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  ゾロが湯船につかって、必死になって、己の<暴れん坊君>と死闘を繰り広げていると、

  「何で、お前逃げるんだよ!!」

  なんて、叫び声が耳に入った。明らかにサンジの声だったので、ゾロは焦って全身から汗が噴き出した。

  それから、ザバッとお湯が動く音がして、ゾロの隣にサンジが入ってきた。

  サンジはきちんと洗い場で、身体を洗ってからやってきた。

  湯船に居れば、こうなる事をゾロは完全に忘れていた。

  驚いて後ろに下がったゾロだったが、浴槽の壁に逃げ道を完全に阻まれてしまった。

  八方塞がりとは、この事である。

  「お前、何隠してんだよ?」

  「別に隠しちゃいね〜よ」

  平静を装って答えたゾロだったが、大粒の汗を流したその顔は、誰が見ても「隠し事をしてます」と

  自白していた。

  サンジは無言でゾロをひと睨みすると、いきなり湯の中に右手を入れ、巻かれたタオルと一緒にゾロの

  股間のイチモツを力いっぱい握りこんだ。

  
ウギャ〜〜〜!!

  銭湯の浴室全体が震えるほどに、ゾロの甲高い絶叫がこだました。獣じみた声だった。

  ゾロはたまらず湯の中に白濁液を発射してしまった。

  そのまま痛みで悶絶して、湯船にプカリと浮いてしまった。

  身体の前面ご開帳のまま、湯に浮かぶゾロの奇妙な姿を見て、サンジが何を思ったのかは、

  ゾロには全くわからなかった。ただ変な奴だ、とは思うだろう。

  ゾロがサンジの反応を気にしていると、奴は顔を真っ赤にして、こう叫んだ。

  「ゾロのアホ!! 死ね!!」

  サンジは激しく怒っていて、とっとと一人で湯殿を出ていってしまった。

  (死ね、まで言われる理由は無ぇ〜だろう)

  (それとも、湯船に発射したのがバレちまったか??)

  怒りたいのは、急所を握り潰される所だった自分の方だと思うのだ。

  さらに耐えられない事は、サンジの裸を見て勃起してしまった事実だった。

  おまけに、射精まで見られた可能性がある。

  (死んでも知られたくねぇ〜なぁ)

  (奴が気がついてなければ良いけどな)

  ぼんやりする意識の中で、ゾロはそれだけをひたすら祈っていた。

  そのままの姿勢で、両手の平をヒラヒラと動かし、湯をかき回したりした。

  悪あがきだったが、少しは湯が拡散して、水中の子種も目立たなくなるかもしれない。

  そのゾロの努力(?)の成果で、子供が悪ふざけをして、溺れたくらいにしか周囲の大人には

  思われなかったらしい。銭湯の職員には、湯船で泳ぐな、と注意された。

  何も知らずに、次にその湯に入る客達には申し訳無かったが、ゾロは一生秘密にする事にした。



  この日の出来事をゾロは忘れる事は無かった。

  こんな恥をかいたのは、生まれて初めてだったからだ。

  そして、彼の中ではっきりと一つのジンクスが出来たのだった。

 <サンジに関わるとロクな目に合わない>

  出来れば縁を切りたいが、親が引っ越しでもしない限りは無理な話だった。

  この先も長い年月、付き合う事になるのだろう。

  そのため、ゾロはサンジに対して新たな誓いを立てたのだった。

  (いつもヤラレル側に俺がいるとは思うなよ!!)

  サンジには、いつも嫌な目にばかり合わせられるゾロだった。

  良い加減に堪忍袋もはちきれる寸前で、もう限界がきていたのだ。

  自分が主導権を取らないと、この先、どんな目に合うかわかったものではない。

  (絶対に奴には負けねぇ!!)

  (好き放題にはさせねぇ!!)

  (こうなりゃ、全面戦争だ!)

  (そのためには、どんな特訓でも耐えてみせるぜ!!)

  何の戦いなのか良くわからないが、一人メラメラと燃えるロロノア・ゾロだった。

  サンジに握られた股間は3日間も鈍い痛みが続き、ほんの少し微熱まで出てしまった。

  満足に歩く事もできず、生まれて初めて、剣道の練習も休んでしまった。

  家でじっと寝ていると、ナゼかサンジの真っ白な裸なんかが、頭に浮かんできてしまう。

  (こりゃ〜最初の特訓は、精神統一からだな)

  山ごもりでもして、滝にでも打たれそうな勢いのゾロだった。

  腫れあがった股間はかなり熱いが、心も真っ赤に熱い男である。




                                       
END
                               

                            お風呂屋パニック〜サンジ編〜へ続きます



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