ライバル店

 

 山田吾一の店舗の隣にショップができるという。どんなショップだろう、と気になった。ライバル店にならなければ良いが、と心配した。そんなあるとき、吾一の前にそのショップの最高経営責任者が電話でアポを取ってきた。

「山田様、私、このたび、このK市にオスプレイを普及するため、進出することを決意いたしました富田と申します」

 吾一と富田は翌日会う約束をした。そして、初顔合わせの日が来た。吾一は玄関の前に陣取り、富田を待った。しかし、この街でオスプレイを売ろうなんて、馬鹿げている。そう思っていたところに、エンジン音を轟かせながら富田がオスプレイでやって来た。吾一の携帯電話が鳴る。

「山田様、ただいま、富田参上」

 それだけ言った富田は一方的に電話を切った。富田の乗るオスプレイは吾一の目の前に降り立つつもりらしい。富田のオスプレイは低空飛行していたが、林立するビルの壁面に片翼が接触し、羽の先が飛び散るのが見えた。折れた羽は回転しながら、民家の屋根に突き刺さった。安定を失ったオスプレイはきりもみ状態で吾一のいる庭先に火を噴きながら飛んできた。飛行機が地面に激突すると勢いよく炎上した。炎の中から飛び出してきた富田は、吾一の前で力尽き倒れた。吾一は富田を抱き起こしながら言った。

「富田さん、やはり、オスプレイは操縦技術がいるようですよ。こんな繁華街では難しいと思いますよ。その点、私は違います」

 そう言って、吾一は自分のショップの商品を眺めた。垂直にりりしく直立するぴかぴかの発射台を見て呟いた。

「ここのロケットはそんな心配いりません。ただ、乗ってるだけですから」

 

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