フライトプラン


 2度のアカデミー賞、主演女優賞受賞に輝いた、ジョデー・フォスターが二児の母親体験から自ら選んだ、アクション・サスペンス
作品。
   最愛の6歳の娘が580人もの客席をもつ飛行機の中で消えた!。  これを必死に捜索する母性の愛と強さを見せてくれる。
       監督 ロベルト・シュヴェンチ


                                        〔文中に挿入している花はすべて私が撮影した写真です〕          河野 善福
 【キャスト】
カイル・プラット (ジョディ・フォスター)主人公の女性航空機設計士。 娘のジュリア・プラットは6歳。
リッチ      (ショーン・ビーン)AALTO AIR E−474航空機の機長。
ジーン・カールソン (ピーター・サースガード) 航空保安官
フィオナ    (エリカ・クリステンセン) 新人のフライトアテンダント。
ステファニー (ケイト・ビーハン) フライトアテンダント。       

  
  【ストーリー】
 カイルが病院の死体安置所に出頭する。 検視官が「棺を閉める前にお別れをしますか?」と問いかける。 「お願いします・・」
と言うと検察官は全員部屋を出て行ってくれる。 棺の中で目を閉じて動かない夫を見つめ、カイルはただ立ち尽くすだけであっ
た。

 係官から「コード番号の入力を・・」と要求されるが、 「そんな必要が?・・・」と問い返す。 「棺の送還については国際法の決
まりがあるので・・・」と係りの者が答える。 夫の入っている棺を自分の乗る飛行機で、ニューヨークまで運ぶ手続きをして居るの
である。 

 「力は尽くしましたが・・・ご主人は精神的ストレスが大きかったようで・・・」と言いながら、係官が棺の蓋をする。

 夜、自宅の部屋のベットで娘のジュリアが寝ている。 カイルがそばに行って娘の顔を撫でながらため息を漏らす。 窓辺に立ち
外を眺め、物思いにふけっていると、ジュリアが目を覚まし母を呼ぶ。 「ママ・・」 「何?・・」 「私の部屋はどこになるの?・・」 
「しばらくはママと一緒の部屋よ・・・ママが使っていた部屋なの・・いいでしょ?。・・さあもう寝なさい」 カイルは自分の部屋に帰
り、習慣になっている睡眠薬を飲む。

 朝、雪の降る中を両手に荷物を持って、親子が空港に向かうため部屋を出る。 ジュリアが「ママ・・外に出たくない」と言いだ
す。 「大丈夫よ・・・」 「恐いの!・・」 「私が守ってあげるわよ・・・コートの下に隠れる?」 「お家に帰るの?」 「そうよ・・」 
 二人は待たせておいた車に乗り込む。 ジュリアは熊のぬいぐるみを抱いて、後部座席に乗る。 ジュリアが「おじいちゃんとお
ばあちゃんのご飯はどんなご飯?」と聞く。 カイルは「美味しいわよ・・トーストもあるわ」と答える。

 カイルは空港に着いて飛行機の出発時間を見る。 ニューヨーク行きは 「遅延」と出ている。 ちょっと目を放した隙にジュリア
が居なくなる。 カイルは空港内を走ってジュリアを捜す。 売店でお菓子を見ているジュリアを見つけ、駆け寄ったカイルは「ジュ
リア!・・私から離れてはダメだと、何回言えば判るの?」と叱る。 ジュリアは「おなかがすいたから・・」と謝るが、「関係ないでし
ょ!・・お願いだから、心配させないで」と責める。 「ごめんなさい・・」

 ジュリアが搭乗機に向かう通路で「大きいね・・」と聞く。 カイルは「世界最大なの・・・E−474型という最新機よ」と教える。 
「ママが作ったの?・・」 「エンジンが見えるでしょ?。・・・ママが設計したのよ」 「落ちない?・・」 「心配しないで・・・絶対落ち
ないから・・」 「絶対じゃないでしょ」 カイルは何も答えなかった。 「チケット、持っててもいい?」 「乗るまではね・・」 カイルは
ジュリアを抱っこして機内に向かった。

 機内のテレビがいろいろの国の言葉で、搭乗歓迎の挨拶をしている中、誰も乗っていない機内の二階席に二人はやって来た。
 カイルが「26列目の右側ね」と言いながら席を捜す。 「ここね・・」 ジュリアを窓際の席に座らせて、荷物を収納棚に収める。 
着席するとすぐ「25列目の席」を捜しながら、二人の子供を連れた家族がやってきて、席の奪い合いをしながら前の席に座る。 
続いて乗客がひっきりなしに入ってくる。 フライトアテンダントの女性が座席の案内をしている。 乗客の男がフライトアテンダント
を呼んで「上映する映画は何か?」とか、「イヤホンの音はどのくらいか?」などと質問をしている。 彼が「後ろの席が空いている
なら移ろうかな」などと言っている。

