3ページ目/全3ページ 気がついたのは、十歳頃だった。 初めて保護されて施設に入れられた時、職員にイタズラされたのだ。その中年の 小太りな男には、普段から何度か身体に触られたりしていた。 ある日の深夜、未来流がトイレに行くと、その男に捕まり個室で裸にされた。 男は、未来流の小さなペニスを口に頬張ると、美味しそうにしゃぶった。 中学生になった未来流が、駅のトイレで二人の蛇神に襲われた状況と良く似ている。 同じように暴れて逃げようとしたが、その男は鈍そうな体格に似合わない俊敏な動きを しており、驚くほどの怪力だった。未来流を片手で簡単に押さえ込んでいた。 電灯もろくに点いていない薄暗いトイレで、未来流が男の顔を見ると、瞳孔が 縦に細くなり銀色に光っていた。当時は、化け物だと驚いたが、今なら《 猫又 》と 言われる亜人の種族だと思い当たる。 恐怖のあまり、未来流はすぐに目を閉じてしまったが、その時に不思議な事が 起こったのだ。 男のザラついた舌で刺激されている未来流のペニスが膨れて大きくなる。それと共に、 未来流の全身の神経は驚くほど過敏になり、まるで五感の全てが新しく作り変えられて いくような感覚がするのだ。 外へ剥き出しになった神経を、直接、男の舌でなぶられているような、甘美な気持ちに なっていった。 「あ、あ、……。」 快楽の喘ぎ声を上げる未来流に、男は楽しそうに声をかけた。 「気持ち良いのか? 坊主。もうイキそうか? 見てりゃ〜わかる。お前は とんでもない淫乱だぞ。早く本性を出してみろ! 」 男は唾液を指先に垂らすと、未来流の小さく窄まった後穴へ指を差し込んできた。 「ひっ! やだ! 」 未来流が嫌がるのを無視し、男はザラついた襞を探し当てると擦りたてた。 未来流の身体は、初めて自覚した強烈な快感で、痙攣しながら跳ね上がっていた。 その時、未来流の心の奥底から、何か奇妙なモノが飛び出してくるのがわかった。 外には出してはいけない《 何か 》が、今、喉元まで上がってきて、必死に出ようと 暴れていた。 「あ、もう止めて! 出ちゃう。出ちゃうよ。ダメ! 」 男は、未来流が射精を堪えているのだと思い、さらにペニスと尻への刺激を強くした。 「あ、あ、あ、いやぁ〜! 」 未来流は絶叫を上げると、生まれて初めてイッてしまった。 小さなペニスから白濁した熱い液体が吹き上がり、男の顔を濡らした。 それとともに、未来流の意識は渦に飲まれるように心の奥へと飲み込まれ、完全に 消えてしまった。 次に気がついた時、未来流は薄い膜の中にいた。 白い温かなベールのようなモノに包まれていた。 そこで、不思議な事を経験した。 まるで映画を観ているように、頭の中に映像が浮かぶのだ。 洋式便器に腰掛けた小太りの男の起ちあがった男根を、自分がしゃぶっている 映像だった。くちゅくちゅと濡れた音をさせながら、太い砲身を喉の奥まで入れ、 自分から舌をからめていた。 ベールの中でぼんやりしていた未来流も、鈍いがその感覚を感じていた。 けれど、自分はそんな事はしていない。 今、この温かな白い世界で、未来流は穏やかに横たわっているからだ。 感覚だけは一緒に共有しているが、外で勝手に動き回っているのは、自分では無かった。 《 もう一人の自分 》を未来流は、初めて自覚した。 本当は、今すぐ外へ出ていって《 アイツ 》の行動を止めさせるべきなのだが。 未来流は、恐怖と嫌悪感のあまり、ベールの後ろに隠れてずっと震えていた。 第8話 了 ![]() 2ページ目へ戻る 小説マップへ戻る |