ハリー・ポッター 炎のゴブレット




   【キャスト】                              〔文中に挿入している花はすべて私が撮影した写真です〕          河野 善福

ハリー・ポッター (ダニエル・ラドクリフ) 主人公で叔父のバーノンに育てられた。 ホグワーツ魔法魔術学校のグリフィン
          ドール寮に入学 。 偉大な魔法使いで有った父母は、交通事故で死んだと聞かされていたが、両親が
          死に追いやられたことを知った。
ロナルド・ウイーズリー(ルパート・グリント) 通称ロン。 グリフィンドール寮の同室者でハリ ーの一番の親友。 
          父アーサー。母モリー。  
ハーマイオニー・グレンジャー(エマ・ワトソン) マグルの出身。グリフィンドール寮のハリーとロンの同寮者で仲良しの少女 。
ドラコ・マルフォイ(トム・フエルトン) 魔法使いの名門「マルフォイ家」の一人っ子。  父はルシウス・マルフォイ。 
          スリザリン寮の少年。
アルバス・ダンブルドア(マイケル・ガンボン) ホグワーツ魔法 魔術学校の校長先生。 150歳を超えている先生で
          生徒の信頼は厚い。
ミネルバ・マクゴナガル(マギー・スミス)ホグワーツ魔法魔術学校の女性の副校長先生。 グリフィンドール寮の寮監。  
ルビウス・ハグリッド(ロビー・コルトレーン) ホグワーツ魔法魔術学校の鍵と領地を守る大男の番人で講師。
          ハリー、ロン、ハーマイオニーの親友。 
ビクトール・クラム(スターニスラフ・イワネフスキー)知力を争うトライウイザード・トーナメントの三大魔法学校対抗試合
          のダームストラング校の代表選手。
セドリック・ディゴリー(ロバート・バティンソン)知力を争うトライウイザード・トーナメントの三大魔法学校対抗試合のホグ
          ワーツ校の代表選手。
フラー・デラクール(クレマンス・ポエジー) 知力を争うトライウイザード・トーナメントの三大魔法学校対抗試合のボーバ
          トン校(女子校)の代表女性選手。
チョウ・チャン(ケイティ・リューング)ホグワーツ校レイブンクロー寮の女子生徒。
ネビル・ロングボトム(マシュー・ルイス) ハリーの友人で、薬草に詳しい少年。
セブルス・スネイブ先生(アラン・リックマン) 髪が肩まである、魔法薬学担当の鷲鼻の先生 。
ヴォルデモート卿(レイフ・ファインズ)  名前を呼んではいけない「例のあの人」 恐るべき邪悪な人。  
ルシウス・マルフォイ(ジェイソン・アイザックス) ドラコ・マルフォイの白髪の父親
アラスター・マッド・アイ・ムーディ(ブレンダン・グリーソン)ホグワーツ校の「闇の魔術に対する防衛術」担当の片目が
          義眼の新教授。
シリウス・ブラック(ゲイリー・オールドマン) アズカバンの監獄を脱走した男。 ハリーの名付親。
ピーター・ペティグリュー/ワームテール(ティモシー・スポール) ヴォルデモート卿の忠実な手下。 
          チビでハリーの父親やシリウス・ブラックの学生時代の友達。 ハリーの両親を裏切った男。
イゴール・カルカロフ(プレドラグ・ビエラク) ダームストラング校のなぞめいた、あごひげの長い校長。
マダム・マクシーム (フランシス・デ・ラ・トゥーア) ボーバトン校(女子校)のおかっぱ頭の女校長。
バーティ・クラウチ(ロジャー・ロイド・パック) 魔法省の役人。
バーティ・クラウチJr(デイビッド・テナント)バーティ・クラウチの息子。 
リータ・スキーター (ミランダ・リチャードソン)日刊予言者新聞の女記者。    
ヘドウィグ     ハリーの手紙を運んでくれる白いフクロウ。 

   【ストーリー】

 闇に包まれた森の中のお城で、庭番の老人が、夕食の支度をしている。 ふと窓の外に目をやったとき、無人のはずの塔から
かりが見えた。 老人は「また、わるがき共が・・・」とつぶやきながら、鍵の束とランプを手に持って、塔の石段をそっと登って
行った。 部屋の外まで来て見ると、姿はイスの向こうになるので見えないが、ヴォルデモート卿の声がしていて、卿の前で二人
の男が、しきりに頭を下げている。 ヴォルデモート卿が言う「お前も偉くなったもんだな・・・かっては鼠の姿でドブに住んでいた分
際で、俺様の世話をするのが面倒になったと言うわけか?・・・」 ワームテールが言う「いえいえ・・滅相も無いヴォルデモート
卿!・・・私はただ、あの方抜きでもお出来になるのではないかと・・・」  「あいつらが肝心なのだ・・やつ抜きでは出来ん。・・実
行するのだ・・命令したとおりにな・・・」 若い男が答える「お任せ下さいご主人様・・・」 卿がさらに言う「まずは昔の同胞を呼び
寄せよう・・・”しるし”を送るのだ!・・」 その時卿のそばに暗黒のドラゴンが滑り込んできて、大蛇言葉でヴォルデモート卿に何
かを伝える。 卿が言う「ラギニからの知らせだ・・・部屋の外に老いぼれマグルの庭番が居るそうだ。・・・そこをどけ・・・歓迎申し
上げねばな・・・」 卿が魔法をかけると、一面が火の海となり、苦しみ叫ぶ庭番の老人の声が聞こえた。 

「ハリー!・・・大丈夫?」ハーマイオニーの呼ぶ声で、夢を見ていたハリー・ポッターは悪夢から目を覚ました。 彼女が起こしに
来てくれたのだった。 ハリーが尋ねる「ハーマイオニー?・・・いつ着いた?」 「さっき・・・あなたは・・・」 「夕べ・・」 ハーマイオ
ニーは「起きて・・・ロン、・・・又眠っちゃだめよ。朝ごはん出来てるわ」とロンも起こした。

ハリー、ロン、ハーマイオニー、ロンのパパのアーサー氏など7人が、山の中の川沿いの道を全員リュックを背負って歩いている。
 ハリーが「どこに向かっているの?」とロンに聞く。 ロンが「ねえパパ・・・どこに向かってるの?」と父親に聞く。 「さあ、・・どこ
かな・・みんな遅れるなよ」 しばらく行って合流者に出会う。 ロンのパパが「みんなこちらはエンボス・ディゴリーさんだ。 魔法
省で一緒に働いている人だ」と紹介してくれる。  息子のセドリック君が一緒に居る。 エンボス・ディゴリーさんはハリーを見つ
けて「君はハリー・ポッターかい?・・会えて実にうれしい・・」と言って握手を求める。 やがて一行は丘の上のオンボロブーツの
置いているところにやってくる。 「始めるか・・・」 「さあ・・みんな位置について・・」 ロンのパパやエンボスさんに言われるまま、
みんなはボロボロのブーツの周りで輪になって、手を伸ばしてブーツに掴まった。 「ただのオンボロブーツじゃないんだ」 「ポー
トキー・・」 ハリーが聞く「ポートキーってなに?・・」 「行くぞ!・・1・・2・・の3だ・・そ〜れ!」 全員の身体がブーツを中心に風
車のように回転しながら上昇して行った。

「手を離せ!・・」 「手を離して・・・」ロンのパパが叫んで、みんなは空中でバラバラになり、見知らぬ土地に降り立った。 丘を登
ると反対側の谷間に大勢が、すでに集まっている。

 ”みんなクィディッチ・ワールドカップにようこそ” 歓迎の声に迎えられて、ハリーたち一行はクィディッチ競技場に向かった。 割
り当てられたキャンプ地の小さいテントに入ると、中は100倍もある大きい室内だった。

クィディッチ・ワールドカップがまもなく始まる。 ハリーたちが会場に入ると、同級生のドラコ・マルフォイが父親のルシオス・マルフ
ォイとやってくる。 ドラコが「僕等は魔法省の貴賓席さ・・・じきじきのご招待でね」と告げて通る。 父親が「自慢するなドラコ!・・
相手にする価値はない」と叱る。 会場はすでに大変な盛り上がりようで、風船や紙吹雪が舞っている。 シーカーの編隊が妙技
を公開している。  「ようこそ、みなさま・・大いなる喜びをもって、歓迎のご挨拶をさせていただきます。・・・第422回クィディッ
チ・ワールドカップ決勝戦です。・・・それでは”試合開始”」魔法省大臣の杖が振られた。 杖の先から火玉が飛んでいった。

ハリーたちがテントの中で、今日の開会式の模様を興奮しながら話していると、外が騒がしくなった。 外に出てみると人々が空
を見上げて逃げ惑っている。 三角帽子を冠り、仮面をつけた一団がタイマツを手にやってきて、次々とテントに火を放っている。
 上空に不吉な雲が舞う。 ハリーは逃げる途中で転んで意識を失った。

 一面が焼け野原となったキャンプ地で男がハリーを探している。 男は杖をかざして”あの人”を呼んだ。 上空に不吉なサイン”
闇の印”と”ドクロの顔”が浮かんだ。 ハリーが意識を回復した時、男はハリーを捜していてすぐそばまで迫っていた。 ハリーが
追い詰められて逃げ場を失った時、「ハリー!・・ハリーッ!・・どこに居るんだ!」ロンやハーマイオニーが大きい声を張り上げて
捜しに来てくれた。 その声で男は逃げて行った。 
 ハリーたちは周囲を取り囲まれて銃撃されるが、ロンの父親が「あれはうちの息子たちだ」と銃撃を止めてくれる。 銃撃した捜
査官がやってきて「だれがあれを出した?・・君らは犯罪の現場に居た」とハリーたちに迫る。 ハリーは何のことだか判らず「犯
罪?・・」と聞く。 ハーマイオニーが「”闇の印”よ・・・"あの人の印”・・あの人が出したのよ」と教えてくれた。 邪悪な”あの人”
の復活を告げる”闇の印”だった。 ハリーは「じゃあ、あの仮面をつけた人たちはヤツのしもべ達だったの?・・」とハーマイオニ
ーに尋ねた。 「ああ・・・デスイータ(死喰い人)だ・・」とロンのパパが教えてくれた。 ハリーが「さっきまで男の人が居ました・・・
あそこに・・」と言うと、捜査官は「付いて来い!・・」と言って、一団を引き連れて走っていった。
       

 ハリーたちが列車に乗ってホグワーツ魔法魔術学校に帰っている。 車内販売のおばさんが来て、ロンが風船ガムを欲しいと
言い、ハリーが買ってやる。 その時、隣の個室から出てきた少女が買い物をする。 ハリーと目が合って少女が微笑む。 ハリ
ーは一目観て好感を持ち忘れられなくなる。 ハーマイオニーが「あの”闇の印”を誰が出したのか判らないんですって・・・会場の
警備はどうなってたの?」と言う。 ハリーの顔を見て「ハリーまた傷が痛むの?・・」と聞く。 ハリーは「大丈夫だよ・・」といった
が、上空に"闇の印”が浮かんだときも額の傷跡が痛んだ。 「シリウスに知らせておいたほうがいいわ。・・ワールドカップで見た
ものとあの夢のことを・・」  ハリーは”シリウス・ブラック”へと手紙を書いて、列車の中から、白ふくろうのヘドウィグに持たせ
た。 「ヘドウィグ・・頼んだぞ」 
 
