大人の恋愛 6

 

 

 

寝室に一人取り残されたショーンは、口元をおさえ、毒づいた。

「なんだってんだ。全く」

ショーンは、ヴィゴがしようとしていることが、セックスなのだと思った。

散々、人のことを身体だけ繋いでおけば、それですむと思っているなんて、間違いだ。と、見下したくせに、結局同じことをしようとしているヴィゴに対して、ショーンは冷笑を浮かべた。

ヴィゴは、情熱的なセックスで愛情を示し、どのくらい旅行に行って欲しくないのかと証明しようというのだ。

ショーンは、ベッドに向かって歩きながら、舌打ちしたいような苛立ちの他に、満足感も感じていた。

「誰が許してやるってんだ」

ショーンは、求め続けて来た本物の嫉妬心をむき出しで差し出されることに、喜びとともに嫌悪感を感じていた。

ショーンは複雑な、けれども嬉しそうな笑みを浮かべている。

「結局、あいつも……」

ベッドにショーンが腰を下ろすと、ヴィゴがドアを開けた。

「お待たせ。ショーン」

にこやかに笑ったヴィゴは、手にタオルの掛かったプラスティックの洗面器を持っていた。

ショーンは冷たくヴィゴを見、口を開いた。

「ヴィゴ、俺はセックスなんかで丸め込まれたりしないぞ」

「旅行のことか? ああ、そうだろうな。ショーンは、俺がどんなに頼んだところで、意見を曲げたりはしてくれないだろう。そんなことはわかっている。言ったろ? 俺は、すっかり目が覚めたんだ」

ショーンに向かって近づいたヴィゴから湯と、石けんの匂いがした。

「なんだ?」

ショーンは、ヴィゴの持つ洗面器に目をやった。

「気になるか?」

ヴィゴは、洗面器を床におくと、ベッドに座るショーンの太腿に膝を載せた。

「なぁ、ショーン」

ショーンの顔を仰向かせ、覆い被さるようにしてキスをしたヴィゴは、ショーンの口が堅く引き結ばれていることにくすりと笑った。

「ショーン。旅行を取りやめろなんて事は言わない。だが、俺は、ショーンのことを愛しているから、オーリとなんか旅行に行って欲しくないのも事実だ。あんたのことを他の誰にも触らせたくない」