 飛行機に水が放水されている。 前の席の夫人が亭主に「ボブ・・あれは何?」と聞いている。 男は「わからないけど、心配な
いさ」と答える。 カイルが「ああして、氷を溶かしているのよ」と教えてあげる。 機内ではフライトアテンダントが乗客数をチェック
している。 窓の外にトレーラーに乗せられた夫の棺が近づいてくるのが見える。 カイルとジュリアが緊張した顔でそれを見てい
る。 カイルがジュリアに「寝ていけばいいわ。・・目を覚ましたらニューヨークに着いてるわよ」と言う。 「パパも?・・」 「そうよ・・
パパもね・・・」 ジュリアが口紅を持って窓ガラスにハートの絵を書く。 カイルは無言でハートに見入る。

 機はやがて上昇する。 電灯が消され乗客は眠りに付いた。 カイルは前の席の騒がしさが気になって、ジュリアに「ねえ、横
になりたいでしょ。・・後ろの席が空いてるから横になれるわよ」と聞く。 ジュリアがうなずき、後部の座席に移る。

 しばらくして、カイルは隣の空席にある熊のぬいぐるみを見て、ジュリアのことが気になり様子を見に行く。 座席には枕と毛布
が有りジュリアの姿が見えない。 暗闇の中でジュリアを捜して歩いていると、フライトアテンダントを呼んで「上映する映画は何
か?」と聞いていた乗客の男が声をかけてくる。 「この映画観たかい?・・」 「いいえ・・」 「他にすることが無いから見てるけ
ど、面白くないよ」 「女の子を見てない?」 「いいや・・」 「飛んでからどのくらい経ってるの?・・・」 「三時間くらいかな・・」 カ
イルは洗面所とか、機内食の配膳室を探すがジュリアの姿は見えない。 フライトアテンダントのフィオナに「6歳の女の子で、・・・
一緒に搭乗したんだけど、見なかった?」と聞く。 「そうですか・・ここには来てませんね」と彼女は答える。 ラウンジとか、特別
席まで捜すが、ジュリアは見つからない。 フィオナに「ポニーテールで熊の人形を持っているはずよ。・・・たぶん、他の子供と遊
んでるのね」と気休めに言う。 薄明かりの中を階下の席も、トイレも見て回る。 自分の席に戻ってみると、熊のぬいぐるみは最
初にジュリアが座っていた席に転がっている。 後方の座席には戻っていない。  フライトアテンダントのステファニーが「どうしま
した?」と言ってやってくる。 カイルが事情を話すとステファニーは機内放送をしてくれる。 「お休みのところ、申し訳ありませ
ん。・・・母親が小さい女の子を捜しています。・・ジュリア・プラット、6歳・・紺のジャケットで・・・見かけましたら客室乗務員に・・・」



 操縦席で放送を聞いた副操縦士は機長のリッチに「子供は縛り付けておかなきゃあ・・」と冗談を言う。 カイルは乗務員に「誰
かが見ているはずよ・・・大きすぎて迷っているんだわ」と言う。 気休めに乗務員が「娘さんなら大丈夫ですよ」と言うが、カイル
は「大丈夫なわけ無いわ・・・怪我しているかもしれないし。・・ベルト着用のサインを付けてくれる?」と言う。  「私たちに任せて
ください」と言えば、「貨物室だけで上階に4室、下階に5室もあるのよ。・・調理室7つに乗務員室まで、あなたがたは全部探した
の?。・・・通路を空けて、捜しやすいようにしたいのよ」と言い返す。 乗務員は渋々了解して、「私が機長に直接連絡して、指示
を貰いますから、あなたは着席してください」と言う。 フライトアテンダントのフィオナがやってきて、「航空関係の仕事です
か?・・・飛行機の設計を?・・」と聞いてくる。 「ええ、エンジンの設計士なの・・・だから何?」と答える。 「ベルリンで?・・」と聞
くが「落ち着かせたいのだろうけど、そんなことより、私の娘が消えたのよ」とむきになる。 一呼吸置いて「ごめんなさい・・・子供
はいるの?」 「いいえ・・・かくれんぼしても見つけちゃうから」と言ってくれる。 

 前の席にいる人たちに「娘を見なかった?・・」と聞くが、「あの放送の子かね・・・観てないけど、・・お前は?」と夫人に聞く。 
「私も見てないわ」と夫人が答える。 子供たちに「手伝ってくれる?」と聞くと「いいよ・・どうせ暇だしな」と子供たちは乗り気にな
るが、亭主が「悪いけど、ダメだ」と断る。 機長のリッチがやって来て「設計士だって?・・」と聞く。 「ええ」 「この機の設計
も?・・」

