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NGO村村長大久保青志氏インタヴュー

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今年のテーマは"WAR CHILD"

去年、NGO VILLAGE&基金の事務局代表幹事である大久保青志さんへのインタヴューが出来なかったので、今年は事前にインタヴューを申し込んで、承諾を頂く事ができたので、インタヴューを取る事が出来た。
約束の1:30にグリーン・ステージに行くと、ダンコ・ジョーンズが終了した後、NGOのステージアピールが始まった。その中に大久保さんやA SEED JAPANの羽仁カンタさんが今年のテーマとして"WAR CHILD"を掲げ、イラク戦争やアフガン戦争などで苦しんでいる現地の子供を助けるための募金をしているため、協力して欲しいと訴えていた。また、スタッフの女性が「毎年フジ・ロックで集められるペット・ボトルをリサイクルして、入り口で配られているゴミ袋が出来ているので、ゴミ袋として使ったり、雨具として使ったりして、有効活用しててください」とリズムよく話していた。実際、僕も雨具として使わせてもらって大変役にたったので、ありがたかった。

グリーン・ステージ裏に潜入?

ステージ・アピールが終わった後、大久保さんが待ち合わせ場所に来て「本当はグリーン・ステージのそばの芝生で寝転がりながらやりたかったが...」と。あいにくの天気で寝転がりながらする事は出来ないため、A SEED JAPANのブースを借りてそこでインタヴューすることになった。
ブースへ行くために、グリーン・ステージの裏側を通っていったが、橋を渡ったりして入り組んだ裏側には大勢のスタッフがそれぞれの持ち場について仕事をしていたり、休んでいたりしている。本当に多くの人に支えられてこのフェスティバルは行われているんだという事を改めて感じながら歩いていた。
ブースに付くと、早速インタヴューがスタート。

雨のフェスも今では大丈夫

グリーン・ステージで今年のテーマは"WAR CHILD"と言っていたので、その事について訊いてみた。
「イラクだけじゃなく、9.11以降のアフガン戦争や世界中の内戦で苦しんでいる子供たちのために何かをと考え、イラクに関しては他のNGOが色々とやっているので、アフガンのことなども含めた意味で"WAR CHILD"ということにした。主に医療カンパになると思う」という主旨で今回のテーマが決まったそうだ。
その事を訴えるために、「NGO全体のアピールとしてセッション・ガールズを使って、"NO WAR"、"WAR CHILD"のテーマに添って、毎日1回ステージアピールをし、最終日にはポエトリー・リーディングも行う」予定にしているそうだ。
今回は第1回のように本格的に雨に降られた初日となったが、第1回から何か雨に対する対策のような事は考えられたかを訊いてみた。が、これには「主宰側としては特別なことはしていない。自然を甘く見るな、山の天気は変わりやすいんだから、自分たちで考えろ」と参加者一人ひとりの姿勢が大切であるということだった。第1回では、あの雨の中、雨具を用意していなかったり、寝るところすら何も考えていなかった参加者が多かった事を考えると、今回はみなそれぞれ雨具を用意しているし、寝るところに困っている人もいないようだったので、かなり参加者の姿勢が進歩したことが伺えた。
NGOのブースに関しては「各テントを濡れないようにブースの前に屋根を付けて、それぞれのブースを周れるようにしたい」と言っていたが、今回雨でNGOのブースにあまり人がいなかった初日を見ると、これは来年から早速実行に移した方がよさそうである。

そもそもの始まりは

97年の第1回が始まる1年ほど前にスタッフは日高さんからフジ・ロックをやると伝えられたそうだが、その時はどんなことを大久保さんは考えていたのだろうか。
「グラストンベリーのようなステージ・アピールをすることが、最初の話だった」そうだが、残念ながら1回目は台風の影響でほとんど何もできなかったようだ。「東京での2回目はと羽仁さんともう一人ほどでやったが、型通りでダメだった」しかし、回を追うごとに「それぞれのNGOが独自色を出し動物愛護のうさぎのぬいぐるみのアピールは賛否あるが、独自色を出したいい例」とNGOが自分たちのアピールのし方を少しずつ学んでいるようではある。
ただ「日本は欧米のようには育っていないのが現状」と、まだまだ日本のNGOは欧米のNGOに比べ思ったように活躍できてはいないのが実情らしい。
人を惹きつけるアピールがまだ出来ていないという思いから「反省点として、演出するということ」と言っていたが、ステージ・アピール初日聞いた感じでは詩を読んだりして演出に力を入れていることはわかるが、それがまだ上手く伝わっているとは思えないなというのが正直なところだ。
ただ、これは聞く側にもこういった事に対する意識の低さなどの問題があるのも事実だろう。
一方、NGOヴィレッジについては「参加するブース全体で統一感があり、上のブースまで足を運んでくれればそれでいいんじゃないかな。アクト・ウォー・ピースのタオルを作ったり、バッジを作って、参加意識を高め、"WAR CHILD"で寄付をしてくれることで、参加意識を持って帰ってくれれば」と話していた。
去年パティ・スミスは全てのブースを見ていったようで、このNGOの取り組みを見てアヴァロンでのポエトリー・リーディングも実現したのだろう。

歴史のない日本

社会活動一般についても少し訊いてみた。デモや署名活動は有効なのだろうか?
「デモは有効だと思うが、署名はテーマによるんじゃないか。薬害などテーマが絞りこまれているものは有効だと思うが、反戦などのようなテーマが広すぎるものにはあまり効果がないんじゃないか」と。
有事法制が国会で可決される中、一般の人が何かしら出来るとしたらどんな事がありますかとの問いには「マスコミ関連のアンケートに答える」との回答が。ただこれも「運動サイドがいかに一般の人に直接的であれ間接的であれ、提供する事が出来るかが問題で、組織的にやられると、まったく逆の世論にもなり得るという可能性もある」と組織票の怖さを強調していた。「あとは選挙」という手段がある。
一人の一票は小さいものだが、組織を凌駕するピープル・パワーが日本にもあるはずと信じたいものだ。
日本の音楽界については「メーカーやマネージメントがコンセプトのある商品として売るという戦略がなく、日本の芸能界は社会問題などに取り組んできた歴史がない」からレイジやU2のような社会問題を取り上げるアーティストが出てこないのも仕方のないことで、「そのために、アトミック・カフェをやったりもしたし、アムネスティのコンサートを日本で開いたりもしたが、やっぱり今一つ盛り上がらない。フジのような場でアピールするのがいいのかな」と日本でなかなかこういった取り組みが根付かない様にもどかしさを感じているようだった。
地元的なものや、日本的なものを取り上げていきたいと以前言っていたが、「今回は"WAR CHILD"がテーマで、平和と環境になったため、出来なかったが、そういった所には声はかけている」らしい。だが「大きな団体は反応があるが、なかなか思ったような団体の反応は...」とコーディネイトの難しさがその言葉からはよ〜く伝わってきた。
最後に来た人たちへのメッセージとして「自然をバカにしないで、自然を楽しむ。雨でも辛いが楽しんで帰って、戦争についても考えてください」とのメッセージを頂いた。
永田町では総選挙が秋にも行われるんじゃないかとの憶測が飛び、政策秘書でもある大久保さんは総選挙の準備に忙しい中、フジ・ロックに来ているようだ。どんなに忙しくてもやっぱりフジ・ロックには来たいと思う彼の熱意がきっといつかはフジ・ロッカーにも伝わる事だろう。僕も微力ながらその力に少しでもなれたら、そんな気持ちで大久保さんと別れた。


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