スイートリリィ

 

ショーンは、自分の腰の上に乗る男を、呆然と見上げた。

ユアンは、ぺろりと自分の唇を舐め、とても楽しそうに、かつ、いやらしく笑う。

ショーンの腰には、まだ、柔らかな質感のペニスが、押しつけられていた。

「ショーン」

ユアンが笑う。

酔いと、眠気と、体温の暖かさで、つい、気を許してしまいそうだったが、ショーンは、もしかして、これが危機的状況なのではないかと理解した。

「……ユアン?」

「なに? ショーン」

ユアンの手が伸び、ショーンの頬を撫でる。

ショーンは、冗談として紛らわすべきかどうか、思考を巡らせた。

ユアンの手が、優しくショーンの頬を撫でる。

摺り合わされる股間も同様だ。

ショーンは、酒のせいであまり上手い考えが浮かばない。

「ユアン、お前、何をする気だ?」

「一緒に寝ようか。ショーン」

ユアンは、ショーンの上に乗ったまま、自分の着ていたシャツを脱ぎ捨てた。

胸を覆う金茶の胸毛が照明に光る。

鍛えられ、盛り上がった胸がとてもセクシーだ。

「ショーン、あんたって、プリンセスだろ? なんつうか、確信? 同病相憐れむ? ぴんっときちゃったんだよね。ついでに近頃、少し退屈なんだろ」

ショーンは、のしかったユアンが、しきりにキスを繰り返すのを受け止めることもできず、かといって、ユアンに獣じみた恐怖も感じず、押し返すだけのタイミングがつかめなかった。

