愛でなる病 5

 

ショーンのペニスが、ほんの少し、ヴィゴの口の中で容積を増した。

「ショーン」

ヴィゴは、ショーンを呼んで、いつもに比べたら大きくなったものを口から出して見せた。

だが、それは、ほんの僅かに硬くなったに過ぎない。

それでも、ショーンの口元に安堵の笑みが浮かんだ。

ヴィゴは、もう口に含むのをやめ、支えのいる硬さしかないペニスを舌先で舐めた。

敏感な先端の部分は避け、幹の部分をぺろぺろと舐める。

「ショーン。出来るだけ、我慢するんだぞ」

勃ってしまうと、ショーンのペニスは、まるで堪え性がなかった。

とても過敏にヴィゴの愛撫に反応し、楽しむ余裕もなく、すぐ頂点を迎えてしまった。

ヴィゴは、何度もショーンへの愛撫を中断した。

僅かにショーンの足に力が入っただけですぐ舌をひっこめ、唇から小さな声が聞こえれば、支える手だって離してしまった。

「一分は保った」

ヴィゴは、時計を見上げ、ショーンに笑いかけた。

「最高記録?」

ショーンは目を眇めるようにして、胸で息をした。

「ショーン、ちょっと提案があるんだが」

ヴィゴは、ペニスから手を放し、ショーンを落ち着かせる間に話をしようとした。

「実は、今日の午前中、病院に行って、EDの経口薬を手に入れてきた。実に簡単なことだった。ショーン、こういう状態に前に飲んだことがあるって言ってたよな。もう一度、試してみる気があるか?」

ショーンは、迷う目をしてヴィゴを見た。

少し荒くなっている息を抑えるためか、口元を押さえた。

「勿論、俺は無理強いはしない。ただ、これを使えば、射精してしまっても、まだ、勃起した状態を保つことが出来る。その状態であんたが満足するだけのセックスが出来れば、多少なりとも、プライドが回復する。まぁ、トライしてみてもいいだけの効果はあると思うが……」

「……でも」

ショーンは躊躇った。

ショーンの足を擦ってやりながら、ヴィゴは、ショーンが口を開くのを待った。

「セックスたって……」

ショーンは、困ったようにヴィゴを見た。

「俺の舌がフル稼働するのを味わってみる?」

ヴィゴは舌をべろりと出した。

「出すものがなくなるまで、やってやるぜ?」

ショーンは、ヴィゴの顔に笑った。

半勃ちの自分のものに触れ、悩むように何度か扱いた。

「いかせるなよ」

「いかないよ。自分で出そうとすると、ものすごく時間がかかるんだ」

「俺が舐めてるときは、すぐ、なのにな」

ショーンの言葉によれば、このペニスは一晩に何度かトライできるはずのものだったが、一度射精してしまうと、その後、ショーンを勃起させることは、成功したことがなかった。

射精後のショーンのペニスは、まず、勃起しない。

けれども、一度目の勃起だって、ショーンに自信を持たせるほどの時間は保たず、ほんの少しの時間で、漏らしてしまった。

ヴィゴは、ポケットから薬のシートを取り出した。

「説明はいらないだろう? 効果だって、あんた知ってるよな。一度試してみたらどうだ? 医者は、これで、何度かセックスしてみてくれって言ってた。何回かしてるうちに自信が付いてきて、薬なしでも満足できるセックスができるようになりますよ。って」

ショーンは、薬のシートに手を伸ばした。

まだ、迷っていたが、思い切るように一錠口に含んだ。

ヴィゴは慌てて、立ち上がった。

「ショーン、あんた、水くらい用意しろよ」

ショーンは、ソファーに身を起こし、ヴィゴの差し出した水を飲んだ。

 

