韓国映画 「奇跡の夏」



                                                                     〔文中に挿入している花はすべて私が撮影した写真です〕          河野 善福

 親子4人の平凡な幸せな家庭を突然悲しみが襲った。 9歳の少年が兄のため、家族の幸せを取り返すために、初めて直面す
る人生の試練に立ち向かう。 兄弟愛、家族愛をテーマに兄を思う弟の姿、子を思う母の姿を描いた感動の実話エッセイ、キム・
へジョン著「悲しみから希望へ」を映画化した作品。 主演の少年パク・チビンはこの作品で「ニュー・モントリオール国際映画祭」
主演男優賞を受賞している。 監督はイム・テヒョン。 共演はぺ・ジョンオク。 パク・ウォンサン。 ソ・デハン。 チェ・ウヒョク。 
久しぶりに泣きながら書きました。ぜひ読んでください。

【キャスト】
チャン・ハニ      ワンパクで元気な9歳の主人公の男の子。
チャン・ハンビョル  脳腫瘍(小児癌)で入院する12歳のハニの兄。 
チャン家の両親   ハニとハンビョルの父と母。 共稼ぎの夫婦。
チエ・ウギ       脳腫瘍で入院している田舎育ちの少年。自分のことをオクトンジャーだと名乗る子。
パク・ジュンテ    ハニの同級生、セバスチャンと呼ばれている金持ちの家の子。 



【ストーリー】

「アンニョン お兄ちゃん」
 小学校の教室。  チャン・ハニが先生に質問されて答える「猫は魚とねずみが好物です」。  先生が「いい答えね・・・。」と言
ってくれる。  隣の席の男の子が泣き顔で「カード返して呉れよォ・・」とハニに言う。 「俺が勝ったんだからしょうが無いだろ」 
「ままが返して貰らえっていうんだよ」  ハニは先生の居るほうを振り向いて、「先生!・・トイレ」と言う。  みんなが大声で笑い
出す。 先生は「この間もそう言ってネットカフェにいったでしょ」と言って相手にしてくれない。 ハニは「今日は本当なのに・・・」と
言って辛そうな顔をする。 「ダーメ!」  先生はジウという女の子に質問をする。 「猫はお澄まししています」とジウが答える。
  「面白いわね」  散切り頭の太った男の子は「猫は食いしん坊だ」と答えたのでみんなが笑いだした。  「ソンヒはどう思
う?」と先生が聞くと「猫はきれい好きだ」と答える。 ハニの隣の席の男の子がハニに「じゃあこのカード賭けるよ」と言いだし
た。 手にしているのは遊戯王のカードでも入手困難なカードであった。  ハニは「また後で返せなんて言うなよな」と念を押し
た。 先生が「次はソヨン」と言っている。  ソヨンが「猫はすばしっこい」と答える。 先生が「いいわね」と言ってくれる。  ハニ
は先生の話など聞かないで、相手に見えないようにしてカードを3枚取り出して広げる。 先に隣席の男の子がハニのカードの中
の1枚を取った。 彼は、ががっかりした顔をする。 続いてハ二がその子の広げたカードの中から1枚を抜き取る。 彼がそれは
ダメという顔で奪い返そうとする。  ハニは”イヤダヨ”というしぐさで長く舌を出す。
 先生が「次はドンファンね」と言う。 ドンファンが「僕のお母さんは猫に似ている」と答える。 「面白いわね・・・次はジュンテ」と
先生の声。 パク・ジュンテが「陽射しの中で昼寝をしている猫は幸せそうだ」と答えた。 先生は「すご〜く素晴らしいわ」といっ
て「次はチャン・ハニ」とハニを指名する。 ハニが立って「猫は猫だ」と答える。 クスクス笑い声が聞こえる。 先生は「ハニ・・・ふ
ざけてるの?・・・答えになってないわ」と怒りだす。 ハニは「猫はニャンコだ」と言い直す。 「もう一度!」 「お昼寝してた猫
が・・・・車に引かれて死んだ」 みんながウオーッと歓声を上げて喜んだ。 先生が「コラッ!・・」と言って竹竿で机を叩いた時に
終業の鐘が鳴った。 先生は「二時間目の授業を終わります。」と言った。
               
 チャン・ハニがお尻を押さえながらトイレに駆け込んで来た。 個室のドアの前まで来て座り込んだ。

 体育室で高学年の男女生徒が順番に跳び箱の練習をしている。 前に出て笛を吹いてスタートの合図をしているチャン・ハンビ
ョルが「ヒョンジュン・・割り込みをするな」と言っている。 女生徒が体育室の入り口の方を指差してハンビョルに何かを教えてくれ
る。 振り向くとドアのところに弟のハニが変な顔をして手招きをして立っている。

 学校からの帰り道。 兄のハンビョルが「ちゃんと歩けるか?・・うんち大将」と声をかける。 ハニは「今度そう言ったらタダじゃ
置かないぞ」と強がりを言って兄に体当たりをする。 「お兄ちゃん、なんでもう帰るの?」 「頭が痛いんだ」 「じゃあ、塾にも行け
ないの?」 「塾は休めないよ」 「カッコウつけちゃって・・・頭が痛いよ」 「お尻が痛いんじゃなかったのか?」 「母ちゃんに言い
つけるなよ・・・タダじゃ置かないぞ」

 自宅の風呂場。 兄のハンビョルが「足をもっと開いて・・」と言いながら、ズボンを脱いでお尻を出しているハニのお尻に、シャ
ワーの水をかけている。 ハニは昨夜見たテレビの話をしてお尻を振って踊ってみせる。 ハンビョルが「ジッとしてろよ」言ってお
尻を叩く。 「服も洗おう・・ 母さんに見つからないように」と言ってズボンを持ち上げたハンビョルに、ハニはシャワーの水をかけ
てはしゃぐ。 「コイツ!・・・やめろよ!」と言って物陰に逃げると、ハニはさっきまでうんちのズボンが入っていた洗面器を持ち上
げてはしゃいでいる。 「やめろよ!・・うんちの水だろ」と言う兄の頭から洗面器の水をかけて逃げていった。

 ハンビョルがベランダで洗濯物を干しているのに、ハニは部屋でテレビゲームに夢中になっている。 「キック!・・キック!・・邪
魔だ!」  ハンビョルは台所に行って頭痛止めの薬を飲む。 ハンビョルは「パンチ!・・キック!」とやっているハニに「ベルが鳴
ったら起して」と言って目覚まし時計をセットしてベットにもぐりこむ。 ハニは時計のセットを解除して、二時間近くも「キック!・・キ
ック!パンチだ!」とやっている。
 
 ドアの施錠が”カチャ”と音を立て、ドアが開く。 ハニは急いでテレビを消して「お兄ちゃん早く起きてよ・・母ちゃんが帰って来た
よ」と兄を起こしに行く。 母が「また塾をサボったの?・・」と言って部屋に入ってくる。 「もしやと思って早く帰ってみれば・・・」 
「お兄ちゃんが痛いって言うから・・」と言いながらハニはカバンを持ち上げる。 「早く起きなさい・・・いつも痛いって言ってばか
り・・・お仕置きの棒を持ってきなさい」と母が怒る。 ベットの上に起き上がったハンビョルに母は「これで何度目・・・先週もお説
教したでしょ・・・お兄ちゃんなのに弟の宿題を見てやるどころか、塾はサボるし、塾の先生から電話が来る始末なんだから・・・お
母さんが忙しい時はあんたがしっかりしてよ」と大声で言う。 ハンビョルは「小さい声で「ごめんなさい」と言ってうつむく。 「これ
からは本当にちゃんとやるわね?」 ハンビョルは黙ってうなずく。 「今日塾でやるところを勉強しなさい」と母が言う。 そっと逃
げようとするハニを見つけて、「ハニ!・・・あんたはどこに行くの・・ここに座りなさい!」 と言ったとき、ハンビョルがベットの脇に
おう吐した。 「ハンビョル!・・どうしたの?。・・ハンビョル、顔を見せて」母がハンビョルの肩を起して顔を覗き込む。 ハニはどう
してよいのかわからず、ただ立ち尽くす。  「体がだるくて起きられない。・・・本当に痛いんだ」と眼を開けないで言うハンビョル
を、母が胸に抱き寄せる。

