OV劇場 ─1─

 

「お前さぁ、若いんだから、もう少し、頭、柔軟にならない?」

ヴィゴは、顔中に不機嫌と書いてあるオーランドの前でシャンパングラスを振ってみせた。

オーランドは、挑発にも乗らず、口を尖らしたまま、腕を組んでいる。

「なぁ、せっかくみんなで夏のクリスマスを楽しんでるんだぞ。パーティの話を持ち出したのはお前だって話じゃないか」

ヴィゴは、オーランドの腰をそっと引き寄せてみる。

オーランドは、しっかり足を開いて立ち、ヴィゴの手管に乗せられないよう、引き寄せられるのを拒んでいる。

「お前は、このパーティを楽しまない気?」

耳元に顔を寄せてささやいても、オーランドが無視を決め込み、ヴィゴは、面倒になって、前にあった椅子へと腰を下ろした。

見上げる先には、形のいい口をへの字に曲げて、眉を寄せているオーランドの顔がある。

その顔には、口を開くもんか!という固い意志が、もう30分も前から張り付いている。

「もう、いいよ。ただし、俺はこのパーティを楽しませてもらう。つむじの曲がったお子さまは、いつまででも拗ねていてくれ」

オーランドの顔がぴくりと引きつる。

「今日は、ここで解散な。俺は、明日の便で、出発だけど、見送りは結構。いつまでも、いつまでも、勝手に拗ねててくれ」

ヴィゴは椅子から立ち上がる。

オーランドに背を向け、クリスマスパーティと、名をうって、バーベキューに興じている仲間の元へと足を進める。

背後でオーランドがわずかに動いた。

しかし、近づいてこようとはしない。

ヴィゴは、もう一度振り返った。

「オーリ、仲直りしたいなら、今だぞ。もうこれ以上は受け付けない。今晩、俺の家でシャンパンが飲みたかったら、今すくここへ来るんだ」

ヴィゴは、両手を広げてオーランドを待つ。

オーランドは、動かない。唇をぎゅっとかみしめている。

ヴィゴは、頭をぐしゃぐしゃと何度かかき混ぜた。

「ああ、もう!」

もう一度、足早にオーランドに近寄り、その体をきつく抱きしめる。

「なぁ、オーリ。機嫌をなおせ。出発が一日早くなったことは、十分謝っただろ。明日、二人で過ごせないかわりに、今晩、時間を作る努力もした。あと、何をしたら、お前の機嫌が直るんだ」

急な予定変更を伝えて以来、恋人の機嫌は一気に下降線をたどった。たぶん、この30分間、地の底を這っている。その証拠に、パーティだというのに、誰もオーランドに近づいてこようとしない。

「なぁ、どうすればいい?」

無理矢理手をつかんで、指を組んだ。オーランドは握り返してこない。

「たっぷりのフェラ」

オーランドがやっと口を利いて、ヴィゴはその内容に顔をしかめた。

「あんたが積極的に協力する3回分のセックス」

「お前・・・」

「明日出発の時間まで、あんたが何も着ずにいてくれること。これだけ守ってくれるなら、今晩あんたの家で、とびっきりの時間を過ごしてもいい」

ヴィゴは、腕の中の黒い目をじっと見つめた。

「お前、その条件が本当に受け入れられると思ってる?」

オーランドも、負けじとヴィゴの目をじっと見る。

「もちろん。だって、俺の希望をヴィゴが叶えないはずはないからね」

無敵のお子さまの言い分に、ヴィゴの方があきれてしまう。

「それを約束すれば、かならず機嫌を直すのか?」

「かならずとは、約束できないけど、大分気分が良くなると思うよ」

ヴィゴは、やれやれと、オーランドの耳元に唇をよせた。

「わかった。約束する。ただし、たっぷりのフェラはシックスナインにしよう。その方が、二人とも楽しいだろう?」

耳を舐め上げたヴィゴに、オーランドが少しだけ体を震わせる。

それでも、すこしも慌てた顔はみせない。

ヴィゴは、どんどんと主導権を握っていくオーランドに、内心つまらないと、思った。

もっと、大騒ぎだった、最初の頃がすこし懐かしい。

「ヴィゴ。今度の約束は、必ず守るように」

オーランドが、絡めていた手を引き寄せて、そこに唇を落とした。

「メリークリスマス。ヴィゴ」

「ああ、メリークリスマス。オーリ」

ヴィゴも、二人の絡んだ手に唇を落とした。

やっと、オーランドの口元がゆるんでいる。

ヴィゴは、今晩の約束を守る体力を付けるため、オーランドを引っ張って仲間と、食料の元へと戻った。

 

END

 

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