僕の好きなマスター 7

 

湯上がりのほっとした気持ちで、ソファーに腰掛けていたオビ=ワンの耳元で囁かれた声。

「マスター、今日、ダメ?」

こんな時の甘い声が効果的なのを知っている弟子は、背後から師を抱き締め、ソープのいい香りをさせているオビ=ワンの首元の匂いを嗅いだ。

弟子は、いい匂いだと満足げに笑う。

吸い込まれる息の音に、オビ=ワンは、ぞくぞくとした快感を覚えた。

しかし、師の威厳を保つため、顔を顰めて抱き締めてくる弟子の腕を軽く叩いた。

「こら、アナキン」

そして、師は、最早微塵になりそうな自制心をかき集めて弟子からの誘いにも即答を避けた。

「アナキン、お前、今から……」

「ええ、俺も風呂に入ろうと思って」

鼻を首元に擦りつけるようにしてオビ=ワンの耳元で囁いたアナキンは、服を着たままの腕で白いオビ=ワンのバスローブを強く抱き締めた。

弟子は、まだねだる。

「ねぇ、マスター、ダメ?」

甘えた声の弟子は、断られることを想定しているとは思えない態度を取っていた。

洗ったばかりの清潔なオビ=ワンの喉に、弟子は口づける。

普段の弟子は、オビ=ワンからの接触に嫌な顔はしないが、そっけないほど、自分からそういう事をしなかった。

言葉は悪いが、アナキンが、オビ=ワンに過剰な接触を持とうとするのはセックス希望の時だけだ。

オビ=ワンはアナキンからの接触に、思わずぐらつきそうになった。

しかし、それを耐え、師は、弟子の頭を叩く。

「こら。せっかく洗ったのに汚れる」

オビ=ワンは、わざとらしく口をひき結んでいた。

アナキンは笑い、横に引き延ばされたアナキンの唇が、オビ=ワンの顎に触れた。

「風呂に入った後なら良いですか?」

アナキンは、舌を伸ばして、オビ=ワンの唇に触れていく。

オビ=ワンは、舐められる舌の感触に、唇がじんっと熱くなったように感じた。

きっと頬が赤い。

思わずオビ=ワンの目が閉じられた。

アナキンは、そっと唇に口付けていく。

甘いキスに、師の威厳は、オビ=ワンのポケットへとしまわれた。

キスを了承と取った弟子は、両手で挟んだオビ=ワンの頬を撫でた。

「じゃぁ、後で」

どっちが導く立場なのか、アナキンの指が、オビ=ワンの髪を撫でていく。

 

オビ=ワンは、することもなくソファーに座り続ける自分に、そわそわと落ち着きない気持ちだった。

さっきまでは、湯上がりの身体を冷ますことを目的に、師は、このソファーにのんびりと座っていられた。

だが、今はまるで、アナキンが出てくるのを待っているのだけが仕事のよう感じられ、ここに座っているのが恥ずかしい。

師は、書類をひろげてみた。

しかし、文字は目に映るだけだ。

勿論、データーパッドに打ち込みをしようにも、なんの文章もまとまらない。

オビ=ワンの弟子は、師が、愛してやまないほど、いい出来だった。

さすがのアナキンも、セックスを憶えたての頃は、オビ=ワンの方が許してくれ。と、根を上げるほど、毎晩激しく求めた。

だが、それでは、師の身体に負担が掛かりすぎることを理解すると、弟子は、師への気遣いのもと、若さをなんとかセーブし始めた。

「いつも側にいるのだから。いつでもできるのだから」と、確かにオビ=ワンは、熱病のような熱心さをみせた弟子を諫めはした。

しかし、なんもそこまで、節制しなくてもいいのではないか。と思うほど、いまでは、間隔のあくペースだ。

実は、師は、弟子の浮気を疑っている。

熱いもので、身体を一杯にされ、息が付けないほど強く抱き締められることを憶えたオビ=ワンにとって、それは、物足りなかった。

今晩への期待で、つい、オビ=ワンは、アナキンのセックスを思い出していた。

するとなれば、アナキンは、オビ=ワンが蕩けるほど、熱心に愛してくれる。

そう、弟子は、普段の淡泊さを忘れたように、獣のように激しく師を求める。

そして、師も、飲み込んだペニスを喜び、キュウキュウ音がするんじゃないかと言うほど、きつく締めた。

オビ=ワンは、アナキンに愛されるのが好きだ。

柔らかくなった師の尻にまだ更にジェルを施すほど、アナキンは、優しいセックスをしてくれる。

入れてからだって、オビ=ワンのいいようにばかり突き上げてくれた。

オビ=ワンは、尻をもぞもぞと動かした。

欲しいものが明確になった今、オビ=ワンの尻は、激しい飢えを感じて疼いている。

それを誤魔化そうと、オビ=ワンは何度も座り直した。

しかし、身体は勝手に、アナキンの形を思い出し、ずくんと腰が甘くしびれた。

下腹が重い。

キスを受けた唇が腫れたように熱く感じる。

オビ=ワンは、しきりに足を組み替えた。

熱くなった頬を両手で挟んで、師は、ため息をついた。

「……何をやってるんだ……」

言葉を裏切り、落ちたため息は甘い。

そして、腰に溜まった熱は、決してオビ=ワンから逃げ出そうとはせず、オビ=ワンは、自分のペニスが硬くなりつつあるのを感じていた。

バスローブの股間が浮き上がってきている。

「……ホントに、何をやってるんだ……」

師は、手をペニスへと持っていってしまいたい。

硬くなり、熱を孕んだそこを扱き、アナキンの顔を見る前に、一度楽になってしまいたい。

 

オビ=ワンの手が、そろそろと自分の太腿を撫でた。

たったそれだけの刺激で、このジェダイは、眉の間に皺を刻み、唇を小さく開けてしまった。

師は、アナキンを待ち望んでいた。

しかし、今は、この恥ずかしいことをしている居ないでいてくれた方がいい。

オビ=ワンは、伏せていた赤い目尻の瞼をそっと開けた。

恥ずかしそうに、周りを見回したオビ=ワンの目に、腕を組み、にやにやと笑っているジェダイナイトが見えた。

 

「あっ、残念。みつかりましたか」

湯上がりらしく髪がまだ濡れているアナキンは、もたれ掛かっていた壁から身体を起こすと、ゆっくりとオビ=ワンに近づいた。

「……アナキン……いつから……」

オビ=ワンは、顔をまっかにして、弟子を見た。

「可愛いマスターが見られるかな。と、思って、そっと出てきたんですよ」

同じソープの匂いをさせているアナキンの腕が、オビ=ワンを抱く。

手は、遠慮無しにバスローブの襟を割った。

立ちあがっているオビ=ワンの乳首を弟子は摘む。

「お待たせしちゃいましたね。マスター」

弟子が、文句を言いかけているオビ=ワンの唇をキスで塞ぐ。

「お尻、もじもじさせちゃって、かわいかったですよ。マスター」

普段は仏頂面の多いこの弟子は、セックスの前、最中、後、その間は、甘い言葉も、態度も何一つ出し惜しみしなかった。

そして、セックス以外の時だって、まるで愛情を出し惜しみしないオビ=ワンは、赤い顔のままアナキンのキスに応えた。

 

END

 

もの足りないです。師匠。と、いうわけで、7.5へ、GO