大人の恋愛 2

 

 

 

ヴィゴは、ショーンの足元にひざまずき、両腕で太腿を抱きしめた。

ジーンズの表面に唇をよせ、そのまま、体を深く折った。

ショーンは、裸足だった。

ヴィゴは、足の項にキスをして、くるぶしに唇を寄せた。

「やめろよ。ヴィゴ」

床に額ずくようなヴィゴの行動に、戸惑ったような声をショーンが出した。

しかし、ヴィゴは、頭の上から降ってくるのを無視して、ジーンズをめくり上げ、細い足首にキスを続けた。

「やめろってば、ヴィゴ」

続くキスに、ショーンの声には、くすぐったがるような甘さが含まれた。

ヴィゴは、床に頬がすれるのも構わず、ショーンの足へとキスを続けた。

「ショーン。ショーンは、俺のキスを買ってくれたんだろう?」

ヴィゴは、ショーンに金で買われてやるつもりだった。

唇を寄せている方のショーンの足を、持ち上げた。

ヴィゴは、足を掌の上に抱くように乗せ、羽根のように軽いキスを繰り返した。

足の指、一本一本にもキスを与えた。

「なぁ、ヴィゴ……」

「うん? なんだ? ショーン」

ヴィゴは、本当なら、今すぐにでも押し倒し、自分が何を踏みにじろうとしたのかを思い知らせてやりたい相手に、優しい声を出した。

しかし、暴力よりももっと手ひどい裏切りをヴィゴはショーンに味合わせる気だった。

「ヴィゴ……」

ショーンは、ヴィゴの態度が急変したことに対して困ったような笑い声を聞かせた。

だが、金髪は大した危機感も感じずヴィゴの髪をなでた。

力を抜いた身体をすっかり壁へと預けている。

ヴィゴは、ショーンの足の親指を口に含んだ。

「ヴィゴ……」

口の中で指を弄ばれる感触に、ショーンの口から甘い吐息がこぼれ落ちた。

ヴィゴは、ショーンの親指と人差し指の間をしつこく舐めた。

ショーンが体を曲げ、ヴィゴの頭を抱いた。

「……ヴィゴ……そんなこと……するな」

丁寧に舐め上げるヴィゴに、ショーンの声が上ずっていた。

「したいんだ。ショーン。気持ちがいいだろう?」

「……でも……」

ヴィゴは、唾液で濡れたショーンの親指の爪を噛んだ。

見上げると、ショーンは、まるで痛いかのように目を細めていた。

ヴィゴは、かちかちと歯を鳴らした。

ショーンは強く目を瞑り、顔を左右に振った。

頬が薄く色をつけ、唇からは、湿った息が漏れていた。

ヴィゴは、足をなで上げた。

ジーンズのごわごわとした感触を掌に感じながら、中にあるショーンの肉体を愛撫する。

ヴィゴの手が、ショーンの尻に届くあたりで、ショーンが、ヴィゴの耳元へと唇を寄せた。

「……ヴィゴ。ここで?」

ショーンは、ヴィゴがセックスに同意したことを当然のように受け入れていた。

だが、ヴィゴは、ショーンが思うように、目の前に差し出されたセックスの誘惑に負け、イニシアティブを取られたプライドのきしみを受け入れたわけではなかった。

たしかに、ショーンの肉体は魅力的だ。

しかし、魅力的だからこそ、それを餌にしようとするショーンに腹がたった。

ヴィゴは、やわらかな身体を腕の中に抱きこんで、上目遣いにショーンを見上げた。

「いや、ショーン、こんなところじゃ、落ち着かないだろう?」

ヴィゴは、自分とのセックスを金で買おうとしたショーンなど、この床につよく頭を押し付け、下半身だけを剥き出しにしてやって、レイプしてやりたかった。

抵抗しようものなら、殴って泣かせたまま犯してやるのが、ショーンには似合いだ。

だが、ヴィゴは、あえて、そうはしなかった。

そのくらい、ショーンのしでかしたことは、ヴィゴの怒りを冷やした。

どこまでも、甘く、優しく。

金で買えるセックスというものが、どんなものなのか。

ヴィゴは、ショーンに知って貰うつもりだった。

それは、愛情に満ちたセックスとよく似たものだろう。

だが、いつかは、ショーンだって気づくはずだ。

インスタントに手に入る愛は、本物とよく似てはいるが、通い合う気持ちがない。

ヴィゴは、請うようにショーンを見上げ、ベッドへの誘いの言葉を口にした。

ショーンは、小さなため息をついた。

照れたように笑う顔が、真摯に見上げるヴィゴから目をそらしがちに、小さく頷いた。