 ホグワーツ魔法魔術学校の校庭に、羽根を持った7頭の馬に引かせた馬車に乗って、ボーバトン魔法学校の生徒と校長先生
が空から舞い降りた。 湖からは3本マストの帆船が、湖底から一気に浮上して雄姿を現せた。
 広間にホグワーツ魔法魔術学校の生徒を全員集めて、ダンブルドア校長が「皆に一つ知らせがある。 この学校に今年は特別
なゲストを迎えることとなった。 今年このホグワーツにおいて、・・・」と、話してる途中に、男の先生が校長のところに駆け寄り耳
打ちをする。 校長が続ける「今年ホグワーツにおいて、伝説の催しが行われる。 トライじゃ。・・これは三大魔法学校の対抗試
合じゃ・・一連の魔法競技種目を各校から1名づつ選び競い合う。 選ばれた者は一人で戦うことになる。 厳しい競技じゃ、・・・
やわなものにはとてもこなせぬ。・・・詳しくは後ほど。・・・・さて、ゲストをお迎えしよう・・・まずはレディーから、ボーバトン魔法学
校の生徒と校長先生、マダム・マクシーム・・・」
 扉が開いて音楽に合わせ、踊りながらブルーのコートにブルーの帽子を身に着けた上品な女子生徒の一団が入ってきた。 腰
を振り、手を振り、最前列に並んだ。 「スッゲイや・・・」 みんなが拍手で迎える。
 校長が続ける「そして、北からはダームストラング魔法学校の一行と校長イゴール・カルカロフじゃ」 皆が注目する中で扉が開
き、軍服姿で鉄の杖を持ち、床に打ちつけたり、目の前で回転させたりして、頭を丸刈りにしたたくましい男子生徒の一団が入っ
てきた。 壇上で彼らは口から火を吹いて見せた。

 キャンドルが灯る厳かな雰囲気の大広間でマダム・マクシーム校長が「ダンブルドール先生・・・今日は長旅をしてきました。・・・
いたわってください」と挨拶した。 ダンブルドアは「心配なく・・・森番のハグリッドがお世話しましょう」と答えた。 「私の馬はシン
グルのウイスキーしか飲みません」とマダムが言った。 ダンブルドア校長は「よいか諸君。・・・一言云うて置こう、・・・永久の栄
光がトライウイザード・トーナメントの優勝者に贈られる。・・それには三つの課題をやり遂せねばならん。・・・ きわめて過酷でス
リルと最大の危険を伴う課題じゃ。・・・そこでこのたび魔法省は新たにルールを設けた。 これについては国際魔法協力部のミ
スター・バーティ・クラウチ氏から説明してもらおう。」 指名されたバーティ氏が立ち上がると会場に一瞬稲妻が走り、”闇の印”
が現れた。 新たに「闇の魔術に対する防衛術」の教授として就任したばかりの、左の目が義眼の教授が杖をふるって戦った。 
「あ、・・マッド・アイ・ムーディだ・・」 「アラスター・ムーディ?・・オーラーの?」 「オーラーって?・・」 「闇狩りのことだよ。・・・闇
の魔法使いをアズカバン送りにした。
 左足を引きずりながら、マッドが壇上のダンブルドア校長に近づき握手をした。 「よく来て呉れた」と校長が言った。 マッドは隠
れるようにして、ウイスキーの小瓶をあおった。
 ミスター・バーティング・クラウチ氏は壇上に進み、全生徒に向かって「検討の結果・・・安全のため、17歳未満の生徒は、この
度のトライウイザード・トーナメントに立候補することを禁じると魔法省が決定した」と発表した。 生徒たちからは一斉に不満の声
が上がった。
 ダンブルドア校長が「しずかに!・・・」と、生徒に告げた後で壇上のトロフィーに杖をかざすと、背丈ほどもあるトロフィーが融け
ていって、中から大きいゴブレットが現れ、青い火が点いた。 校長は「炎のゴブレットじゃ!・・・」と叫んだ。 続いて「トーナメント
に名乗りを上げたい者は、用紙に自分の名前を書き、木曜日のこの時間までに、ここに入れるのじゃ。軽い気持ちで入れるじゃ
ないぞ。・・・選ばれたら後戻りは出来ぬ、・・・今この時からトーナメントは始まって居るのじゃ」と告げた。

 深夜誰も居ない大広間に、ダームストラング校長のイゴール・カルカロフが入り、ゴブレットに近づいた。
                   
 マッド教授が教室で生徒に講義をしている「おれはアラスター・ムーディだ!。・・元、闇狩り、魔法省にも居た。”闇の魔術に対
する防衛術”担当だ。・・ダンブルドアに頼まれたので引き受けた。・・闇の魔術に関しては実践教育が一番だと思っている。・・・
お前たちに質問する・・・許されざる呪文は幾つあるか?。」と聞いた。
ハーマイオニーが「三つです」と答えると、その名の由来は?・・・」と聞き返した。 「許されないからです。」 「この呪いを使うだ
けで、アズカバンで終身刑を受けるに値する。・・・子供に教えるのは早すぎると言うが、おれはそうは思わん。・・・戦う相手を知
るべきだ。・・・さて、どの呪いからいくか・・・」と教室を見回して、ウイーズリーに「立て!」と命じた。 ロンが自席で立ち上がる
と、「どんな呪文がある?・・」と聞いた。 ロンが「一つパパから聞いたのが・・・服従の呪文が」と言いかけると、マッドは「お前の
父親なら良く知ってるだろう・・魔法省はさんざん手こずったからな。・・・そのわけを教えてやろう」と言うと、マッドは教壇に置いた
ガラスの容器の中で飼っているクモのような虫を「そーら・・いい子だ」と言って手の上に取り出した。 マッドが呪文をかけるとク
モは段々大きくなって生徒のところに跳んでいった。 マッドが杖で指示をすると、生徒の頭の上や肩や顔に飛んでいって止まる
ので生徒は恐がって騒いだ。 マッドの義眼は上下左右を睨み付けるようによく動いた。 マッド教授が続けて言う「多くの魔法使
いがこう言った。・・自分の悪戯は服従の呪文によって、例のあの人に無理強いされたのだと・・・だが、それが嘘か真かをどう見
分ける?・・。さて、後の呪文は?・・」と、ロングボトムを立たせた。 「スプラウト先生に聞いたぞ薬草学が得意だそうだな・・・」と
聞く、ロングボトムが「あとは磔の呪文です」と答えると、「そう・・その通り。・・」と答えて、ロングボトムを教壇まで呼んだ。 教授
が「拷問の呪文だ」と言って唱えると、クモの妖怪は「キイーキー」と苦しそうな声を出してもだえた。 ハーマイオニーが「ヤメテ
ー!」と叫んだ。 マッド教授は弱ったクモの妖怪をハーマイオニーの机に置いて「許されざる呪文の最後の一つは・・・?」と聞い
た。 ハーマイオニーが首を左右に振ると。 教授はクモの妖怪に杖を突きつけて、叫ぶように呪文を唱えた。 クモはひっくり返
って即死した。 教授は「死の呪いだ」と言った。 「これを受けて生き延びたのはただ一人、今ここに居る・・・」と言い、ハリーの
前まで来てポケットから小瓶を取り出して、何かをあおる様に飲んだ。

 ロンが階段を下りながら「教室に居るとビビルけど、本ものを見てきてるんだからな」と、さっきの授業のことを話す。 ハーマイ
オニーが「あれは禁じられた呪いなのよ。・・教室でやるなんて・・・ネビルのあの顔を見た?」と言う。 まだ恐怖感の抜けないネ
ビルのところにマッド教授が来て、「来い!・・見せたいものがある」と言って連れて行く。

 雨の降る日、大広間に生徒たちが集まっている。 ホグワーツ魔法魔術学校の生徒がゴブレットの炎の中に名前を書いた紙を
入れた。 周りの生徒から一斉に拍手が起こった。 続いてハリーたちに背中を押されて、ホグワーツ校のセドリック・ディゴリーも
投票した。 さらにハリーたちの同級生が二人、今朝完成させたばかりと言う”老け薬”を持ってやって来た。 オーマイハニーが
「これ見える?・・・年齢線よ・・・ダンブルドアが自ら引いたの。・・あれほどの人が掛けた魔法を簡単にごまかせるはず無いわ」と
いうが、「ところがどっこい、ごまかせちゃうんだな」と少年が言う。 年齢の足りない少年は入れないに雲の輪がゴブレットの周り
に浮いている。 二人が同時に薬を飲んで、「乾杯!」と言いながら輪の中に飛び込むと、一斉に拍手が起こった。 「いいか」
と、二人が同時に投票用紙をゴブレットに投入すると、煙の渦が暴れて二人は飛ばされてしまう、起き上がったときは二人とも白
髪の老人になっていた。  「お前のせいだ」と二人が取っ組み合いの喧嘩を始め、周りを取り囲んだ生徒がはやし立てた。  ダ
ームストラング校のビクトール・クラムが校長を従えてやってきて、ゴブレットの炎の中に名前を書いた紙を入れた。

 学校の大広間に生徒全員が集まっている。 ダンブルドア校長が「着席!・・・よいか、待ちに待ったときがやって来た。 代表
の発表じゃ・・」と言って、手をかざすすと、炎を上げているゴブレットが、すべるように校長のそばにやって来た。 校長が魔法を
掛けると、青い炎が赤い炎に変わり、周りに火の粉を放った、その炎の中から紙切れが1枚舞い落ちた。 校長がその紙を空中
で受け取り広げて読み上げた。 「ダームストラング校の代表はビクトール・クラム」 口笛や歓声があがりクラムは立ち上がり、
仲間から祝福されて壇上に歩いた。 続いて炎の中から舞い落ちてくる紙片を校長が片手で握り取った。 焼け焦げた紙片を広
げて、「ボーバトンの代表はフラー・デラクール」と校長が告げた。 美少女フラーも立ち上がり仲間の女性が拍手で祝福した。 
校長はさらに手を伸ばして、落ちてくる紙片を掴み、「ホグワーツ代表はセドリック・ディゴリー」と読み上げた。 歓声が一段と高く
なった。 選ばれた代表の三人が壇上に進むと校長は「よろしい・・・これで三人の代表が決まった。・・しかし、歴史に名を残す
のはただ一人、・・・ただ一人だけが勝利の証として、かかげることが出来るのじゃ・・・この優勝杯を!」と言って、指差した先に
さん然と輝く優勝杯があった。 その時であるゴブレットの青い炎が左右に飛び散り、やがて赤い炎に変わり、舞い上がった紙片
が落ちてきた。 魔法薬学のスネイブ先生や、ダームストラング校長のイゴール・カルカロフが驚いた顔をして立ち上がった。 校
長は焼けた紙片を掴むと「ハリー・ポッター・・・・ハリー・ポッター!」とふるえる声で読み上げた。 ハグリッドが「そんな・・・まさ
か」と首を振った。 生徒の視線がハリーに集中する。 校長がもう一度「ハリー・ポッター!」と呼びかけてハリーを探した。 ハ
ーマイオニーが「行くのよ!・・行かなくちゃ・・」と背中を押した。 校長は紙片をハリーに見せると床に投げ捨てた。 「17歳にま
だなってないだろ」と言う生徒からの声が聞こえた。 ハリーは壇上の先生たちの間を通り、最上段の鉄の扉を開いて中に入っ
た。 そこには先に選ばれた三人が居た。

