10夜早く寝ましたという話題の時の小話。
配役等の説明
特になし。
ショーンは、すこしばかりの息苦しさに、目を覚ました。
ショーンが占領していたベッドの持ち主は、コーヒーを片手に、ちょうど側を通りかかったところだった。
「目が、覚めたのか?ショーン」
ショーンの枕元にあったはずの雑誌を何冊か手に持っているヴィゴは、すこし小首をかしげて、ショーンを見た。
ショーンは、汗が浮き出ているような気がする額を撫でながら、ヴィゴを見上げた。
「ああ、なんだか、悪い夢を見ていた気がする」
「夕べだって、十分眠っていたくせに、のんきに昼寝してるからだろ?」
ヴィゴは笑って、ベッドの脇に腰掛けた。
ショーンは、顔を顰めた。
「すごく寝苦しかったんだ。今も、苦しい気がする。なんだろう?どこかからだの調子が悪いんだろうか?」
ヴィゴは、雑誌をベッドの上に置き、ショーンの体をシーツの上から撫でた。
「どの辺りが苦しいんだ?」
「下半身が・・・おかげで変な夢を見た」
「どんな夢?」
ヴィゴが、口元に笑いを浮かべて、ショーンを安心させるように微笑んだ。
ショーンは、しばらく口ごもっていたが、ちろりとヴィゴを見上げて、鼻の頭に皺を寄せた。
「・・・ヴィゴが、変なものを買ってきた夢なんだ。・・・女物のストッキングなんだが、それを俺に履けって言って、しかも、それで踏んでくれって言うんだ」
「なかなか、シュールな夢だな。実は、ショーンの願望か?」
「・・・違う」
「俺のことが踏んでみたいの?」
ヴィゴは、ショーンの頭を抱いて、髪へと甘いキスを繰り返した。
「ショーンになら、踏まれてもいいけどな。でも、まずは、そうじゃない路線に行きたいと思ってるんだが」
「・・・何?」
あまりにヴィゴの目は楽しそうだった。
ショーンは、瞳に警戒心を宿らせた。
「ショーンときたら、何しても起きないから、もっとぐっすり眠っているものばかりだと思ってたのに、実は、俺、結構やばかったんだな」
「だから、何だ?」
「いや、この間、縛らせてくれって言ったら、あんた、俺のこと殴っただろう?せめて、気分だけでも楽しもうと思って・・・」
ヴィゴは、ショーンの上から、シーツをはいだ。
ショーンは、自分の格好に酷く驚いた。
寝ている間に、ズボンを脱がされ、黒のストッキングを履かされていた。
ヴィゴの言う、縛るうんぬんは、ストッキングの模様のことらしい。
膝下あたりに、幾重にも巻きつけられたリボンが、織り込まれていた。
ショーンの下半身が苦しかったのは、ストッキングのサポート力が強いせいだ。
ショーンは、思わず、言葉もなく自分の下半身を見つめた。
ヴィゴが、ベッドから腰を浮かし気味にショーンへと聞いた。
「・・・ショーン、何を考えている?」
「ヴィゴは、バカだなぁと」
ショーンは、呆れた目をして、ヴィゴを見上げた。
「一体何が楽しいんだ?こんなもの買って恥ずかしくなかったのか?」
「・・・いや、それと同じのをメイクの子が履いてたんだよ。ああ、ああいう柄のだったら、ショーンのこと縛ってるみたいに感じられるかなって、あんまりじろじろ見ていたせいか、彼女、何をどう誤解したのか、同じのをプレゼントしてくれて・・・」
ヴィゴは、殴られることを覚悟して、身を引き気味にしていた。
ショーンは、スタッフにあらぬ誤解まで受けるほど、ストッキングに執着していたヴィゴを思って、本当に呆れた。
「・・・・お前、本当に、恥ずかしい奴だな」
ショーンは、ヴィゴの頭を軽く叩いた。
ヴィゴは、思い切り叩かれるものだとばかり思っていたのか、大きく首をすくませた。
ショーンは、亀のように首を引っ込めるヴィゴに思わず笑った。
「で、ヴィゴは、これでどうやって遊んでほしいわけなんだ?本当に、踏んでほしいのか?それとも、何か、ほかに案が?」
ヴィゴは、目を輝かせた。
ショーンは、ヴィゴをもう一つ、今度は、もうすこし強く叩いた。
「そんなに、叩くなよ。ショーン。俺は、あんたが眠いって言うから、大人しくしていただろう?」
ヴィゴは、ショーンの手を捕まえた。
ショーンの隣にもう一度腰を下ろし、Tシャツの肩にキスを始めた。
ヴィゴの目に少し、恨みがこもっていた。
確かに、ヴィゴの家に遊びに来ているというのに、ショーンは、ずっと眠りっぱなしだった。
ショーンは、ヴィゴの耳元でささやいた。
「じゃぁ、ストッキングを引き裂いて、レイプごっこでもしようか。ヴィゴ」
甘いささやき声は、効果てきめんだった。
ヴィゴの手が、焦りがちに、ストッキング越しのショーンの足を撫でた。
おわり〜。