「……なんだか、恥ずかしいな」

ショーンは、しきりに唇を触った。

ヴィゴは、床から立ち上がり、ショーンの手を握った。

「ショーン、ご希望なら、抱き上げて連れてってやろうか? もっと恥ずかしい気持ちになれるぞ」

ヴィゴは、頬を引き上げ、笑った。

幸せな勘違いをしているショーンは、ヴィゴの手を握り返し、笑いながら唇を曲げた。

「出来もしないことを言うな、ヴィゴ」

「……できないかな?」

ヴィゴは、ショーンの体を抱え上げるために、もう一度しゃがんだ。

足を抱こうとするのに、ショーンが慌てたように逃げる。

「無理だ。ヴィゴ。俺、今、ウエイト増やしてるんだぞ」

「俺は、ショーンを愛してるからね。あんたなんか、羽根みたいに軽いさ」

ヴィゴは、ショーンが赤くなるのを見守りながら、体を起こした。

ショーンが、本気でセックスを買い取る気がなかったことなど、ヴィゴにだってわかっていた。

あれは、金髪なりに考えた強引なきっかけのつもりだったのだろう。

だが、その単純な発想は、反省するだけの価値があった。

ヴィゴが大切に育もうとしていたものを踏みにじったその行為だけでも、反省の価値が十分にあったが、ショーンは、金を払うということを切っ掛けに選んだ。

その軽率な選択の仕方は、ヴィゴの気持ちをより苦くした。

ヴィゴは、恥ずかしそうに髪をかき上げるショーンの腕を取って、ベッドルームへと誘導した。

口付けをしながら、ショーンの上着を脱がしていく。

 

ショーンは、照れたように目を伏せて、ヴィゴに服を脱がされていた。

ヴィゴは、ショーンを脱がす合間に、何度も唇を求め、頬にも、首筋にも、何度も何度もキスを繰り返した。

「もともといつもこんな感じなのか? ヴィゴ」

ショーンは、始まってしまえば、あまりに優しいヴィゴのセックスに、くすぐったさを感じた。

「うん? ショーン?」

ショーンのTシャツを腕から抜き取り、床に放り投げ、ヴィゴはショーンの舌に舌を絡ませた。

口の中全てを支配するほど、熱く、そして甘ったるく、ヴィゴはショーンにキスをせがむ。

「とても、優しい。……いや、あんたが、優しい男だってことは知ってるつもりだったが、こんな礼儀正しくベッドに誘われるだなんて、思ってもみなかった」

ショーンの唇は、すっかり濡れていた。

ヴィゴは、ショーンの背中を撫でながら、もっとショーンの唇を濡らした。

「さっきはいきなり怒りだしたし」

ショーンは、ちらりと目を上げて、ヴィゴをなじった。

ヴィゴは、ショーンの口を塞いだ。

「せっかく、ショーンが誘ってくれたんだ。ポイントを回復したい」

キスを繰り返すヴィゴは、嘘を口にした。

本当は、ショーンの舌に噛み付いてやりたかった。

悲鳴を上げるショーンは、きっと涙を溢れさせ、顔をくしゃくしゃにして、閉じることも出来ない口で、ヴィゴの名を必死になって呼ぶだろう。

ヴィゴは、それでも許してやらないのだ。

伸びたショーンの舌に歯を立て、にやにやと笑いながら、痛みを与え続ける。

ショーンは、素直にヴィゴへと舌を預けている。

ヴィゴは、力を入れたくなる誘惑を振り切り、ショーンの舌を甘噛みした。

痛みを与えたところで、ショーンはヴィゴの気持ちを理解しない。

「ヴィゴ……」

キスの熱っぽさに、自分から腰を押し付けだしたショーンは、自分の思いつきが功を奏したと、楽しげに笑いながら嬉しそうにヴィゴの目を覗き込んだ。

「……ヴィゴ。もしかして、これは、料金分のサービスか?」

ショーンの手は、ヴィゴのTシャツをめくり上げ、背中とジーンズの間に入り込もうとしていた。

「あの金額に見合うほど、あんたをかわいがってやれる自信がないけどな」

「じゃぁ、ヴィゴ、分割で支払えよ。俺は、こういう甘いのが好きなんだ。いつでも、これでオッケーだ」

「なるほど。じゃぁ、そうするか。ショーン」

ヴィゴは、幸せな勘違いをしているショーンのために、不揃いな歯を見せて笑った。

ショーンが笑い返す。

ヴィゴにとって、ショーンがセックスを金で買ったという意識を楽しんでいるのであれば、それは幸いだった。

できれば、もっと意識して貰いたいほどだ。

 