 病院の中にハンビョルをおんぶして母が駆け込む。 ハニが後を追う。 診察室で医者が棒を立てて「この丸いのがいくつ見え
る?」と聞く。 ハンビョルが「二つです」と答える。 みんなが顔を見合わせる。 医師が「CT検査を・・・CT室に連絡して・・」と看
護師に言う。  赤い光線が走る検査機のドームの中にハンビョルの体が吸い込まれていく。 頭の中を裁断した画像が液晶パ
ネルに並んでいる。 ハニは靴底についているローラーで病院内の廊下をスピードを上げて滑って遊んでいる。 車椅子に乗った
患者や、点滴を受ける器具を持って歩いている患者が居る。  母が廊下のイスに腰掛けて待っていると「ハンビョル君の保護者
の方・・」と言う声がした。 「中にお入り下さい」と呼んでいる看護師のそばにハンビョルが立っている。 ハニが勢い良く廊下を
滑って来てハンビョルに体当たりをした。 母が「その靴脱ぎなさい!・・お兄ちゃんは具合が悪いのよ。気をつけなきゃダメでし
ょ」と注意する。 「ハンビョルあそこで座って待っててね」と母が廊下の長いすを教える。 母が部屋に入っていったので、ハ二は
長いすのハンビョルの隣に座る。  
 ハンビョルが「おなら兄弟の話をしてやろうか」と言う。 黙って何も答えない弟にハンビョルが話し始める。 「昔昔、ハンビョル
とハニというオナラ兄弟が住んでいたんだ。 ハンビョルのオナラはすごく臭くて、ハニのオナラはすごくうるさかったんだ、5万メ
ートル離れたところまでも聞こえるくらいだったんだ。」
 病室で医師が母に話す。 「この白い固まりが腫瘍です。・・・かなり進行しています。」 「固まりって癌ですか?」 「ええ・・脳
腫瘍ですね・・・彼の視力はかなり落ちているはずです。・・すこしでも早く手術したほうが良いでしょう」 母は両手で顔を覆って泣
くのをこらえた。
 廊下でハンビョルが「オナラ兄弟が山道を歩いていると悪いやつが飛び出してきた。 オナラ兄弟は急いでお尻を出して、オナ
ラ爆弾を発射した。・・ブー、ブーブー」と言うと、ハニが、じゃ僕はと言って手の甲を口に当てて、ブーブーと音を立てて二人が笑
った。 ハニが「アッ・・・お父さんだ」と言って立ち上がった。 ローラースケートのように靴底にローラーの付いた、滑る靴を履い
ているので廊下を滑って、父親のところに言った。 「お父さん・・」と言うと、 「ハニ・・」と言って父が抱き上げてくれた。 父はハ
ンビョルに「もう検査は済んだのか?・・大丈夫か?」と聞いた。 「はい」 「元気が無いな・・ハンビョル、お父さんのあだ名は?」
と聞いた。 ハニが「アハハマン!」と言うと、「そうアハハマンだろ。・・ハンビョル・・・笑えよ」と言って二人を両手で抱えて、廊下
でくるくる廻ってみんなではしゃいだ。  お父さんが急に止まった。 目の前に悲しそうな顔をした母が立っていた。

 病室の中。 ベットの上でハンビョルがパジャマに着替えている。 ハニが「袖が長すぎて変だよ」と言う。 父が「折れば平気
さ」と言って袖を折ってやる。 ハンビョルが「僕、嘘ついてないよ・・病気だったでしょ」と母に言う。 母が「そうね・・本当に病気だ
ったね」とハンビョルを優しくいたわるように後ろから肩を抱く。 母は耐えられずに病室を出る。 ベットに上がって甘えていたハ
ニを父が両手で持ち上げてイスに運び、「ハニ・・・お兄ちゃんは病気なんだ。・・・判るだろ?」と言う。 ハニは「判らない」と言って
首を振る。 父はカバンの中から赤い小さな手帳を出した、「これをお兄ちゃんに上げておく、ハニがお兄ちゃんの言う事を聞か
ず、いたずらをしたらここに書いて貰う。・・・罰はふくらはぎ叩きだぞ。・・・判ったな?」といって、手帳をハンビョルに渡す。

 暗くなった待合室の長いすに母が座っている。 父が無言でそばに行って並んで腰を下ろす。 母は眼を合わさず離れるように
横に腰をずらす。 父が「心配するな・・・判って良かったじゃないか」と言う。 母は「何ですって?・・」と語気を強める。 「手術し
て治療を受ければきっとよくなるさ」と父が言うと、「あなたそれでも父親?・・他人事じゃないのよ。・・あなたはいつもそう、子供
と笑いながら冗談ばっかり。・・・何も知らない私は買ったばかりの車の中で吐かれては叱り、塾をサボれば叩き、仮病の言い訳
だと・・・・私は息子の病気に気付くことさえ・・・その間あなたは何を?・・・」と泣きながら言う。 「どうしたらいいの・・・どうした
ら・・」という母に、 父は一言も返す言葉が無く黙った。


 ハニの教室。 ハニがおどけたダンスをして友達に教えている。 今日はジュンテのお母さんが給食の当番で学校に来ている。
 おばさんがハニに「うちのジュンテと仲良くするのよ。・・このデザートはおばちゃんが作ったのよ」と言って配っている。 ハニは
人形のように焼かれたお菓子を1個こっそり盗って病院に持って行った。 「ジャジャーン。・・・」と言ってハンビョルの前に人形の
お菓子を突き出す。 ハンビョルは「僕、絶食中なんだ」と言って淋しそうな顔をする。 「絶食!?・・なんだそれ!」と言ってベット
の上に飛び乗る。 「食べちゃダメってこと」 「何で?」 「明日、手術だろ?・・手術の時は食べちゃダメなんだって」 「手術?・・
お腹を切っちゃうの?・・」 「ううん・・ここ」と言って頭を指差す。 「頭の中に悪いものがあるから、頭のフタを開いて切るんだっ
て・・」 「ウソつくなよ」
 そこに父がやってきて「一人でよく来れたね」とハニに言う。 「バスに乗るだけじゃん、僕はアホか?・・」 ハニは父が持ってい
るものを見つけて「それ何?」と聞く。 父はバリカンを差し出してスイッチを入れる。 ハンビョルのところに行って頭の横の一部を
刈り取る。 ハニが「お父さん、変だよ」と言い、ハンビョルも「全部そってよ」と言う。 「全部?・・良いのか?」と聞くとハンビョル
がうなずく。 「本当にいくぞ・・いいか?」 髪がバサバサと周りに落ちてきて、ハンビョルが泣きそうな顔になる。

