8上海映画の話題の時の小話。

 

配役等の説明。

ちょっと小話というには、難しい感じですが、すこし書き直しの上、収納。(何故って、私が気に入っているから 笑)(でも、悔しいことに、書き直したら、おもしろくなくなった。苦笑)

この話のポイントは、どんなにきめきめの場面でも、自転車が出てくるというところです。(笑)

 

ヴィゴは、この先、動乱を迎える反政府活動を、乗り切るため、付き合っていたショーンと分かれる決心をしました。
ショーンは、ジャズシンガーです。

仕事場で歌っている時に、逃げ込んできたヴィゴと出会い、恋に落ちたのでした。
その出会いの後、ヴィゴは、反政府活動で、忙しいはずなんですが、なぜか、ショーンとねんごろになっていました。

ショーンのおなかには、子供がいたります。
しかし、ヴィゴは、これからの世の中を変えるという反政府活動の仕事と、子供を育てることは、比べてみるまでもなく、ショーンを捨てようとしました。
別れの日、泣くショーンに、援助してくれそうな男の存在までほのめかしながら、ヴィゴは、ショーンを言いくるめました。

 

ヴィゴは、言いました。
「お前を愛している。ショーン。でも、さよならだ」
ショーンの目には、涙が盛り上がりました。

憎らしさのなかに、切なさをこめて、じっとヴィゴを見つめます。
ヴィゴは、ショーンの目に浮かんだ涙に、心引き裂かれそうになりながらも、立ち去ろうとしました。
でも、上海なので、自転車で、です。
上海は、道が細くごちゃごちゃしていました。

そして、まだ、それほど自動車が普及していませんでした。

命がけの反政府活動中でも、火炎瓶を投げながら、自転車で逃走します。

黒いがっしりした自転車で、ヴィゴは、涙を流しながら、ショーンを置いて、立ち去りました。
ヴィゴは、ギイコ、ギイコ言う、自転車をがんばって立ち漕ぎします。

 

ショーンは、しばらく、その場で泣いていました。

が、やはり、ヴィゴのことがあきらめきれず、走って自転車を追いかけました。
いくら先発していても、自転車相手なので、ショーンはヴィゴに追いついてしまいました。
自転車のかごをがっしりと掴んだショーンは、ヴィゴを脅しました。
「おなかの子にお前が親だと言わないぞ。それでもいいのか?」
子供好きのヴィゴは、唇を噛み締め、苦渋の表情をしました。
「お前、俺と一緒に暮らしたくないのか?俺が、別の奴と、一緒になってもいいのか!」

ショーンの手は、強く、自転車のかごを掴んでいました。

自転車に追いつくため、走ったせいで、息があがっています。

しかし、ヴィゴは、自転車を無理やり発進させました。
轢かれそうになったショーンは、おなかの子をかばって脇にどきました。
ヴィゴは、叫びました。
「俺には、やらなくてはいけない仕事があるんだ!」

ヴィゴの目は、あふれる涙で、前が良く見えませんでした。
夜空に、注意を喚起する自転車ベルが鳴り響きます。


何年か後、活動の成果として、かなりいいポジションについたヴィゴが、ショーンを迎えに来ました。
ショーンは、勿論、別の人と、優雅に暮らしていました。
「あの人は、誰でしょうねぇ?」
愛らしい顔をしたわが子にそういうショーンを見て、ヴィゴは、大泣きです。

 

 

END

 

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