ヴィゴの服を脱がそうとしたショーンの手をやんわりと押しのけヴィゴは、ショーンをベッドへと腰掛けさせた。

脱がした上半身の滑らかな起伏を見下ろしながら、肩から順に唇を押しつけていった。

小さく立ち上がっている乳首を唇で挟み、吸い上げる。

ショーンの喉が、小さな音を立てた。

ヴィゴは、乳首を吸い上げながら、手を伸ばして、股の間に触れた。

もう立ち上がっているショーンのペニスが窮屈そうにジーンズを押し上げていた。

ヴィゴは、布地の上からショーンのペニスをなで回し、ペニスの形を指でなぞった。

ショーンがシーツの上でから腰を浮かす。

ヴィゴの手を追うように、押しつけられるジーンズの生地には、確かに硬い感触がある。

ヴィゴは、焦らすように軽く上から撫でていた手を、ジーンズの中へと忍び込ませた。

「なんだか、湿ってないか?」

ヴィゴはショーンをからかうように、にやりと笑った。

下着の上からショーンのペニスを掴み、塗れている先端を弄くる。

ショーンは、顔を赤く染めて眦を上げた。

だが、押しつけている腰を離そうとはしない。

「ヴィゴ……」

ヴィゴは、自分のジーンズの前を開き、掴みだしたものを手で扱いた。

硬くなったものを先端から漏れだした雫で色の変わっているショーンの下着越し擦りつける。

ショーンが足を、ヴィゴへと絡めた。

背中に腕が回される。

「ヴィゴ。……なぁ、ヴィゴ」

「やらしい顔してるな。ショーン」

腰をすりつけてくるショーンの髪をかき上げ、ヴィゴはショーンの赤い目尻へとキスをした。

ショーンは、目尻を舐めるヴィゴの舌を嫌がって、顔を左右に振る。

揺すり立てるショーンの腰を押さえつけるようにして、ヴィゴは強くペニスを押しつけた。

挿入のペースで腰を振ってやると、ショーンの太腿がヴィゴを挟んだ。

「動きにくいだろ、ショーン」

ヴィゴは、ショーンの首筋へとキスをしながら、欲望をあらわにしている金髪を冷静に観察した。

ショーンは欲望を隠そうとはしなかった。

ヴィゴは、金という手段で、強引に展開を進めようとした軽率な馬鹿の望みをどこまでも叶えてやるつもりだった。

立ち上がっているショーンの乳首をつまみ上げ、指先に力を入れた。

ショーンは、胸を反らして息をあえがせる。

「ヴィゴ……」

ショーンは、ひとしきり胸を弄られ、下着の上からペニスをなぶられ、自分から身体を起こした。

ヴィゴにキスを求めながら、自分の手で濡れた下着を下ろす。

うつぶせになったショーンは、尻を上げて、ヴィゴを呼んだ。

「ヴィゴ……」

ヴィゴは、まろやかな尻の肉付きにごくりと喉を鳴らした。

ヴィゴだって、ショーンとセックスしたくなかったわけではなかった。

だが、長くショーンと続けていくために、待っていた。

ヴィゴにとっては、ショーンとの関係をより良く成熟させていくことが何よりも重要だったのだ。

「ショーン、ちょっと待ってろ」

ヴィゴは、いつか、のために用意して置いたゼリーを脇机から取り出した。

指先にたっぷりとつけ、ショーンの尻の間にも絞り出す。

指で穴の皺を辿ったヴィゴは、ショーンの背中へと唇を押し当てながら、指でそこを押した。

「ショーン、愛してるよ」

ヴィゴは甘い声で囁きながら、ショーンの中へと指を埋めた。

たっぷりとついているゼリーの助けを借りながら、ぬぷりと音を立てる指をきつく締まる穴の中で抜き差しする。

「どう? ショーン?」

「……っ……、んっ……、ヴィゴ」

ショーンは、白い尻を突き出すようにしてヴィゴの指を受け入れた。

柔らかな尻の肉にぎゅっと力が入り、ヴィゴの指を締め付ける。

「悪くはなさそうだな。ショーン」

濡れた指を何度も出し入れしながら、ヴィゴは、ショーンのペニスを扱いた。

振られる尻の動きに揺れている玉を優しく握って、手の中で遊ばす。

ショーンの唇が開き、鼻からは甘い音が漏れだした。

「……ヴィゴ……、ヴィゴ」

ショーンは、先を急ぐように尻を振った。

「もう少し。あと、一本分は拡張したい」

「……っん……ヴィゴ……」

ショーンのなめらかな背中に汗が噴き出していた。

ヴィゴの舌が、汗を舐める。

ショーンがせつない声を出した。