 病室から手術室に降りて行くエレベーターの中。 ストレッチャーに乗せられて、頭を丸坊主にされたハンビョルと、周りを囲むよ
うに、父・母・ハニがいる。 突然ハンビョルが「母さん・・・手術が終わるまで居てくれるの?」と聞く。 母はハンビョルの手を両手
でにぎって「もう会社に行かなくてもいいの・・ずうーっと一緒に居るからね。・・眠っている間にすぐ終わるわ」と言う。 「僕・本当
はちょっと恐い」
 手術室の前で奥に入っていくハンビョルに「頑張るんだぞ」 「がんばれ」と声をかけた。 ハンビョルが「ウンチ大将」といって舌
を出すと、ハニも両手の指で眼と口を掴んで顔をくしゃくしゃにして見せた。 ハンビョルは手を振って奥に消えた。

 医師が「先生の声が聞こえるかい。・・お母さんを見て・・」とハンビョルに呼びかけている。 ハンビョルは頭を包帯で巻いて、わ
ずかに身体が動いている。 ストレッチャーの周りに父も母もハニも居る。 医師が「ナイトリフレクションは?」と看護師に聞く。 
「プロンプトです」と答えが返る。 「バイタルサインは?」 「大丈夫です。」
 ハンビョルが薄く眼を開いた。 「ハンビョル!・・お母さんが見える?」 父がハニを抱き上げて「こいつは誰だ?」と聞く。 ハン
ビョルが「ウンチ大将」と答える。 みんながほっとして笑う。 ハニが「ばかちん」と言う。 父が「良く頑張ったね」と言い、医師に
「有難うございました」と礼を言った。 「手術は上手くいったって、心配しなくて大丈夫よ。・・ほんとうに良く頑張ったわ」と母が言
う。

 病棟の入り口に”小児腫瘍・骨髄移植病棟 免疫低下のため注意事項を遵守のこと” と掲示板がある。 ハンビョルが車椅子
に乗って帽子を冠っている。 家族みんなでこの病棟にやってきたのだ。 病室内には頭を手術した子供ばかり10人くらいのベ
ットがある。 ふざけあっている子もいて、元気ににこやかにすごしている子が多い。 ハンビョルは奥の方のベットに行った。 医
師がハニに「風を引いちゃいけないよ。・・・いつも清潔にしないとお兄ちゃんと遊べないよ。・・判ったね、お兄ちゃんとは別のタオ
ルだぞ」と言った。

 ハンビョルが退院の準備をしている。看護師がハンビョルに「退院できて良かったね、熱心に本を読んでいたけど、最近はどん
な本を読んでるの?」と聞くが答えない。 母が「何を読んでいるのか、聞いてらっしゃるわ」というが黙っている。 「ハリーポッタ
ーですわ。・・前にも読んだんですけど」と母が替わりに答える。 「夏休みはどこに行くの?」と聞かれて、ハニが「山に行くんだ
よ。・・・川で泳いで、テントで寝るんだ」と答える。
 母が廊下で車椅子を押しながら、「ハンビョル・・先生がハンビョルの声を聞きたがってらしたのに、母さんが答えるばかりで、ど
うして黙っているの?。・・・次からは自分で答えて」と聞く。 ハンビョルは車椅子の車輪をぐっとにぎって引き止め、「誰も頼んで
いないよ・・・痛みを我慢するだけでも大変なのに返事なんて出来ないよ!・・・判らないくせに!」と泣きながら訴える。 母は無
言でハンビョルの後ろから両手を肩越しに廻して、顔をくっつけてしっかりと抱いてやる。

 庭にテントを張ってキャンプの真似事をしている。 テントの中でハンビョルが本を読み、ハニがおもちゃで遊んでいる。 母が
「ジャジャーン!」と言って、海苔巻きの壽司を持ってくる。 ハニが「何だこれ?」と言い、母が「不恰好なほうが美味しいのよ」と
言う。 ハニは「お弁当にしてって言ったのに・・」と不平を言う。 「いいから食べなさい」と母が言う。
ハニは「お兄ちゃんが治ったら田舎で魚釣りをしたり、山にも行って泳ぎにも行こうね・・・ねえってば」と言って、兄の顔に懐中電
灯の明かりを当てるがハンビョルはもう眠っていて起きてくれない。 ハニも山に行った絵日記を書きながら眠ってしまった。

 学校の教室。 「俺、釜山にも行ったんだぞ。10泊もしたんだ。」と言う子が居る。 ハニは「10泊。!・・ウソつけ!」と相手に
しない。 別の子が「僕はお祖母ちゃんの家で毎日泳いだぞ」と言うと、顔に掴みかかった。 「セバスチャンはディズニーランドだ
ってさ。・・・お前は?」とハニが聞かれる。 ハニは何も答えずにジュンテの席に行って、日記を見る。「オーマイガーッ!・・・セバ
スチャンは日記も英語で書くの?・・・ここは韓国だぞ」 「僕はパク・ジュンテだセバスチャンて呼ぶなよ。・・・それから僕にかまわ
ないで呉れる?。・・・それがクールなんだよ。お前には無理かな」と言われる。 その時教室の入り口のほうで音がして、振り向
くとハンビョルが手招きをしている。 帽子を深々と冠りメガネをかけ、大きなマスクで顔を覆った姿に、みんながひそひそ話しを始
めている。 ハニはカバンの中にノートをしまって教室を出ながら、「じろじろ見るなよ・・殴られたいか?」と言って出て行った。 
廊下を通ってもみんなが覗き込む。 「治ったらちゃんと歩けるんでしょ」とハニが兄に聞く。 「うん、・・でも元には戻らないんだっ
て」 「じゃあ、眼は?」 「眼も・・」 「いつ治るの?」 「僕も知らないよ」


 家の中で母が家計簿をつけながら考え込んでいる。 ハニが「母ちゃん」と呼んでいたずらをするが、考え込んで貯金通帳を見
ている。 ハニが部屋の電気を消して、隣の小部屋の明かりの下でダンスを始める。 部屋の電気が点いて、ハンビョルがスイッ
チを押して立っている。 「ボリューム下げてよ。・・鼓膜が破れそうだよ」と言う。 母が「判ったの?・・・薬の時間ね?」と言って
立ち上がる。 兄弟二人が並んで、長いすに腰を下ろす。 ハニがポテトチップスの袋を押しつぶして、パンクさせて食べ始める。
 「大きな音を出さないで呉れよ。・・・身体中に響くから」とハンビョルが言う。 ハニはすぐ横に行って「キャーッ!」と大声で叫
ぶ。 「お兄ちゃんは強いお薬を飲んでいるの、聞き分けの無い子ね」と母が怒って言う。 ハニは「二人とも超ムカツク!」と言っ
て本を床に投げつけて部屋を出て行く。

 ハニはトイレに入って泣いている。 母が「お兄ちゃんは病気でしょ。・・・お母さんを助けてくれなきゃ」と言うが中から鍵をかけ
て出て来ない。 顔を洗ってタオルで顔を拭こうとしたとき、並んで掛けてある、お兄ちゃん専用のタオルが目に入った。 ハニは
わざとお兄ちゃんのタオルで顔を拭いた。 何度も頭も拭いて鼻をかんだ。 壁に投げつけられてタオルは床に落ちた。