 「どう言う事なんだ・・・陰謀だ」「説明していただきたい」「抗議します」と叫ぶ先生の声が背後で聞こえた。 先生たちがハリー
の後を追ってやって来た。 ダンブルドア校長が「名前を入れたのか?・・・上級生に頼んで入れてもらったのか?」とハリーに詰
問した。 「いいえ・・」 「誓って本当じゃろうな・・」 ポッターが「はい・・ほんとうです」と、答えたが、「うそをついてます」と、ボー
バトン校の女性校長マダム・マクシームが言った。  アラスター先生が「それは無い・・炎のゴブレットの魔力は強力なもの
だ・・・欺くには強力な錯乱の呪文しかない。・・四年生にあやつれる魔法ではない」と答えた。 「この件に随分とお詳しいようで
すな、アラスター・マッド・アイ」と、ダームストラング校長のイゴール・カルカロフが言うと、「闇の魔法使いの考えを見抜くのがわし
の仕事だった・・・忘れたか?・・」とアラスター教授が答えた。 ダンブルドア校長は「それでは解決にならん・・・君の判断を仰ご
う」と魔法省の役人バーティに聞いた。 役人は「炎のゴブレットの決定は魔法契約ですから絶対です。・・・ミスター・ポッターはも
う引き下がれない。・・彼もたった今から四人目の代表だ」と述べた。

 ミネルバ・マクゴナガル副校長が言った「こんなことが続いては・・・最初は”闇の印”・・次はこれ・・・」 ダンブルドア校長は「ど
うしろと言うのじゃ」と困り果てた声できいた。 「辞めるのです。・・・ポッターを競技に出さないで・・・」 「規則じゃ、バーティも言
っとるじゃろ・・・」 「バーティや規則がなんです?。・・・いつから魔法省に阿るようになったのですか?」と、副校長が言い、スネイ
ブ先生も「確かにこれが偶然のなせる技とは思えん。・・しかしながら、ことの真相を見抜こうと思うのなら、今は手を出さずに成り
行きをみてはどうかと・・・」と言った。 「手を出すなと?・・・ポッターをオトリに・・・あの子を何だとお思いです?・・餌では有りま
せんよ」副校長が言い、校長が「同感じゃ・・・セブルスにな、・・アラスター、ハリーから目を離さんでくれ」と言った。 アラスター・
ムーディは「任せとけ・・・本人には内密に・・」と、言った。 「只でさえ不安な筈じゃ、試練を前にして我々とて不安じゃ・・」と校長
が言った。


 ハリーが部屋の中にいる。 ロンがそばに来て「どうやったんだ?・・・どうでもいいけど、親友の僕に位教えろよ」と聞いてきた。
 「教えろって?・・何を・・」 「よ〜く判ってるくせに」 「あれは僕が仕掛けたんじゃない・・・ほんとうだよ・・・僕はゴブレットに名前
を入れてない。永久の栄光なんてほしくないよ。・・・ロン、どうしてこんなことになったのか僕にも判らない。・・・何もしてないんだ」
 ロンは「ふざけるな」と言ってベットに入り横を向いた。

 日刊予言新聞社の女性記者リータ・スキータが4人の写真を撮って、「カリスマ的な4人組ね・・よろしくね・・・あなたたちを知り
たいの」と言って取材を始めた。 「ばら色の頬の下にどんなおてんばさんがいるの?・・」とフラー・デラクールに聞き、「この鍛え
た身体に隠されたなぞは・・どんな勇気が眠っているの?」とセドリックに聞いた。 「さて、誰からインタビューする?・・若い順
ね・・素敵だわ」と言ってハリーを引っ張っていった。 物置に連れ込んで、「聞かせてハリー・・・まだたった12歳の身で・・」と、自
動速記器を取り出した。 「僕、14歳です」 「年上の3人を相手に競い合う気分はどうなの?。・・・みんな君よりはるかに大人だ
し、君が夢にも思わないような高度な技をマスターしている訳ざんしょ、不安じゃな?」 「さあ・・あんまり考えたことはなかったん
で・・・」 「君は伝説だもの・・・過去のトラウマの所為でこう言う危険な試合に名乗りを上げたいと言う誘惑に駆られるのかし
ら・・」 「僕、名乗りはあげてません」 「そうだったわね・・・反逆者は人気が出るわよ。・・・もし、君のご両親が生きてらしたら、
自慢する?・・心配する?・・君の行動は良くて目立ちたがり、悪くすれば自殺願望とも取れるざんしょ」 「僕の目に過去のトラウ
マなんか写ってません」

 ハリーの部屋に黒フクローが手紙を運んできた「ハリー・・・ヘドウィグは目立つので使わなかった。 ワールドカップ以来魔法省
がフクロウ便の検閲をしているから、・・・君に話がある。じかに会って話そう。・・グリフィンドール寮の談話室で土曜の夜1時。一
人で着てくれ。・・シリウスより」

 ハリーが一人で談話室にやってくる。 あたりを見回しながら「シリウス・・」と小声で呼ぶ。 長いすの上に新聞が置いてある。 
ハリーが持ち上げて記事を見る「10台の悲劇!・・ハリー・ポッターと優勝杯。・・代表が決定」と、見出しに大きく出ている。 新
聞の顔写真からリータ記者が出て来てしゃべる「ハリー・ポッター・・12歳。・・代表に選ばれた彼だが、その目は過去のトラウマ
で・・」ここまで聞いてハリーが新聞を丸め火の中に放り込んだ。 暖炉の燃える火の中に顔が現れてきた。 「シリウス!・・どう
やって・・・」 火の中の顔がしゃべる「時間が無い。・・・単刀直入に聞くぞ。・・炎のゴブレットに名前を入れたのか?・・どうなん
だ」 「入れてない!」 「シーッ・・・確かめただけだ。・・ハリー、見た夢のことを話してくれ。・・居たのはワームテールと、ヴォル
デモートと、もう一人の男は誰だったんだ?・・」 「判らない」 「名前を呼んでいたか?」 「ううん・・ヴォルデモートが彼に命じて
た。・・大事な役目を」 「それは何だ?」 「狙ってたんだ僕を・・なぜだか判らないけど僕を捕らえさせようとしてた。・・・でも、た
だの夢だよ。」 「そうだ・・・ただの夢だ。・・・いいかハリー、・・ワールドカップにデスイータ(死喰い人)が現れたのも、ゴブレット
から君の名前が出たのも、単なる偶然ではない、ホグワーッの危険だ」 「どういうこと?」 「ここには悪の手先どもが紛れ込んで
いる。・・イゴール・カルカロフか?。・・やつはデスイータだった。一度デスイータになった者は死ぬまでそうだ。・・あるいはバーテ
ィ・クラウチか?・・冷酷にも自分の息子をアスカバン送りにした。」 「そいつらが僕の名前をゴブレットに?」 「誰の仕業かは判
らないが、あきらかに君を陥れようとしている。・・・死者が出るような危険なトーナメントだぞ」 「僕、自信ないよ」 「だが、逃げる
ことは出来ん」 「あッ・・誰かが来た」 

 やってきたのはロンだった「誰と話してたの?・・」 「誰も話なんか・・」 「声が聞こえた」 「寝ぼけたんじゃないの・・いつものこ
とだろ」 「新聞のインタビューでもしてたんだろ」と言ってロンは部屋に帰って行った。

 ハリーは友人のネビルと湖に来ている。 「ハイランドの湖の水棲魔法植物・・・ムーディが呉れたんだ」と言って本をネビルに見
せる。 そこにロンやハーマイオニーたちがやってくる。 ハーマイオニーがハリーに近づいて言う「ロンがシェーマスから聞いたん
だって・・・ハグリッドが呼んでるみたいよ・・」

 ハリーはハグリッドと夜の森の中を歩いている。 ハグリッドが「親父さんの”透明マント”をもってきたか?」と聞く。 「持ってき
たよハグリッドどこに行くの?・・」 「じき判る・・・大事だからよーく観ちょれよ・・」 その時遠くで猛獣の叫び声が聞こえる。 「ハ
リー・・・マントで身を隠せ」とハグリッドに言われて、ハリーはマントを頭から冠った。 そこに女性が現れる。 「やあ、どうも・・・オ
リンビエ・・・」 「おー・・ハグリッド・・来ないかと思いました。・・・私との約束忘れたかと?・・」そこに現れたのはマダム・マクシー
ムだった。 「忘れたりなんか・・・」 マクシームが「見せたい物があるって・・・」と、聞いた。 ハグリッドは彼女に「観て損はさせ
ねえ・・請合う」と言った。 「近くに行けますか?」と、彼女がきいた。 再び猛獣が雄叫びを上げて火を噴いたので、森の中が一
瞬明るくなった。 大きい鉄の檻の中で恐竜が暴れていた。 ハリーが言う「ドラゴンだ!・・・これが最初の課題?・・・冗談だろ」
 「ちょいとばかりハンガリー・フオンティールは気が荒いけどな・・・ロンなんか観ただけで腰ぬかしよった」 「ロンが来たの?」 
「そうさ、こいつはロンの兄貴がルーマニアから連れてきた・・・ロンに聞いてないのか?」 ハリーは大きく首を振った。 「聞いて
ない・・・一言も言ってなかった」

 学校の中ですれ違う学友が「ポッターはズルしたんだ」 「汚いぞポッター」と聞こえるように言う。 ポッターはセドリックのところ
に行って話す。 「話があるんだ。・・・ドラゴンの第一の課題は一人に1頭だ・・」 「このことをフラーとクラムは知ってるの?」 
「知ってる・・」 二人の話をムーディが物陰に隠れて聞いていた。

校内で友達と居るロンのところにハリーが近づいて「君、感じ悪いよ・・・」と言う。 ロンは「そうかよ・・・」と言って睨み返す。 
「ああ・そうさ・・」 「他に用ある?・・」 「ああ・・僕に近づくな」 「判ったよ・・」 ハリーが遠ざかると友達が「ハリーはピリピリして
いるな」と、言う。

 ドラコが木の上に登ってハリーに声をかける。 「父上とお前の賭けをしたんだ・・お前が試合で10分ももたない方に賭け
た。・・・でも父上は5分ももたないってさ」 ハリーは「父親がどう思おうとそんなことは知ったことじゃない。・・父親は邪悪で残酷
だし、君は卑劣だ」と言い残して去ろうとした。 ドラコが「卑劣!」といって背後から魔法を掛けようとしたが、一瞬早く「そうはさ
せんぞ!」と言ったムーディの杖から魔法が発せられ、ドラコは白イタチに変身させられた。 「後ろから襲うやつはけしからん」と
言ってムーディがドラコを懲らしめた。 マクゴナガル副校長がそれを見て「懲罰に変身術を使うことは決してなりません。・・校長
がお話したはずですが・・」とムーディを叱った。 ムーディは「ポッター・・一緒に来い」といって引き上げた。

