カラオケ行こ!(2024.1.12) |
監督 山下敦弘 |
出演 綾野剛 齋藤潤 芳根京子 北村一輝 坂井真紀 宮崎吐夢 加藤雅也 橋本じゅん やべきょうすけ 吉永秀平 チャンス大城 RED RICE ヒコロヒー 八木美樹 後聖人 井澤徹 |
中学校の合唱部の部長、岡聡実は合唱コンクールの会場で成田狂児という男に声をかけられ、カラオケに誘われる。狂児はやくざの祭林組若頭補佐で、組長の主催するカラオケ大会で最下位となると組長によって身体に入れ墨を彫られることになっており、絵心もなく、彫師としては素人同然の組長に入れ墨を彫られる恐怖から逃れるため、聡実に歌の指導をしてもらいたいという。合唱部でソプラノを担当していたが、成長期でソプラノとしての声が出なくなり、悩んでいた聡実は合唱部から足が遠のくようになり、熱心に誘う狂児に連れられカラオケに通って歌唱指導をするようになる・・・。 ヤクザと中学生のカラオケを通した交流が描かれていきます。原作は漫画だそうです。主演は綾野剛さん。最近では「ヤクザと家族」で硬派なヤクザを演じていた綾野剛さんですが、同じヤクザでも裏声でXジヤパンの「紅」を歌うなど笑わせてくれます。加えて中学生に真剣に歌唱指導を受けるヤクザたちが、橋本じゅんさんややべきょうすけさんなど強面のキャラなので、逆に大いに笑えます。聡実の下で副部長を務める中川がなかなか素敵なキャラで印象に残りました。 通常のやくざ映画だとラストは悲劇に終わるのですが、そう思わせながらのどんでん返し。予想外の佳作に満足です。 |
ある閉ざされた雪の山荘で(2024.1.13) |
監督 飯塚健 |
出演 重岡大毅 間宮祥太朗 中条あゆみ 岡山天音 西野七瀬 堀田真由 戸塚純貴 森川葵 |
舞台公演の主役を選ぶ最終審査ということで、著名な演出家・東郷によって、とある別荘に劇団「水滸」の劇団員、本多、中西、田所、元村、笠原、雨宮の6人と外部からオーデイションを受かった久我が集められる。東郷に指示されたシチュエーションは大雪によって外界と閉ざされた山荘で連続殺人事件が起きるというもの。彼らは山荘にいたるところに設置された監視カメラの下で4日間演技をすることとなる。翌朝皆が日覚めると、笠原が姿を消しており、彼女は電子ピアノに接続したヘッドフォンのコードで絞殺された」という東郷の声が聞こえてくる。更に翌朝、今度は元村が姿を消すが、 リビングのテーブルの上に血の付いた花瓶が置かれていたことから、皆はこれが劇ではなく実際の事件ではないかと疑心暗鬼になる・・・。 東野圭吾さん原作の同名ミステリの映画化です。原作は刊行当時読んでいるのですが、もう30年以上も前のことなので、内容はまったく覚えていず、まっさらな状態で観に行きました。でも、最初から「何だ!この映画は!」と思う点が目につきました。冒頭、舞台となる別荘にバスで向かうのですが、なぜか皆、バスの中で目隠しをしています。降りたバス停には名前が書いてあるのに、マスクをする意味ないでしょう。それに場所がどこかはストーリーにまったく関係ありません。更にこの最終審査は劇団員をここに集めるための方便ですから、劇団員以外の久我を呼ぶ必要性はまったくありません。そこまでの審査で実際に久我が残っていたとしても、この場に呼ばない理由はいくらでもでっちあげることはできるのですから。探偵役を務めるために登場させたようなものです。 また、ネタバレになるので詳細は語れませんが、犯人はこの事件を起こすことによって目的を達成できたとは思えないのですが。一時しのぎのような気がします。東野さんの原作はこんな色々綻びがあったのかなあと思ってしまいます。 |
