かちかち山の兎の気持ち

 

かちかち山の狸くん、どうしてぼくが君に辛い仕打ちをしてきたか分かりますか。おじいさん、おばあさんの気持ちを考えるとその仕打ちは、まだまだ、全然足らない気もしますが、君の手紙を見てやっと分かったか、という感じです。

 ちょっとでもおじいさん、おばあさんの辛い気持ちを知って貰うため、いろいろ君に辛い仕打ちをしてきましたが、ぼくも君を懲らしめるためとはいえ、あまりいい気持ちではなかったよ。どうして辛い目に会うのか、君はまるで気が付かなかった。だからこそ、辛い気持ちと言うものを知ってもらいたかったんだ。

 おじいさんは、来る日も来る日もおばあさんを思って辛い日を今も過ごしているんだ。おばあさんは優しい人だから、君をおいしい狸汁にしておじいさんと仲良く食べようとしていた。君だっておいしい狸汁にされたら、狸冥利に尽きるだろうに。狸は、人間に狸汁にされるために生まれてきたようなものなんだ。君は自然の掟を壊した不届き者だ。

 それが、君と来たらそんな事、おかまいなしで、挙句の果てにおばあさんを殺して、なんと、おばあさん汁にしておじいさんに食べさせてしまうという暴挙を犯してしまった

 ぼくは神様から使命を受け、君を懲らしめることになった。本当は最初の段階で、君は薪ごと狸の丸焼になって死ぬはずだったのに、運良く助かってしまったから火傷に唐辛子を塗ってあげた。普通ならここで痛みのショックで死ぬはずだったが、またまた命拾いしてしまった

 そこで君は泳げないから、いよいよ海に連れだし溺れさせることにしたが、どうやらまた助かったようだね。でも、君の手紙を読むと、やっと今までの行いに悪いと気が付いてくれたようだ。しかし、やはり君は生きていてはいけない。生きていることが、おじいさんを苦しめることになるんだから。償いをしても君の行為は償い切れるものではない。だから、早くおじいさんのところにいって、最初のとおり、生きながら狸の丸焼になるといいよ。この手紙を読んだら、すぐにでもおじいさんの所へ行くことだ。

 さようなら。本当に最後のさようならになることを願っているよ。

 

 遅すぎた改心をした悪党狸へ

 

狸を殺し損なった兎より

 

 

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