 ムーディの研究室に二人は入った。 ムーディはイスに座り左足の義足を外した。 壁の鏡を指差して「これは”敵鏡”だ・・・い
つも敵を観察している・・敵の白目が見えたら来てるぞ。・・そらそこに」と言うと箱がガタガタ動いた。 「何が入っているかは教え
ん。・・・言っても信じるまい・・さて、ドラゴンを相手にどう戦う?・・」 「あの・・僕はただ・・」 「いいから座れ、・・良く聴けポッタ
ー・・セドリック・ディゴリーはお前の年には魔法で笛を唄う時計に変えて見せた。 フラー・デラクールはわしを妖精のお姫様にし
たようなものだ。 クラムはおつむに詰まっているのはおがくずだが、ヤツにはカルカロフが付いている。 クラムの強みを生かす
戦略をきっと練ってくるぞ。・・・お前はどうだ!・・お前の強みは?」 「判りません。・・・飛ぶのは割りと得意です・・でも」 「かなり
の腕と聞いたぞ」 「でも、箒は持ち込めない」 「だが、杖なら・・・使ってもいいのだ」


 「さあ、みんな賭けて・・賭けて」 トライウイザード・トーナメントの会場は満員の観客が詰め掛けている。 ダンブルドア校長が
挨拶を始めた「静粛に・・・待ちに待った日じゃ。・・トーナメントの三つの課題はいずれもかなり危険なことじゃ、決して立ち上がっ
たりしないよう、安全のため・・・」 選手の四人が控え室に集まって緊張している。
ハーマイオニーの呼ぶ声がテントの外からした。「ねえ・・ハリーそこに居る」 「いるよ」 「気分はどう・・まず、集中が大事よ。 そ
してその後」 「ドラゴンと戦う」 ハーマイオニーがテントの中に飛び込んでハリーに抱きついた。 ハリーもしっかりと抱きしめ
た。 そこを日刊予言新聞社のカメラマンがすかさずフラッシュをたき、女性記者のリータが微笑んだ。 「若き恋人たちね・・なん
と感動的!・・もしも今日は不幸な結果に終わったら一面はあなた達ざんすね」 「ここに用は無いはずだ・・ここは代表と友人の
テントだぞ」と、クラムが言った。

 ダンブルドア校長がテントにやってきて「代表の諸君、集まるのじゃ。・・いよいよ、待ちに待ったこの時がついにやって来た。 
選ばれたものだけが参加できるのじゃ。」といった。 ハーマイオニーを見つけて「君は何をしておる?」と聞いた。 「あの・・すみ
ません。・・出ます」と言ってハーマイオニーは出て行った。 校長が「バーティ・・袋を持ってきて・・」と命令する。 バーティ・クラ
ウチが名前を呼ぶ「諸君ここに輪になって・・・ミス・デラクールこちらに、ミスター・クラム・・それとミスター・ポッターきみはここ、・・
さてミス・デラクールから選んで」といって布袋を彼女の前に出す。 デラクールがつまみ出したのは羽根のあるトカゲのような小
さい恐竜で「ウイリューシュ・グリューシュバだな」とクラウチが言った。  「ミスター・クラム」と呼ばれて、クラムが1匹をつまみ出
す。 「チュウゴク・ヒロタマシだ」 ディゴリーに続いて、最後にポッターが取り出した。 バーティが「ハンガリー・フオンテールだ
な。・・・これらは実際の4頭の模型だ、いずれのドラゴンも金の卵を守っている。 諸君の課題はその卵をとること。・・・卵の中に
次の課題のヒントが隠されている。・・・これが無ければ次に進めぬ。・・・何か質問は?」と言った。 誰からも質問が無かったの
で、ダンブルドア校長が「それでは健闘を祈る。・・・ミスター・ディゴリー、大砲が鳴ったら・・・」と述べたとき、大砲が轟音を発し、
ディゴリーがスタート位置に進んだ。

 人々の歓声が聞こえるテントの中でポッターが一人で気を静めようとしている。 ダンブルドア校長が「これまで三人の代表がそ
れぞれ金の卵を勝ち取り、次の課題に進むことが出来た。 次はいよいよ4人目最後の競技者じゃ」と紹介した。 ハリーが競技
場の岩場に姿を現した。 「ハリー!・・ハリー!」の大合唱の中を慎重に岩の間を中央に進んだ。 金の卵が岩場の一段高いと
ころに見えた。 いきなり叫びと羽音が頭上に迫った。 ハリーが転んで見上げると、怒りで口を大きく開いて、火を吐くドラゴンが
襲いかかろうとしていた。 ハリーが岩から岩に飛び移って逃げるが、ドラゴンは首にかけられた鎖を引きずって飛び上がり、大き
く羽根を広げて上空からハリーを何度も襲った。 ハーマイオニー等の声援は届かない。 追い詰められた時ハリーは呪文を唱え
た。 上空から杖が飛んできた。 ハリーは杖に乗って一気に金の卵を奪い競技場の外に飛び出した。 ドラゴンが鎖を切って飛
び立ちハリーの後を追った。 ハリーは校舎の狭い間を潜り抜けて逃げていたが、屋根に当たって杖を落としてしまった。 杖は
出窓の屋根に引っかかっている。 ドラゴンが真近に止まり三角屋根を滑りながら迫ってくる。 ハリーは出窓のひさしにやっとす
がりついた。 杖を掴んですべり落ちながら杖に乗ることが出来た。 再びポッターが逃げてドラゴンが後を追う。 吊り橋をくぐり、
石造りの橋の窓に逃げ込んだポッターを追って、ドラゴンが窓に飛び込み、羽根を石窓に叩きつけて川底に落下していった。

 みんなが心配そうに見上げていた競技場の上空に、杖に乗ったハリーの姿が見えた。 生徒たちが歓声を上げる中をハリーは
悠々と岩場の金の卵のところに舞い降りて卵を頭上に掲げた。 仲間が集まって祝福しハリーを肩車にした。 金の卵を変わる
がわる触った。 「開けろよハリー・・・中のヒントは?」 ハリーは「開けてほしい人?」と言って金の卵を片手で高く掲げた。 周り
を取り巻いた生徒たちが一斉に歓声を上げた。 「開けてほしいか?」と再度聞いた。 またもや歓声の上がる中でハリーが蓋を
取ると、まぶしく強烈な光が中から放たれ、同時に精霊の悲しむ声と思える叫び声のような音が聞こえた。  ロンが「今のは一
体なんなんだ?」と聞いた。 誰もが口を開けなかった。 ロンの兄が「みんなおしゃべりしてよ・・興味心身で聞かれてちゃますま
すやりにくいだろ」と言った。 ロンがハリーのそばに来て「自分の名前をゴブレットに入れるなんて、正気じゃないよな」と言った。
 ハリーは「やっと判った?・・僕じゃないってことが・・」と答えた。 「でもみんな疑ってたよ。・・影でこそこそ言ってたよ」とロンが
言えば、「ありがたいね、気が楽になったよ」とハリーは言った。  ロンが「僕、ドラゴンのことを知らせただろ」と言ったけど、ハリ
ーは「ハグリッドから聞いたんだよ」とそっけない。 「教えたのは僕だよ。・・ハグリッドが呼んでるって、あの伝言は僕からの伝言
なの・・・あれで僕からの伝言通じるって思って」 「あんなんじゃ通じないよ」 「そうだね、・・あの時僕はどうかしてたよ」

 大広間のテーブルで生徒たちが昼食を食べている。 チョウ・チャンたちが集まって、「ねえ・・ハリーよ」といってポッターの噂を
している。 彼女たちと目が合って、驚いたハリーが食べ物を口からこぼし笑われる。 ハーマイオニーが新聞を広げて読む、「観
てこれ・・・あの人またでたらめ記事を書いてる。・・・ミス・グレンジャーは平凡な女の子。 でもボーイフレンドは大物狙いのよう。
 情報筋に寄れば今のターゲットは、かのブルガリアの恋人ビクトール・クラム。・・・振られてしまったハリー・ポッターの心中やい
かにだって」ポッターはだまって聞いている。 ロンのところに荷物が届いた。「ママが何かを送ってきた」と言いながら荷物を解い
たロンが「これドレスだよ」と言ってドレスを身体に当てた。 「帽子もあるよ」 みんなが笑い出した。 「これジニーにだろ」と言っ
て持って行くが、ジニーは「そんなの着ないわ」と言って受け取らない。 ハーマイオニーが急に笑い出して、「ジニーじゃない
わ・・・それあなたのよ。・・ドレスローブよ」と言う。

 マクゴナガル副校長がやってきて「かねてより、ウイザード・トーナメントにともない舞踏会を行うのが伝統とされています。 クリ
スマスイブの夜、お客様とともに大広間で一晩楽しみ、騒いで結構。・・ただし、お行儀よく。 皆さんはトーナメント開催校の代表
として、一人ひとりが自覚を持ち、最高のリードをしてあげてください。 これは文字どうりの意味です。 舞踏会ですから、何より
も肝心なのは、ダンスです」と、話した。 生徒たちがざわめいた。 「静かに、・・グリフィンドールの寮は千年もの間魔法使いの
尊敬を集めてきました。 たった一夜でグリフィンドールの名を汚すことのないよう、はしたなくはしゃいではめを外したりはしない
こと、ダンスでは身体をのびのびと解き放つのです。 女の子の中には優雅な白鳥が眠っていて、飛び立つときを待っているので
すよ。 男の子の中には雄雄しきライオンが眠っているのです。・・・・ミスター・ウイズリー、・・・さあ踊ってみましょう」と言って副
校長がロンを広間の中央まで呼び出した。 「さあ、右の手を私の腰に当ててください。」 「どこに・・・」 「腰です」 「そして、腕を
伸ばして、・・・・」 副校長の合図でレコード演奏が始まった。 ♪1・2・3・2・2・3・・・ 副校長とロンが曲に合わせて踊った。 
笑いと口笛が飛び、ハリーが「ロンには忘れられない日になるね」とロンの兄たちに言った。 副校長は「さあ、皆さん一緒
に・・・」と言って女生徒を立たせた。 「男子も、さあ立って・・・」と言われても2~3人しか立ち上がることが出来なかった。

 ハリーがロンに話す「なんで女子って群れを作るんだ。・・これじゃ誘えないよ」 女性のそばに行っても声もかけられないで、二
人は作り笑いをする。 ロンが「君はドラゴンを倒したんだぜ。・・・君がやらなきゃ誰がやる」と言うと、ハリーは「ドラゴン相手のほ
うが楽だよ」と言う。 

 ハグリッドがマダム・マクシームに話す。 「俺はお袋似だ、・・お袋は俺が三つくらいの時に居なくなっちまった。 あんまり母親
らしくは無かったが、親父は悲しんでな、・・・親父がまたちっぽけでな、俺が六つの時にはつまんでスへ乗けちまったよ。・・・親
父は大笑いさ。・・・笑いごっちゃねえ。・・でも、俺が学校に入ってすぐ死んじまって、おれは一人でやって行かにゃあならんかっ
た。・・・あなたの話もしてくだせえ」