「ヴィゴ。……繋がりたい」

ヴィゴは、拒んだ。

「もうちょっと。……ショーンにとって嫌な思い出になるようなセックスはしたくない」

 ヴィゴが理想としたのは、ショーンと深く愛し合ってするセックスだった。

 こんな方法で、強引にセックスに意識を向けるのとは全く違う。

駆け引きめいた切っ掛けも必要なしに、ごく自然に手を握りあって、ベッドルームに向かい、抱き合う。

ショーンは、なんの警戒もなしに、ヴィゴのキスを受け入れる。

ヴィゴも、ショーンの爪一枚に至るまで、自分のものだと確信しながら、口付けを贈る。

それが、ヴィゴの描いた幸福な絵だ。

勿論、ヴィゴにだって独りよがりな妄想だという意識はあった。

しかし、十分ではなかった告白までの時間を取り戻すためにも、ヴィゴは、まだプラトニックな二人の時間を大事にし、関係を成熟させたかった。

中で緩やかに指を使い、押し広げ続けるヴィゴにショーンは頭を振った。

「……ヴィゴ」

ショーンは、シーツから頭を上げるとヴィゴを睨んだ。

「……ヴィゴ、あんたは、どこまで臆病なんだ」

ショーンは、ヴィゴの指をくわえ込んだ、白い尻を大きく振った。

「俺が、いいって、言ってるんだ。何をぐずぐずしている」

意志をもって指を締め付けてきたショーンは、もう一度頭をシーツへと下ろした。

自ら大きく足を開いて、ヴィゴのためになめらかな背中のスロープを作る。

「来い、ヴィゴ」

浅く息をするショーンは、精一杯緊張を解こうと努力していた。

だが、その時を待つショーンの尻は、肌が泡立っているのだ。

ショーンは、男を受け入れるのが初めてだった。

だからこそ、どんなに腹が立っていようとも、ヴィゴが、もっと時間を掛ける気でいるというのに。

ヴィゴは、ショーンの背中に覆い被さりながら、こうまでして急ごうとするショーンが酷く憎いと思った。

いっそ、レイプするように強引にペニスを突き刺し、ショーンの喉から、引き絞るような悲鳴を上げさせてみたかった。

二人の時間を急ごうとするショーンは、関係の終焉にまで駆け足で行くつもりなのだろうか。

「ショーン、無理するなよ」

ヴィゴは、ショーンの尻に十分に硬くなったペニスを擦りつけながら、数えるのが嫌になるほどのキスを、うなじに、肩にと落とした。

「ヴィゴ、早く」

しかし、ショーンは急ぐ。

「ショーン……」

ヴィゴは、自分がこの金髪に金で買われた身なのだと、胸の中で繰り返した。

そうであるからには、自分の思いなどより、ショーンの意向に添わなければならない。

ヴィゴは、ショーンの願いを叶えてやるため、尻にペニスを挿入した。

しかし、捨てきれない愛情が邪魔をして挿入は至極緩やかなものだ。

「……ぅぐっ……」

こわばったショーンの尻は、ヴィゴのペニスが肉をかき分けると、酷い力でペニスの先端を締め付けた。

「ショーン、落ち着いて」

「ヴィゴ。……ぅぐっ……っぅんっは……ヴィゴ!」

ヴィゴは、ショーンの背中を撫で、そこからショーンを抱くようにして、胸へと手を回した。

恐怖でだろう。立ち上がっている乳首をつまんで、指先で弄くる。

「ショーン、ゆっくり息を吐いて」

ヴィゴは、柔らかく張り出した胸の肉を揉むようにして、呼吸を意識させると、潰されるように引っ掛かっている自分のペニスを一旦ショーンから抜いた。

「ヴィゴ!」

あわてたようにショーンが振り返った。

「大丈夫。ショーン。ちゃんとしてやるから」

ヴィゴは、ショーンの尻の間に、ペニスをぴたりと押し当てて、そこで腰を振るようにした。

隙間無くショーンの背中に覆い被さり、手の中にペニスを握ると、小さくなってしまっているものを大きくする。

「ヴィゴ……」

「焦せらないでくれ。ショーン。あんたの言う通り、俺は臆病者なんだ。あんたの背中が痛みで竦んでるのを見ながらなんて、セックスできない」

ヴィゴは、真実そう思い、しかし、一方、ショーンの尻を赤く腫れ上がるまでぶっ叩いてやりながら、犯してやりたいとも感じていた。

もう、二度としないだろう恋をしたという気がヴィゴにはあった。

だからこそ、ヴィゴは、もし終わる恋だとしても、早くに破局を迎えるような粗雑な行為はしたくなかった。