 ハンビョルが体調を崩し、またおう吐している。 父が「ソフランを飲ませたほうが・・・」と言うが母が「ちょっと待ってよ。・・・熱が
下がらないわ、病院へ・・・」と言う。 「そうだな・・車を廻してくる」 母がハンビョルを背負って出て行く。 ハニは一人部屋に残さ
れてテレビを点ける。 チャンネルを切り替えて見るが面白いのが無い。 トイレに行って小便をしていると、お兄ちゃんのタオル
が目に付く。 長いすに戻って横になる。 長い時間が過ぎて、玄関で父の声がした。 「お父さん」と鳴き声で玄関に走り、父に
抱きつく。 「一人で淋しかったかい?・・恐かったかい?」と言う父に、泣きながら「僕のせいなんだ・・僕がお兄ちゃんのタオルを
使ったの・・・悪いバイ菌がお兄ちゃんに・・・」と言う。 父は「大丈夫だよ」と言って背中を優しく叩いてくれる。
 ハニは遊戯王のカードブックをめくり、隣の男の子から取った最強のカードを抜き取る。 

 自宅のベットの上にハニが座り込んで遊戯王のカードを見ている。 ”ハリーポッターと秘密の部屋”の本の間にカードを挟ん
だ。

 ハニが病室のベットの上で、診察室へ行ったハンビョルの帰りを一人で待っている。 急に病室の中が騒がしくなった。 ベット
を区切ったカーテンを引いて見ると、「こんにちはウギです」という男の子の声がして、「ウギいらっしゃい」と言うおばさんたちの声
も聞こえる。 「ウギじゃないよ。・・僕の名前はオクトンジャだよ」と彼が言っている。 ハニはウギと眼が合って二コツとした。

 ウギのお父さんが医者と会って話をしている。 「こんなに早く悪化するとは・・・」 すぐ横を母に押されて車椅子に乗ったハンビ
ョルが通る。 「ウギが3年も持ちこたえたのは奇跡です・・・・ウギのように笑顔で耐える子は滅多にいません」と医師が話すのが
聞こえた。  父親が声を出して泣いている。

 ハニがカーテンで区切られたハンビョルのベットの上で遊んでいると、カーテンを開けてウギがやってきた。 「お餅食べる?」と
言って餅を差し出す。 「初めて見る子だね・・・チャン・ハンビョル、12歳?」と名前札を見ながら聞いた。 「僕より小さく見えるけ
ど、どこが悪いの?」とハニに聞く。   ハニは餅を無視して「僕は病気じゃないよ!・・・出て行け!」と言う。 ハニは”田舎もの
くさい・・・女みたいだし”と思った。 ウギはいたずらっぽく笑うと、餅をベットの上に置いてカーテンを閉め、逃げていった。 「いら
ないよ!・・臭いんだよ!」と叫んでカーテンを引くと、そこに母が立っていた。 母はハンビョルの患者服を着ているハニを見て
「チャン・ハニ・・・脱ぎなさい!」と怒った。 そこに診察から帰った車椅子の兄を見て「お兄ちゃんがハンビョル?」とウギが聞い
た。 「そうだよ」 「君は?」 「チェ・ウギ・・・」 ウギが帽子を取ると丸坊主の頭に縦の手術跡が見えた。 ハンビョルも帽子を取
って坊主頭の手術跡を見せた。 ウギの母親が「そっくりね・・兄弟みたい。・・・お兄ちゃんが出来てよかったね」と言いながらや
って来る。 「疲れたでしょ・・もう休もうね」

 病室にウギのお父さんがやって来る。 「ウギ!」 「アッ おとうさんだ!」 ウギは父親の胸に抱きついた。 「お前の好きな番
組が始まる時間だぞ。・・・テレビを見たい子は集まれ」とみんなに呼びかける。 ハンビョルが「疲れてないから一緒にテレビを見
てくる」と母に言う。 部屋の隅のテレビの前に大勢が集まり、テレビを見ている。 みんな手術の跡が生々しい坊主頭の子ばか
りだ。 ウギが「この間のターザンおじさん見た?」とハンビョルに聞く。 「うん・・ハニが好きなんだ。・・・ロープを飛び移るおじさ
んだろ?」とハンビョルが答える。 「あのおじさん家の裏山に住んでいるんだよ」とウギが言う。 後ろのベットで聞いていたハニ
が「うそつき!」と叫ぶ。 「ほんとうだよ」とウギがしょげる。 「自分が嘘ばっかりついているから、人を疑うんだよ」とハンビョル
が言う。 ウギは皺だらけになった紙を広げて、「これ見て・・・オクトンジャおじさんのサインだよ」と言う。 「すごいな」とハンビョ
ルは言う。 ハニが二人のそばにやってきて「なんだそれ・・・サインって物は直接もらうものだよ」と言う。 ウギは「そうするも
ん・・・治ったらこの人の番組をテレビ局で見るんだ。・・・僕の夢はオクトンジャおじさんみたいな、コメディアンになることなんだ」
と言う。 ハニが「お前なんかちっとも面白くない・・・恐いよ」と言う。 言葉が過ぎるので、ハンビョルがゲンコツでハニの頭をコツ
ンと叩く。 ハニはむきになってハンビョルの頭をこぶしで殴り返す。 ハンビョルは黙って赤い手帳をハニの前に差し出す。 ハニ
は手帳をたたき落として逃げていく。

 病室でハンビョルとウギがパソコンのゲームで遊んでいる。 後ろに居た医師が「ウギ!・・ハニを見てみな、上手だな」と言う。
 「すごいな」と言う声も聞こえる。 ハニが病室の中で靴のローラーを使って回転を繰り返している。 ウギが「僕にも1回やらせ
て・・1回だけで良いからやらせてよ」と言う。 ハンビョルも「1回くらい貸してあげなよ」と言う。 ハニは「田舎物には無理だよ。」
と言ってから「いなか者〜いなかもの〜」と唄いながら回転を繰り返している。 ハンビョルが「ウギにそう言うなって言っただろ」と
怒る。 「だってそうだろ」 ハンビョルはだまって赤い手帳を差し出した。

 病室の中。 点滴の容器をぶら下げるキャスターの付いた器具にウギが掴まり、ハンビョルがそれを引っ張って靴底ローラーの
練習をしている。  ハニが「右足を上げろよ」とか「左足を下げろ」と言っている。 「お前は黙っていろ!」 「へたくそだからだろ」
                      

 ハンビョルがCT検査台に寝て穴の中に入ろうとしている。 技術者が「保護者の方は外でお待ち下さい」と言う。 母が握り締
めていた手を解きながら立ち上がる。 ハンビョルは解けた手をそのままに差し出して、母が立ち去るのを無言で見つめる。 母
は涙があふれ出るのを我慢できない。

 ハニがトイレの個室で力んでいる。 「お母さん・・・ウンチがカチカチだよォ」 母はトイレで泣きながら、ハニの出るのを待ってい
る。 そこにウギの母親が泣きながら入ってくる。 母親は無言で水道の栓をひねり、洗面器に水を一杯貯めて顔を沈めた。 ハ
ニのお母さんが振り返る。 しばらく置いて顔を上げ、独り言のように「病気の子供の前では涙を見せるななんて、誰が言い出し
たのかしら?・・・なんでトイレで泣かなきゃならないの・・・水につけると顔がはれないし、眼も充血しないのよ」と言い、ハニの母
に「やって御覧なさいよ」と言う。 ハニが個室で「大きいウンチが出たよ・・・見てみてすごく太いよ」と喜んでいる。 「わざわざ見
なくてもあんたのウンチの匂いが病院じゅうに充満してるわ」とウギの母親が答える。 「誰?」とハニは聞く。 ハニの母親が洗
面器の水の中から顔を上げる。 顔を拭きながら、鏡に映った互いの顔を見つめて、二人は始めて笑い合う。