 湖のほとりで一人で訓練をしているダームストラング校のクラムの行くところにも、たくさんの女生徒が後を追っていた。

 ロンが教室で言う「まずいよ・・この調子じゃ相手の居ないのは僕らとネビルだけだよ」 ハリーが「ネビルは一人ででも踊れる
から・・」と言うと、ハーマイオニーが「ネビルならもう相手を見つけたようよ」と言う。 「それって落込むなあ」 その時ロンのところ
に紙が飛んでくる。 読んで観ると「早くしないと、いい子はみんな売れちゃうぞ」と書いてある。 ロンが「ハーマイオニー・・女の
子だよね」と言うと、ハーマイオニーが「よくお気付きですこと」と、答える。 ロンが「僕等とどう?・・」と言うと、後ろから本でゴツン
と殴られる。 スネイブ先生が何事も無かったように歩いていった。 ロンは「男なら一人でも平気だけど、女の子は惨めだよ」と
言われて、ハーマイオニーは「一人じゃないわ、お生憎、もう申し込まれているの!」と言って席を立った。 スネイブ先生にノート
を渡し戻ってくるなり、「イエスって返事をしたわ」と言いながら教室を出て行った。 ロンが「おい・・・まさか・・うそだよな」とハリー
に言った。 「どうだろうね」 「こうなりゃ歯を食いしばってがんばるしかないよ。・・・こんや談話室に戻るまでにパートナーを見つ
けること・・・いいか?」とロンが言った。


 一面が雪に覆われたホグワーツの森。 校内の塔の階段を走って登っていたハリーは女性とぶつかりそうになった。 「チョ
ウ・・」 「ハリー・・」 チョウ・チャンが「階段気をつけてね。・・凍ってるから」と言う。 ハリーも「どうも有難う」と言って、別れたが
「チョウ・・」 「何?・・」 「あの・・モシ良かったら・・あの・・・僕とダンス・・痛い、パーティー・・」と言った。 フクロウがハリーのお
尻にぶつかってきたのだ。 チョウは「ごめんなさい・・・何といった?」と聞き返した。 ハリーは「僕と一緒にダンスパーテーにい
ってくれないかな?」と言いなおした。 「あツ・・あの、ハリー・・ごめんなさい。・・他の人に誘われて・・・もう行くって返事をしちゃ
ったの・・」 「そうか・・・判った。・・いいんだ、気にしないで・・・じゃあ」走って戻りかけたハリーに、チョウが「ハリー・・・ごめんな
さい。・・ほんとうに・・」と言う。

 ハリーが部屋のベットで横になり、金の卵を抱いている。 ロンが大勢の女生徒に支えられるようにして部屋に戻ってくる。 女
生徒が「大丈夫よ・・元気出して・・気にしないで」と言っている。 ハリーが「どうしたの?」と聞くと、「ボーバトン校のフラーにダン
スを申し込んだの・・・」と教えてくれた。 ハーマイオニーが「えツ・・で、返事は?・・ノオでしょ。・・うそ・・イエスなの」と聞く。 「そ
んな訳ないだろう・・・フラーが歩いて来て、・・・歩くと素敵でさ・・思わず申し込んじゃった。」 「それもすごい大声でね恐かった
わ」と女性が言った。 「それでどうしたの?・・」 「たまんなくて、逃げ出したよ・・・僕、こういうの向いてない。・・後ろから見てる
だけでよかったのに・・絶対許してくれないよ」 

 夜、湖に浮かぶ大帆船のかがり火の灯る大広間に、美しく着飾った男女が続々と集まってくる。  ロンが部屋の中でひらひら
の襟がついたドレスローブを着て、自分の姿を鏡に映し「なんだよこれ!・・こんなんて、あんまりだ!」とぶつぶつ言っている。 
ハリーがドレスローブを着て部屋にやってくる。 それを観たロンが「なんだよその格好は・・まともじゃないか。・・ふざけた襟も無
いし」と言う。 ハリーが「そのほうが伝統的な・・」と言いかけると「伝統的?・・・骨董品だよ・・テーシー小母さんみたいだ。・・・
いっそ死にたいよ」と泣き顔になる。

 ハリーとロンが会場に来る。 ロンが「可愛そうに今頃はワアワア泣いてるぞ」と言う。 ハリーが「誰が?・・」と聞く。 「ハーマ
イオニーだよ。・・だってあいつ、誰に申し込まれたか言わないだろ」 「言えば僕らがからかうからさ」 「相手なんか居ないんだ
よ。・・・つんつんしてなきゃ誘ってあげたのにさ」 ちょうど2人の女生徒がハリーに挨拶をしているところに、副校長のマクゴナガ
ルが「用意はいいですか?・・」と言ってやってくる。 「用意って何の?・・・」ハリーが聞くと 「ダンスです。・・代表3人が最初に
踊るのが伝統ですよ。・・今回は4人ですが。・・・言ってあったでしょ」と答えた。 「いいえ」 「では、今言いました」 「ミスター・
ウイーズリー・・・ミス・パジルをエスコートして大広間にお行きなさい」と言われて、ロンがバジルを連れて行き、一人の女性が残
る。 副校長はセドリックを見つけて、「あなたたちも入場の準備をしなさい」と声をかける。 階段を一人の女性が下りてくるのが
見える。 周りの女生徒からも「あの子とってもきれい」とささやく声が聞こえる。 ハリーも「キレイだ・・・」とつぶやく。 女性はハ
ーマイオニーだった。 ハーマイオニーの前にダームストラング校の代表選手であるクラムが進み出て、深々と頭を下げて手を差
し出し、エスコートされてハーマイオニーは去っていった。

 ファンファーレが鳴り響き、ドアが開かれた。 4人の代表選手が入場した。 ミス・バジルがクラムにエスコートされて入場した
女性を見て、「あれ・・ハーマイオニー・グレンジャー?・・クラムのパートナーが・・」と驚きの声を上げた。 ロンも「まさか、そんな
訳無い・・」と目をぱちくり。  ハリーは最後の列で、先ほどの女生徒と並んで入場し、広間の中央まで進んだ。 彼女がハリー
に「ハリー、私の腰に手を当てて・・」と言う。 「えッ・・」 「早く!・・」 演奏がはじまった。 ハリーは彼女に必死に付いていく。 
ダンブルドア校長がマクゴナガル副校長を促して踊りの中に加わる。 次々とカップルが進み出て踊り始める。 ハグリッドがボー
バトン校のマクシーム校長のそばに徐々に近づきダンスに誘う。 やがて激しいロックのリズムに替わり、全員が狂気のごとく踊
り楽しんでいる中で、ハリーとロンだけが醒めた顔でハーマイオニーを見ている。 ロンが「あんなかぼちゃ頭がなんだよ」と、言
う。 ダンスが終わってクラムがハーマイオニーの手の甲にキスをして去って行く。 ハーマイオニーは上気してしばらくその場に
立ち尽くす。 ロンがそれを観て舌打ちをする。 我に帰ったハーマイオニーがにこにこしながら二人のそばにやってくる。 「暑い
わね・・・彼、飲み物を取りに行ったの。・・・一緒にどう?」というが、ロンが「おことわり・・ビクトールと一緒だなんて」 「なに、へ
そ曲げてるの・・」 「あいつダームストラングだぞ。・・敵とベタベタするなんて」 「敵ですって・・・彼のサインをほしがったのは
誰?・・・第一トライウイザード・トーナメントの目的は国際的な魔法協力の促進でしょ。・・親睦を深めなきゃ」 「向こうは親睦だけ
じゃすまないぞ」 ハーマイオニーは怒って行ってしまった。

 ダンスパーテーの終了後、ロンがハーマイオニーに言う「君は利用されているんだよ」 「なんてことを言うの!・・私、丸め込ま
れたりしないわ」 「どうかな・・・向こうは年上だし」 「何?・・そんなこと考えてるわけ」 「ああ、そうだよ」 「いい解決方法があ
るわよ」 「なんだよ・・・」 「この次は他の人が申し込む前に申し込んでよ・・最後の手段じゃなくて・・・」 そこにハリーがやってく
る。 「どこに行ってたの?・・・もういい、二人とも帰って寝れば」 「女って年々恐くなるよな・・・」 ハーマイオニーは泣いていた。
       



 雪の降りしきる深夜。 ハリーはベットの中で夢を見ている。 暗い闇の中で”例のあの人”が言う。「もう一度見せよ・・」 ワーム
テールが左手のシャツを腕まくりして”しるし”を見せる。 「ああ・・時が近づいている。・・ハリー!・・ついに来たぞ。・・そこをどけ、
ワームテール・・客人を歓迎申し上げねば・・・」 ハリーが目を覚ます。 ネビルが「大丈夫?・・・ハリー」と心配してやって来る。

 校舎のわたり廊下で、ハーマイオニーが「ハリー・・卵のなぞはとっくに解けたって言ってなかった?。・・・次の課題はもう2日
後よ」と言う。 「本当?・・忘れてた。・・・ビクトールはもう解いたんだろうね」 「知らない。・・その話はしなかったから・・・私の
勉強を見てるだけ。・・卵のなぞを解く気はあるの?」 「それどういう意味?」 「だってトーナメントの課題は過酷だもの・・・過酷
なくらい挑戦者を試している。・・・わたし、心配なのよ。・・あなたは勇敢にドラゴンを倒したけれど、今度はそう簡単には行かな
いわよ」 背後から「おい、ポッター・・どう、調子は?」と、セドリックが声をかけてきた。「絶好調だよ」 「前に、ドラゴンのことを
教えてもらったのに、お礼を言ってなかったから」 「気にしないで・・君だってきっとそうしたよ。」 「その通りだ・・・5階に監督生
の風呂場があるだろ。・・あそこはなかなかいいところだ。・・・卵を持っていって、お湯に浸かってじっくりと考えると良い」 セドリ
ックが苦笑いをして去っていった。

 監督生のための風呂場でハリーが湯に浸かっている。 「・・・僕もどうかしてるよ」と、独り言を言いながら金の卵の頭のキャッ
プを解く、中から激しい光と精霊の叫び声と思しき悲鳴が聞こえた。 ハリーが蓋をもとに戻すと静まった。 「やっぱりどうかして
る」  背後で女性の声がした。 「私ならそれを水の中に入れてみるけど・・・」 そこに妖精マートルが居た。 「マートル・・・」
 「ハリー・・・久しぶりね・・この間、詰まった配水管をぐるぐる廻っていたら、ポりジュース薬が詰まってるのを観たんだけど、あん
たまた悪さをしてるんじゃないでしょうね」 「ポリジュース薬はもうやめたよ・・・ねぇマートル、これを水の中に入れてみろって言
ったよね?」 「えぇ、彼はそうしてたわ・・・もう一人の彼・・・あのハンサムさん・・セドリックよ・・ねぇハリー、水の中で開けて見
て」  ハリーが金の卵をお湯の中に入れて、自分でも、湯の中に潜って蓋を取ると歌声が聞こえてきた。 
 ♪ 捜せ声を頼り〜に 地上ではうたえな〜い 捜せよ、いちじか〜ん 我らが捕らえしも〜の ♪