ユアンのキスは、決して奪うという感じのものではない。

それよりも、もっと、濃度の薄い。いや、どちらかと言えば、ショーンからのキスを望んでいるかのような柔らかいキスばかりだ。

それが、しきりにショーンに降ってくる。

「ユアン……?」

どうしたらいいのかを計りかねて、ショーンは、またもや尋ねる様な声で、年下の男の名を呼んだ。

ユアンが、ショーンの唇をぺろりと舐める。

「なぁ、ショーン。あんたさぁ。そんなにボンヤリで、よくもまぁ、生きてこられたもんだね」

いきなり、ユアンが、ショーンの上から退いた。

重かった体重がなくなったことには安心したが、ショーンの脇に膝をついたユアンは、楽しげにショーンのジーンズのジッパーを下ろす。

「おいっ! ちょっと!」

「ああ、ああ、本当に、ショーンときたらのろまだなぁ」

ユアンは、たしなめるような舌打ちを何度もさせながら、ショーンの下着ごとジーンズをずるりと下ろした。

「んんっ〜。かわいい」

すかさず、ユアンの唇が、ショーンのうなだれたペニスにキスをする。

だが、その直前に、ショーンは、つんつんと短いユアンの頭を掴んだ。

頭全体を掴まれ、つり上げられ、ユアンは口笛を吹く。

「ショーン。指が長い」

「ユアン、お前、殴るぞ!」

ショーンは、下着を引っ張り上げた。

ユアンが、口を尖らす。

「なんで?」

「なんでじゃないだろ! お前!」

ショーンは、ベッドに身を起こした。

ユアンは、口を尖らせたまま、足を投げ出す。

「何が嫌なわけ? 俺が嫌い? ショーン」

「ユアン、お前……」

ショーンは、頭をぐしゃぐしゃとかき回した。

ショーンが、メイクを落とした時、ついでに整えられた髪が、未だなんとか形を保っていたのだが、全て壊れた。

ユアンの目が興味を引かれたように見開かれた。

次第に鎧を脱いでいくショーンの様子を、ユアンがからかう。

「おっ、そういうのもいいじゃん。なかなかワイルドだよ。ショーン」

ユアンの大きな目は、純粋にショーンを褒め称えているとは言い難く、ショーンは、大きくため息を吐き出した。

「ああ、ユアン。お前も男前だ」

「だろ?」

悪びれない男は、またもやショーンの膝の上に乗り上げた。

「なぁ、ショーン。あんた、決して触れないでしらを切るつもりみたいだけどな。俺には、ちゃんっとわかってるんだ。ショーン。あんた、俺と寝れるだろ?」

ユアンは、脱力したように開いたままのショーンの口を塞いだ。

そっと舌が忍び込む。

ショーンの首に回るユアンの腕は優しい。

だが、それを押し戻し、ショーンは、思い切り眉を寄せ、ユアンを睨んだ。

もともと冷たく整ったショーンの顔だ。

その目に力が込められると、睨み付けられた相手は、思わず一歩後ろへと下がりたくなる。

「恐っ、さすがの迫力」

しかし、ユアンはおどけてみせた。

全く態度を改めるつもりもないらしく、濡れたショーンの唇を、ピンクの舌がぺろりと舐める。

だが、やはり緑の目が恐いのか、大きな目はしっかりと閉じられていた。

「ユアン!」

「ショーン。こういうの、久し振り? ちょっといいだろ?」

ユアンは、閉じていた瞼をぱさりと開けた。

青い目が、ひたすらまっすぐに、ショーンの目を見つめる。

間近で見ると、睫の重さに瞬きは音がしそうだった。

「ユアン、お前、いい加減にしろよ!」

ショーンは、ユアンを押しのけた。

ばたんと、ユアンは、ベッドに倒れる。

大げさに手を広げて、倒れた男は、助けてくれと、ショーンに向かって手を伸ばした。

「ショーン。助けてくれ。起きあがれない」

ショーンは、無視した。

ユアンは、手を振り回し、無視するショーンにアピールを続ける。

「ショーン。助けてくれってば。起きあがれないんだって言ってるだろ!」

「ああ! くそっ! 本当に面倒な!」

ショーンは、ぐいっと、ユアンの手を引っ張った。

ユアンは、その勢いのまま、ショーンにもたれ掛かる。

するりと身体を寄せたユアンは、まるでずっと昔から、こうやって身を寄せ合ってきたかと勘違いさせるほど自然で、ショーンは、無精々々その身体の重みに耐えた。

「なぁ、ショーン。一緒に寝よう。なっ、なっ、一緒に寝よう」

ユアンが、ゆさゆさとショーンに身体を擦りつけ、ねだる。

ユアンは、ショーンの髪に何度もキスをした。

「何が、一緒に寝ようだ。この酔っぱらい」

ショーンは、もう一度、ユアンを押しやろうとした。

「だ・か・ら!」

ユアンが大きな声を出した。

「何時までもかわいこぶってんじゃねえぞ! ショーン!」

ショーンの手が、ユアンの頭を一つ叩き、ユアンは、ベッドに撃沈した。

「いい加減に黙って寝ろ! この酔っぱらい!」

「ショーン。酷い」

ユアンは、わざとらしくベッドに顔を埋めしくしくと泣く振りをする。

ショーンは、その後頭部をもう一つ叩いた。

「ああ、もう、うるさい!」

「ショーンの尻なんか、きっとがばがばに決まってるんだ。すっげーやりまくりで、ゆるゆるの、病気持ちで……」

「もう一発叩かれたいか!」

「じゃぁ、違うって証明できる?」

くるりと上を向いたユアンは、手を振り上げたままのショーンに酷く真面目くさった目をひたりと当てた。

「……お前……」

「なぁ、ショーン。あんた、さっきから誤魔化してばっかだけど、本当は、俺と寝れるだろ。ついでに、随分退屈してるよな? 違うか?」

ユアンは、強固に言い張った。

ショーンは、ため息をついた。

「その根拠はどこから……」

振り上げていた手が、がくりと落ちる。

ユアンの唇に笑いが浮かんだ。

「勘。あんた、何回も聞き逃してくれたみたいだけど、俺、ちゃんと言ってるだろう? 俺もあんたと同じ立場なわけだ。ダーリンにほっとかれちゃって、すっかり疼いて」

ひゃっ、ひゃっ、ひゃっと、笑うユアンに対して、ショーンは、驚愕の表情を浮かべた。

それから、困ったように、微かに目元を染め、目を逸らす。

ユアンは、そこに、同意を認めた。

「だろ? やっぱ、同類ってのは、なんとなくね。鼻が利くわけだ」

「ユアン、お前、そういう事を……」

ショーンは、どうしたたって秘密にした方がいいことを口にするユアンが分からず、すっかり、困惑の表情を浮かべた。

ユアンが、ショーンに向かって手を伸ばす。

「そうそう簡単に口にするなって? 言わない。言わない。ショーンだから、言うだけだ」

「だが……」

まだ、言い募ろうとするショーンをユアンは、押しとどめた。

「もういいだろ? ショーン。で、だ。一緒に気持ちよくならないか? 忙しい。ああ、忙しい。お互いにな。それはいい。しかしだ。生身のこの身体をどうしてくれるんだってってな」