薬の効果は絶大だった。

あの小さかったものが、すっかり大きく硬くなり、ヴィゴの口の中を荒らしまわっていた。

それは、ヴィゴが、明日台詞を口にすることが出来るか心配になるほどだった。

ショーンは、自分の状態が嬉しいのか、目の色を変えて、ヴィゴの頭を掴み、腰を振っていた。

ヴィゴにきつく口を閉じるよう命じ、好きなように腰を使う。

ヴィゴの耳には、ショーンのううっ……と、言った声や、甘ったるく吐き出す、ああ……という息の音が聞こえた。

こんな精力的なショーンをヴィゴは始めて見た。

いや、普段のショーンは、こんな感じなのかもしれなかった。

しかし、ヴィゴの知るショーンは、かすかな吐息の音と、短いせっぱ詰まった声を聞かせただけなのだ。

いくら吐き出しても、小さくならないペニスを、ヴィゴは丁寧に愛撫した。

今までは、ショーンが痛がって出来なかったきつい吸い上げや、唇を使った扱きなど、いくらでも技巧を凝らして、ショーンに快感を与えてやった。

ショーンは、全身をピンク色に染め、汗を流しながら、ヴィゴの頭を抱いていた。

足が、ヴィゴの背中に絡みついている。

全身で、ヴィゴの与える快感に夢中になっていた。

「ショーン。ちょっとだけ、力を緩めてくれ」

喉の奥を突こうとするショーンのペニスに吐きそうになり、ヴィゴは、ショーンの腕と足が作り出している拘束から抜け出した。

だるくなっている顎を擦りながら、ショーンを見上げた。

「奥まで咥えて欲しいのか?」

焦ったように、ショーンは、何度も頷く。

興奮しているショーンは、ヴィゴの首に足を巻きつけ、引き寄せようとした。

ヴィゴは、喉を開いて、ショーンのペニスを上から咥え込んでいった。

ヴィゴがはじめて見る角度に勃っているペニスは、支える手など必要なかった。

喉の奥まで開いて、ショーンのペニスを受け入れ、締めてつけてやる。

「……ぅん……あっ……」

薬は勃起を継続させることは出来るが、射精するまでの時間を引き延ばすことができるわけではないので、ショーンは、また、ヴィゴの口の中に、精液を溢れさす。

薄くなり、量も減った精液を口から溢れさせながら、ヴィゴは、全く柔らなくならないペニスを舐め続けた。

「……んぅ……ぁ……ヴィゴ……ヴィゴ」

ショーンは、熱に浮かされたようにヴィゴの名を呼んだ。

ショーンの気分は、とても盛り上がっていた。

背中を何度も撫でていったり、ヴィゴの耳に齧りついた。

ヴィゴの髪にも愛しげにキスを繰り返す。

ヴィゴは、ショーンにセックスを求められているような勘違いをしそうになり、ショーンの頭をかき抱いて、きついキスがしたくなる自分を戒める必要があった。

きっと、ショーンの口の中は温かく湿っているのだろうと想像すると、ヴィゴのペニスが限界に近づきつつあった。

いままでは、ショーンをいかせてしまった後だったり、いかせられないまま終わってしまった後、バスルームを借りて処理すればよかった。

だが、今日のショーンは、薬の効果で長時間にわたり勃起し続けており、ヴィゴは我慢ができなかった。

ヴィゴは、ペニスから顔を上げ、ソファーにもたれかかり、快感のあまり目を潤ませているショーンを見上げた。

「ショーン、少しだけ、休憩してもいいか?」

はぁはぁと息の落ち着かないショーンは、目で、理由をヴィゴに聞いた。

ヴィゴは、いつもの通り、正直にショーンに訳を打ち明けた。

「ショーンが色っぽいから、勃っちまった。出してくるから、ちょっと待っててくれ」

ショーンが、腕を上げた。

ヴィゴの手を取り、潤んだ目で、まっすぐに視線を向けた。

「ヴィゴ。俺がやってやろうか?」

興奮しているショーンは、今までしたことのない提案をした。

絡み付いているだけのガウンを脱ぎ捨て、ヴィゴの股間に手を伸ばした。

長い指が、張り詰めているヴィゴのジーンズの前を触った。

「いいよ。ショーン」

ヴィゴは、ショーンの手を押さえた。

「あんたは、勃ってる自分ってのに興奮してるだけなんだから、無理するな」

ショーンの手は、ヴィゴのペニスをジーンズの上から掴み、そこをしつこく撫で回した。

「やってやるって。ヴィゴだって、俺にしてもらいたいだろう?」

熱い息を吐き出す唇が、ヴィゴの頬に口付けを降らし、誘惑した。

「ショーン。あんたがのってるってのはわかるが、それは薬の効果で興奮してるだけなんだから、落ち着け。俺は、自分で出来るし、戻ってきたら、また、ちゃんとショーンのことを可愛がってやる。何も無理することはないんだ」

ヴィゴは、ショーンの腕を放させ、うずくまっていた足元から立ち上がった。

見上げてくるショーンの頭を優しく撫でる。

「それに、俺は、すごくロマンティストなんだ。同じセックスをするのなら、俺のことが好きでいてくれる人としたいんだ。純情だろ?」

ヴィゴは、ショーンに嫌なことを言ったという自覚があった。

 