若い。と、いう歳でもない。

衝動を飼い慣らし、ゆっくりと愛情を育てていけるだけの余裕が二人にはあるはずだった。

こんなに急いでセックスに至る必要などない。

ショーンは、ヴィゴが抱く肌を硬くしているというのに、シーツに向かって何度か舌打ちの音をさせた。

「愚図!」

苛立った金髪は、まなじりをつり上げている。

「ヴィゴ、ぐずぐずするな!」

「俺は愚図なんだ。すまない。ショーン」

ヴィゴは、ショーンのペニスが回復してきたのを見計らい、もう一度尻へと指を伸ばした。

「一気に入れちまえば、なんとかなるだろ!」

「そんなことしたら、ショーンが苦しいだろう?」

もう一度、一本から、ヴィゴはショーンに指を含ませた。

ゼリーはあふれ出すほどだったが、ヴィゴは、まだ、そこにチューブを絞った。

ショーンの息づかいを確かめながら、ヴィゴは慎重に指を増やす。

ショーンは、ヴィゴのやり方のじれったさに、苛立たしげにしていたが、その実、ゆっくりとヴィゴにほぐされてやっと身体から力を抜くことができるようになった。

尻の間で、三本の指が、濡れた音を立てる。

ショーンの喉からも、かすれた声が漏れる。

「……っ……んっ!」

尻の中から前立腺を刺激される快感に、ショーンがペニスをシーツへ擦りつけた。

シーツが濡れて色を濃くする。

奔放なショーンの動きに皺が寄る。

ヴィゴは、そっとショーンの尻へとペニスを押し当てた。

「ショーン……」

ショーンは緊張を思い出し、身体を硬くしたくせに、ヴィゴを急かした。

「……さっさとしろ。ヴィゴ……」

ヴィゴは、低く吐き出されるショーンの息づかいを聞きながら、ゆっくりと中へと尻の穴へとペニスを沈めた。

やはり、ショーンは背中を仰け反らせ、苦痛を訴えた。

ヴィゴは、その背に、哀れみと満足感を得た。

深くヴィゴが繋がると、ショーンは、食いしばった歯の間から勝利の声を上げた。

「やったぜ! ……とうとうだ。くそっ……、どうだよ? ヴィゴ。俺の中に入れて」

ショーンは、振り返った目尻に涙を溜め、苦しそうに浅い息を繰り返していた。

「最高だよ。ショーン」

ヴィゴは、自分の動きは止めたまま、ショーンのペニスを扱いた。

色を無くしていたショーンの肌がピンクに染まっていった。

「動けよ。……ヴィゴ。あんたは本当に愚図だ。……あんた、突っ立てただけで、……気持ちがいいって言うつもりなのか?」

口の悪いショーンは、また苦しいだろうに自分から腰を動かし出した。

ヴィゴは、すぐに無理をしようとするショーンを止めて、ゆっくりと自分のペニスを引き出した。

ずるずると引き出す動きに、ショーンの喉がかすれた声を上げる。

「……っああうっ……」

ショーンは、シーツをきつく掴んだ。

金髪がぱたぱたとシーツを打った。

「ヴィゴ、……漏らしそうだ。……でも!」

押し入る時に比べれば、ショーンは、確実に気持ちよさげに、ヴィゴのペニスを追いかけ、締めた。

「……っふ……っぅああ……んんっ!」

あんなにも冷たかったはずのゼリーがすっかり暖まり、ねっとりとヴィゴのペニスに伝っていた。

ショーンの中からもヴィゴがペニスを引き出すのにつられ、とろとろと溢れ出している。

ヴィゴは、激しく動きたくなる自分の衝動を押し殺し、ひたすらゆっくりとショーンのタイミングを計った。

「……っぅん……んんっぁ……」

ショーンは、アナルセックスに慣れてもいないのに、ヴィゴを楽しませようと腰を使おうとした。

ヴィゴは、ショーンの腰を撫でた。

「ゆっくりだ。ショーン。無理はするな」

「……無理? ……んっ、……馬鹿なことばかり言うな……ヴィゴ! ……っっぁあんっ!」

ヴィゴは、ひたすらに優しくショーンを抱いた。

ショーンが硬くなったペニスを自分の手で扱き出した。

ヴィゴは手を添えた。

ショーンの喉が、大きな息を吸い込んだ。

ぎゅっと絞り込まれた穴からゼリーが溢れた。

金で買われたヴィゴは、ショーンに裏切られたという気持ちを飲み込み、その金額分の満足を金髪に与えた。

 

                                 →続く