ユアンは、そっとショーンに近づき、唇を合わせた。

「ショーン。あんたこれだけ俺に告白させといて、自分だけ逃げたりしないよな?」

柔らかく抱いてくるユアンの腕が、ショーンを逃がさない。

青い目が誘うように、じっとショーンを見つめた。

「あんたが恋人のこと話してくれたら、できるだけ、その通りにするけど?」

ユアンの手は、ショーンが引き上げた下着の上をなぞった。

ジーンズの前は閉められていない。

ショーンの耳が真っ赤に染まった。

「うわっ、かわいい。そういう風なんだ。ショーン」

「ユアン……」

ショーンの目が、ユアンの顔の上を彷徨い歩いた。

年上の金髪は、この状況をどう受け止めようか、迷っている。

ユアンは、ショーンの首に片腕を回したまま、ベッドの上にショーンを押し倒した。

「ショーン。ショーンも俺にキスして」

自分の股間を押しつけるユアンが、ショーンのペニスを揉みしだく。

熱っぽく何度もキスを繰り返すユアンに、ショーンの手がそろそろとユアンの腰へと向かった。

ショーンは、ユアンの腰を抱き、そろりと舌を伸ばす。

たっぷりと舌を絡ませた後、ユアンは、ショーンの髪を撫で上げながらにやにやと笑った。

「やっぱ、ショーンも疼いちゃってる訳ね」

「ユアン、お前……」

からかうユアンをショーンは、睨んだ。

ユアンは、全く動じず笑っている。

年上の金髪を後ろへと撫で上げながら、額に頬にとキスをする。

「だって、ショーン。本当のことだろ?」

「それは、お前だ。ユアン」

ショーンが、ユアンの手を払った。

「そうだよ。俺、全然違うって言ってないだろ」

ユアンは、もう一度ショーンの額へと手を伸ばす。

そのまま顔を撫で、耳に触った。

「ショーン、かわいい形の耳をしてるね」

ユアンが、指先でショーンの尖った耳を撫でる。

ショーンが首を竦めた。

「やっぱり、弱いんだ。こんなかわいい形をしてたら、誰だって、触りたくなるよな」

ユアンがショーンに覆い被さり、くちゅくちゅと耳を噛む。

はうっと、ショーンが身体をこわばらせた。

ユアンは、くすりと笑う。

ユアンが、ショーンの耳をちろちろと舐め続けると、ショーンの手が、ユアンの裸の背中を撫でた。

「うん。ショーン。それ、きもちいい」

丸みのあるユアンの背中をショーンの指が撫でていく。

擦り合わされる二人の腰は、少しづつ、固くなり始めていて、ユアンは、自分からズボンを脱いだ。

下着越しにペニスをすりあわせる。

布地のなかにあるごつりと固いものがぶつかりあって、二人は、互いに足を絡め合った。

適度に鍛えられ、張りのある男の足だ。

二人は、遠慮することなく、互いの足を自分に引き寄せようともがく。

ユアンは、自分の足が、ショーンのジーンズに擦れるのに焦れ、ショーンに脱ぐようにと要求した。

「俺に脱がして貰えるなんて、思わないでくれよ? ショーン」

ユアンは、たっぷりの含みを利かせ、ショーンを大事にしてくれるばかりのいつもの男ではないのだと言った。

「怠けてて、自分ばっかり気持ちよくして貰えるなんて思って貰ってちゃ、迷惑だからな」

「ユアン……」

それでも、ユアンの手が、ショーンからシャツをはぎ取った。

ユアンは、ショーンの胸を彩る小さな乳首に吸い付く。

ちゅうちゅうと音を立てて吸い付く頭を、ショーンが抱いた。

ぎゅっと、抱きしめられ、ユアンはショーンの胸に顔を埋める。

乳首を吸ったままの唇が笑った。

「気持ちいい?」

ユアンは、舌で、乳首を押しつぶし、尖ってきたところに、柔らかく歯を当てた。

「……んんっ!」

ユアンの掌が、ショーンの胸を包み込むようにし、指先で乳首を摘む。

引っ張られ、ひきつった乳輪をユアンの舌が舐めていく。

まだ、ジーンズが下ろされていないショーンの太腿がもじもじと擦り合わされた。

ユアンの手が、太腿に伸びる。

ジーンズの中に入れられた手は、ショーンの太腿を撫でた。

ぷるりと柔らかい太腿を掴むように、ユアンの手が下へと動く。