ヴィゴは、ショーンの背中を撫で、その手を尻に向かって動かしていった。

「ショーン、あんた、もしオーリがどうしてもって、すごい勢いでセックスしてくれって言い出したら、一回だけだったら。くらいのことは言うよな?」

「さぁ? ……でも、もしかしたら、言うかもな」

ショーンは、冷たい、だが、どこか満足感をたたえた目で、ヴィゴを見下した。

唇が、綺麗なカーブを描いている。

ヴィゴはくすりと笑った。

ヴィゴの手は、ショーンの尻をなで回し、唇は、何度もショーンの頬へと口付けを落としていた。

「これが、俺の惚れてるショーンだ。こんな奴に、誠意を期待してたなんて、俺はなんて間抜けだったんだろう」

ヴィゴは、いつ振り落とすのが効果的なのか、タイミングを計っているショーンの様子に口元を緩めながら、尻を掴んでいた手をショーンのシャツの中に入れた。

「ショーン、大好きだ」

ヴィゴは、ショーンの肌を手のひらで撫で、その感触にうっとりと目を細めた。

きめの細かいショーンの肌はヴィゴの手に吸い付くようだ。

ショーンがヴィゴを振り落とそうと、立ち上がりかけた。

「まだ、早いよ。ショーン」

ヴィゴは、ショーンの膝に乗せた力を強め、ショーンの動きを阻むと、手の動きを変えた。

手は、ショーンのジーンズのボタンを外す。

「ヴィゴ、する気なのか? 俺がさせると思ってるのか?」

「どうかな? 本当にショーンはさせないかな?」

ヴィゴの手は、するりと下着の中へと入り込んだ。

「こういうの、わかりやすくて、ショーン、好きだろ?」

ヴィゴの手が、ショーンの陰毛に触れた。

下腹をくすぐるヴィゴの指に、ショーンは、身体をよじって、くすぐったさを訴えた。

「やめろ。ヴィゴ」

「ショーン、もう少しだけ、俺に気持ちの証明をさせてくれ」

ヴィゴは、ショーンの尻をジーンズからむき出しにすると、ショーンの上半身をベッドへと押し倒した。

Tシャツをめくり腹の辺りにキスをし、ショーンの太腿をなで回す。

「ショーン、少しだけ、尻を上げてくれ。このままじゃあんただって窮屈だろう?」

尻の半分ほどにしかずり下ろせていないジーンズは、ショーンに踏まれている。

下着の中からペニスを掴みだしたヴィゴが柔らかな口付けを先端に与えるのに、ショーンはほんのわずかではあったが、腰を上げた。

「サンキュー。ショーン」

不機嫌な顔のショーンに微笑み、ヴィゴは、ショーンのジーンズを太腿の半分ほどまで下ろしてしまった。

「拭かないのか?」

ペニスにキスをするヴィゴを見ながら、ショーンは床におかれた洗面器にちらりと目をやった。

「そのために用意したんだろう?」

ショーンは、シャワーを浴びていなかった。

そうとはっきりわかっている状態で、お互いの身体に触れるのは初めてだ。

ヴィゴは、覆い被さっていた身体を起こし、洗面器を引き寄せた。

しっかりとショーンの太腿の上に乗り、拘束したまま、タオルの掛かったものをベッドの上に置いた。

「別にそういうわけじゃない」

ヴィゴは、にこりと笑うとショーンの唇を奪った。

激しいキスを続けながら、手は、ショーンに気づかれないよう素早くタオルの下のはさみを握った。

「動かないでくれよ。ショーン」

キスを続けながらも、ちらりと下へと視線を流したヴィゴは、ショーンの下腹部を覆う毛を手に掴むと、ためらいもなくはさみを入れた。

ザクリ、っと、切れる音がした。

「なにを!」

腹に当たった生暖かで硬いものの感触と、音に、ショーンは身体をすくめた。

「危ない! 動くな、ショーン!」

ヴィゴの手の中に、頭髪よりは暗い色をしたブロンドが切り取られた。

「…………ヴィゴ、お前、何を……!」

目を見開いたショーンは、あわてたように自分の下腹へと手を伸ばした。

ヴィゴは、ショーンの手を避けながら、もう一度はさみを動かす。

ザクリと、また、陰毛が切り取られた。

「何をしてる! ヴィゴ!」

「危ないって、言ってるだろう? あいにく、うちにはごく普通のはさみしかないんだ。あんたに怪我をされちゃたまんないから、大人しくしててくれ」

ヴィゴは、自分の手に触れる短くなった毛の感触に驚きで固まっているショーンを見下ろしながら、素早く刈り込みを行っていった。

もともとたいした面積でもない。

すぐ、鼠蹊部の陰毛は根本から3ミリほどを残して、切り落とされてしまう。

「ヴィゴ!」

ショーンが、声を張り上げた。

「ショーン、こっちは武器を持ってる。俺を傷害罪で訴えたかったら、好きに暴れてくれて結構だ。だが、このペニス、これが、なくなっちまったら、俺は、きっと泣くほど寂しい思いをするだろうな」

不格好に切りそろえられた陰毛の中に垂れるショーンのペニスをヴィゴはつまんだ。

注意しながら、はさみの先をペニスに触れさせる。

「……ヴィゴ」

「もう、毛なら切っちまった。今更、抵抗したところで、人に見せられない状態になったのは変わらない」

ヴィゴは、はさみを持ち替え、威嚇するようにショーンの腹の上を滑らせながら、洗面器の上のタオルを剥いだ。

半分ほどためられた湯の中に、石けんと刷毛、そして、カミソリが浮かんでいる。

ヴィゴの手が刷毛を取り上げた。

石けんに擦りつけると、有無を言わせず、ショーンの下腹に塗りたくる。

「やめろ! ヴィゴ!」

「今度は、はさみよりずっと危ない。本当に動くなよ。ショーン」

ヴィゴは、カミソリを手に、にやりとショーンを見下ろした。

身体を硬くしたショーンのペニスを掴み上げ、その周りに生える短い毛をカミソリが剃り落としていく。

「ヴィゴ……」

「こうだったら、オーリの前で絶対に脱げないだろう?」

「狂ってる」

「まあね。多少自覚はある。でもこれが、あんたにも俺にも最良の方法だ。これで、俺は安心してあんたのことを旅行に送り出しやれる。そして、あんたも、俺の深い愛情をたっぷりと感じながら、でも、自由に行動することができる。お互いにある部分は妥協し、ある部分は思い通りだ。俺たちにはぴったりだろう?」