 その時乗務員室のほうが騒がしい。 カイルが駆けつけるが、フライトアテンダントは彼女が近づけないようにして電話をしてい
る。 「何なの?・・娘は平気なの?・・」  フライトアテンダントのステファニーが答える。「プラットさん・・・申し訳ございませんが、
お嬢さんは乗っていません。・・・つまり・・その、お嬢さんの搭乗の記録が無いんです」 「何を、ばかな・・・」 「地上職員に聞き
ましたが、ジュリア・プラットの搭乗記録は無いと・・・」 「あるはずよ・・一番最初に搭乗して、私の隣に居たんだから・・二人であ
なたの前を通ったわ」 フライトアテンダントのフィオナも「乗客名簿にも娘さんの名前が無いんです」と言う。 「26列目・・26Aに
座っていたわ」 ステファニーが「26Aは空席でした・・・私が確認しましたから・・」と言う。 「見誤ったのよ・・・とにかく娘を捜して
よ・・搭乗券を見ますか?」ポケットを探すが1枚しか見つからない。  「娘のバッグだわ」と言って座席に帰り、荷物棚を見るが
バッグが無い。 「この高さじゃ娘は取れないわ。・・・誘拐よ!、・・他にどう説明できる?。・・小さい娘が居なくなっているの
よ・・・機長に話すわ」と言って操縦席に向かって駆け出す。 

 操縦席のドアを叩いて「機長に話があります!・・機長!・・機長!」と呼んでいると、後ろから男に腕を取られて、ドアに押し付
けられた。 「危険分子として拘束するぞ!・・私は航空保安官だ。・・放していいか?」 「いいわ」 手を放した男はフライトアテ
ンダントに「上映する映画は何か?」などと聞いていた乗客の男で、「ジーン・カールソンだ。・・怪我は?」と聞いてきた。 「機長
と話がしたいの?・・」 

 乗務員室でリッチ機長がパスポートを見ながら「出国の記録も無いんだな?」とフライトアテンダントのステファニーに聞いた。 
「はい。・・確認しました」 「搭乗券も無いと・・・」 カイルが「あったわ・・・盗られたのよ」と言う。 機長はフィオナに「登場口に居
たんだな?」と聞く。 フィオナは「正直言って、覚えてないんです」と言う。 ステファニーは「私が確認した時は26Aは空席でし
た」と答える。  カイルは「熊のぬいぐるみについて話したの?」と聞く。 機長は「くま?」と聞く。 カイルが「手放すことは無い
子が席に置きっぱなしで・・」と言う。 機長は「離陸前に酒は飲みましたか?。・・薬はどうですか?」と聞く。 「睡眠薬を少し・・・
皆が飲む程度にね。・・抗うつ剤も今朝2錠飲んだわ」 「どれ位の期間飲んだのかね?」 「常用してないわ」 「どれくらいです
か?・・」 「1週間前に、夫を亡くしたときに処方されたわ。・・・埋葬するために夫もこの機に乗せたわ。・・・6日前にビルから飛
び降りたの」  機長は航空保安官のジーンやフライトアテンダントを見回して、「誰も娘さんを見ていないのか?」と聞く。 ステフ
ァニーが「残念ですが名簿にも載っていません」と答える。 機長はジーンに「彼女の席に近い席でしたね?。・・娘さんを見まし
たか?」と聞く。 ジーンは「いいや、観ていない」と答える。 カイルは「何を言いたいか判るわ・・・妄想で娘が居ると思って、捜し
ているフリをしていると・・・。そんな必要がある?・・酒も薬もやってないし、注目を浴びたいとは思ってないわ。・・・規定があるで
しょ。不明者が出た場合、証拠があれば着陸させて・・・」 機長は「熊のぬいぐるみは、明白な証拠とは言えない」と言う。 カイ
ルは「私にとっては明白よ・・・機内を隅から隅まで探してよ!・・・なんにでも怯えてコートの下に入れて、やっと車に乗せたの
よ。・・・この飛行機にも私と一緒に乗ったの。・・でも私は寝てしまって・・・確かに私の隣に居て、手をにぎって離陸したのよ。・・・
おねがい娘を助けて・・・」と言う。 機長はしばらく考えてから「明かりを点けろ。・・・乗客を席に着かせろ。全員だ!。・・・カバン
と搭乗券を捜すんだ。・・・荷物入れ、ゴミ箱、全部だ。・・・いいでしょうか?」と言う。 カイルは「ありがとう」と礼を言う。