「ショーン。俺には?」

ユアンは、目を閉じてしまったショーンの耳元で囁いた。

ぺろりと耳の中を舐める。

すっかり濡れた目を開いたショーンは、そろそろとユアンの胸へと手を伸ばした。

盛り上がったユアンの胸を掌に収める。

ユアンが目を瞑った。

ショーンの手は、ユアンの胸を手の平で撫でる。

尖った乳首がひっかかり、ユアンの口から、小さな声が漏れた。

「……っぁ……っ」

「……ユアン、ここ触られるの好きなのか?」

ショーンの整った指先が、焦らすように、ユアンの乳首の周りばかりを撫でる。

返事の代わりに、ユアンの手が、ショーンの太腿を撫で上げた。

足の付け根のとても柔らかくぷるぷるとした肉を揉む。

ショーンの指が、ユアンの乳首を摘んだ。

指先で潰すように摘まれ、ユアンは、びくりと背中をこわばらせた。

ショーンの指が、癒すようにユアンの乳首を撫でる。

そして、また、ユアンの身体から、力が抜けると、指先に力が込められた。

ユアンの手が、下着の裾から、ショーンへの進入を始めた。

垂れ下がった袋を柔らかく握られ、ショーンは、腰を引いた。

ユアンの胸の下へと顔を移動させ、下から、胸の盛り上がり始めを舐める。

「……っぁあ!」

ショーンの指は、短い胸毛に埋まるユアンの乳首を弄り続けた。

下から、乳首に向かってショーンは、舌を這わせていく。

ユアンの胸を覆う胸毛もたっぷり濡らす。

今度は、ユアンが、ショーンの頭を抱いていた。

早く乳首を吸って欲しいとばかりに、ユアンは、ショーンの頭を自分の胸へと押しつける。

ショーンは、ぷちんと固くなっているユアンの乳首をきつく噛んだ。

「痛っ!」

ユアンが、ショーンをもぎ離そうとした。

ショーンは、その力を受け流し、甘く噛みを続ける。

やわやわと舌先だけで、ユアンの乳首を舐った。

次第に、ユアンが自分から胸を押しつける。

「なぁ、ショーン。あんたの恋人って、S?」

きつい鞭の後に、たっぷりと甘い飴を差し出され、ユアンは、しっとりと濡れた目で、ショーンにキスをねだった。

ユアンの下着には、シミの点が浮かんでいた。

その腰は、刺激を求めて突き出されている。

ショーンの手が、ユアンの下着をずり下ろした。

照れくさそうなユアンの足が、ショーンの腕に絡みつき、その作業は、困難を極めた。

「こら、ユアン、邪魔をするな」

「せっかく、ショーンがサービスしてくれているのに?」

笑うユアンの手も、ショーンの下着を引っ張った。

ぷるりと勃ち上がったペニスが、ショーンの下着から顔を飛び出す。

ショーンの足が、脛へと絡みついたジーンズと下着を一緒に蹴り下ろした。

二人は、すっかり裸になった肌を押しつけ合った。

ユアンの手がショーンの柔らかな尻を握り、ショーンの手は、弾力のあるユアンの太腿を撫で上げる。

二人は、しつこいほどにキスを交わし合って、お互いのペニスを擦りつけあった。

ユアンの下腹を覆う、少し濃いめの金色の陰毛がとろりと先走りで濡れる。

ショーンのユアンに比べれば少ない陰毛が、ユアンのものを擦り上げ、ざらりと音を立てる。

尖った乳首は、どっちにとっても性感帯で、二人は、肩を抱き合って、お互いの小さなもので刺激し合った。

「……ユアン」

「うん? ショーン?」

熱心にショーンの茂みへとペニスを擦りつけていたユアンは、年上の舌を捕まえた。

ユアンの手が、ショーンのペニスを握る。

柔らかく扱かれ、ショーンの腰が揺れた。

ペニスは、小さな水音を立てている。

ユアンのものがショーンの太腿に押し当てられていて、ショーンは、それを握った。

ショーンは、気持ちよさそうに、目を瞑った年下の俳優を見上げながら、口を開いた。

「なぁ、ユアン、聞いてもいいか? お前の恋人って誰?」

ユアンの眉が機嫌悪く寄せられた。

 

 

続く

 

いかん。かわいこちゃんがいちゃいちゃしてるのかと思うと、つい、つい、引き延ばしていってしまう……。