バスルームから戻ったヴィゴは、半ばうつぶせるようにしてソファーに寝転がってしまったショーンを見つけた。

ショーンは、腰の辺りに、バスローブをかけ、ふてくされたような顔をしていた。

「ショーン、続きは?」

ヴィゴは、ショーンのバスローブをめくった。

薬は、その威力を未だ見せつけ、ショーンのペニスを大きく勃たせていた。

「すごいな。本当に」

ヴィゴは、遠慮なくペニスを手に握りながら、ショーンの体を転がした。

ショーンの足がヴィゴを蹴った。

「機嫌が悪いな」

ヴィゴは、笑いながら、ショーンのペニスを扱いた。

ショーンの顔が悔しそうに歪んだ。

「もう、いい」

「なんでだ? ちゃんと、可愛がってやるって言っただろう?」

「もう、いいんだ」

ショーンは、ヴィゴの手を離させ、ソファーの奥へと逃げ込んだ。

ヴィゴは、背中を向けてしまったショーンの腰を緩く撫でた。

「ショーン。悪かった。あんたの好意を無にしたのを怒ってるんだろう?」

ショーンの背中は機嫌が悪かった。

ヴィゴの手を払いのけるようなことはしなかったが、勿論文句を言ってきた。

「ちょっとサービスしてやろうと思っただけだろ」

「サービスして貰えるのは嬉しいんだけどな。でも、俺は、ショーンに、後で、嫌な思いをして欲しくなかったんだ。俺がショーンの話を聞きながら、勝手に想像してるだけなんだが、ショーンは、セックスする相手に過度の奉仕を心がけてる。まぁ、言い換えれば、セックスに強い自分ってものを維持しようと必死になって努力しようとしているように感じている。サービス精神が豊かなのはいいことだが、自分の限界を超えてやること何もない。女性相手にならまだ、疲れたなぁって感想だけで済むだろうが、俺相手に、そんなことすると、明日の朝、すっかり後悔することになるんだぞ」

「ヴィゴだって、やってる」

「やってるさ、やってるけどな」

ヴィゴは、ショーンの中の官能を擽るよう、指先で体の線をなぞりながら、言葉を続けた。

「俺は、ショーンが好きだし、ショーンのペニスだって、フェラしてみたかったからしてるだけだ。ショーン、もし、あんたが俺のペニスを扱いてくれて、俺が本気であんたのことを襲うような真似をしたらどうするんだ? 困るだろう? でも、俺だって、ショーンにそんなことされたら、あんたが興奮してるのをいいことに付け込まないとは約束できない」

「じゃぁ、最初から、そうやって、説明しろ。まるで、俺があんたのこと全く好きじゃないみたいなことを言いやがって。あんな言い方されたら、俺は、ヴィゴのことを利用してるだけのものすごく悪い人間みたいじゃないか。自分がすごく嫌な奴にでもなった気がしたぞ」

緑の目が睨みつけてきた。

ヴィゴのことをきつく責めた。

ヴィゴは、ショーンの体の上に覆いかぶさり、むき出しの丸みのある肩にキスをした。

「ショーン、俺もかなり感じていたから、せっぱ詰まってたんだ。あんたにすぐさま手を引かせる方法を考える必要があった」

ヴィゴは、いくつもショーンの肩に口付けをしながら、未だに勃っているペニスを掴んだ。

ショーンが、ヴィゴの頭を叩いた。

それでも、ヴィゴは、キスを続けた。

「ショーン、もう一回、やるか?」

ヴィゴは、顔をあげ、ショーンに聞いた。

「勿体ないから、やっておく」

「勿体無い……ねぇ……」

ヴィゴは、もう、濡れだしたショーンのペニスを扱いた。

 

 