 機内が明るくなり、機内放送が流れる「お休みのところ申し訳ありません。・・機長の指示により全員着席してシートベルトを着
用してください」 乗客は不満の声を出しながらも全員指示に従った。 荷物扉も端から全部調べて廻っている。 「何だこのさわ
ぎわ」 
乗務員も「6歳の女の子が入るとは思えないけど」と言いながら調理室の隅々まで探している。 機長が「手順は踏まない
と・・・・」と言って、ステファニーは懐中電灯をもって、階下の荷物室に入って入った。 乗客が騒ぎ出して、カイルは「私一人で探
す」というが、ジーン保安官は「乗客全員の安全に付いて責任がある。・・・たとえおかしな乗客でもね」と言う。 カイルが座席の
下を覗き込みながら廻っていると乗客が「娘が見つかったらどうやって説明するの?・・・」と聞く。 カイルは「私一人で探すから
手伝わなくていいわ」と言う。 別の乗客も「何か犯罪が起きているの?」とか「誰かが誘惑されたの?」とか聞いてくる。 ジーン
がカイルの後をずっと付いて歩いている。乗務員の男女が調理室から「折角ハッチが開いたんだから」といって、手を取り合って
二人で荷物室に入っていった。
                                  
 カイルが急にアラブ人の顔を見て立ち止まった。 男が「どうした?」と聞く。 カイルが「知ってる顔かしら?」と聞く。 「ここを5
回通ったのを見ただけだが・・」と男が答える。 カイルが「ベルリンから?」と聞く。 男は「尋問か?」と聞く。 さらに「ベルリン出
身なの?」と聞く。 「いいや・・違うよ」  一緒に歩いていたジーンが「行こう」と言ってカイルを連れて行く。 調理室まで来ると荷
物室から洋服を直しながら出てくる乗務員と出会う。 カイルが「娘を探していたの?」と聞いて、「機長に話すわ。・・機長を出し
て」と電話機を突き出す。  リッチ機長がやってくる。 カイルは「格納庫を探してもいいかしら?」と聞く。 機長は「プラットさん、
子供じゃあそこには入れませんよ」と言う。 カイルは「2番調理室からは入り込めるわ」と答える。 「6歳の子供には無理な高さ
ですよ」 「荷物もなくなっているのだから、大人が連れて行ったに決まってるわ」 「大人だって?・・全て名簿でチェック済みなん
だ。・・話に無理がある」 「今すぐ格納庫を調べてよ!」 「失礼する」と言って機長は行ってしまおうとする。 ジーン保安官が機
長を引き止めて「それはまずい」と言う。 「何が?・・」 「今は彼女に行かせた方が良い・・・彼女のせいで乗客が不安になって
いる。・・私も一緒に行くから」 「カールソンさん。・・私は乗客全員の安全に付いて責任がある・・・錯乱していてもだ。・・乗客が
怪我をするのを防がねばならない。・・見つからない場合には部下二人を格納庫に行かせる」 カイルは「そこの二人は格納庫で
別のことをしていたようだけど・・・」と言う。 機長は「この機には425人の乗客が搭乗しているが、搭乗記録の無いあなたの娘
を全員が探しているからだ。・・・これ以上を望むなら、着陸後に顧客センターに行くことを勧める」と言う。 さらに機長は「カール
ソンさん・・この女性は君に任せる。・・客室キャビンから離れないように」と言って出て行った。

 カイルが「あの顔。・・思い出したわ!」と言ってアラブ人の男の席に走っていった。 男に迫る「娘はどこ?・・」 「何のこと
だ!」 「昨日居たでしょ。・・娘の部屋を覗いていたわ。・・ジュリアはどこ?」 ジーン保安官が「落ち着け」とカイルに言って、男
に「知っているのか?」と聞いた。 「まさか・・・知るはずが無い」と男が言った。 「昨日娘の部屋をこの人達が覗いていたわ」 
「見たことも無いぜ」 他の席で騒ぎを見ていた男が「怪しいもんだ」と声を出す。 「私は何もしていない。・・この人に会った事も
無い。・・私は見たこともないぞ!。・・・言う必要も無いが、こいつらも一緒にホテルに居たよ・・請求書を見るか?」 ジーン保安
官が「もし・・かまわないなら・・」と言って紙を受け取る。 男は「もし、自分の子供と一緒なら、私は目を離さない。・・見失わない
し、人のせいにもしない」と言って、ジーンに「満足か?」と聞く。 遠くの席から「えらそうに何だ!」と誰かが言う。 ジーンがカイ
ルに「行こう」と言って手を引くと、カイルは男に飛び掛って行った。 ジーンがやっと二人を引き離す。 男は「映画を観ていただ
けで言いがかりか・・・他に何か聞きたいことがあるか?。・・・ほかのアラブ人にもあたったらどうだ?」と叫ぶ。