 病院の廊下で、ウギが何度も転びながら靴底ローラーで滑る練習をしている。 ハニがやって来る。 ハンビョルが「僕のお古を
上げたんだ」と説明する。 ハニは「ウギになんかできるものか。・・・笑わせるよ、ろくに歩けもしないくせに」と言う。 そしてウギ
が遊戯王のカードを持っているのを見つけて「何でお前が待っているんだ」といって取り上げる。 ハンビョルが「僕に呉れたんだ
から僕のだろ?。・・・ウギに返してやれよ。・・・一度やったものを取り返すとお尻に毛が生えるぞ」と言って、受け取ったカードを
ウギに渡す。 ハニは「僕のだ返せよ!・・・かえせってば、コイツ返せよ!」と言って身体をゆする。 気がついてみるとウギは元
気なく鼻血を出している。 ハンビョルが「お前は本当に悪いやつだな」と言う。

 病院の玄関に座って元気なく考え込んでいるハニのところに、ハンビョルが点滴器具を押しながらやって来る。 「ウギは誰にも
言ってないよ。・・ビビッてないで早く謝れ!」と言う。 「ビビッてなんか居ないよ。・・お前こそ謝れ」 「お前・・悪いことをしただ
ろ?・・ウギはすごく具合が悪いんだ。絶対にぶっちぁいけないんだよ」 「お兄ちゃんのせいだ、・・・あの遊戯王のカードは、お兄
ちゃんが病気だからあげたのに、・・・僕からのプレゼントなのになんであげちゃうの?」と言って立ち去る。

 学校でサッカーの時間。 「ジュンテこっちだ。・・・止めろ!」 ゴールを決められて、怒ったハニはジュンテを突き倒す。 取っ組
み合いの喧嘩になって友達が「やめろ!」「止めないか!」と二人を引き離す。 誰かが「お前終わったな・・・あいつお母さんに言
いつけるぜ」と言う。

 翌日、学校にジュンテの母親がやって来る。 ジュンテに「誰にやられたのかを言いなさい。・・・脅かされたのですか?」と聞い
ている。 ジュンテか「サッカーで怪我したんだよ。・・もう帰ってよ」と言っている。 母親は「じゃあ、なんで学校を嫌がるのよ。・・・
誰なのか見つけ出してやるわ」と言っている。 ハニはジュンテの母親の話を聞いて、学校に入るのをやめて校門から引き返す。

 病院の部屋の中。 ウギが帰り支度をしている「ウギ・・帰れていいね。・・どうした浮かない顔をして・・・」と周りから声を掛けら
れている。 ウギの母親がハニの母親に「泣くと参っちゃうから、泣かないでね」と言っている。 ハンビョルがウギのところに行くと
「このままお兄ちゃんと病院に居たい」と言う。 「このまま家に帰ったら、一日中一人だからつまらない」とも言っている。 「退院
したら遊びに行くよ」 「本当?・・いつ退院できるの」 「放射線治療が全部終わったら・・」 そして母に「母さん、・・退院したらウ
ギの家に遊びに行きたい」と言う。 母がうなずき「本当に?・・」とウギが喜ぶ。 「きっとだよ・・・必ず遊びに来てね。・・・自転車
持ってるから、お兄ちゃんを乗せてあげるね」 

 ハニの担任の先生が病室に来て、ハニの母に話す「ハンビョルの担任の先生から今日話を聞いたんです。・・・早く知っていたら
ハニにもっと気を配ったのですが・・実はハニが今日学校に来ませんでした。・・・うまくいっていないお友達が居るのですが、一昨
日ハ二と喧嘩をして少し怪我をしまして、その子のお母さんが直接校長に話をしたようで、お母さんも余裕がないと思いますが、
ハニにも気を廻してくださると・・・」

 ハニは街をブラブラ歩いて、病院に来た。 ウギと母親が田舎に帰るところに出会う。 「よう・・オクトンジャ。・・」 「お兄ちゃ
ん!。・・・お薬が出るのを待っているの、・・これ家の電話番号」 ウギと分かれて歩いていると、ハニの持っている携帯電話が鳴
った。 ハンビョルが公衆電話から掛けていた。  兄は「ハニ・・今どこ?」と聞いて、「大変なんだ」と言う。  
 そこに「ワッ!・・」と声をかけてハ二が現れる。 ハンビョルが「バーカ・・ウギの家にでも行ってろ」と言うが「イヤだよ。・・・田舎
者の家なんて」とハ二が言う。 「じゃあ、勝手にしろ。・・・明日は学校が休みだから一日中叱られるぞ。・・母さん最近機嫌が悪
いし、お前終ったな」 「小母さん怒ると本当に恐いよね」 考え込んでいる時に携帯電話が鳴った。 表示面に”母ちゃん”と出て
いる。

 「ウギ・・バイバイ!」 「お兄ちゃん、バイバイ・・」 「元気でね」 ウギの田舎に行くバスにハニが乗って、兄が見送りをしてい
る。 父親が迎えに来てくれたトラックに乗り換えて、秋の紅葉の美しいウギの家に向かった。 夕食のテーブルに付いて、両親
が農作業のことを話しながら食事をしている。 ウギがキムチの長いままのものを手で持ち上げて、上から口の中にゆっくりと降
ろして食べた。 「良く食べるな」と父が言った。 ハニも真似て食べてみた。 「キムチをシュートしようとしているチャン・ハニ選
手・・」とハニが言えば「ゴールの前でウロウロしているだけです。・・・しかもオナラまでしちゃうなんて・・」とウギが言う。 次にウ
ギが口に入れるのを見て「今度はゴールを決めました」とハニが言う。 笑い声を上げて、和やかに夕食の団欒がすすんだ。

 翌朝、眼を覚ましたハニは状況がつかめない。 天井にトウモロコシが吊ってあるし、蚊帳の中に居る。 ウギが蚊帳をめくって
部屋に入ってくる。  「何だ・・ウギかよ」と言って布団の上に押し倒した時、ウギの腹にたくさんの手術跡があるのを見つける。
 「これ全部そうだよ」といって、ウギはシャツを引き上げて傷跡を見せてくれる。 ウギが「ターザンおじさんを見に行こうか?」と
言う。


 二人が山の中に入っていく。 岩場を渡り、野原を走り、坂道で二人は転げてしまう。 「道も良く知らないくせに、・・・」と苦情を
言うハニのそばに白い菊のような花が一杯咲いている。 ハニは「目玉焼きの花だ」と歓声を上げる。 「目玉焼きか?」 ハニは
「目玉焼きに似ているから、お兄ちゃんとそう呼んでるの」と言って花を摘み、「ここが黄身で外側が白身」と言って花弁をちぎって
言った。 ウギが「僕が好きなヒメジョオンを目玉焼きってか?・・・食べてみてよ」と言ってハニの口元に持っていく。 ハニは「ヒメ
ジョオンか?・・・変な名前・・へんだよ」と言う。 二人がさらに山奥に進むと、広場があって木の枝と草で囲った小屋があった。 
二人は慎重に近づき、警戒しながら立ち止まった。 ハニが人影を感じて振り向くと、頭巾のついたマントを着た長身の男が立っ
ていた。 ハニは声も出せず前にいるウギの背中を叩いた。 ウギは「なんだよ!?」と言って振り向き、男に気がついた。 二人
はずるずると後ずさりをした。 男が水筒のフタを取って二人のほうに差し出した。 二人とも首と手を振って、”いらない”ことを伝
えた。 ハニは一目散に逃げた。 ウギも後を追った。 「待てよ、ハニ!」 山を走り、坂を下った。 どこまでも走ってハ二が振り
向くとウギの姿が見えなくなっていた。 ハニは「ウギ!・・ウギ!」と呼びながら今来た道を戻った。

