に気持ち良いです。」 熱にうなされたような声を出しながら、鳳も腰を突き上げていた。 宍戸は、身体の奥を強く突かれて、堪えきれずに悲鳴を上げていた。 二人で、腰をぶつけ合うように、激しく抱き合いながら、鳳は、宍戸に窓を見るように言った。 「宍戸さん、花火も、クライマックスです。どうか、外を見てください。」 宍戸が快楽でぼやけている頭で、その言葉を何とか理解し、視線を移動させると、その視界には、 滝のように流れる白い花火の姿が入ってきた。 俗にナイアガラと呼ばれる花火は、岸にそって、何百キロも続いている。 その光り輝く滝の流れには、大きな文字が浮かんでいた。 <愛しています……永遠に> <あなただけを……この先、一生、愛し続けます。> 鳳は、宍戸を強く抱き締めると、耳元で同じ言葉を囁いた。 宍戸は、切なくて、何だか泣きたい気分になった。 自分は、男である。 女性と違って、このまま付き合っても、結婚する事はできないと思う。 そんな自分でも、この先も、鳳と一緒にいても良いのだろうか? 「俺も……俺も。ずっと、お前だけだからな。」 宍戸も、鳳の身体を夢中で抱き締めていた。 二人は、激しく抱き合うと、快楽の波に飲まれていった。 辺りは、花火の打ち上げも終わり、人のざわめきも止んでいた。 夜の静けさが広がってゆく中で、二人の快楽の声だけが、ずっと熱く続いていたのだった。 ☆ 乾ききった喉を潤すために、鳳が、使用人へ飲み物を頼んでいるのを、宍戸は、疲れ切った頭で 聞いていた。胡座を組んだ鳳の膝の上で、宍戸はぼんやりとしていたのだ。 ほとんど全裸に近いので、衣服を身につけたいのだが、身体に力が入らない。 「長太郎……恥ずかしいよ。こんな格好……。」 鳳は、羞恥心で顔を赤らめている宍戸を抱き締めると、こう囁いた。 「俺が、ずっと抱いてますから。大丈夫ですよ。俺も、宍戸さんの、こんな可愛い姿を 他人に見せるのは、嫌ですからね。」 そんな鳳の笑顔を見ながら、宍戸は、もう一つ、こんな言葉を言ったのだ。 それは、花火を見ている時から、ずっと、不思議に思っていた疑問だった。 あの最後の花火。アレには、特定の名前は記載されていなかったけれど。 たぶん、自分の事に違いない。 鳳が、自分に対して、言った言葉と同じだったからだ。 まさかと思うが。あの花火は、鳳長太郎が作った花火なのだろうか? そんな宍戸の疑問に、鳳は、満面の笑顔で答えたのだった。 「はい。宍戸さん。アレは、俺が作りました。 時間が無かったので、大変だったんですよ。 花火職人さんを百人ばかり雇って、河川敷を連日徹夜工事しましたからね。」 宍戸は、あまりの事に眩暈を覚えていた。 勝手に、そんな工事をして大丈夫なのだろうか? そして、もう一つ、疑問に思っていた事も聞いてみた。そんな個人的な事を花火大会で やっても良いのだろうか? 「ああ、言ってませんでしたか? この花火大会は<鳳家主宰>のモノですから。 親戚一同で集まって、毎年、夏の終わりに花火を上げるんです。 最初に、白い花火が上がりましたけど、アレは、鳳家の家紋を表現したモノで……。」 宍戸は、そんな解説を聞きつつ、ほとんどの内容が耳に入っていなかった。 個人主催の花火大会など、今まで生きてきて、聞いた事が無かったからだった。 「……周りの船は、全て鳳家の持ち物なんです。親戚が乗っています。 ほら、俺達のすぐ目の前にある、あの屋形船。 アレには、俺の両親と姉が乗っているんですよ。」 そう言って、鳳は、50メートル先に浮かんでいる船の人影に手を振った。 「なっ?! 」 宍戸の思考回路は、混乱を極めていた。 (ちょっと待ってくれ……。と、言う事は。) (俺達は、長太郎の両親の見ている前で、あんな事や、そんな事を?! ) あまりの出来事に衝撃を受けた宍戸の全身は、悪寒が来たように震えていた。 それに、気がつかない鳳は、能天気に話を続けている。 「いつもは、俺も一緒にあの船に乗るんです。 でも、今年は、宍戸さんと二人で参加したくて、ちょっと、我が侭を言ってしまいました。 とにかく、素敵な花火大会で良かったです。 出来れば、来年も宍戸さんと一緒に……。」 そこまで言った鳳の頭に、宍戸の拳が炸裂した。 「……お前って、ヤツは! お前って、ヤツは!」 どうして自分が殴られているのか、鳳は、理解できないのか、驚いた顔をしている。 「な、何で怒っているんですか? 宍戸さんっ?? 」 鳳を殴りながら、宍戸は、何と言って、今の自分の心境を相手に伝えて良いのか、 まるでわからなかった。 救いようが無いほど、この鳳長太郎は、お坊ちゃまなのだ。 言葉につまってしまった宍戸は、ただ仕方なく、こう叫ぶだけだった。 「この、大馬鹿野郎ぉぉぉッ!!! 」 宍戸に頭を殴られながら、その時、鳳が考えていたのは、全く別の事だった。 船旅は、やはり素晴らしい。 時間の経過がゆったりと流れ、愛を確かめ合う恋人同志が過ごすには、うってつけだ。 出来れば、自分達の新婚旅行には……。 <豪華客船で世界一周旅行>をしてみたいものである。 その時、鳳の頭の中では、そんな旅行の日程が着々と計画されていたのだった。 彼ら二人の愛情は深い。 その思いも一つだったが、あまりにも違いすぎる境遇が、最大のネックである事に、 この時の二人は、まだ気がついていなかった。 その3 誕生日の思い出へ続きます!進んでみる→ ![]() 小説目次ページへ戻る ![]() |