 ジーン保安官は「君を逮捕することも出来るんだぞ」というが、カイルは「逮捕されるのはあいつらでしょ」と言う。 「昨日から狙
われていたというんだな」とジーンがカイルに聞いた。 「それで上空でサラって何処かに匿っているというのか?。・・・どうしてア
パートで無く、わざわざ機上で誘拐する?」 「判らないわ」 「じゃあ、どうやって乗客名簿から名前を消すんだ」 「乗組員の誰か
が協力してるのよ」 「わざわざアラブ人を選んだのは意図があったのか?」 「何の意図も無いわ」 「じゃあ拘束しようか?。・・・
もう一つ質問だ。・・なぜ君の娘を選んだ?。・・特別の理由があるか?」 「飛行機に詳しいから・・・それで私を選んだのよ」 
「何のために?」 「判らないけど、娘は人質になっているはずよ」 「ご主人が亡くなったのも納得できるな・・君といたら飛び降り
たくもなる」  機内放送が聞こえる「ご協力有難うございました。 ベルト着用のサインは消えますが、・・・」

 ベルト着用のサインが消えたので、乗客が通路にあふれ出す。 カイルは機長を見つけて「どういうこと?・・」と詰め寄る。 「娘
は居たの?・・彼女はどこ?・・」 リッチ機長は「娘さんは亡くなったんだ!」とカイルに伝える。 「見つけたの?!」 「いや・・そ
うではない・・・カイザー病院から知らせが来ました。・・・ご主人が運ばれた病院ですね。・・・娘さんもそこに・・」 「娘は居なかっ
たわ・・子守と一緒に居たから・・」 「記録によりますと、娘さんのジュリアは午後2時36分に死亡したと・・・ご主人は娘さんも連
れて屋上へ・・」 「娘は居なかったわ・・公園にいたもの。・・その場には居なかったのよ。・・おかしいわ・・全員おかしいわ」 機
長が改めて「娘さんは乗っていなかったのです」と告げるが、「私が連れてきたのよ」とカイルは言う。 機長が「プラットさん・・残
念ですが、私は乗客の安全の全責任を負っている。・・心中は十分に察しますが、許可する訳には行かないのです」 「娘の居場
所も知らなかったのよ」 「席まで彼が付き添いますから・・・カールソンさんお願いします」 カイルは席に連れて行かれる。

 席に帰る途中で、カイルはアラブ人の男に殴られて倒れる。 自分の座席に寝かされて、気がついたときには「気分はど
う?。・・痛む?・・必要なら鎮痛剤を貰うけど?」と知らない女性が声をかけてきた。 「機長があなたと話をするようにって言った
の・・私はセラピストなの。・・経験もあるし、力になれると思うわ」 「あなとのこと知らないし、・・」 「家族をなくした人がよく私のと
ころにくるわ。・・悲しみに呉れて、その悲しみから開放されたくて・・ものすごく苦しいものだから。・・あなたの夫デビットはどんな
人だったの?」 「あなたのこと知らないのよ」 「彼は辛かったのね・・」 「ええ、彼は不幸だったのよ・・私にも何も話してくれな
かったのよ・・・」 「判るわ・・・」 「昨日の夜町を歩いたのよ、・・・彼と一緒にね・・彼が居たのよ」 「ジュリアも一緒?」 「いい
え・・家で私を待っていたわ・・・」 「帰ったら喜んでいた?」 「眠れないって言ってたわ・・・だから、ベットに連れて行って寝るま
で一緒に居たのよ」 セラピストの女性が言う「すごく辛いことが起きたと機ってね、認めたくないから、信じたいものが見える
の・・・ご主人と歩いていたり、ジュリアと遊んでいたり、・・・その方が楽だから、・・・」 カイルは泣きながら「本当にそうね・・」と言
う。 「でもその悲しみを乗り越えないと先には進めないのよ・・・三人で綺麗な場所に行っているイメージとか、・・・イメージすれ
ばいつでも逢えるわ・・・判るかしら」 


 静かにセラピストの話を聴いていたカイルが「トイレに行ってもいいかしら?・・・ちょっと独りになりたいの・・」と聞く。 「いい考え
だと思うわ・・」と彼女が言った。 さらにジーン保安官に「トイレに行かせて上げて・・・」と言う。 ジーンは「独りにして大丈夫
か?」と聞く。「彼女は大丈夫よ」 