 ウギの家では二人が居ないので母親が父親と心配して探している。 「裏山に行ったとしたら大変よ。・・あそこは見た目よりも
奥深いのよ」と話している。 まもなくウギの家にハ二の両親がトラックで駆けつける。 ウギの母親が「どうしょう・・・裏山に行っ
たみたい」と伝える。 

 山の中。 ハニは仰向けに倒れているウギを見つける。 「おい・・チェ・ウギ・・しっかりしろよ!」 ぐったりとなって意識の遠の
いたウギは動かない。 ハニはウギを背負って歩き始めた。 しばらくして、力尽きて倒れこむ。 ハニはウギの頭を抱いて「ウ
ギ!・・ウギ!」と言って泣き崩れた。
 「ウギ!・・」 「ハ二!・・」 「どこに居るのウギ!」 両親四人が声を出しながら、山に登ってくる。 「ウギ!」 「チェ・ウギ!」
 ハニが気がつくと、後ろに先ほどの大男が近づいてきていた。 「くるなよ!」 「あっちへ行け!」 ハニは手当たり次第にもの
を投げて、男が来るのを防いだ。 「触るな・・・ウギを離せ!」と言って木の枝で男を叩いた。 男はウギを抱きかかえて、水筒の
水をウギの口に含ませた。 ウギが意識を取り戻した。 「ウギ!・・大丈夫か?」 にっこり笑ってウギは「ウギじゃないよ。・・・僕
の名前はオクトンジャ」と答える。 三人はそこに座り込んで仲良く話をした。

 大男がウギとハ二を両肩に背負って道のない山の中を走る。 大きな岩山を飛び越え、「ヤッホー」と叫びながら、まるでロープ
にすがっているように林の中を何度も飛んで行く。
 「ウギ!」 「ハ二!」と言う呼び声が聞こえる。 大男は二人を肩から下ろすと、もう何処かに消えていった。 ウギとハ二が「お
父さん・・・お母さん」と呼ぶ。  両親が「ウギ!」 「ハ二!」 と大声で山を登ってくる。 「ハ二・・こっちへ来い!」 「お母さ
ん・・」  ウギのお母さんはウギを抱きしめ泣きながら「山に行ってたの?」と聞く。 「うん・・」 「本当にあんたが登った
の?。・・・もうすっかり元気になったね」と頭を撫でる。

 「本当に一回死んじゃったんだ」病院で夜ハ二が、ハンビョルのベットに寝ながら話して聞かせている。 ハンビョルが「水を飲ん
で生き返るなら誰も死なないよ」と言うが、ハ二は「みんな知らないんだよ。・・・水筒のお水で生き返ったんだ。」言う。 「気絶し
てたんだよ。・・お前のせいで大事になるところだったんだぞ」 「あのお水病院で売れるよね」 「とっとと寝ろ」 二人はベットに
並んで上を向く。 「ターザンおじさんすごく汚かったよ」

 ハ二が校庭の鉄棒にぶら下がり、ブランコのようにしている。 男の子が「昨日も僕やれなかったのに、猿かよ・・もう降りろよ」 
「何でアレばっかり・・・変なヤツ」と言っている。 ハニは携帯電話が鳴って鉄棒から飛び降りる。 「え?・・ウギが来た?・・すぐ
行く」

 病院の緊急患者を集めた、集中治療室に行くとウギが酸素マスクをつけて眠っている。 ハンビョルが「起すなよ・・また後で来
よう」と言う。  ハニは「ここで待っていよう」と言う。 「いつ起きるか判らないから、起きたら呼んでもらおう。・・・行こう」

 病室で医師団がウギの両親に説明する。 「これ以上の抗がん剤はもう無理です」 そこにハ二とハンビョルも来る。 「このま
まもう二度と眼を覚まさないことも・・・」 ウギの母が涙をこらえながら言う「この三年間治療費の支払いに追われて、まともに一
緒に遊んでやることが出来ませんでした。 この前もここで3ヶ月頑張ったし、諦められません」 「効果がないことは、お母さんも
ご存知のはずです」 母親はこらえ切れなくなって号泣する。 医師が言う「ウギの身体はもうこれ以上、あの強い薬に耐えられま
せん。・・・心の準備を」 父親も両手で顔を覆い泣く。 医師はハ二とハンビョルを見つけて、「ウギに逢いに来たんだね」と言って
立ち去る。 ウギの両親が手を取り合って泣いている。

 ハニは一人で自転車に乗って遠くまで行こうとしている。 ハニは夜の歓楽街にやってきた。 ”ナイトクラブ”とネオンのついた
店の前で、客引きがハ二を見つけて「チビスケ、誰と一緒だ?、家に帰りなさい」と言う。 ハニは客の影に隠れて店内に入ろうと
して見つかる。 「何なんだ!」 ハニは抱きかかえられて出される時「オクトンジャ!・・オクトンジャ!」と騒ぐ。 「おじさんを困ら
せるな・・帰りなさい!」 ハニは手を合わせて拝むように「おじさんオネガイ。・・・オクトンジャのおじさんに会わせて」と頼む。 客
引きのお兄さんは「オクトンジャのおじさんに、そんなに会いたいのか?」と聞いてくれて、「この後ろに駐車場がある。そこで会え
るよ」と教えてくれる。
           

 ハニが駐車場に行って、誰も居ない車のそばで練習をする「おじさん、僕の友達のウギって子がひどい病気なんです。 おじさ
んみたいなコメディアンになりたがっているんです。」メモを見ながら読み進む「おじさんに逢うのが夢なんです。・・・おじさんに逢
えればキット元気になるはずです」 
そのうちにハ二は駐車場で眠ってしまった。 突然車のエンジンの掛かる音で眼を覚ますと、あたりはもう明るくなっていた。 車
のライトがまぶしくてよく見えないが、人の動く気配がした。 ハニはおじさんの前に行ってメモを広げ「おじさん、僕の友達に・・・」
と読み始める。 おじさんはメモを取り上げて自分で読む。

 ハニは雨の降りしきる街の中を、ズブヌレになって、フルスピードで自転車を走らせる。 

 病室のウギのベットのそば。 意識の遠退いたウギの耳元でハ二が小声で伝える。「オクトンジャのおじさんが今日会いに来て
くれるって・・・」 
 ハニは病院ホールの奥で、玄関から出入りする人をジッと見つめて待っている。 待ちくたびれて病室に行く。 母がハンビョル
の看病をして居る。  母が「ハ二はお母さんとお家に帰ろうね。・・・昨日の雨で風邪気味だから、お兄ちゃんに移したら大変な
の」と言う。 ハニは「だめだよ」と言う。 「何でだめなの?」 「わかんないよ」 

