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身辺雑記(2019年11月)

2019年11月27日(水)
「ドクター・ホフマンのサナトリウム」観てきました
 先週の金曜日に休日出勤の代休で、神奈川芸術劇場にケラリーノ・サンドロヴィッチさん作・演出の「ドクター・ホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」を観に行ってきました。平日の昼間というのに2階席、3階席に空席が見られるほかはほぼ満席。前回観月ありささん主演の「天使と悪魔」を観に来た時と違って、今回は1階席のかなり後方の席だったので、俳優さんたちの顔ははっきり見えなかったのは残念。内容は、作家のフランツ・カフカの4つ目の長編が見つかったことを契機に、現在とその物語世界、更にはフランツ・カフカが生きる95年前の世界が複雑に絡み合って進んでいきます。
 現在の世界では、渡辺いっけいさん演じるブロッホが祖母が持っていたカフカの未発表原稿を見つけ、出版社に売り込もうとする。カフカのことを知らないブロッホは図書館から「カフカ入門」を借りてくるが、それはカバーだけで中身は「やさしい道の迷い方」で、ブロッホはその本を読んでしまう。物語世界では多部未華子さん演じるカーヤと瀬戸康史さん演じる婚約者ラパンが汽車で旅をしている場面から始まる。駅に着いた時に、ラパンは何か買ってくると言って汽車を降りたまま姿を消してしまう。カーヤが帰宅するとラパンが戦死したという連絡が入るが、信じられないカーヤは音尾琢真さん演じるバルナバス大尉に頼み込み、確認のため戦地へ赴く。一方、現在の世界ではブロッホは大倉孝二さん演じる友人とともに、道に迷い、1924年の世界に紛れ込んでしまう・・・。
 カフカといえば、目覚めたら巨大な虫になっていた男を描く「変身」しか読んだことはないのですが、一番有名なその作品さえ、意味はまったくわからず。長編なんて読む気にもならなりませんでした。カフカの長編が見つかったというのは、作・演出のケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作り事。とはいえ、カフカの長編ということですから、その物語世界はカフカの小説の世界であり、これを理解するのはさすがに難しかったです。その上、3つの世界が複雑に絡み合って、これがまたややこしい。また、ブロッホが「やさしい道の迷い方」を読んでしまったことが、カフカの生きる世界に迷い込む伏線となっているところが何ともおかしいですが、その世界で“ある事件”が起きたのに、ブロッホと友人が無事帰ってこられたところが理解できません。どうして?・・・
 主役であるカーラを演じる多部未華子さんの舞台は今年「出口なし」を観て、これが2本目。澄んだ声が良く通りますね。聞きやすいです。全体的に暗いトーンの舞台ですが、渡辺いっけいさんと大倉孝二さんのかけあいだけは笑いを誘います。ケラさんの「キネマと恋人」で強烈な印象を与えてくれた緒川たまきさんがやっぱりうまいですよねえ。彼女の声も舞台には合っていますよねえ。
 なぜか袋とじになっていたパンフレットを購入。家に帰ってから綺麗に袋とじを開けましたが、1800円出しても惜しくない内容でした。
 演劇を観る前には横浜美術館で開催中の「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」を観てきました。画商ポール・ギヨームが基礎を築いたオランジュリー美術館所蔵のルノワールの傑作「ピアノを弾く少女たち」をはじめ、マティス、ピカソ、モディリアーニら13人の画家による名作が展示されており、こちらも平日なのに館内は混雑していました。個人的にはルノワールの「ピアノを弾く少女たち」もですが、アンリ・ルソーの「婚礼」が印象的でした。
2019年11月18日(月)
タクフェス第7弾「流れ星」を観てきました
 土曜日にサンシャイン劇場で公演中のタクフェス第7弾「流れ星」を観てきました。作品のテーマは「夫婦」。長年連れ添った夫婦の心のすれ違いと40年の時を遡ることで知る本当の気持ちが描かれます。
 星野夏子は40年間夫婦生活を送ってきた夫・謙作との関係に物足りないものを感じていた。ある日、謙作は出かけた先で倒れ、そのまま亡くなってしまう。それから10日が経った日、夏子の前に魔法使いを名乗るマリーが現れ、願いを4つ聞くと言う。夏子は謙作と結婚する前に好きだった夏子が父と営んでいた下宿屋「徳洲館」の下宿人だった“先生”と人生をやり直すために40年前にタイムスリップすることを願う。マリーの魔法でタイムスリップしてやってきた先は昭和45年。下宿屋「徳洲館」で夏子とマリーは住み込みで働くこととなる。果たして夏子は人生をやり直すことができるのか・・・
 初めて行ったタクフェスですが、開演30分前から、宅間さん自身がグッズを買った人にサインをしたり一緒に写真を撮ったり(宅間さん自らAKB商法だと言っていました。)、前説のトークで観客を笑わせたり、ファンサービスがすごいです。「桜を見る会」の話題には観客も大盛り上がりです(当日の会場内に「桜を見る会」に行った人が二人いました。)。