「嘘をつけ!」

ショーンは、腹の上を行き来する鋭い刃物の感触に身震いしながら、強く歯を噛みしめた。

ぞりぞりと音がするたびに、下腹部が頼りなくなっていく。

「ショーン、動くなって。危ないだろう?」

ヴィゴの手は、器用にショーンの鼠蹊部を剃り上げた。

刃物を手に、ヴィゴはショーンを脅す。

「ショーン、すっかり前は綺麗になった。だけど、こうやって見てると、ペニスの後ろにだけみっしり毛が生えててかなりみっともない。さぁ、股の間の毛も綺麗にさせろ。それとも猥雑で、超セクシーなこのままの姿で、一枚撮っておいてやろうか?」

ショーンは、顔を真っ赤にさせたまま、目をつり上げた。

「やめろ。ヴィゴ。もう離せ。これ以上、何もするな!」

ヴィゴは首を横に振った。

「それは、できない。なぜなら、俺がショーンのここを全部剃っちまいたいんだ」

「なんで!」

ヴィゴは悲しげなため息を吐きだした。

「だって、ショーン。ショーンみたいな浮気者は、前をすっかり隠しちまって、尻だけ上げて、挿れてくれってねだりかねない」

「そんなことするわけないだろ!」

ショーンは、ペニスに添えられたカミソリの感触に動くこともままならず、歯を噛みしめたまま、ヴィゴに大きな声を出した。

「離せ! ヴィゴ!」

「ショーン、あんまり俺を驚かすな。手がすべったら、どうしてくれる」

ヴィゴは、体重を掛け、押さえつけていたショーンの太腿から尻を上げると、今度はショーンの腹の上へと腰を下ろした。

ショーンに尻を向ける形で座ったヴィゴは、屈辱に震える金髪に指示を出した。

「足を曲げてショーン」

言葉とともに、脅しのためのカミソリが、ぺたぺたとショーンのペニスを叩く。

「……くそぅ!」

ショーンはのろのろと足を曲げた。

ショーンの足がVの字を作る。

しかし、太腿に絡まるジーンズのせいで、うまくヴィゴは毛を剃ることができなかった。

ヴィゴは、ショーンの足からジーンズを取り去り、大きく足を開かせた。

「絶景」

手に握るカミソリを離しもせずに、鼻歌交じりのヴィゴは器用にはさみで陰毛をカットする。

「危ないから、とにかく動くなよ」

ペニスを前倒しにし、玉を左右に引っ張り動かして、綺麗に毛を刈り込んでいくヴィゴは、尻の穴の周りにまで、はさみを近づけた。

「ショーン、もう少し尻を上げて」

股の間を覗き込むヴィゴは、カミソリを持った手で、太腿を抱いていた。

カミソリの刃先がショーンの肌に触れている。

ヴィゴは、はさみを動かし続けた。

「全部、綺麗にしてやらないとな」

ヴィゴは、長かった毛を全て綿毛のように短くしてしまうと、また、石けんを塗りたくった。

ショーンがびくりと身体をすくめた。

「湯が冷めちまったか? 冷たい?」

「お前は、狂ってる。ヴィゴ」

「そう。でも、こっちの俺の方が、まだ、あんたのお気に召すだろ? なんと言っても正直だ」

ヴィゴは、白い泡で覆われたショーンの股の間にカミソリを当てた。

「赤ん坊みたいにつるつるにしてやるからな、ショーン」

「そんなことして何が楽しい!」

ショーンは、大きな声で怒鳴ったが、ヴィゴの手を止めることはできなかった。

ヴィゴは、細心の注意を払いながら、ショーンの股ぐらで作業に励んでいる。

肌に触れる湯が冷えていくのに、ショーンは、ぶるりと身体を震わせた。

「危ない!」

ヴィゴは、あわてたように袋付近へと当てていたカミソリを引いた。

「怪我するって言っただろう? ショーン」

「だったら、やめろ!」

「前はすっかり綺麗になってるんだぜ? ここの毛だけ残すのか?」

ヴィゴはペニスの後ろに生えている石けんまみれの毛を指先で撫でながら、ショーンに聞いた。

「もう、こんなに短くなってるんだ。剃ってしまった方が、いっそすっきりする」

「誰もすっきりなんてしたくない」

「ああ、ショーン。ベッド下にビニールシートでも引いておけばよかったな」

ヴィゴは、ショーンを無視して、水分を吸い込み、冷たくなっているシーツに眉を寄せた。

「冷たいだろう? すぐ、すませてやるからな」

開かせた足の間に顔を突っ込んだヴィゴは、丁寧な作業でショーンの毛を剃り落としていった。

 

