1ページ目/全3ページ 宍戸さんには、お金が無い!第3話 ※第2話の<鳳長太郎サイド>の話となっています。 その2 〜鳳家の秘密〜 の巻 俺は、部屋付きのメイドである初音にうながされ、自室のベッドで休む事にした。 主治医が以前処方してくれた解熱剤も飲んだが、それで熱が治まるのは、ほんの一時 だけだった。 ベッドルームには、母が選んだ白で統一された木製の家具が置かれている。 その中でも、金細工で縁取りを施された大人の背丈もある鏡は立派なもので、 魔よけの効果があるとされ、ちょうど南東の方角に置かれていた。 その鏡に映し出された俺の顔は、高熱によって真っ赤に腫れ上がって見える。 初音は、氷枕を運んでくると、真新しいシーツを準備し、ベッドを調えている。 その間、他のメイド達は、俺の衣服を脱がせると、軽く身体を拭き、白い絹でできた 寝巻きを着せてくれた。それは、母が海外で作らせたもので、宝石のサファイアが 飾りボタンとしてあしらってあった。 俺は、ベッドに横になると、初音をそばに呼んだ。 「初音。俺の頼みを果たしてくれたかい? 」 彼女は、それを聞くと微笑み、俺の頭に濡れたタオルを当てながら、こう答えた。 「はい。心配なさらないでください。宍戸亮様には、例の指輪をちゃんと渡して おきました。」 俺は、それを聞くと安心して目を閉じた。 初音は、先祖代々鳳家に仕えている家柄の者であり、信頼できる人間だった。 交通事故で亡くなった彼女の母親も俺の養育係をしていたのだ。身寄りを無くした 彼女は、鳳家で働きながら、夜間は、高校へ通っている。そして、鳳家の内部事情に 精通し、俺と宍戸亮の幼少期の出来事を良く知っていた。 あの指輪は、宍戸亮にきちんと渡ったらしい。 |