偏光フィルタを使った撮影


光の性質の中に偏光というものがあります。 裸眼のままではそれを観察することはできませんが、偏光フィルタを使うことによって見ることができます。
詳しい性質については電磁気学を勉強する必要があるのですが、ここでは身近な例を紹介したいと思います。

偏光はいたるところで観察できるので、どのケースが最も頻繁に起きるものかを言うのは難しいです。 たとえば、部屋の中を見渡したときに、TVや机、壁など照明から反射した光は少なからず偏光していることが多いです。
ここでは最も広いエリアで偏光が起きている「空」を例にあげて紹介してみましょう。

目を外に向けてみましょう。 空がなぜ青いのでしょう? 空は地球の大気で、大気は空気からできています。 つまり、酸素や窒素分子から成っています。 これらの分子は光に当たると散乱を起こします。 このとき、短い波長の光ほど散乱を強く起こします。 ということは、青い光が多く散乱されるので、空が青いというわけです。 またこれと同時に、どの向きで散乱するかによって、偏光したり偏光しなかったりし、入射光に対し90度で散乱した光は強い偏光を示します。 図を見てみましょう。


図は地上の断面の様子を描いています。 太陽が大気に平行に入ってきたとしましょう。 夕方のケースです。 3つの散乱光を描いてありますが、真中の光だけが、入射光に対し90度の散乱角度を持っています。 この光がもっとも強い偏光を示します。

実際に偏光フィルタを通して夕方の風景を見ることにします。 デジタルカメラの前に偏光フィルタを配置します。 偏光フィルタはある向きをもった偏光だけを通すものです。 ですから、フィルタを回転させると偏光した光が通過したりしなかったりします。 偏光フィルタを垂直と水平に合わせて撮影した画像を見てみましょう。

 

太陽は右に位置し、大気に対しほぼ水平に入射しています。 画面中央は太陽に対し90度の方位角になりますので、左の画面はちょうどその付近の空が暗くなっています。 偏光フィルタによって大気の散乱光をカットしているためです。 右の画面は逆に偏光を通すようにしていますので、空が明るくなっています。 
偏光フィルタを通したからといって、見えている光が偏光しているとは限りません。 (フィルタを通った後の光は偏光していますが) 偏光フィルタを回転させて、その強度が変化していれば、偏光していると言うのです。 たとえば、赤いフィルタを通して紫の物体を見たとしましょう。 フィルタを通して見た映像は赤いですが、その物体が赤いとはわかりません。 青いフィルタ緑のフィルタを通してそれぞれの強度を比較してみて、赤と青の映像で強度が強いことがわかって初めてその物体が紫だとわかるのと同じことです。

地球大気の偏光の具合が分かれば、それを応用して、天体の偏光の様子もわかってきます。 とりわけ、星雲の中心には光源となる恒星があります。 そこから発した光は星雲によって散乱され偏光していくケースも少なくありません。

天体観測例


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