ヴィゴは、ショーンの尻を左右に大きくわけながら、穴の周りの皮膚を伸ばした。

「あとちょっとだからな。ショーン」

抱え込むようにして、ショーンの尻を浮かせているヴィゴは、指先で、大きく尻の谷間を割け、短い毛を剃り落とす。

「ほら、これで終わりだ」

最後の一本まで丁寧に剃ったヴィゴは、手早くタオルを絞るとショーンの股の間をぬぐった。

すっかり冷えていたショーンの股の間が、生暖かなものでつつまれる。

硬くしていた足の力が思わず抜けて、ショーンは、思わず、ため息をついた。

「まだ、少し暖かいだろ? 気持ちがいい?」

ヴィゴの声は、嬉しそうに弾んでいた。

びくり。と、ショーンはまた身体を硬くした。

「つるつるだぞ。ショーン。本当に赤ん坊みたいだ」

ヴィゴは、タオルを取り去った柔らかな皮膚を指先で触れた。

普通であれば、当たり前に絡む毛がなく、指は、弾力のある肌をどこまでも辿っていく。

「気持ちがいい。あんた、ここの皮膚は、少し、赤っぽいんだな」

ヴィゴは、股の間に鼻を突っ込むようにして太腿に頬をすり寄せた。

そのまま、うなだれたペニス付近の鼠蹊部にも頬をすり寄せる。

「かわいい。ショーン。すごくかわいいよ」

ヴィゴは、うっとりと石けんの匂いがするショーンの肌にキスを降らせた。

ショーンは、ヴィゴの手から自分を脅していたカミソリが離れたことを確認した。

身体を起こそうとした。

ヴィゴは、すぐさまそれに気づき、ショーンに掛ける力を増やした。

「ショーン。まだ、終わってない」

尻で強くショーンの胸を踏み、開かせた足は両手で固定した。

「ショーン。どうせ、こんなんにされちまったんだ。俺の愛情って奴を最後まで味わえよ」

「いらない!」

「そんなこと言うな。初めて俺から、セックスしようって誘ってるんだぞ」

「それで全てが許されると思ってるのか?」

ショーンは、ベッドの上で激しく身体をばたつかせ、ヴィゴを振り落とそうとした。

「ショーン、穴が、横に引っ張られたり、すぼんだりするのまではっきり見える」

ヴィゴの言葉に、ショーンは、必死になって足を閉じようとした。

ぴったりと股を合わせ、女性がするように足を横へと流す。

「ひねった腰がセクシーだ」

ヴィゴは、口笛を吹いた。

ショーンは、足を振り上げ、ヴィゴを蹴ろうとした。

「ショーン、そんなに暴れるようなら縛るぞ」

ヴィゴは、自分の思いつきに嬉しそうに笑った。

「そうだな。明日も撮影があるってのに、俺の顔をひっぱたいたり、ばりかくような手癖の悪い腕は、縛っちまった方がいいか」

ヴィゴは、ショーンの身体を転がすと、背中からのしかかり、一纏めにした腕を後ろ手に縛り上げた。

撮影のため、日々、ストイックに鍛え上げているヴィゴの腕力はたいしたものだ。

それに比べ、ショーンは、映像的に美しく動ける最低限度の筋肉を作る事には妥協をしなかったが、それ以上の努力は嫌いだった。

ショーンの腕を縛り上げたタオルは、股の間をぬぐった濡れたもので、結び目は固く、ショーンがどれだけもがこうがほどけなかった。

ヴィゴは、乗り上げていた背中を降りると、今度は、ショーンの太腿の上に腰を下ろし、盛り上がっている二つの白い山に指を立てた。

「ショーン、ここで、俺のこと愛してくれるだろう?」

全く毛のない尻の穴は、ヴィゴの指で尻の肉を掴まれると、引きつれる皺の様子までみせた。

「ここでするの、だいぶ、好きになってくれたもんな」

ヴィゴが、貰った金の分だと、ひたすら奉仕するセックスを心がけ、蕩してきたその部分は、上手にヴィゴを飲み込むようになっていた。

だが、ヴィゴのサイズにぴったりだと言うには、きつかった。

「ショーン、あんたがよがってる間に、俺がきつい思いをしてたのは気がついてたか? それに、本当のことを言えば、あんただって、俺のを入れてからなじむまでの間、きつかったろ?」