 トイレの前までジーンが付いていって、カイルの両手にはめていた手錠を解く。 「ここで待っているから・・・」 カイルはトイレに
入ると鍵を閉めて、便器の上に上がり天井の点検穴から上に上がり、配電盤のところに走る。 カイルが電気のコードを引き抜
き、別の穴に差し込むと、機内の天井から酸素吸入器が乗客の頭上に落下した。 乗客は悲鳴を上げながら吸入器を装着し
た。 「何が起きたんだ!」 「落ち着いて・・・鼻と口に当ててゆっくり呼吸して・・・」  カイルはさらに電気コードを引きちぎり、他
の線に接触させてショートさせた。 機内は停電となり、暗闇の中で乗客はパニックとなった。  「席について、ベルトを着用して
ください」とアナウンスが繰り返される。  悲鳴の中をリッチ機長が来て「どういうことだ・・・彼女はどこだ!」と聞く。 機長と保安
官がトイレの戸を開けたが、カイルは居ない。 そのころカイルは荷物の格納室に入って、「ジュリア!」と叫びながら、荷物コンテ
ナの間を探していた。 「ジュリア!・・居るの!・・」 車のドアガラスを破り、トランクを開けて調べた。 夫の棺が目に留まった。 
駆け寄ってダイヤル錠を解除し「ちょっと待ってね、ママが着たから・・」と言って蓋を開ける。 そこには夫デビットが横たわるだけ
だった。 「ああ・・デビット!・・あなた・・・恐いわ・・ジュリアが見つからないの・・・助けて、お願い!・・どこに行ったの?」  背
後からの「こっちを向くんだ!・・」と言う声に振り向くと、ジーンが立っている。 あわてて逃げようとしたが、「動くな!」と言って銃
を構えていた。 カイルが「まだ見つからないの」と言ったが「そうかい・・行くぞ」と言う。 カイルが「機が下降している・・・まだ2
時間あるはずよ」と聞くと、「臨時着陸する・・・君みたいな乗客がいれば仕方ないだろ」と言う。 「いいわ、着陸したらまた探せば
いいわ・・・乗務員室とかはまだ見てないし・・」 「もう沢山だ」 「まだ調べてないのよ」  

 ”当機はまもなく臨時着陸します。”とアナウンスが流れる。 みんなが着席してベルトを締める。 カイルが「どうして棺が一つな
の?・・娘も死んで居たら棺は二つのはずよ・・そうでしょ」と聞く。 ジーンは「そんなことは判らないが、君が400人もの乗客を怯
えさせていることは事実だ」と言う。 「娘は生きているわ、・・乗って居るのよ」 「なぜ、誰も彼女を見ていないんだ?」 「お願
い・・乗客が降りる前に機内を調べさせて・・」 「着陸したら君は逮捕されるぞ」 「今探さないと娘は帰ってこない・・・私が助けて
あげないと・・・お願いだから」 ジーンは「ちょっと」とフライトアテンダントのステファニーを呼んだ。 「機長と話したいから彼女を
見て居てくれ・・悪いが頼むよ」と言って席を立った。 ジーンは調理室まで行くと通路のカーテンを引いた。 周りの全てのカーテ
ンを引き荷物室に入っていった。

 カイルの席の隣に座ったステファニーは手錠を見て「痛みますか?」とか「食事は?」と声をかけてきた。 カイルは彼女に「みん
なで娘を探していたとき、あなたは探して無かったわね・・・あなたはどこにいたの?」と聞く。 ステファニーはそれには答えずに
「ご家族は残念でしたね」と答える。 そのころジーンは棺のところに行って蓋を開け、蓋の布を破って爆薬とか、起爆装置を取り
出し、最後尾の棚の上に寝かせたジュリアのところにやって来た。 ジュリアは眠らされており、身体のそばに爆薬を置き、起爆
装置の時間セットを起動させてそばに置いた。 

 何食わぬ顔で機長室にやって来たジーンは機長に「彼女がこの口座に、5000万ドルを振り込め。 拒否したら機を爆破させる
と要求している。」と告げて紙を渡した。 「仲間が居るのか?」 「誰かは明かしていないが、起爆装置を持っていると言い・・・着
陸させて、乗客と乗務員を降ろし、G3機を大気させて置けと・・」 機長が「娘を探すフリをして・・・」と言うと、ジーンが「夫の棺も
爆破のために持ち込んだんだろう。・・・娘のことは判らないが、二人とも殺したんだろう」と言う。 機長が「話がしたい」と行きか
けるが、「ダメだ、乗組員の誰とも話さないと言っている」と言って引き止める。 「いいか、聞くんだ、・・・人に危害を加えるのが
目的じゃないだろう・・・乗客を降ろすまでは強行しないはずだ。・・・すぐに金を振り込んで、済んだらすぐに僕に知らせるんだ。 
着陸して、乗客全員を降ろしたら彼女を撃つ。

