1 森のブラウス屋さんを見たという話題の時の小話。

 

配役等の注意書き

不倫妻に、豆。旦那さんに、モーちゃん。
シーンは、妻の不倫が発覚して、旦那、牛乳パックを投げつけるとこ。

ヴィゴの投げた牛乳が辺りの床をぬらした。
パックは、床の上で、まだ、辺りを白く染めている。
「やめろ!」
ショーンは、声を荒げて椅子の肘掛けを叩いた。
「お前が言うな!」
ヴィゴは、怒りに燃えた目で、ショーンをにらみつけた。
殴りかかるのを耐えるため、肩が、激しい息で何度も上下している。
「そんなことして、何になる」
「何になるかなんて、問題じゃない!どうして、謝らない!自分が悪いことをしたと思っていないのか!ショーン!!」
目を大きく開き、歯茎が見えるほど歯をむき出しにした、ヴィゴはショーンに駆け寄るように近づいた。
ショーンは、椅子に座ったまま、ヴィゴを見上げた。
「・・・・俺だけが、悪いのか?」
「何故!!」
緑の目が、冷たくヴィゴを見上げた。
ヴィゴは、苛立ちにままに、ショーンの胸ぐらを掴んだ。
「男をくわえこんだのは、誰だ!俺か?俺は、ずっとお前だけを愛してた!俺は、一度だって、浮気をしたいなんて思ったことはなかった」
激しく揺さぶるヴィゴの力に、ショーンの金髪が揺れた。
ショーンは、ひとしきり、ヴィゴに揺さぶられると、顔を上げ、じっとヴィゴを見た。
「・・・そうか。じゃぁ、近頃俺に関心がないと、思っていたのは、俺の勘違いか」
「どうして、そう思うんだ!」
ヴィゴの噛みつかんばかりの怒りにも、ショーンは視線をそらさなかった。
「何故、週末帰ってこない」
「それは、仕事だから!」
「仕事!仕事!仕事!こうして、問いつめに帰ってくることは出来るのに、何故、俺に会いに来ない!」
ショーンの声が大きくなった。
「ヴィゴ、お前は、今日、自分のために、ここに来たんだ!自分のプライドが傷ついたから、ここに来た。俺を取り戻したかった訳じゃない。俺を愛している訳じゃない!」
ショーンの剣幕に、ヴィゴは、少しひるんだ。
だが、ヴィゴだって、頭に来ていた。
髪をかきむしり、手を大きく開いて、ショーンより大きな声で怒鳴った。
「愛してるさ。愛しているから、毎日、仕事に行くんじゃないか。お前に不自由のない暮らしをさせるために、毎日仕事をしているんだ。別に、俺だって、好きで働いているわけじゃない!」

にらみ合いは、口元に嫌みな笑いを浮かべたヴィゴが先に視線を外すことによって終わった。
「で、どうだったんだ?満足したのか?ショーン」
「何が?」
「説明しないとわからない?」
ヴィゴの視線が、いやらしくショーンの顔中を舐めていった。
ショーンは、にこりと笑い、それから、ヴィゴの顔に向かってつばを吐きかけた。
「満足したさ。お仕事でお疲れの旦那は、役に立たないことがあるからな」
「尻軽!」
「聞きたがったのは、お前だろう!」
ショーンは、きつくヴィゴをにらんだ。
ヴィゴは、泣き出した。
「俺は、お前が・・・お前が・・・」
ヴィゴの涙が、頬を伝った。
「お前のこと愛しているから・・・」
激しい感情を抑えきれないように、ヴィゴは、天井を見上げ、涙を流し続けた。
ショーンは腕を伸ばして、ヴィゴの手を引いた。
「ヴィゴ。最初から、そう言え。そうしたら、ちゃんと謝る」
ショーンは、膝を折ったヴィゴの体を抱きしめた。
ヴィゴの肩に顔を埋めた。
「・・・信じられない。ショーン、お前は、最悪だ」
ヴィゴは、柔らかな体を強く抱きしめた。
こみ上げる感情をこらえるように、強くショーンの髪を噛んだ。
ショーンは、ヴィゴの髪にキスをした。
「ヴィゴ」
ショーンは、キスを繰り返す。
「・・・なぁ、ヴィゴ。疲れていようとも、ちゃんと俺のことを抱くんだ。俺がいることを当たり前みたいに扱うんじゃない。いつだって、俺のことを愛していると言え」
ヴィゴは、思わず息をのんだ。
あまりのショーンの言い分に、笑うことしかできなかった。
「最悪だ。・・・ショーン」
「その最悪が、あんたの愛しい俺なんだよ。ヴィゴが、俺を放っておくから、つまらないことをすることになったんだ」
ショーンは、顔をあげて、泣き笑いするヴィゴの涙をぬぐった。
「キスしろよ。ヴィゴ。いつぶりにするキスなのか、思い出せ」
ショーンは、口を開いた。
目は閉じている。
ヴィゴは、ショーンの頭を抱え込み、食いつくようにキスをした。
激しくショーンの体をまさぐりながら、椅子の上に押し倒した。
「ヴィゴ・・・」
ショーンの長い指が、ヴィゴの髪を撫でた。
「ヴィゴ。・・・ごめんよ」

だが、小さすぎるショーンの声は、ヴィゴには聞こえなかった。

 

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