 昭和45年といえば、学生運動が盛んだった頃。そんな時代にやってきた夏子は、若かりし頃の自分と先生を結びつけようとするのですが、現在の夏子を演じる田中美佐子さんが芸達者なものですから、大いに笑わせてもらいました。マリーが謙作の死後に突然現れて夏子に4つのお願いを聞くと言ったわけ、そして題名の「流れ星」の意味が明らかになるラストでは会場内のあちこちから鼻をすする音が聞こえてきました。
 会場内は上は80歳代の方から下はお母さんに連れてこられた小学校2年生まで幅広い年代が来場していました。これだけの幅広い年代が観に来る舞台は初めてです。僕自身は、昭和40年代にタイムスリップするというストーリーに惹かれて観に行ったのですが、“タクフェス”ファンになりそうです。
 観劇の前は、二つの展覧会を梯子。三菱一号館美術館で開催中の「印象派からその先へー世界に誇る吉野石膏コレクション展」と、上野の森美術館で開催中の「ゴッホ展」です。前者は、石膏建材メーカーの吉野石膏株式会社と吉野石膏美術振興財団が有する印象派の先駆とされるコローやミレー、クールベからはじまり、マネやモネ、ルノワール、ピサロら印象派、セザンヌ、ゴッホらポスト印象派を経て、フォーヴィスムやキュビスム、カンディンスキーの抽象絵画、さらにはエコール・ド・パリの作品72点が展示されています。開館直前に着いたのですが、会館を待っている人の列も10人ほどで、混雑はなく、ゆっくりと絵を鑑賞することができました。これに比べると「ゴッホ展」は、やはり“ゴッホ”という知名度の高さでしょうか、チケット売り場に列はなかったものの、会場内は混雑していました。性格的にゆっくりと列に並んで観ることが苦手なので、空いているところを見つけては鑑賞するというスタイルで会場内を巡りました。今年はあと横浜美術館で開催中の「オランジュリー美術館コレクション ルノワールとパリに恋した12人の画家たち」を観に行って打ち止めです。
2019年11月1日(金)
今日から11月です
 今日から11月。今夜は仕事帰りに今日から公開の映画「IT イット THE END“それ”が見えたら、終わり。」を観てきました。2017年9月に公開された「IT イット“それ”が見えたら、終わり。」の続編です。前作が主人公たち“ルーザーズ”の子どもたち7人とペニー・ワイズとの戦いを描きましたが、今回はそれから27年後、大人になった「ルーザーズ」の面々とペニー・ワイズの戦いが描かれます。以前、テレビ・ミニシリーズとして放映された「IT」を今は懐かしきレーザーディスクで持っていたのですが、それではラストシーンのペニー・ワイズの正体に拍子抜けしてしまったので、さてさて今回はどうなるのかと思ったら、あれよりは落胆せずにすみました。まあちょっと理解が難しい結末でしたが。館内は公開初日とあってか、田舎の映画館にしては珍しく8割以上の入りでした。外国人のグループもいて、時々字幕ではそれほどの笑いでない部分で彼らから笑いが起きていました。英語では笑えるところなんでしょうけど、英語ができなくて同じように笑うことができないのが悔しい気分です。
 今月の読書は、先月に比べて新刊の刊行が落ち着いてきた中では、シリーズが続いている大沢在昌さんの新宿鮫シリーズの11作目「暗約領域」(光文社)が一番の楽しみです。それと、今月も先月に引き続き小野不由美さんの十二国記シリーズの続編「白銀の墟 玄の月 第三巻・第四巻」(新潮文庫)が刊行されます。あとは恩田陸さんの「歩道橋のシネマ」(新潮社)でしょうか。
 今月の映画は今夜観た「IT イット THE END“それ”が見えたら、終わり。」のほかに、来週金曜日からは「ターミネーター2」の正当な続編として描かれる「ターミネーター ニュー・フェイト」が始まります。アーノルド・シュワルツェネッガーはもちろんですが、リンダ・ハミルトンが登場します。下旬には10年ぶりの続編となる「ゾンビランド ダブルタップ」が公開されます。当時それほど有名でなかったジェシー・アイゼンバーグやエマ・ストーンが有名になった今でもこうしたB級感たっぷりの作品に出てくれるのは嬉しいですねえ。幼かったアビゲイル・ブレスリンもすっかり大人になりました。邦画では「赤穂浪士」を題材にした時代劇コメディ「決算!忠臣蔵」がおもしろそうです。月末にはスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」の40年後を描く続編「ドクター・スリープ」も公開されます。前作でのジャック・ニコルソンの狂気は恐かったですが、今回の主人公は子どもだったダニーです。演じるのはユアン・マクレガーですが、チラシのデザインが破れたドアからユアン・マクレガーが顔を覗かせてるデザインという、ジャック・ニコルソン版の時と同じです。スタンリー・キューブリック監督の前作は原作者のスティーブン・キングは気に入らなかったようですが、さて、監督が異なる今回はキングはどう観たのでしょうか。
 今月の演劇は2本。サンシャイン劇場での「タクフェス・流れ星」と神奈川芸術劇場での「ドクターホフマンのサナトリウム~カフカ第4の長編~」です。前者は宅間孝行さんがプロデュースする作品です。主人公が1970年にタイムスリップするという僕好みの設定についチケットを購入してしまいました。後者はケラリーノ・サンドロヴィッチさんの作品。多部未華子さん、緒川たまきさん、大倉孝二さんらが出演します。カフカだから、眠くならないか心配です。