 集中治療室のドアが開いて、そのまま閉まる。 看護師たちが勤務しているが誰も気付かない。 物音に振り返っても誰も見え
ない。 奥のベットで、意識をなくしたウギが、鼻にも口にもパイプをつけて眠っている。 グリーンの消毒服と帽子を冠り、大きな
マスクをしたハ二がベットの横から顔を出す。 ウギが眼を開く。 同じようにグリーンの消毒服と帽子、マスクで防備した男女が
いて、おじさんが「眼を覚ました!」と驚きの声を出す。 女性が「静かに!」と制する。 ハニがマスクを取ってにっこりとウギに笑
いかける。 ウギもかすかに微笑む。 おじさんがマスクを取って、顔を膨らませておどけてみせる。 ウギが「オクトンジャのおじ
さんだ」といって喜ぶ。  「静かにしろよ」とハ二が止めようとするが、「オクトンジャのおじさんだ」とウギは繰り返す。
 ウギの両親が駆けつけると部屋の中は笑い声で大騒ぎとなっている。 患者も家族もみんなが広間に集まって笑っている。 
鼻にパイプを付けたウギがオクトンジャに肩車をしてもらっている。 ウギが両親を見つけて、「お母さ〜ん!・・」と呼ぶ。 オクト
ンジャがにこやかに振り向く。 ウギは「ブサイクなくせに格好つけやがって・・少なくても僕ぐらいにならなきゃ・・・名前はオクトン
ジャと申します」と言って両手をアゴに当てておどけてみせる。 「僕の名前はゆき・・ゆきおちゃんと呼んでください。・・・あなたを
コメディアンに認定します」みんなから大きな拍手が送られる。 ウギは「ありがとう・・ウンチ大将」と大声で叫ぶ。 おじさんが
「みんなで大きな声で歌おう!」と言って  
  ♪僕〜の名前は オクトンジャ・・・♪♪ みんなが手拍子を取って唄い、いつまでも笑いが途絶えることはなかった。 ウギの
母親が涙ぐんでそっと目頭を押さえた。 そっと部屋を抜け出したハンビョルが廊下の隅でおう吐していた。 

 翌日学校で、ハ二は携帯電話のカメラで写したオクトンジャの写真を友達に見せる。 「カッコいいだろ」 「すげえ〜」 「イイだ
ろ」 「ほんものだよね」 「サイン貰った?」 「いいなあ」 「本当に見たの?」 「当たり前だろ!」 ハニはジュンテが居ないこと
に気がついた。 「ジュンテは?・・・」 「さあ」 「この子がウギ?」 「癌は治らないんだろ?」 「お前のお兄ちゃんみたいに丸坊
主だ」 別の子が「髪が全部抜けちゃう薬しかないんだって」と言うと、ハ二は「お兄ちゃんは癌じゃない!・・・脳腫瘍だ!」と叫ん
でその子を突き倒した。


 病院の資料室。 脳の断層写真を見せながら、医師がハ二の両親に説明をする。 「最初の手術後と今日の写真ですが、腫瘍
が大きくなっていますね。・・・通常はこんなに早くないのですが、どうやら性質の悪い腫瘍のようです。・・・最善の方法は視神経
を放棄して、腫瘍を深部から除去すれば、・・・再発を防げるでしょう」 医師は黙ってボールペンを取り出し、書類の上に置いて部
屋を出て行った。 二人は顔を見合わせるが言葉がない。 父親が書類を引き寄せてペンを取った。
  ”後遺症および危険性  死亡 昏睡 植物人間 失明”

 集中治療室で酸素吸入を受けながら、眠っている兄をガラス越しに覗き込むハ二に、両親が近づいて父が話す「ハニ・・・お兄
ちゃん、明日また手術するんだ。・・・手を握ってあげよう。・・頑張れって」 「手術したのに また?・・脳腫瘍って癌なの?・・・お
兄ちゃん死んじゃうの?」 母がそっと後ろを向く。 父が「死なないよ・・大丈夫だ」と言う。  看護師が「ハンビョルがハ二に逢い
たいそうです」と呼びに来る。 家族全員がグリーンの消毒服と無菌帽子を冠ってハンビョルのそばに行く。 ハンビョルがハ二に
「オッス」と言う。 ハニも「オッス」といって手を振る。 「ハ二だけに会いたいって言ったのに母さんが泣くの一番イヤだ」 「泣か
ないわよ。・・・明日手術したら治るんだもの。・・・本当に泣かないわよ」 「ハ二と内緒の話があるの・・・」 父と母は顔を見合わ
せてうなずき部屋を出て行った。 ハンビョルが言う「ハ二・・・母さんの後ろから、忍び足で近づいて、びっくりさせて笑わせてあげ
てね」 ハニが笑ってうなずく。 「お兄ちゃん すごく痛い?」 「判らない・・・それから、お前のいたずら記録帳、お前が持って
な・・・もう必要ないから」と言ってハ二に渡す。 「なぜなら、お前はもうイタズラしなくなったし、それから・・・」と言って眠ってしま
った。

 病室で。 ハンビョルが「嫌だよ!・・母さん嫌だよ・・もう治ったよ」と泣き声で言っている。 母が「大丈夫よ。・・・ハンビョル」と
言う。 「手術なんて嫌だよ」 「大丈夫だからね」 「母さんもう手術は受けたよ」 父親が「君は下がってて・・・」と母親を押し退け
て「ハンビョル」と声を掛ける。 「手術なんて受けたくない!。・・・母さん、僕本当に治ったよ。・・・手術受けなくてもいいんだよ」 
「父さんと行こうね。・・・父さんが付いているから」 「嫌だよ!」 「かあさん、手術受けたのに何でまた受けるの?」 
 ストレッチャーが動き出す。 「母さんここで待ってるからね」と言って母は泣いている。 「母さん泣くんじゃない」 ハニと母親は
病室の前で立ち止まる。 父が「ハンビョル・・大丈夫だ」と言う。 ハンビョルが「母さん・・・ハ二!・・」と呼ぶ。 ハニが「お兄ちゃ
ん・・」と答える。 手術室のドアが閉まる。 「手術なんて嫌だよ」

 患者がストレッチャーに乗せられて廊下を通る。  エレベーター室の前で母がハ二を抱きしめて泣いている。 父親が涙をこら
えて夢遊病者のようにそばを通る。

 ハニは父親の運転する車で学校の前まで送ってもらった。 「お父さん・・・手術何時に終わるの?」 「二時頃だよ。・・・遅れる
から早く行きなさい」 「判った・・父さんも気をつけてね」  父親の遠ざかるのを見届けて、ハ二は校門を出ようとした。 学校に
急いで走り込もうとしたジュンテとぶつかる。 ハニが「昨日なんで休んだの?」 「家の犬が病気で・・・」 「死んじゃったの?」 
「ううん・・肺炎だって。・・・死にそうだったけどもう大丈夫だよ」 「そうか・・じゃあな」といって立ち去ろうとしたら、「ハ二・・・お前
のお兄ちゃんは、どう?」と聞いてきた。 ハニはしばらく何も言えなかった。

 母は二階から空虚に外を眺め、父は病院の階段に座りうつむいたまま動かない。 ハニはジュンテをつれて銀行に行き、自動
出金機でお金を出してもらう。 二人はバスターミナルに走って行ってバスを探す。 「これだ・・」 二人はバスに乗り込む。  一
方、病院では手術の真っ最中である。
 ハニとジュンテはウギの田舎の山にやってきた。 ハニの記憶を頼りに、どんどん山の中に入っていく。 ハニが「早くこい
よ!・・二時までに戻らなきゃ」とジュンテに言う。 「判ってるよ」 二人は山の中を駆け抜けていった。 
 ハンビョルの手術も順調に進んでいる。 ハニとジュンテもどんどん走る。 大きい岩のところを通って、広場にたどり着いた。 
「ここなのに・・・絶対ここなのに・・・」 あの木の枝と葉っぱで作られた小屋がない。 「この木もそうだし、岩もそう・・・ジュンテ、
ここで間違いないんだよ。・・・ターザンのおじさんがここにいたのに」 ハニがさらに奥に走り出す。 「どこへ行くんだよ」 「ター
ザンおじさ〜ん」と呼んでハ二が走り出す。  「待てよ」 「ターザンおじさ〜ん」 「まってよハ二」
 手術室では脳の腫瘍を取り出して、ガーゼの上に置いている。
 ハニが「ターザンおじさん」と呼びながら走っている。 何度も泣きながら「ターザンおじさん」と呼ぶ。 
 手術が終わった。 ハニの両親が走って手術室に行く。 医者が手術室から出てきた。 「難しい場所にあったのと、出血がひ
どかったので、予定より2時間ほどオーバーしました。・・腫瘍の除去は成功しましたが、脳機能がどの程度まで回復するか、意
識が戻るまでは油断できません。」 医者の話を聞いている間に、両親に看護師がグリーンの消毒服を着せてくれた。 母はまた
手で顔を覆って泣き崩れた。 父が母の肩を引き寄せ抱いた。

