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第1話 〜奇妙な二人の悩み事〜
未来流(みくる)は下着姿のまま、すでに三十分も自宅のトイレにこもっていた。
青い格子模様のパジャマのズボンと真っ白な下着を足首に引っかけたまま、洋式便器に深く腰かけ、
乱れた息を調えようと必死になっていた。
未来流は、十四歳と言う年齢にしては身長も低く、筋肉もまだ薄くほっそりとした身体つきをしている。
おまけに、あどけない少女のような容貌だった。
そんな未来流が、薄茶の丸い大きな瞳に涙を滲ませ、ふっくらとした桜色の頬を膨らませて、
息を乱して喘いでいる姿はとても悩ましげである。
たとえ、場所がトイレであったとしても。
未来流は便器に座ったまま、切ない表情で歯を食いしばると、腰をぴくぴくと痙攣させていた。
うっすらとしか生えていない薄茶の毛の間から、肌色よりもやや桃色に近い可愛らしいペニスが、
天井へ向かってそそり立っている。
その先端からは、ぴゅるぴゅる〜と白濁した汁が飛んでいた。いくつかの固まりが床に散った後、
残った汁が砲身をトロトロと伝い落ち、便器へ滴り落ちた。
見るからに、ただ今抜いています! という状況である。
未来流は、三度目の子種達を放出したトコロだった。トイレットペーパーで汚れた下半身を拭う。
しかし、肝心のペニスは元気にそそりたったままで、少しも変化していない。
それどころか、ますます硬く大きくなったような気がしてしまう。
「この元気の良さってどうなのよ? 」
不可解な自分の分身に対して、むなしく独り言をつぶやくしかなかった。
未来流はため息をつくと、またそれを右手で握り込んだ。
手にスッポリと収まるお手ごろサイズだったが、皮までピチピチに張りつめるほど硬くなっており、
ピクピクと元気に脈打っていた。
先端の尿道口からは、先ほどの精液の名残がタラタラ白い糸のようにこぼれている。
しかし、未来流が新しい刺激を加えると、すぐに温かい透明な粘液があふれ始めた。
その先走りと精液はミックスしながら、右手をすぐにぬるぬると濡らしてしまう。
くちゅくちゅと音を立てながら、未来流は必死に右腕を動かしていた。
早く、この苦痛から開放されたかった。
未来流は昨晩から、身体に変調をきたしている。
血が騒いで眠れない。その場でじっとしていられない。叫び声を上げたくて堪らない。
股間がとにかくムズムズして、少しでも抜いておかないと、立ちっぱなしになってしまうのだ。
このやっかいな桃色の暴れん坊が!
未来流は人狼……西洋の物語風に言えば狼男だった。
《 満月は人狼に力と苦痛を与える 》と言われている。
視覚・聴覚・嗅覚・思考能力・体力・筋力・反射神経。その全てが研ぎ澄まされ充実するのが、
満月期だった。
しかし、それとともに《 発情期 》まで来てしまう。
未来流にとっては、今回が初めての発情期になる。
発情期は、人間の二次成長と同様で思春期に発現する。
人狼の大人になった証だった。
兄達の話では、この興奮状態が三日ほど続くらしい。
何もかも初めての体験で、混乱している未来流だった。
早朝から勃起したペニスは萎える気配も無く、未来流に痛みすら与えていた。
そんなわけで、せっせとトイレで処理に励むのだったが、実を言うと未来流は、
今まで自慰すらした事がなかったのだ。
未来流は、ゆっくりと右手で砲身を摩っていた。
まだ、ぎこちない動作だが、とにかく苦痛から逃れたくて必死だった。
腕を動かすたびに、ニチャニチャと粘りのある水音がしている。精液の青臭い匂いが
立ち込めていた。
さらに、未来流は残った左手で亀頭を弄った。
細い人差し指で敏感な亀頭の溝を摩ってみたり、先端の尿道を押すようにしてみたりする。
すると、背筋がゾクゾクとし、未来流は身体をふるわせた。
三度の射精では、こうするとイケたのだが、もう擦るだけではたいした刺激にならないらしい。
未来流はガチガチに硬くなっているペニスを握ったまま、困惑するしかなかった。
自分の身体なのに、全くコントロールできないのだ。
ドンドンドンッ
未来流が股間剥き出しで、ブルーな気分にひたっていると、激しくドアをノックされた。
「おーい、クソしたいんだけど。良い加減に出てくんない? 」
こういう下品で横暴な物言いをする人物は、八十神(やそがみ)家には未来流が知る限り、
一人しかいない。
麗二(れいじ)である。
未来流は四人の兄のうち、最もこの男が苦手だった。
「今はオレが使ってんの! あっち行ってよ! 」
イラついて、つい口調も乱暴になってしまう。
相手が同居人だとしても、こういう事を知られるのは嫌なものである。
それに、彼ら……他の兄弟とは血の繋がりは全く無い。
三年前に未来流はこの家に引き取られて来たが、それまで会った事も無い赤の他人だった。
人狼は世界的に数が少ない。そのため、同じ仲間なら、他人の子供を引き取ると言う話は
良くある事だった。
初対面の時から、麗二は未来流に対してカンに触るような事ばかりする。
だから、この男には会わないように注意していたのだった。
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