 ジーンが席に帰ろうとして、調理室まで来ると、ステファニーが呼び止める。 「カールソンさん・・・もう耐えられない。・・気付か
れているわ」 「まさか・・・」 「娘が生きていることも、機上に居ることも」 「具体的に何か言ったのか?」 「いいえ」 「君が言っ
たのか?」 「いいえ」 「じゃあ、何をあせってる。・・・予定通り・・いや、それ以上の出来だ。・・・乗客の大半はアラブ人の犯行だ
と思っているし・・」 「でも、仲間だと思われているし・・」 「着陸したらすぐに始末するから安心しろ。・・踏み込まれた時には手
に起爆装置を持った彼女の死体を見つけるだろう。・・・何度も説明した通り、証拠はジュリアの存在だけだが、それも粉々に吹き
飛ぶから問題は無い。・・・すべて順調に進んでいる」 そこにフライトアテンダントのフィオナが来て「カールソンさん・・機長から電
話が・・」と伝える。
                                  
 ジーンが電話を掛ける「機長!」 「口座への振込みが完了した」 「はい・・どうぞ、」  機内アナウンスが流れる。 ”まもなく
当機は下降いたします・・ベルトの着用及び・・・・・・座席を元の位置に・・・”  カイルのそばに戻ってきたジーンはカイルの手錠
を外す。 カイルが「どうして・・」と聞く。 「もう平気だろ。・・・まもなくグースベイに着陸する。FBIも向かっているそうだ。・・・娘さ
んの失踪も説明してある。・・・機を降りたら乗客は全員調べられる。・・二人の捜査官が来て調査するそうだ」 「乗組員も調べら
れる?」 「ようやくこれで終わりだな」

 飛行機が着陸した。 「ここはどこだ?」と乗客が聞いている。 警察の車両が待機している。 ヘリコプターが上空を旋回して
いる。 アナウンスが流れる”容疑者は捜査官によって連行される。・・ヴィクター・ワンは確認を頼む”   ジーンがカイルに言う
「全員が降りるまで、そのまま静かにしておいてくれ」 乗客がぞろぞろと降りて行く。 最後にジーンとカイルだけが残った。 ジ
ーンが「よし・・乗組員も全員降りる。・・そしたら自由に調べればよい」と言う。 機長の姿が見えたのでカイルが立ち上がると、ジ
ーンが「おい・・どこに行く!」と引き止める。 ジーンは「機長に話が・・・」と走っていって「カートやゴミ箱も機内から持ち出さない
で・・厳重に封鎖しないと」と訴える。 機長は「もう私の出る幕じゃない・・・そうだろう?」と言って出て行く。 不審に思ったカイル
はさらに機長を追う。 「機長!・・機長!・・機長待って!・・私のせいで混乱を招いたのは悪かったわ・・すぐに娘は見つけ出す
わ。・・見つけたら、娘に謝ってほしいわ」 「もう沢山だ。・・・言われたとおりに送金した。・・言われたとおりにG3機も用意し
た。・・今更子供の話は必要ないだろう?」 カイルが「何をいってるの?」と聞く。 ジーンが「FBIを連れてくる。・・待ってろ」と言
ってタラップを降りて行く。 外は銃を構えた警察官が包囲して居る。 

 なぞが解けかけたカイルが「カールソン!・・そのままでは行かせないわ!」と叫ぶ。 最下段まで降りていたジーンが振り向い
て、ゆっくりとタラップを上がってくる。 「相手になってやろう」 「娘を返してよ!」 「全員降ろしてから話そうじゃないか。・・それ
とも戻って、俺が犯人だと言うか?・・・誰も信じ無いぜ」 「ポケットにあるものを話すわ・・」 「言ってみろ・・娘の命と引き換えだ
ぜ・・」  乗務員が降りきるまで二人は無言でタラップの上で待っている。 最後に降りかけて機長が「これで良いか」と聞く。 カ
イルは「いいえ・・銃を渡して」とジーンに言う。 ジーンが銃を機長に渡す。 機長はジーンに「無事を祈る・・」と言ってタラップを
降りて行った。 

 ジーンは乗降口のドアを閉めて、カイルに「これでゆっくり話せるな」と言い、不敵な笑みを見せる。 ジーンが後ろを向いた時、
カイルはそばにあったものを持ち上げて、ジーンの後頭部に投げつけた。 ジーンはその場に崩れ落ちて意識を失った。 カイル
は素早くジーンのポケットから、手錠を取り出して両手にはめて、さらに起爆装置を奪った。  ジーンを揺り起こして「仲間はどこ
に居るの?」と、聞いたがジーンは何もしゃべらない。 そこにもう誰も居ないはずだった機の奥から、フライトアテンダントのステ
ファニーが現れた。 「娘は制御室ね・・・そうでしょ」と聞いたが、やはり何も返事をしない。 ジーンが隠し持っていたピストルで
カイルを撃ったが当たらなかった。 カイルは梯子を上り、制御室に急いだ。 ステファニーはこの様子を望然と立ち尽くして見て
いるだけだった。 カイルは乗務員室に逃げ込んで中から鍵をかけた。 ドアに取り付けられた覗きレンズの向こうで、ジーンがド
アを叩き壊そうとしているのが見える。 ジーンが言う「聞くんだ・・・もう終わりだ・・・誰も助けには来ないぞ、・・出て来いよ!・・・
もう誰も殺さないさ」 カイルが聞く「夫は飛び降りたわけじゃなかったのね?・・」 ジーンがドアの向こうで答える「気にすることは
無い・・棺はX線検査が不要だから、必要だったんだ・・・素晴らしいアイデアだろ」と嘯く。 カイルはコンテナを踏み台にして、天
井の点検穴から上に出る。 カイルは機尾のほうに物を投げて、物音で移動したように見せかけて、乗務員室のドアを開け部屋
から出てくる。