 ハニは「ターザンおじさ〜ん」と呼びながら先に走っていく。 ジュンテは「ハ二〜」と呼びながら後を追っていたが疲れて座り込
んだ。 「ハ二ー!」 取り残されたジュンテが迷った道で、きれいな清水の湧き出す場所を見つけた。 近づいてみると水筒が落
ちていた。 水筒を拾い上げたジュンテは「ハ二!・・・見つけたよ!」と叫びながら、水筒を高く掲げて走った。  
 病院でハンビョルの寝台を囲んだ医師たちが、ライトで眼を照らしながら、心配そうに話している。 「瞳孔が反応しません」 両
親が見守る中で医師がハンビョルの胸に左手を当てて、その手を力の限り右手で叩き始めた。 叩くたびに反動でハンビョルの
身体が大きく揺れる。 母親が耐えられなくなって目をそらす。 父親は母親の身体を両手で抱きしめてその様子を見ている。
 山には焚き火の跡があり、ヒメジョオンの白い花が咲き乱れている。 
 病室では、まだハンビョルの胸を叩き続けている。 周りの誰もが胸に手をやって、祈るような気持ちで見ている。 「ポン・ポン・
ポン」という音が連続して聞こえる。

 ハニとジュンテが病院に走りこむ。 人とぶつかりながらエスカレーターも駆け上がる。 医者がハンビョルの胸を叩く音が一段
と激しくなった。 父も母も、もう見ておれない。 ハニが水筒を持って廊下を走る。 その後をジュンテが追う。 医者は「ハンビョ
ル!」と名を呼びながら、両手で胸を「グイ・グイ」と押し続けている。 ハニが集中治療室に飛び込むのを「あんたたち」と看護師
が抱きついて止める。 ハニが「僕のお兄ちゃんなんだ!」 「ここに入っちゃダメなのよ」 ハニは「お兄ちゃん!・・ウソじゃない
よ!・・・母ちゃん!・・お兄ちゃん!」と言って暴れる。 隙を見てハニは「お兄ちゃん!」と叫んで室中に駆け込む。 父親が「ハ
ニ〜・・」と言って抱き上げてくれる。 「お兄ちゃん!。・・・このお水を」 父が「ここはダメだ」と言ってハ二を抱いたまま、部屋の
外に出ようとする。 「お兄ちゃんに飲ませて・・!」 その時ハンビョルが眼を覚ます。 「早く!・・飲ませて!・・」 ハニはドアに
つかまって手を離さない。 「これを飲ませないと!・・・」  父親が強く引っ張ったときに水筒が床に落ちる。 ふたが取れて水が
床に広がる。 抱きかかえられたハニが「お水が!・・・」と叫ぶ。 「ハ二!」 「放せ〜!。・・・お兄ちゃん!」
 母がハンビョルの動きに気付いて「ハンビョル!」と呼びかける。 「ハンビョル・・・母さんの声が聞こえる?」 父が力を緩めて
ハ二を床に降ろす。 水筒の水がまだこぼれている。 母が「眼を開けて・・・」と祈るような声で呼びかける。 医者が「意識が戻
りました」と言う。 「ハンビョル・・・母さんよ聞こえる?。・・・先生の手をにぎって、しっかり・・・」 

 ジュンテとハ二が顔を見合わせて笑っている。 隣のベットのウギが「アンニョン お兄ちゃん・・・バイバイ」とハンビョルに呼びか
ける。 ハンビョルは動かない。 ウギはハ二の方を見る。 ハニがニコッと微笑み返す。 ウギの動きが気になって、ハニがそっ
とウギのそばに行く。 「ウギ・・起きろよ!」と呼びかけるが動かない。 心電図の数値が急速に落ちていく。 ハニがウギに抱き
つく。 「ハニを放して下さい」 「ウギ!・・」 ハニは後ろから抱えられてウギから引き離された。 心電図の線が一本になって、
医者がライトで瞳孔を見ながら母親にうなずいた。 動かない身体のハンビョルの眼から涙が流れている。 ウギの母親がマスク
を取って、ウギの頬に頬擦りをして泣いた。 「ウギ!」と呼びかけながら頭を撫でた。 ハニは父と母にはさまれて、望然と立ち
尽くしていた。そして母のおなかに顔を伏せて泣いた。 白い布が掛けられた上に、ハニは遊戯王のモンスターカードとヒメジョオ
ンの白い花を置いた。
 家族の押すストレッチャーに乗せられて、廊下を遠ざかるウギをハニは泣きながら一人で見送った。 「ウギ!」

 「バス」 「のっぽ」 ハンビョルが点字の紙を指でなぞりながら自分の部屋で読んでいる。 「お・と・う・さ・ん」 「お兄ちゃん」と
ハニが呼びながら部屋に入ってくる。 「お・か・あ・さ・ん」 ハンビョルの横に行って「お父さん、お母さん、お婆ちゃん、お爺ちゃ
ん、お兄ちゃん、おしまい!」と自分で読んで邪魔をした。 ハンビョルが練習しなくちゃと言うのを、ハニは「お兄ちゃん雪が降っ
ているんだよ」と言う。 「本当?」 「雪合戦しようよ。・・・気をつけてね」と言って、手を引く。 外に出る前に帽子、マフラー、ジャ
ンバーを着る。 ハニは「お兄ちゃんちょっと待っててね」と言って部屋を出る。 部屋にはクリスマスの飾りつけがしてあって、サ
ンタクロースの人形がジングルベルを奏でながら踊っている。 ハニは自分の部屋の机の中を探して、一枚の紙を取り出す。 紙
には ”ウギの家に電話してね・・・アンニョン お兄ちゃん” とウギの字で書かれている。
 
 ”ウギ・・元気か?・・お兄ちゃんには新しい友達が出来、僕は背が3センチ伸びた。・・内緒だけど僕、少しクールになった
よ。・・・お兄ちゃんが眼をつぶって、ウギって呼ぶとお前の声が聞こえるって。 今日空を見上げたら、お前の笑い声が聞こえた
よ・・・ウギ!・・メリークリスマス。”

 雪の中で盲導犬と戯れるハンビョルとハニがいる。 雪の上に大の字になって寝転ぶハニ。 ずっと上を向いて雪が頬に落ちて
くる感触を楽しむハンビョル。

         = 「終わり」  =      平成18年10月   記載


 この映画は、シナリオ作家、キム・ウンジョンの甥、ホン兄弟の実話をもとに作られました。 ソルフィ君は4度目の手術を終え、
現在はカナダに住んで、闘病生活を続けています。

LINK
 Mission : Inpossible : V

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