−映画のネタバレ感想など−
CASSHERN
映画「CASSHERN」を見てきました。
どうしようかと思ってたのですが、いとこがCGアーティストとして参加してるので
見てほしいと言われたので、これ幸いと見に行きました。
見に行ったことを後悔するようなことはありませんでした。
噂の映像のみに終始して内容のない(あるいはわかりにくい)作品なんじゃないかと
危惧していたのですが、ちゃんとお話として作ってありました。
個人的にはむしろ”反戦”的なテーマを語るために話を作りすぎてしまってる感じがあってちょっと残念でした。
【明かされた秘密】
「憎しみの連鎖」を語るためにラスト近くで明かされる事実。
それはこの映画の一番の見せ場として設定されたものであることはまちがいないですね。
つまり新造人間は新造細胞で一からつくられた存在ではなく、新造細胞の実験のために
連れてこられた第7管区の部族の死体が集まって生まれたもの、つまり人間だったという事実。
バラシンは鉄也とルナを助けた老医師の息子で、ブライは街の若夫婦であり
彼らを殺したのは戦場で狂気に駆られた東軍曹=鉄也であったという事実。
実際、鉄也が誰かを撃ち殺すシーンは何度も鉄也の頭の中に浮かぶイメージとして
登場してきます。
これらの事実を武器に監督は「憎しみの連鎖」を見せようとしたのだと思います。
たしかによく考えてあるとは思います。でもやはり個人的には新造人間=人間により生み出されたもの
という図式は変えないで欲しかったですね。
【ブライというキャラクター】
というのも唐沢寿明演じる”ブライ”がなかなかいいキャラクターだと思ったからなのです。
金髪に赤の衣装は映像的にも映えているし、演技も堂々としていて風格があり
アニメとは違った「ブライキングボス」を感じるキャラクターで今回の映画化の中では抜群にいいと思いました。
だからこそ”新造細胞”から生まれた”新造人間”という設定もおもしろいと思っただけに
「反戦」を語るための道具として結局「元になった人間」がいたというネタには正直がっかりしました。
「憎しみの連鎖」を語るために”人間が生み出したものが人間に復讐する”というアニメのキャシャーンの
”争い”の根元を変えてしまってますから・・・
【アンドロ軍団のこと】
今回の映画ではアニメのようにアンドロ軍団を登場させるのはちょっと無理がありましたね。
ブライ達がたどりついた古城に廃棄された(?)ロボット軍団がたまたま
あってそれを武器に使用したということなんでしょうけど、まあちょっと無理があります。
アニメではアンドロイドのブライキングボスが同族であるロボット軍団を作るという
シチュエーションでしたからね。
それと今回の映画の中でこの軍団の登場によって世界情勢がどう変わったかも明確にされてないですしね。
【キャシャーンの誕生】
東鉄也がなぜキャシャーンになったのか。この部分がアニメと決定的にちがいます。
アニメでは父が作ってしまったアンドロ軍団を倒すために自ら人間であることを捨てて
新造人間となるのですが、この映画では父に反発し戦場へ出てゆき戦死した鉄也が父の手により
新造細胞の培養槽に漬けられその力で復活する。この時決して鉄也は生き返りたくはなかったという
ことが描かれています。
【父と子と】
その父と子の対立もこの作品のひとつの要素になっています。
東博士と鉄也、そして上条将軍と上条大佐、2組の親子が描かれています。
老獪な怪人として描かれる父:上条将軍に対し自分の理想のためクーデターを起こす
上条大佐。結局将軍は生きていてこのクーデターは失敗に終わります。
そして東博士の妻ミドリに対する想いは、新造細胞を生みだし(結局は失敗だったということなんですが)
最終的には息子の鉄也さえ止められない狂気へと走り、ルナさえも射殺してしまいます。
どちらの親子も単純に”子は父を越えてゆくもの”的な結末にならずに要は
”憎しみ”のひとつとして描かれているだけなのですね。
【生と死の描き方】
生と死を重要視するのであれば死をあいまいにする表現は避けた方が良かったんじゃないかと
思いました。
鉄也が戦場で死んだ時、”魂”みたいになった鉄也が母に会いに来たり、自分の葬儀を見ていたり、
あまつさえその姿が誕生したばかりのブライに見えたり(これは対決の構図を浮きだたせるため
の演出なんでしょうけどね)するのはどうかと思います。ドラゴンボールじゃないんだから
死んだ人間が自由に行動したらダメでしょう。そのおかげでラストのルナがほんとうに生き返ったのか
どうかがすごくあいまいに見えてしまいます。
小説を読んだ友人の話では最後は
ブライの新造細胞でルナが生き返り、鉄也は強化服をはずすということらしいのですが、、
映像からはそんなことは伝わりません。
【CGとの一体感】
もちろん映像については見応えは充分ありました。
他ではあまり見れない映像だったんじゃないかと思います。
CGと実写が融合した独特の空気を画面に作り出しています。
最近の映画ではCGをリアルに実写に近づけるのが流行ですが、この作品は
嘘のCGの背景やメカニックはあるものとしてむしろ実写部分の画像の方を加工して
CGと画面的に融合させて一体感のある空気を作っていました。
この手法はたしかにこれまであまりやられていないことですしそれをするのには多分
センスがいるんじゃないかと思います。
音楽もこの作品の空気を作っていたと思います。音楽はエヴァンゲリオンの鷺巣詩郎氏
BGMでありながら妙に耳に残る音を作っています。
なぜか昔「ブリキの太鼓」という映画を見た時のことを思い出しました。
【迫力ある戦闘シーン】
CGを駆使した戦闘シーンはもちろん迫力があるのですが、
人物同士の対決シーンにもアニメ的な演出がなされていて非常に華麗にかっこよく描かれてます。
メリハリのある音楽に合わせて繰り広げられる止めと動きでメリハリをつけたスピード感のある
アクションは非常に気持ちいいです。
この映画は観客に媚びていないところがいいと思いました。
別にそんなにヒットしなくてもいい。見てくれる人が見て何かを考えて
くれればいい。
そんな姿勢で作られたんじゃないでしょうか。
キャシャーンを題材に”反戦映画”を作る。そこに重きを置いていて
「アニメ版の好きな人ならこんなのを見せればよろこぶぞ」というような
サービスはほとんどありません。
あるといえばわずかにある戦闘シーンの中の
「パルサーアタック!フライングドリル!」ぐらいでしょうか。
最低のお遊びというか仁義というか、ヘルメットは本来あったが
襲撃されたときに壊されたという描写と「フレンダー」という名前の犬は登場します。
アニメ版を期待した人はがっかりしたんじゃないですか。
とにかく興行的な事は問題にせず、金をかけて最高の映像で、作りたいテーマの映画を好きな
題材で作った、そんな”金持ちの道楽”という感じの映画に思えました。
さて、左は映画のパンフレットです。写真じゃわかりにくいですが、
これB6サイズの3冊の小冊子がカバーに入った仕様になってます。そして900円!
1冊は特徴的な映像を集めた写真集、1冊はストーリー
展開に合わせた写真集、1冊はメイキングや解説の載った普通のパンフレットのようなものです。
写真のフィギュアはおそらく唯一のオモチャであるタカラの
「ミクロマンアクションシリーズMA−06 CASSHERN」。
”ミクロマンマテリアルフォース”の可動素体を使った可動フィギュアです。
本編ではかぶることののなかったヘルメットもちゃんとついています(笑)。