「マートル・・ねえ、黒い湖にはマアピープルが居るの?」 「正解よ・・・セドリックの時は特に長々と掛かったわ。・・・お風呂のア
ワが殆ど消えるくらい・・」こう言いながら、マートルはハリーに擦り寄っていった。

 自分たちの部屋で、ハーマイオニーが「ハリー、もう一度言って」と言うので、ハリーが「捜せ声を頼りに」 「湖ね、間違いない
わ」 「捜せよ、一時間」 「意味は明らかね、でも、そこが少々問題だけど」 「少々どころじゃないだろう、君、水の中で1時間も
息を止めてたことある」 「大丈夫よハリー・・何とかなるわ。 三人の知恵を合わせれば」 「討論会を邪魔して悪いが、マクゴナ
ガル先生がお呼びだぞ」と、ムーディ先生が入ってきた。 「ポッターはいい。・・後の二人だけだ」と、付け加えた。 「でも先生、
試合まで後何時間も無いんですよ」 「でも、ポッターは準備が出来てるはずだ、十分に睡眠をとるがよい・・・さあ、行くんだ!」
 二人が出て行くと、ムーディ教授は「ロングボトム!・・本を棚に戻すのを手伝ってやれ」と言われて、二人で本の片付けを行う。
 ロングボトムが「ねえ、植物に興味があるならゴーショークの薬物薬草ガイドがお薦めだよ」と話しかけてくる。 さらに、「ハリ
ー・・君知ってる?。・・・ネパールには重力に逆らう木があるんだ」と言う。 「悪いけど、僕、植物のことはぜんぜん興味ないん
だ。・・たとえばもし、チベットのカブでも食べれば、水中で息が出来るようになるというなら別だけど。・・」 「そういうカブは知らな
いけど、エラコンブを使えば?・・」  

 ハリーは大会会場の湖に向かう途中で、友人のネビルからエラコンブを受け取りながら念を押した。 「絶対だね、ネビル」 
「もちろん」 「一時間もつの?」 「たぶんな」 「たぶん?」 「・・薬草学者の間でも意見が分かれてるんだ。・・塩水の場合と真
水では?・・」 「冗談じゃないよ・・」 「僕、力になりたくて・・」 「ロンやハーマイオニーよりは頼りになるみたいだけどね」
                                                 
 湖の中に大型の塔が3台組み立てられて、会場にはすでに多くの見物者が集まっている。 ダンブルドア校長が「いよいよ第
二の課題じゃ。・・昨夜代表の諸君はあるものを盗まれた。 大切なものじゃ。・・4人から盗まれた4つの宝は湖の底に眠って
おる。 各代表はその宝をみつけ水面に戻ってくること・・・これだけじゃ」と、言った。 ムーディがハリーに「そいつを口に入れ
ろ」と言う。ハリーは急いでエラコンブを口の中に放り込んだ。  校長が続ける「ただし、許された時間は一時間・・1時間きり
じゃ、・・それを過ぎるとどんな魔法も役には立たぬ・・・では、大砲の合図でスタートじゃ」 砲音が轟き、4人の選手が水中に
飛び込んだ。 ハリーは水中で苦しくないのが不思議だった。 見物している生徒たちは選手が浮上してこないので心配した。
 ハリーは水中深く水藻の林を泳いでいった。  ムーディがストップウォッチを見ながら心配している。 校長が叫ぶ「ボーバト
ン代表ミス・デラクールは競技を続けることが出来なくなった。・・よってこの競技は棄権となる」 ハリーは一人でさらに先に進
む。 前方に四人の男女が並んで水中に浮いているのが見えた。 ロンに近づいて指で目を開くが眠っているようだ。 足を縛
っているロープを解こうとしていると、たくさんの水中人(マアピープル)が襲い掛かってきた。 さらにディゴリーが杖をかざして
襲ってくる。 ディゴリーはチョウ・チャンを抱えて逃げていった。 ポッターはマーピープルに取り囲まれて、のどに槍を突きつけ
られる。 ポッターは「その子も友達なんだ・・・」と言うが、マーピープルは「一人だけだ・・」と答える。 その時、急に大きな鮫
が現れて、水中人たちは慌てて逃げて行った。 鮫は鮫の頭を冠ったクラムで、彼はハーマイオニーの手を引いて逃げていった。
 ハリーはロンの腕を取り、杖を出して大きく振った。 大時計が8分前を指していた。 最初にディゴリーがチョウ・チャンと一緒
に浮上し、歓声に迎えられた。 続いてクラムがハーマイオニーと浮上した。 クラムが右手を高々と上げると、一斉に歓喜の
声が響いた。 その頃ポッターは両腕にロンと少女を抱えて水中を泳いでいたが、またもやタコのような水中怪物グリンデロー
たちが襲ってきた。 ポッターは両脇の二人を水面に向けて押し上げて、水中怪物たちと格闘した。 ポッターが杖を振り下ろ
すとグリンデローたちは四散した。 ちょうど時計が1時間を指したときロンと少女が水面に浮上した。 二人が大歓声で迎えら
れているとき、ハリーは最後の力で杖を頭上に掲げて呪文を唱えた。 ハリーの身体は空中高く舞い上がり、スタート台の上に
腹ばいになって落下した。 心配してみんなが駆け寄ったが、校長は「心配要らん、みんなこっちへ・・・」と、言った。 デラクー
ル嬢がハリーの下へ走って来て、「ありがとう・・あなたの人質でもなかったのに・・・妹助かりました」と言って泣いた。 ハーマ
イオニーが「ハリー!・・大丈夫?・・あなたは勇敢で立派だったわ。」と言ってやってきた。 「でも、ビリだったよ」 「ビリから2番
目よ。・・フラーは水魔に邪魔されてダメだったの」 ダンブルドア校長が「注目!・・第1位はミスター・ディゴリー・・・」歓声が上
がり、校長が「ディゴリーはみごとじゃった。・・・ミスター・ポッターは1位も取れたはずじゃったが、ロナルド・ウイーズリーだけで
なく、他の人たちを助けようとしたために、遅れを取った。・・これを考慮し、ポッターを第二位とする。・・実に道徳的な行いじゃ」

 ロンが帰り道「道徳的か?・・本当はビリだったのに、ラッキーだったよな」と言う。 バーティ・クラウチがやって来て「おめでと
う、ポッター・・立派だった・・・君の噂はかねがね聞いているがね。・・悲劇だ、家族を失うのは、身を切られるように辛い。それ
でも人生は続く、・・こうしてな・・・ご両親が見ていたら、さぞ誇りに思っただろう」」と、言った。  ムーディが来て「バーティビュ
ース・・・ポッターを魔法省の見習いに誘い込んでいるんじゃあるまいな。・・神秘部に連れて行かれた生徒は二度と戻らん・・・
ドッチがいかれてる?」 と言うと、クラウチはそそくさと帰っていった。 左目が義眼のムーディはポケットから小瓶を出して一
口飲んだ。

 山の中を歩きながらハグリッドがハリーとハーマイオニーに言う。 「覚えちょるぞ、・・お前さんたちに始めてあっと時に、魔法
使いには向いとらんと思ったもんだ。・・昔の自分を観ちょるようじゃった。それがこうして4年も経ってみろ」 「相変わらず向い
てない」 「そうかも知れんが、今は仲間が居る。・・観てろ、ハリーはトライウイザード・チャンピオンになるぞ」 ハリーたちは歩
いていてバーティ・クラウチが殺されているのを見つける。 

 ハリーが校長の部屋のそばに行くと、ダンブルドアの声が聞こえる「死んだのだ。・・まだ出るかも知れん。・・こういうときだか
ら魔法界の強いリーダーを求めているのだ。・・今こそ勇気を見せるのだ」 魔法省の大臣も「このままではオドシに屈したと観
られてしまう」と言っている。  ムーディが話に割り込む「失礼お二方・・・内密な話ではなくなってるようですぞ」と言って、ドア
に杖を向ける。 ドアが開いてハリーがそこに立っている。 大臣が言う「ハリー・・又会えてうれしいよ」 「お邪魔なら出直しま
す。」 校長が「それには及ばん。・・話は終わった。・・・大臣お送りしよう。・・ハリー、そこのカミカミキャンデーでも食べて待っ
ているが良い。ただし、刺激が強いぞ」と言って出て行った。 ハリーは一人部屋に残ってキャンデーをとった。 食べようとす
るとキャンデーが、尾っぽのある魚のような形に変形して、飛び出して逃げた行った。
後方から青い光が刺し、扉が徐々に開いていった。 そこには水鏡があり、覗き込むと人の顔らしきものが渦巻いていた。
 いきなりハリーはその渦巻きの中に吸い込まれていった。

 ハリーは悲鳴を上げながら深い穴の底に落ちていって、大勢が集まっている部屋のイスに落ちた。 ダンブルドア校長が隣の
席にいた。 やがて裁判が始まった。 中央の檻の中にダームストラング校長が居た。 魔法省の役人クラウチが「イゴール・カ
ルカロフ。・・証言したいと言うお前の申し出により、アズカバンから連れてきた。 証言が有益なものであれば、当委員会は直
ちにお前を釈放する用意がある。・・だが、それまではお前がデスイータであると言う判決は変わらぬ。・・この条件を受け入れ
るか?。 「はい。・・裁判長」 「よ〜し、証言を聞こう」 「仲間の名前を言います。・・一人はロジュエール・・エバン・ロジュエー
ル。」 「ロジュエールは死んだ」 「ほかに証言が無いのであれば・・・」 「待ってくれ!・・まだあります。ヌックーウッドです。
ヤツはスパイでした。・・魔法省から”例のあの人”に情報を流していたんだ」 「よかろう、評議会で審議する。・・・その間、お前
をアズカバンに戻す」 「待ってくれ!・・助けてくれ!。・・まだあります。・・スネイブはセブルス・・・」 ダンブルドアが立ち上がっ
た「その件についてはわしがすでに証明しておる。・・スネイブはかってはスイータじゃったがヴォルデモートが倒れる前に我らの
側に戻り・・・」 「嘘だ!・・ヤツはまだ闇の帝王だ!」 「証人が有意義な情報を提出できないのであれば、これにて評議会は
終了とする。」 「もう一つ知っている。・・・その者は闇払いフランク・ロングボトムをその妻とともに拷問した。・・・磔の呪いを使
って・・」 「誰だ!、そやつの名は!」 「バーティ・クラウチ・・・ジュニアだ。」 クラウチJrが立ち上がって、カルカロフに向かって
走り出したが、ムーディが杖をかざすとその場に倒れた。 暴れるクラウチJrを周りのみんなが取り押さえる。 父のクラウチは
ただ望然とその光景を見て「俺の息子ではない」と言った。


