「香澄。はい!!これあげる。」
そう言ってまだ私の小さな手のひらにポイッと投げる。
私はそしてそれを必死に受け止めた。
そして手の中を覗いてみると茶色のモノ。
その時私はまだそれが何なのか知らなくて目を真ん丸にしてそれを見つめ
た。


「香澄。それはキャラメルって言うんだよ!!すごく美味しいから食べてみ
て!!」


そういいながら目をキラキラ輝かせてるあっ君に逆らえなくて私はそれを
口の中に入れた。
その瞬間にフワッと広がる甘さに私は夢中になった。
「あっ君ありがとう!!」
「どういたしまして!!」
そあ言ってニッコリと笑ってくれるあっ君が私は大好きだった。




だけどあっ君は突然引っ越す事になってしまい、それを私は必死になって
拒んだのを今でも覚えてる。


「いやぁ!!ずっとあっ君と一緒に居るのぉ…。」


そう泣き叫ぶ私。
その私を隣で宥めるあっ君。
「ごめんね香澄。もう決まった事だからしかたないんだよ。」
そう目を潤ませながら謝るあっ君。
「ほ〜ら香澄?笑ってばいばいしようね?」
そう語りかけるお母さん。
「…うん。」
そう言って私は確か無理矢理に笑顔を作ったのだと思う。
それを見て苦笑いをしたあっ君に最後に渡されたのも…キャラメルだった。












ピピピッ…ピピピッ…ピピピッ。
「…っん。」
体をモソモソと動かして時計を探す。
探り当てた所でスイッチを押す。
そして私はまたもう一回眠りにつく。



「香澄!!もういい加減起きないと遅刻するわよー。」
あぁ…。うるさい。眠い。もっと静かに起こしてくれ…。今何時か なぁ…。
お母さんの怒鳴り声ですっかり目が覚めたので気になって時計を見 た。


AM8:00


…やばい。
「…!!お母さんの馬鹿ちゃんと起こしてよ!!」
「馬鹿とはなんだこの低血圧娘!!さっさと支度して学校行け。」
「恵わぁ!?」
「恵はとっくに学校行ったわい!!」
「なんで先に行っちゃうのよー!!」
「あの子は基君が毎朝迎えに来てくれてるから大丈夫なの。」
「…わかってるもん!!」


それから歯を磨いて制服きてパンを食べながら学校へ走った。
なんでいつもいつもこんな時間に目が覚めるかなあ。
もう低血圧治したいよぉ…。
「行って来ます!!」
「いってらっしゃい。転ばないようにね?」
「うっしゃい!!!!」
そう言って家のドアをバタンバタンと開け閉めする。
このままだと遅刻すねのは目に見えている。
だけどそう易々と諦めてはいられない。
マラソン大会の時でもこんなスピード出した事がないくらいに全力で学校に 向かう。
もう疲れて頭に白いモヤがかかったような感じがする…。
そう考え携帯で時間を確かめとにかく走った。





「…すみ!?」






「…ん?」
誰かに呼ばれたのかな?と思い後ろを振り返って見ようと思ったけど
「門閉めるぞー。」
ちきしょう!!そんな暇がねぇ!!


「ぜんぜい!!待ってくらはい。」


おかしな日本語を一生懸命に発する。走り過ぎた…。苦しい。

「おぉ?ギリギリだ運いいなあ」
やった…ギリギリで間に合った…。



ガラガラッ…。と音を立てて教室に入る。すると私の親友がすぐに話 し掛けて来た。
「おぉ?今日は間に合ったんだ?低血圧ちゃんvv」
っく…。反論出来ない。
「うるさいよ鈴ちゃん!!」
この子は駿河鈴。すっごくしっかりしていて憧れます。
でも顔に似合わず毒舌でちょっと周りは近寄りがたいらしい。
でもそれを抑えられる年上の彼氏さんがいるん だよ♪

「鈴ちゃん麻生先輩の前でもそうなの?」
「忠之は関係ないでしょう!?」
真っ赤になって言う鈴ちゃん。こういう時本当に可愛いなぁ…。と思 う。


「うるさいぞー。席に着け。」

かっちゃん先生がわざとらしく大股で入ってくる。
キツイ事を言う事もあるけど生徒の事を考えて行動してくれる。



「お?相沢いるのか?今日は早かったなあ。まあいい早く席に着 け。」



「うるさいよかっちゃん先生」

一気にクラスは笑いの渦に巻き込まれた。
「う…。ひどいよぅ!!」
「まあ。元気だせやぁ低血圧のぼけぼけ少女。」
まぁ私はかっちゃん先生の恰好の標的だけどね…。







HRが終わりにさしかかって来た時。
「今日はうちのクラスに来た危篤な転校生を紹介するぞー。入ってこ い。」
危篤って、あんたうちのクラスの担任でしょう?
…まあ本人全然気にしてないから良いけど。
ガラガラッ…。と入って来た人物。
何だか見覚えのある…。もしかして…

「石川県から来た土屋明だ。みんな仲良くしろよ。」


私のボケボケの細胞が一気に目覚めた。






土屋明!?





「嘘!!もしかしてあっ君?!」
うぉ!!頭ぐーるぐる。
あっ君大人っぽくなってるー!!
「あ!!そのボケ顔は香澄か?!久しぶりだなー。全然変わってないのな♪」

…幼なじみにあって第一声がそれですか。
「ボケてないもん!!」
…皆に言われるけど、絶対そんな事はない…はず。

「うんにゃ。転校生君の言う通り香澄はボケだよねぇ?」

笑顔の鈴ちゃんの強烈な一言。
「鈴ちゃん…。」


その日を境に私は「激しく」ボケ扱いをさけるようになりました。
それはおいといて…。




「どうしたの?なんであっ君帰って来たの…?」
確かこっちの方にはもう帰ってこないって言ってたのに。



「あぁ…。それは」



とちょっと考えた後発した言葉
その言葉にクラスの女子はニヤっとした笑いを私にいっせいに向
けま した。


だけど私はその時その「言葉」の重要性を考えていなかったのです。


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