第28回 新政研21フォーラム

                                   (このページの写真はすべて私が撮影した写真です)     河野 善福 記

                                          主  催  福田康夫後援会 
                         
         講師 丸紅株式会社 経済研究所 所長 柴田 明夫氏             挨拶された福田総理夫人

    日  時  平成20年9月12日
   場  所  グランドプリンスホテル赤坂 別館「ロイヤルホール」

     「資源インフレと日本の課題」

   【講演要旨】
 世界のあらゆる資源の価格が上昇している。 代表的な資源の価格推移を表すCRB指数を見ると、70年代の初めまで資源は安かった。 その頃原
油は1バーレル2ドル位だった。当時でも世界的に資源は逼迫していた。資源価格は80年代に一度上昇したが、まもなく資源の開発ブームが始まり、そ
の後の20年間は下落した。 今回は過去20年間の下げの修正と位置づけられる。
 最近の資源の傾向は、資源の安い時代が終わり、価格の均衡点を探っていると言える。先進国の消費ではなく、BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中
国)と称される世界の人口の4割、26億人の新興国が台頭してきたことが大きく影響している。80年代は先進国といわれる8億弱の人口が資源の消費
国だった。2000年に入って人口大国の消費が進み資源が逼迫した。今は13億6,000万人の中国が先進国に向かう過渡期であると考える。15年から20年
を要するであろう。
 通常は物の価格が上昇すれば需要が落ちる。しかし、資源が枯渇し、地球の温暖化が進み、危機感を持つ人たちが投機に走っている。原油価格は
いくらが良いのか?、それを今市場では問われている。現在の投機マネー自体は、意図をもって動いているのではなくて、儲かれば良いという動きであ
る。
 鉄を作るコークスは、80年代にはトン40ドルだった、03年に3倍になり、今年は300ドルとなっている。原油も90年代には1バーレル、20ドルだったもの
が、今年は100ドルを大きく越えた。これらは投機マネーというより環境が変ったと見たい。
 先進国と新興国の成長率乖離も大きい。先進国は年2%、新興国は年7%成長している。今年はサブプライム・ローンの影響を受けて世界の成長率は
鈍化するが、中国が15年から20年の時間軸で新興国に向かっているので資源需要が増大する。
日本が世界の経済を牽引していた時代は、年5%でアジアを引っ張っていた。
78年に中国は解放されて経済成長が始まった。30年近く10%に近い成長を続けたが、これは国内での成長だった。WTOに加盟後の中国は成長率を
減速させたが、世界に大きな影響を与える国になった。1、輸出の増大による成長。 2、外資導入による成長。 3、外国資源利用による成長。 中国
の経済規模は、3兆2000ドルで日本を抜いて世界第2位になったが、一人当たりではまだ2000ドルに過ぎない。日本の2000ドル時代は1971年だった。
中国の粗鋼生産は、日本に次ぐ世界第2位で昨年が5億トン、今年は5億3000万トンとなり、世界の粗鋼生産高の4割を占める。日本も中国の価格設定
に追従するしかない。
 原油マーケットは、モーターリゼーションに影響されている。中国の自動車台数は90年代には70万台だった。現在は1000万台である。原油は70ドル位
まで下がるとの説もあるが私は難しいと思う。先進国が独占的に使っていた時代は、現物の値段だったが、現在の価格は投機マネーによるもので、2〜
3年の先を観る時代には投機マネーが動くことになる。日本は備蓄在庫が50日以上あるので急激な価格変動はないと思う。中東の原油は白物(ガソリン
や航空燃料)には合わない。OPECに生産余力があるのか、これも疑問である。今後の需要の伸びの半分はアジアであると予測している。
CO2排出量は日本に比べ、ロシア19倍、中国は10倍であるが、一人当たりで見るとアジアは低い。
鉄資源も、先進国が主に使っていた時代は伸びは鈍かったが、新興国の伸びで不足するようになった。10年前の中国はアルミの需要が170万トンだっ
た。現在は1200万トンになっており、価格もトン1400ドルだったものが、今は3300ドルになっている。銅の場合は1500ドルから8000ドルになっている。レア
メタルについても中国は外国に出さないことに決めた。 日本の企業が中国で作るものも輸出を許可制にして、実質禁止している。鉱物資源の管理強化
を進めている。
 非鉄資源メジャーはM&Aを活発化して、巨大メジャーが誕生している。
中国は重厚長大はやめて、サービス産業に移行しようとしている。省エネ型の産業なれば、中・内陸部の発展も図れると考えている。
日本の資源戦略は1、資源外交 2、レアメタル開発 3、備蓄の拡充 4、人材開発を図らねばならない。
世界の穀物情勢は 1、量と価格の変化 2、在庫の減少(大豆、トウモロコシ、小麦) 3、中国が輸入に転じた 4、国家間の取り合い 5、海上運賃の上
昇(30数年ぶりの上昇で、米国〜日本間は過去20年間トン20ドルだったが、現在は150ドル)
 大豆は、日本は生産をあきらめた。米国の輸出の半分は中国と日本で、日本は年間500万トン輸入している。中国はトウモロコシを大増産しているが、
輸出を止めて輸入している。
 穀物の今後の見通しは、次のような問題点がある。 1、後進国の成長は続く 2、資源、エネルギー価格は高止まり 3、省エネ・環境分野での新ビジ
ネス拡大 4、新機軸の展開 5、サービスビジネスの高度化・多様化
食の西洋化が進み、食肉の需要も急激に上昇している。肉を造るのに、牛は11倍、豚は7倍、卵は3倍の穀物を必要とする。
 日本の課題は、人口減を見据えて、まずモデルを示す必要がある。その上で、技術力を生かし、国内でしっかりやるほかない。              
                                                                                以 上

【遺伝子組み換え食品と日本の農政について】
 遺伝子組み換え技術が開発されたのは96年でまだ10年、人体に良くないという意見もあるが評価は定まっていない。もう少し見定めねばならない。大
量生産のための密植に耐える品種や、害虫に強い品種を遺伝子組み換え技術で作り出している。日本の食糧備蓄は1.4ヶ月100万トンしかない、これ
では少ないと思う。農業の担い手が足りないことについても手を打つ必要がある。


              (講演の概要を筆記したもので、講演のすべてではありません)          記  河野 善福

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