 ハリーはふたたび元の校長の部屋に飛ばされて戻ってきた。 ダンブルドア校長が立っていて「好奇心は罪ではないが慎重
に使わんとな。・・これはのォ、”憂いのふるい”と言って頭が一杯になったものには便利じゃ。・・一度観たものを見直すことが
出来る。・・何か見逃していないか、ずっと探しておった。・・何かあるはずなのじゃ。・・それさえ見つかれば、なぜ、恐ろしい事
件が次々起きたのか判るはずじゃ。・・だが、答えが見えそうになると消えてしまう」 「先生。・・クラウチ氏の息子はあの後どう
なったんですか?」 「アズカバン送りになった。・・・バーティも苦しんだが、動かぬ証拠があっての、どうしようも無かった。・・・
なぜ聞くのじゃ?」 「実は僕、夢にその人が出てきて・・・夏でした。学校が始まる前・・夢で僕はある家にいて、そこにヴォルデ
モートがいました。・・人間の形ではなかったけど、そばにワームテールとクラウチ氏の息子も居たんです。」 「ほかにもそのよ
うな夢を?・・・」 「ハイ・・いつも同じような夢。・・・先生、夢は・・・僕が見たのは・・・本当にあった出来事なのでしょうか?」 
「うろたえながら校長は「夢にいつまでもとらわれぬことじゃ。・・・捨て去るが良い。・・・こうやってのォ」と言って、杖の先で自分
の髪の毛を引き抜いて、”憂いのふるい”の中に捨てた。

 ハリーが廊下を歩いていると部屋の中から声が漏れていた。 「”闇の印だ”!・・意味はよくわかっているだろう」と、いう声が
し、少し開いたドアの奥から”闇の印”が付いた左腕が見えた。 ハリーはドアを開けて室内に入った。 そこには、ダームストラ
ング校のカルカロフとスネイブ教授がいた。 カルカロフが急いで部屋を出て行った。 スネイブ先生が「ポッター。・・話がある。
・・うれしかろう、トーナメントの出来は見事だった。 エラコンブだったかな?・・」 「そうです」 「考えたものだ。・・・珍しい薬草
だ、エラコンブはな・・・その辺に生えているようなものではない。・・これもそうだが」と、言って、棚から小瓶を取り出した。 「何
か判るか?」 「シャボン玉液ですか?」 「これは新頭痛薬だ。 たった3滴で闇の帝王ですら、深い闇の秘密を明かしてしまう。
 残念ながら、生徒に使うのは禁止だが、お前が今度又、我輩の薬をくすねたら、手が滑って垂らすかも知れん。 朝食のかぼ
ちゃジュースにな」 「僕、何もくすねてません」 「嘘をついても無駄だ、エラコンブだけならまだしも、毒つる蛇の皮に草かげろ
まで・・・お前たちまたポリジュース薬を作っているのだろう。・・尻尾を掴んでやるぞ」

 丘の上の広場に会場が作られて、生徒が大声援を送っている。 楽団が演奏し、ボーバトン校の女生徒が、揃いの振り付け
で応援のダンスを見せた。
 教授が先導して、ハリーなどの選手がそれに続いて入場した。 ダンブルドア校長が壇上に立って挨拶した「ムーディ先生が、
三校対抗優勝杯を迷路に隠した。 場所を知っているのは先生だけじゃ。・・・まずミスター・ディゴリー」  ディゴリーが手を上
げて、歓声が上がった。 「ミスター・ポッター・・」又も声援が響く。 「同点1位のこの二人が、まず迷路に入る。 次にミスター・
クラム・・ミス・デラクール。・・最初に優勝杯に触れた者が優勝じゃ。・・競技を棄権し、助けを求める場合は、杖を使って赤い花
火を空に打ち上げれば良い・・・選手諸君こちらへ・・」 4人を集めて校長が「迷路にはドラゴンも水魔も居らんじゃろ。・・だが、
これまで以上に厳しい試練が待って居る・・・迷路の中では人が変わるのじゃ。・・・優勝杯を追ううちに、自分自身を見失うこと
にならぬよう心してな。・・・では、諸君位置に着いて」 会場から大歓声が上がった。 「三つ数える。1・・」 大砲が轟音を発し
校長は数えるのを辞めたが、競技をスタートした。 ムーディに見送られて、ハリーは迷路の中に入っていった。 振り向くとムー
ディが人指し指を横にして方向を示していた。 入り口が閉じられ、ハリーは先へ進んだ。

 果てしなく、背丈の5倍もの高さで続く迷路をハリーは慎重に1歩ずつ進んだ。 ディゴリーが油断していると迷路を作っている
木が襲って来て、ディゴリーを包みこんだ。 必死に逃げるディゴリーを迷路がふさいでいった。 クラムは短刀を抜いて迷路の
影に隠れ誰かを待っている。 ミス・デラクールは恐くなって、恐怖のあまり逃げ回った。 デラクールの悲鳴を聞いてハリーが
走った。 意識を失ったデラクールの上に馬乗りになっていたクラムが走って逃げた。 ハリーは物陰に隠れてクラムが通り過
ぎるのを確認して、デラクールのそばに行った。 「フラー・・フラー」と呼んでみたが彼女の体の周りには、すでに小枝のような
ツタの妖怪が身体に無数に取り付いていた。ハリーは杖を天に向けて突き上げ「テンキューブ」と言って赤い花火を打ち上げた。
 いきなり突風が吹き荒れ、迷路が次々と閉じられていった。 ハリーは逃げ惑い転んだ。 立ち上がって閉じ始めた迷路を走
りぬけようとしたとき、「ディゴリー!・・」と叫びながらセドリックと戦うクラムが見えた。 セドリックの杖から光が放たれクラムが
倒れた。 セドリックは倒れたクラムの杖を奪った。 「辞めろセドリック!・・」ハリーが止めようとしたが、セドリックは、「放せ!
・・」と言って短刀を持って逃げた。 「あれだ!・・」ハリーが叫んだ。 二人は競って明かりを目指し走った。セドリックが転んだ。
 振り返るとセドリックの身体にも小枝のようなツタの妖怪がすでにまとわりついていた。 セドリックが「ハリー!・・ハリー!」と
名を呼んで助けを求めた。 出口は目の前にある。 ハリーは逃げるべきか、セドリックを助けるか迷ったが、引き返して杖を抜
き、呪文を唱えた。 杖から光が走り、ツタの妖怪は力をなくした。 ハリーは自分にも絡まる小枝を振り払いセドリックを助けた。
 「有難う」セドリックがハリーに礼を言った。 「良いんだ」 「でも一瞬見捨てられると思ったよ」 「僕もそう思った」とハリーが
言った。  「きつい課題だな・・」 「本当だね・・」 またもや強風が吹き荒れて、迷路がふさがれてきた。 ハリーとセドリックは
二人で走って逃げた。 前方に優勝カップが輝いて見えた。 セドリックが「君が取れ!・・アズカバンでの借りが有る」と叫んだ。
 ハリーが「じゃぁ一緒に・・・1・2・3」と数えて、二人が同時にカップに飛びついた。 
   

 激しい光の中で二人は優勝カップとともに飛ばされて来た。 古い荒れ果てたお城が見える墓場。 ハリーがセドリックに「大
丈夫かい?」と聞いた。 セドリックが「ああ、・・・ここはどこだ?」と聞いた。 ハリーが「来たことがある・・・ここへ前に来た。
・・・夢で・・」と言う。 セドリックが優勝杯を見つけて「優勝杯がポートキーだ」と言う。 トム・リドルの墓がある。 ハリーが「セ
ドリック!・・早くポートキーに戻って・・早く!」と叫ぶ。 ハリーは額の傷を抑えて苦しんでいる。 「ハリー・・どうかしたのか?
・・」 「早く優勝杯を・・・」とハリーが言った。 広場にあった大釜に火がついた。 古い小屋のドアが開いて、ワームテールが
ヴォルデモートを小脇に抱えて現れる。 「誰だ!・・何しに来た!」とセドリックが言った。 「余計なことを・・殺せ!」  ワー
ムテールが杖をふるって光を放ちセドリックが倒れた。 ワームテールはさらに杖を突きつけてハリーに迫ってきた。 後ずさり
していたハリーは、崩れかかってきた材木に挟まれて動けなくなった。 「やれ!・・いまだ!」と叫んだヴォルデモートをワー
ムテールが持ち上げて煮えたぎる釜の中に放り込んだ。 「父親の骨・・・知らぬ間に与えられん」 ワームテールが杖を振って
骨を眼前に持ち上げ、高温の釜の中にその骨を落とした。ワームテールは「しもべよ喜んで差し出されよ・・・仇よその血を・・・
奪われよ」と言う。 ワームテールが短刀を抜いてハリーのところに来て、腕に切り付けた。 短刀が血で染まった。 その短刀
を釜の上まで運び、血を釜の中に滴り落としながら、ワームテールが「闇の帝王よ、よみがえれ。・・ふたたび!・・」と唱えた。
 釜、全体が炎に包まれて、もがき苦しみながらヴォルデモート卿が復活した。 頭には髪の毛がなく、鼻が潰れ、目はガイコツ
のように落ち窪んで異様な顔立ちをしていた。 ワームテールがその風貌を驚きの眼で見上げた。 「杖を寄こせワームテール。
・・・」 「はあ・・」ワームテールがヴォルデモートの前にひざまずき杖を差し出した。 「腕を出せ!・・」 「ああ・・ご主人様・・あ
りがたき幸せ・・」 「もう一方の腕だ!」 ヴォルデモート卿はワームテールの手首を握り、杖の先を腕に突き刺した。 天空か
ら黒い煙の尾を引いて、長い三角帽子を冠った男たちが現れた。

 ハリーは材木に挟まれたままの姿で、成り行きを見ている。 顔に鉄片を打ち込んだ男のそばに行って、ヴォルデモート卿が
言った「よう来た!・・・よう来た友よ!・・13年が過ぎた。・・しかし、それがつい昨日のように、・・お前たちはこうして現れた。
・・しかし、お前たちには失望した。・・なぜ、助けに来なかったのだ?・・・」 ヴォルデモート卿は男の顔を引きちぎるようにした。
 顔から黒い煙が噴出した。 ヴォルデモート卿はもう一人の三角帽子を冠った男のところに行った。 「お前もだ!ルシウス!
・・・」同じく顔面を引き裂くと、黒い煙が飛び散った。 ルシウスはひざまずき「我が君・・あなた様のご消息が、ちらッとでも耳に
入っておれば・・」と言いかけたが「入っておったはずだ。・・・抜け目の無い友よ」 「誓って申し上げます。・・私は昔のままでご
ざいます。」といって三角帽子を取った。  「この顔をあなた様がお隠れになってから、世間に見せていたこの顔こそが、私の
仮面でございます。・・・」 ワームテールが「私はおそばに・・」と言って泣き出すが「恐怖ゆえにな・・忠誠心ではない。・・・それ
でもこの数ヶ月、お前は役に立ったぞワームテール!」 ヴォルデモート卿が杖をワームテールの手に当てると、ワームテール
の右手が解けていった。  「ああ・・感謝します。・・ご主人様有難うございます。」