 飛行機の回りはサーチライトをつけて警官やFBIが包囲し、上空にはヘリコプターが旋回している。 カイルが客室まで逃げてき
たとき、前方にステファニーが望然と立っているのが見えた。 カイルが近づいて「小さい子の命を奪いたいの?」と聞く。 さらに
「冷酷でなければ出来ないことよ・・・あなたはどうなの?・・・私から娘を奪いたいの?」と聴く。 ジーンがピストルを構えてカイル
を探している。 ステファニーは両手で金具を持って身構えている。 カイルがステファニーの顔面を強打すると、彼女は鼻血を出
して倒れた。 ジーンが階段を踏み外して、大きな物音がしたので、カイルはジーンが迫っていることを知る。 カイルは制御室に
入って「ジュリア!・・・ジュリア!」と大声で呼ぶ。 ジーンが迫ってくる。 タラップを走り降りてステファニーが逃げていくのが見え
る。 カイルは機尾の最奥でジュリアを見つける。 「ジュリア!・・・」 しっかりと抱きしめて、呼吸のあるのを確かめるが、ジュリ
アの意識は無い。 「聞こえる?・・何をされたの?・・」 

 ジーンが部屋の入り口の鍵を銃で撃って壊している。 カイルは部屋の壁に爆弾の受信機が取り付けられているのを観つけ
る。 カイルはジュリアを抱きかかえて隣の部屋に逃げる。 ジーンが梯子を降りて部屋にやってくる。 ジーンが言う「教えてやる
よ・・だんなは飛び降りたんじゃない・・突き落とされたんだ!・・さあ、出て来い!・・誰も助けには来ないぞ・・・俺の話を信じてい
るからさ・・・子供は誰にも築かれないように、食事カートに押し込んだのさ。 誰もジュリアが居るとは思っていないのさ・・もうお
わりにしよう」 カイルは意識の無いジュリアをロッカーの中に押し込んで、「すぐに戻るからね・・・」と言って蓋をした。 ジーンが
ジュリアを置いていた場所まで行ったがジュリアがいない。 振り向くとカイルが起爆装置を両手に持って立っている。  「何をす
るつもりだ!・・・道連れにするつもりか?」 「あなただけよ!」  カイルはジュリアの上に身体を重ねて起爆装置のボタンを押し
た。 轟音と火柱の上がる中で飛行機は爆破された。

 機長たちが望然と見つめる煙の中で、非常口の扉が開き、カイルが出てきた。 「誰かを抱いてる!・・」 機長も「本当に娘
が・・・」と驚く。 カイルがジュリアを抱いてやってくる。 口々に「良かったわ・・」と声をかける。 警察の車両がサイレンを鳴らし
て引き上げる。 取材陣が集まり、ヘリコプターも近づく。 リッチ機長がやってきて「君によく似ている」と声をかける。 「ええ、眉
は主人に似てるけど・・・」と、まだ意識の戻らないジュリアを抱いてカイルが答える。  「すまなかった」と機長が謝る。 すぐ脇を
ステファニーを連行するFBIが通る。 「プラットさん・・支局で事情を聞きたいのですが・・犯人の特定など・・・」とFBIの男が言う。
 機長は「後にしてあげてくれ」と言う。 「車が来ました・・・用意が出来ましたら・・・」とFBIの係り官が声をかけ、カイルはジュリ
アを抱いて立ち上がる。 足止めを食った乗客たちの間をジュリアを抱いたカイルがゆっくり歩いていく。 ジュリアが目を覚まし
「ママ・・」と言う。 カイルは「目が覚めたの?」と聞く。 ジュリアが「ママ・・・もう着いたの?」と聞く。 「まだよ・・・あと少しよ」と
いって額にキスをする。 車に乗り込もうとしているカイルのカバンを、髭のアラブ人の男が持ってきて微笑む。 車が動き出した。
  
          = 終わり =


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