その次のヴィゴの来訪は、金曜の夜だった。

ヴィゴは、ショーンのために、次の土曜に何の予定も組まず、また、しゃべるためにも苦労する奉仕をしに、ショーンの家のチャイムを鳴らした。

「待ってたか? ダーリン」

ふざけたヴィゴを楽しげに迎え入れたショーンだった。

しかし、ショーンは、この間あれだけ効果を上げた薬を飲まなかった。

薬は、キッチンのテーブルの上に置かれたままで、緑の目は思いつめたようにそれを見ていた。

「どうした?」

「……あれを飲むと、確かに勃つんだが、なんか、そうまでしてはやりたくないんだ」

「でも、治りたいんだろう?」

ヴィゴが尋ねると、ショーンは机の上の薬を手に取ろうとした。

慌ててヴィゴは、ショーンを止めた。

「別に、いいぞ? 飲めって言ってるわけじゃない」

「……ああ」

ショーンは、薬を戻した。

その様子はどこかほっとしていて、ヴィゴは、心配になりショーンに聞いた。

「なぁ、ショーン。この間、薬を飲んで、どこか体の調子でも悪くなったのか?」

「そんなことはない」

「気分が悪くなったとか」

薬を使った日以来、ヴィゴはロケに出る必要があり、ショーンは、スタジオ撮りばかりで、朝や、帰りにちらりと顔を見る程度だった。

ヴィゴはその間になにかがあったのではないかと心配した。

だが、ショーンは何でもないように笑い返した。

「いいや、すっきりしたせいか、ぐっすり眠れた」

「そりゃぁ、何より」

ヴィゴはソファーに倒れ込んだ。

医師の診断もなく勝手に薬を与えただけに、ヴィゴはショーンに質問するたびに緊張感に包まれた。

ショーンの返事を聞いて、心底ほっとした。

ヴィゴは、まだ立ったままのショーンを見上げながら、笑顔になった。

「助かった。ショーンに何かあったかと思った」

ヴィゴは、ショーンの手を引いた。

「そういうわけじゃない」

ショーンは、肩をすくめるとヴィゴの足元に腰を下ろした。

ヴィゴは、すかさず、体を摺り寄せ、ショーンの腰を腕の中に抱き込んだ。

腰に鼻を押し付けるようにして、ぐりぐりと顔を擦る。

「じゃぁ、ショーン。触りすぎたせいで、痛くなったか?」

ヴィゴは、ショーンの体の匂いを吸い込んだ。

ショーンの体は、今日も石鹸のいい匂いをさせていた。

ショーンが、ヴィゴの鼻を摘む。

「痛いぞ。ショーン」

「趣味の悪いことをするからだ」

「でも、ショーン、いい匂いがするし」

ショーンは、ヴィゴの頭を持ち上げ、自分の太腿の上に置いた。

「膝枕してやるから、大人しくしろ」

「……幸せだ。でも、ショーン、触られすぎて痛いんじゃないのか?」

「大丈夫だ」

「……・使い込んであると違うね」

ヴィゴは、下から見上げながらショーンの顔を撫で、歯を見せて笑った。

「じゃぁ、ショーン。今日は何をする?」

ショーンの体から、石鹸の匂いがすることを十分に知っていながら、ヴィゴは聞いた。

ショーンは、ヴィゴの指先に口付けた。

「また、面倒なことを頼んでもいいか?」

「う〜ん。どっちが面倒なのかは、難しいところだな」

ヴィゴは、体を返し、ショーンの太腿に顔をうずめるようにした。

「小さいままのショーンは、すごく可愛らしくて、しゃぶっていても気持ちがいいし。勃ってるショーンも獣みたいで、セクシーだ」

ヴィゴは、鼻がつぶれるくらい顔を押し付け、ショーンのジーンズにキスをした。

そこの反応は勿論ない。

「ショーン、バスローブ姿で待っててくれて、全く構わないぞ」

ショーンの手が、ヴィゴの背中を撫でた。

顔を起こしたヴィゴは、にやりとショーンに笑いかけた。

「どうせ脱ぐんだし、面倒だろう?」

ヴィゴは、ジーンズのボタンに手を掛け、ショーンに腰を浮かすように言った。

ショーンは、素直に腰を上げた。

ずるりと脱がしてしまったヴィゴは、いつものように、小さなものを口に含んだ。

この間の感触とはまるで違う、とても、とても柔らかなショーンのペニスだ。

「長時間っていうんだったら、こっちの方が、気持ちいいかもしれない。結構気持いいんだ。柔らかくていい」

ショーンは、何故だかほっとしたようなため息を落として、ゆっくりと目を閉じた。

ヴィゴの髪をゆるくかき混ぜた。

「……ヴィゴ」

「ん?」

「……ヴィゴ。……気持ちいい」

「ああ、ゆっくり味わえばいい。もし、勃ったら、教えてやるから、そしたら、また、ショーンも出しちまわないように、努力しな」

ヴィゴは、じっくりと時間をかけて、ショーンのペニスを舐め続けた。

だが、その日、ショーンは、勃たすことができなかった。

 

→続く