  ヴォルデモート卿は倒れているセドリックに気付いて近づき「凛々しい青年ではないか?・・」と、足で顔を起こす。 ハリーが
「触るな!」と叫ぶ。  「おう・・ハリー・・すっかり忘れていた。・・居たのだな我が父のむくろの上に、・・・皆に紹介するまでもあ
るまい。いまや、王様同様有名になったようだからな。・・・生き残った男の子だと・・でたらめがお前を伝説に祭り上げた。・・13
年前何があったか?・・本当のことを教えてやろう。・・なぜ、俺様が力を失うはめになったのか?・・愛と呼ぶ力だ。 お優しいし
い母親が自分を犠牲にして、一人息子に究極の守りを授けた。・・俺様はお前に触れられなかった。・・・古くからある魔法だ。
・・不覚にも見逃した。 だが、それはもういい。・・昔とは違う、お前に触れることが出来る」と言ってハリーに近づいた。 ヴォル
デモート卿は右手の人差し指を、ハリーの額に押し付け強く押した。 ハリーは悲鳴を上げて苦しんだ。 「わずか数滴のお前の
血で、この力だ!・・杖を取るのだ!・・立て!・・早く!」と言って杖を振りかざして後ろに下がった。 ハリーは転がり出てふらふ
らと立ち上がった。 ヴォルデモート卿が「決闘のやり方は学んでいるな?・・まず、互いにお辞儀だ」と言って頭を下げた。 「格
式ある儀式は守らねばならぬ。・・ダンブルドアは礼儀を守れと教えてくれただろ。・・・お辞儀をするのだ!」と言って、杖をふる
った。 ハリーはその場にうずくまった。 「それでいい。・・こうしよう」 さらに杖を振り続け、ハリーが転倒して苦しんで居る。
 「いい子だハリー!・・・両親もさぞ喜ぶだろう・・・殺してやろう、ハリー・ポッター・・破滅させてやる。・・今宵を堺に俺様の力に
希望を抱く者が居なくなる。・・今宵を境に伝説は変わるのだ! お前は苦痛のあまりに、殺してくれとせがみ、そして、俺様は
そう願い、聞き入れたのだ・・立て!」

 立ち上がったハリーに、ヴォルデモート卿が「後ろを見せるな、ハリー・ポッター!・・死の瞬間まで俺様を見ていろ!・・俺は光
が消えるのを見たいのだ!」と叫ぶ。 ハリーは前に進み出て「受けて立つ!」と叫び、杖をふるった。 強烈な光線が走り、ヴォ
ルデモート卿の発する光とがぶつかり、火花を散らせた。 しばらく光はぶつかり合いつながった。 ハリーは両手で杖を支えた。
 「俺様が止めを刺す!」とヴォルデモート卿が叫んだ。 繋がった火花の一部が天高く上り、舞い降りてハリーを包んだ。 その
光の中から父の声が聞こえた。 「ハリー・・このつながりが切れたらポートキンのところに行け!。・・父さんが来て、時間は稼ぐ
が長くは持たない」  セドリックの声がして「ハリー僕の身体を連れて帰って・・父さんが居るところまで・・・」と訴える。
 母が現れて「ハリー・・大丈夫よ・・・切りなさい!・・きりなさい!」と言う。 ハリーは杖の光が切れたので走って逃げた。 ヴォ
ルデモート卿が「待てー・・!」と叫ぶ。 ハリーが呪文を唱える。 ポートキーが飛んでくる。 ハリーはポートキーにすがり付い
て脱出した。

 ハリーがセドリックを抱えて競技場に飛び込んで戻ってきた。 歓声と拍手、ファンファーレが響き渡る中でハリーは動こうとし
ない。 ダンブルドアもハグリッドも立ち上がって心配する。 ダンブルドアがハリーを立たせようとしたが、ハリーは「嫌だ!・・
・いやだ!」と言って泣き叫ぶ。 ダンブルドアが「何があった?」と聞く。 ハリーは「戻ってきた!あいつが・・・ヴォルデモート
が。 ・・セドリックが僕に頼んだんだ。・・・連れて帰ってくれって。・・それで」 「もう良い、ハリー・・帰ってきたのじゃ、二人とも
・・・」 「皆に席を立たせるな・・生徒が殺された」 クラムもフラーも心配そうに成り行きを見ている。 「遺体を運び出さねば、こ
こは人が多すぎる」 「通してくれ!・・私の子が・・私の息子が・・」と父親が階段を走り降りて、セドリックの遺体にすがり付いて
泣いた。ムーディがハリーに「落ち着け・・・今はここに居ないほうがいい。・・来るんだ」と言って、連れて行った。


 ムーディはハリーを、自分の部屋に連れて行ってドアの鍵を閉めた。 暖炉の前に座らせて「大丈夫か?・・痛むか?・・怪我
は?」と聞いた。 「いえ、・・それほど・・」 「念のために観ておこう」 ハリーの足の傷から血が流れている。 ハリーは「優勝
杯はポートキーでした。・・誰かが魔法を掛けて」 「どんなだった?」 「あの方は誰です?」 「闇の帝王だ。・・真近に観て、ど
う感じた?」 「判りません。・・自分の夢に入り込んだような感じで・・悪夢の中に」 ムーディが苦しみだして、ポケットから小瓶
を出して飲もうとしたが空だった。 ムーデーは急いで隣室にいって箱を開けた。 箱の中には数本の小瓶が並んでいた。 取
り出す小瓶は全て空だった。 ムーディは薬が切れて、のた打ち回って苦しんだ。 「他の連中は?・・墓場には誰が居た」 「え
・・あの・・僕、墓場に居たなんて一言も言いませんでした」 ムーディが近づいて「ドラゴンってのは、すばらしい生き物だ。・・・
俺がそそのかさなきゃ、あの間抜けがお前を森に呼んだと思うか?・・卵のなぞもそうだ・・セドリック・ディゴリーがお前に教えた
のは、俺がヤツに教えてからだ。・・・あのボーッとしたロングボトムも俺があの本をやらなきゃ、エラコンブの事を思いついたと
思うか?」 「全部あなたの仕業、・・ゴブレットに僕の名前を入れたのも、クラムを操ったのも」 「でも、お前を勝たせたのは俺
だ!。・・・今夜あの墓場にたどり着くように仕向けたのだ。・・・目的は遂げられた」 ハリーの血を指に取って「この血が”闇の
帝王”の中に今、流れている。・・・あの方はどんな褒美を下さるだろう。・・この俺がハリー・ポッターを永遠に黙らせたとお知り
になったら・・」 ムーディが杖を抜いたとき、ドアを蹴破ってダンブルドア校長が杖をかざして飛び込んできた。 校長がムーディ
を押さえつけて、続いて入ってきたスネイブ先生がムーディの口に液体を流し込んだ。 「飲むのじゃ」と言った。 校長が「わし
は誰じゃ?」と聞き、ムーディが「アルバス・ダンブルドア」と答えた。 「お前はムーディか?」 「違う」 「本物はどこじゃ?」 
「この部屋に居るのか?」と言って周りを見回した。 ハリーと一緒にマクゴナガル先生たちが壁際に逃げた。 スネイブ先生が
杖を振るい大きい木箱の鍵を壊した。 蓋が開いて、中から次々と木箱が出てきた。 みんなが覗き込むと箱の中には小さなも
のが動いていた。 校長が「ウジカ・アラスタ」と言うと、中から「すまんアルバス」とか弱い返事が返ってきた。 ハリーが「ムーデ
ィだ」と言った。 スネイブ先生は小瓶を鼻に当てて匂いを嗅ぎ「ポリジュース薬です」と言った。 「君からくすねていた犯人が判
ったのォ」と、校長が言った。 校長は箱の底に居る小さいムーディに「今、助けてやるぞ」と声をかけた。 偽者のムーディが急
に苦しみだして、自分の義眼を外して床に投げた。 顔が次第に変わってきて、その場に座り込んだ。 校長が顔を見て「バーテ
ィ・クラウチ・ジュニアだ」と言った。 「そいつが腕の傷も見せよう」と言って、腕まくりをした。 左腕にあの”しるし”があった。
 「この意味が判るだろ。・・・あの方が、ヴォルデモート卿がよみがえったのだ」 ハリーが「僕、抵抗できなかったんです」と言っ
た。 「アズカバンに告げよう。・・囚人が逃げていたとな」 「俺は英雄として迎えられる」 「闇の世界に英雄などおらん」校長は
こう言って、ハリーを連れて部屋を出た。

 大広間に全生徒を集めて、ダンブルドア校長が話した。 「悲しい知らせじゃ。・・大切な友を失った。・・セドリック・ディゴリは良
き生徒じゃった。・・優しく、勤勉で正義感が強く、そして何よりも友として、実に誠実じゃった。 いかに死がもたらされたか、友
である諸君は知る権利がある。 彼は、セドリックは殺されたのじゃ。 ヴォルデモート卿によって・・魔法省はわしに口止めをし
た。・・だが、真実を語らぬのは、亡きセドリックへの冒涜じゃ。・・今、我々は皆、ともに同じ痛み、同じ悲しみを感じている。・・た
とへ国は違えど、話す言葉は違えども、我々の心は一つじゃ。 一連の事件が、我々が結んだ友情の絆をこれまでにない重要
なものにした。・・決して、セドリックにも命を無駄にしてはならん。 想い出を胸に刻み我々の友を称えよう。・・・セドリックは思い
やりにあふれ、誠実で勇敢じゃった。 さいごの最後まで・・・」 

 ダンブルドア校長が、ハリーの部屋にやって来て話す。 「君を危険な目に合わせてしもうた。・・・すまぬ。・・」 「先生!。・・墓
場に行った時、不思議なことが・・・杖が・・・ヴォルデモートと僕の杖がつながったんです。」 「キョクゼンジュモンじゃ・・・君は亡
くなったご両親を見たのじゃな?・・」 「はい・」 「どんな呪文も死者をよみがえらせることは出来ぬ。  困難な時が待って居る。
 正しきことと、容易きことの選択を迫られるじゃろう。 じゃが、君は一人ではない。 友が居る」 校長がハリーの肩を叩いて帰
って行った。   

 ホグワーツ校の前庭。 ダームストラング校とボーバトン校の生徒が帰るので、お別れの挨拶を生徒たちが交わしている。
 クラムが「ハーマイオニー・・これが住所だ。・・・手紙を戴きたい。・・約束だよ」と言って、紙片を渡した。 「さよなら・・」とハー
マイオニーが手を振った。  ロンのところにボーバトン校のフラーが来て額にキスをして笑顔で去って行った。 みんな各々が
抱き合ったり、握手したりして別れを惜しんでいる。 号砲を轟かせてダームストラング校の大型帆船が湖に浮かんでいる。
 ボーバトン校の生徒が、青い制服と青い帽子で、二列に並んでホグワーツ校の生徒の間を通って行く。 歓声と拍手で見送
っている。 ハリーが廊下に出ると、ロンとハーマイオニーが後を追って来た。 ロンが「ホグワーツに静かな年ってあるのかな
?・・」と聞いた。 ハーマイオニーが「ない」と言い、ハリーも「僕も同感」と答える。 「でも、ドラゴンも居なけりゃ退屈さ」とロン
が言う。 ハーマイオニーが「これからも色々ありそうね」と言い、「そうだよ」とハリーが言った。 「休みには手紙書いてね。・・
二人とも」とハーマイオニーが言うと、ロンが「書かないよ。・・・判ってるだろ」と答えた。 「ハリーは書いてくれるよね?」 「うん、
毎週書くよ」

 校舎の高台で三人は見送った。 羽根を持った7頭の馬に引かれて、ボーバトン校の生徒が乗った馬車が湖の上を遠ざか
って行った。 大型帆船が湖の底に潜って見えなくなった。

              =  終わり  =        平成17年12月  鑑賞記載




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