OV劇場 ─4─

 

「ヴィゴ、あんたってさぁ、受身のセックスがそんなに好きじゃない?」

「どうして?」

「だって、いつも、面倒臭そうじゃん」

ヴィゴは、あくびをして、シーツに顔を擦りつけた。

オーランドと話すことすら面倒臭そうだ。

「ねぇ、ヴィゴ」

オーランドは、ヴィゴの髪を執拗に撫でながら、もう一度聞いた。

「…オーリ。少し寝ちゃダメか?長時間の移動や、激しいセックスは、年寄りを疲れさせるんだ」

「ねぇ、気持ちよくない?俺、下手かなぁ?あんたのこと楽しませてやれてない?」

ヴィゴは、目を閉じて、オーランドの言葉にうるさそうな顔をした。

「…じゃぁ、ヴィゴ。あんたがするセックスに俺が付き合えば、どうだろう?そしたら、少しは楽しめる?その顰め面をやめなよ。せっかく会ってるってのに、全然楽しくないじゃん」

オーランドは、ヴィゴの背中に伸し掛かった。

ヴィゴは、オーランドに押しつぶされて、額に皺を寄せた状態で頬杖をついた。

「一回。一回だけ、しない?俺も始めての経験だから、感じれるかどうかはわかんないけど、でも、どうせあんた、上手いんだろう?試してみようよ」

オーランドは、いそいそとベッドの上に散らばっていたゴムや、ジェルをヴィゴの近くへと引き寄せた。

「ねぇ、ヴィゴ。いくら年寄りでも、久しぶりに会った恋人に、2回くらいは、できるよね?」

意地悪く笑うオーランドに、ヴィゴは、口元を歪めて苦笑いした。

 

これは、経験の差なのだろうか。

それとも、ヴィゴはもともとこういうことに勘がいいのか。

よく鍛えられた体に抱きこまれる安堵感とは別に、恐いような快感に追い上げられ、オーランドは額に汗を張り付かせていた。

ヴィゴは熱心に、オーランドの身体に眠る性感の在り処を探っている。

ありがちな愛撫とは別に、オーランドの思ってもみなかった場所を舐め、噛み、オーランドの口から、焦ったような声を出させる。

前段階で、これだ。

このままつっこまれたら、どんな目に合わされるのかわからない。

オーランドは、自分を見下ろすヴィゴの冷静な目が恐かった。

多分、オーランドだって、ヴィゴを抱く時、こんな目をしている。

ヴィゴに感じて欲しいと思っている。

表情一つ動くのを、理性のある限り、じっと見ている。

 

「オーリ、そろそろ降参しないか?嫌なんだろう?楽しめないセックスなんてするだけ無駄だ。オーリが嫌がってるのに、強姦する趣味はないよ」

オーランドの太腿を舐めていたヴィゴは、顔をあげ、髪をかき上げると、口元に笑みを浮かべて青い目を和ませた。

いままでが嘘のように、いつもヴィゴだ。

すこし気怠るげで、オーランドを持て余している。

「言い出した手前、我慢してるけど、受身でいるの、嫌なんだろう?体が強張ってるぞ。俺が恐いと思ってるんだろう?」

ヴィゴは、オーランドの太腿に、一つ軽い口付けを送ると、だるそうに体の上を這ってきて、首筋に顔を埋めた。

「なぁ、オーリ。少しくらい甘えてもいいじゃないか。俺は十分な時間をかけてお前に会いに来た。疲れてるんだ。鈍い反応しか返せなくても許せよ…」

オーランドは、大きく息を吐き出して、腕の中に帰ってきた身体を抱きしめた。

ヴィゴの体が冷たい。

オーランドが抱いていた時のほうがずっと熱かった。

オーランドは、ヴィゴの耳にキスをした。

「…すげーテクだった」

「そりゃ、サンキュー」

ヴィゴは、うるさげに首を振って嫌がった。

「あんた、俺とのセックスを楽しんでくれてたの?」

「楽しくなけりゃ、なんでするんだ?お前だって、今の嫌だったろ?我慢してまでするほどのもんじゃないだろ?」

ヴィゴは、嬉しくなってキスしようとしたオーランドを嫌がって、頭を押さえつけた。

「少し寝かせろ。それまでお預けだ。もし、襲ったら、本気で強姦してやる」

力でいったら、鍛えているヴィゴの方が強い。

ヴィゴは、優しげなキスをオーランドの頬に一つすると、そのまま体の上に倒れこんだ。

目を閉じて、オーランドの上で長いため息をついた。

何もかも放棄した顔だ。

「おやすみ。ヴィゴ」

オーランドは、邪魔にならないよう、そっとヴィゴの髪を撫でた。

 

 

END

 

 

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