ヴィゴは、ショーンの尻を一つぴたんと叩いた。

「大人しくしてろよ。ショーン」

ヴィゴは、ショーンの上から腰を上げ、ベッド上に乗っていた洗面器を取り上げ、床においた。

ついでに、ベッドの下をのぞき込む。

勿論、ショーンがその隙を逃すはずはなく、両腕を縛られた不安定な状態で、ベッドの上に起きあがった。

「ショーン。危ないぞ」

ヴィゴは、床から、ショーンを見上げ、注意を与えた。

「付き合っていられるか!」

怒鳴ったショーンは、ベッドから降り、逃げ出さそうとした。

ヴィゴは、手を伸ばしショーンの足を掴んだ。

バランスを崩したショーンが、胸から、床に打ち付けられそうになる。

ヴィゴは、自分の身体を床とショーンの間に割り込ませた。

ショーンが床で顔を打つ直前に、その身体を抱き留める。

「怪我をしたら、どうする気なんだ」

ヴィゴは、ショーンを抱きしめた。

「ヴィゴ、離せ!」

腕の中で、ショーンがもがく。

ヴィゴは、ショーンの尻から股の間に手を入れて、柔らかな部分を掴んだ。

毛のない部分を露骨に触り、ショーンを絶句させる。

「こんな格好をして、どこに行く気だ? 誰かに見て欲しいのか?」

ヴィゴは、縮こまっているショーンの玉を握った。

「誰に見て欲しいんだ?」

優しい声音を出すくせに、ヴィゴの声は恐かった。

ヴィゴによって柔らかく揉み込まれる袋の恐怖が、ショーンの動きを止めた。

「俺は、ショーンの事が好きだって言ったよな。ずっと愛し合って行きたいと望んでいると言ったはずだ。あんたが相手だってのに、堅実に二人の関係を築きたいなんて思っちまったくらい、あんたにぞっこんなんだよ。他の誰にもあんたを渡す気なんてない」

「誰が、他の奴なんかと! お前が変だから、嫌だって言ってるだけじゃないか!」

「じゃぁ、ショーン、ここで、ゆっくり俺とセックスしようぜ?」

ヴィゴは、先ほどベッドの下から引っ張りだした、小さな箱を引き寄せた。

「ショーン、あんたは、最初の思いつきまではいいんだよ。だけど、その後、その努力を継続できないってところが問題だよな」

「……ヴィゴ?」

「ここの拡張をしよう。少し緩めてからすれば、あんたも、俺も楽しめる」

ヴィゴは、箱の中から、アナル用の拡張ポンプを取りだした。

見かけはたいしたことがないが、これを入れて、空気を送ると、腸の中は、かなりな広さにまで押し広げられる。

「こんなものをあんたが買ってくるなんて、かなりびっくりした。だが、使ったのは結局一回だけだもんな。たった一回で、苦しいってすぐ投げ出して、ショーンと付き合ってこうと思うと、愛情ってものには、継続する努力が必要なんだと教えてやらないといけないとつくづく思うよ」

ヴィゴは、ショーンの尻の穴を指先で撫で、指先を穴の中へと押し込んだ。

濡れていないショーンの穴は、ヴィゴの指を受け入れない。

「無理矢理突っ込まれたくなかったら、ショーン、ジェルを塗ってください。ってお願いしろ」

ヴィゴは、床にぶつかるはずだったショーンの顎にキスをした。

ショーンは、口を開かない。

目をつり上げ、唇を噛んでいる。

身体は、力がはいり、怒りのあまり震えている。

ヴィゴは、ショーンの目尻にキスをすると、ため息を吐き出した。

「俺も甘いよな。どうして、こんなにあんたに惚れちまったんだろう」

ヴィゴは、同じ箱に入っているジェルを手に取ると、指先にべっとりと付けた。

 

                          →続く