
あべので花ひらく もちもちの食感
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「櫻」 その1
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熊谷 真菜
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この歳になると人生、いいことも悪いことも一通りは体験しているからか、少々のことで、落ち込んだり、舞い上がることはなくなるものだ。
できるだけ、自分にマイナスな感覚については素通りすること。
うれしいこと、気分のいいことは、小さなことでも大きく味わう、そんなコツというか、テクニックが、身についてくるものである。
- お若いですね。まだ20代かと思ってました。お子さんがいらっしゃるなんて、ホント信じられませんよ。
たとえばこういう類のフレーズは、社交辞令として聞き飽きているはずなのに、面と向かってまじめに言われると、やっぱりそうなのかなあ、なんて素直に喜んでしまうものなのだ。
今回のたこやきめぐりでは、うまいたこ焼の前菜として、ほめ言葉攻撃を受けることになる。
咲隊員と私という強力人妻コンビを、お店のご主人、島本忠幸さんは、最初から大歓迎してくださった。
- こんな美人がふたりも来たら、おっちゃんどきどきして、仕事にならへんわ。
開店準備のあわただしいところに押し掛けたにもかかわらず、暑いから何か飲み物を、と気づかってくださり、手を動かしながら、私の質問にも、ていねいに答えてくださる。
お店は28年まえから。
ちょうど真向かいに阿倍野警察署があるので、「警察前のたこやき屋」という愛称で、口コミのうわさが広がっていった。
前の署長さんも部下への差し入れに何十個もたのんでいったり、自転車を止めて、買い物帰りに立ち寄るおばちゃんもあとをたたない。
百円玉一個をにぎりしめて、ポツンと「たこ焼ください」と立っている、小学生の女の子など、地元の人たちには欠かせない味だ。
好っきゃねん大阪
月刊たこやきめぐり
真菜のホームページ
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