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   欲望の果て その5 「暖かな気持ち」



   マスタング大佐が、シャワーを浴びて室内に戻ってくると、エドワード・エルリックは、

   まだベッドに寝転んで怒っている最中だった。


  「最低だよな、アンタ。中出しなんか、普通するかよ? 」

   彼は、必死でティッシュで身体を拭っていた。


   この少年は、風呂が大嫌いなのだ。


   理由としては、入浴前後の機械鎧の手入れが大変だから。そういう理由らしい。


  「いくら何でも、拭いただけじゃ無理だろう? 」

   大佐が、そう言って、シャワーを勧めると、エドワードは顔を真っ赤にして怒鳴りたてた。


  「それになぁ。痛いんだよ! アンタ、加減も出来ないのかよ? 

   縛られた腕は痺れているし、腰もジンジンするし、最低だっつ〜の! 」


   散々、文句を言いながら、それでも一向に、部屋を出ていかないエドワードの姿に、

   大佐は、この辺りでやっと理由に気がついた。


   「まさかと思うが……動けないのか? 快楽のあまり腰が抜ける、そういう事も

    あるらしいが……。」


  「ぎゃあ〜、快楽のあまり……とか言うなよ。馬鹿野郎! この変態、むっつりスケベッ! 」

   人のベッドで大騒ぎしているエドワードを無視すると、デスクに設置されている電話機を

   取り上げ、大佐はどこかへ内線電話をしていた。


   その十分後、仮眠室にかけつけた者が誰かを知って、エドワード・エルリックは、

   卒倒しそうになった。


   「あのぉ。ここに、兄サンがいると聞いたのですけど? 大丈夫でしょうか? 

    どこか具合が悪いのでしょうか? 」


   インターフォン越しに、そんなアルフォンス・エルリックの声が響いていた。


   「ああ、アルフォンス君か。お兄さんが、私の仮眠室で眠ってしまってね。

    疲れているようだから、君を迎えに呼んだんだよ。このまま、部屋に連れて

    帰ってくれると、ありがたい。私は、これから仕事があるのでね。」


   二人のヤリトリを、ベッドの上で聞きながら、赤くなったり、青くなったりしている

   エドワードへ視線を向けると、大佐は、こんな事を言った。


   「さあ、早く寝たフリでもするんだな。残り三秒で、君の大好きな弟君が、この部屋に

    やってくるぞ。」


   「てめぇ〜、いつか絶対にぶっ殺す! 」

    そう言って、エドワードはベッドへ寝転ぶと、イビキをかき始めた。

    下手な演技だったが、仕方が無い。

    大佐は、微笑むと、仮眠室の扉の鍵を外すのだった。




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