ゴールデンカムイ(2024.1.19) |
監督 久保茂昭 |
出演 山﨑賢人 山田杏奈 眞栄田郷敦 工藤阿須加 柳俊太郎 泉澤祐希 矢本悠馬 大谷亮平 勝矢 高畑充希 木場勝己 大方斐紗子 秋辺デポ マキタスポーツ 井浦新 玉木宏 舘ひろし 永尾柚乃 |
日露戦争に帝国陸軍の兵士として従軍し、最も過酷と言われた203高地の戦いで、どんな傷を受けても鬼神のごとく戦い死ななかったことから、「不死身の杉元」と綽名された杉元佐一は、ある目的のために北海道で砂金採りに明け暮れていた。そんな杉元に男がある話をする。それはアイヌが隠し持っていた金塊をアイヌたちを殺害して強奪した男が網走刑務所にいるという。「のっぺらぼう」と呼ばれる男は、刑務所の24人の死刑囚に金塊の隠し場所を示す入れ墨を彫り、彼らを脱獄させたという。話を聞いた杉元は金塊探しを始めるが、その途上ヒグマに襲われたところをアイヌの少女・アシリパに助けられる。「のっぺらぼう」に父を殺害されたアシリパは、父の復讐のために杉元と行動を共にする・・・。 野田サトルさん原作の同名漫画の映画化です。たいした期待もせずに観に行ったのですが、これは予想外に面白いです。 アイヌの金塊を巡って、杉元と脱走した死刑囚たち、そして帝国陸軍第七師団が争いを繰り広げます。金塊を狙う死刑囚の中には、なんと新選組副長・土方歳三が実は函館の戦いで死んだのではなく網走刑務所に幽閉されて生きていたという設定で登場します。そしてもう一人、金塊を狙うのは帝国陸軍最強の第七師団の鶴見篤四郎中尉。彼は203高地で兵士を無残に殺した上官たちを憎み、死んだ兵士の家族の生活のために金塊の力で北海道を独立国化しようと考えます。土方歳三を演じるのは舘ひろしさん、鶴見中尉を演じるのは玉木宏さん。舘ひろしさんのかっこよさはいつもどおりですが、狂的な鶴見のイメージは今までの玉木さんが演じた役とはかなり異なります。鶴見が杉元に言う、「ろうそく、ぼりぼり」のシーンは不気味でしたねえ。 主役の杉元を演じたのは山﨑賢人さん。細身のイメージがあるのですが、この映画のために体重を10キロ増やしたそうです。途中で風呂上がりの上半身裸のシーンがありましたが、あれってCGかなと思うほどの逞しい身体をしていました。アイヌの少女・アシリパを演じたのが山田杏奈さん。意志の強そうな目に、ちょっと舌足らずな話し方がアイヌ少女の雰囲気にぴったりです。サブキャラで印象的だったのは、24人の死刑囚の一人であり、杉元とアシリパと行動を共にすることとなる「脱獄王」の異名を取る白石由竹です。演じるのは矢本悠馬さん。彼はこういう笑いもあるサブキャラをやらせるとうまいですよね。 ラストは、まだまだ話の序盤という感じで終わりました。原作では全31巻だそうなので、2時間では終わりまではとても描くことはできませんよね。山﨑さん、「キングダム」というシリーズものでも主人公なのに、こちらもシリーズ化になって大丈夫でしょうか。 |
哀れなるものたち(2024.1.26) |
監督 ヨルゴス・ランティエス |
出演 エマ・ストーン マーク・ラファロ ウィレム・デフォー ラミー・ユセフ ジェロッド・カーマイケル クリストファー・アボット スージー・ベンバ キャサリン・ハンター ビッキー・ペッパーダイン マーガレット・クアリー ハンナ・シグr |
一般映画でこれだけセックスシーンが多くては、観る人を選ぶ作品といっていいかもしれません。 ゴッドウィン・バクスターは外科医。ある日、橋から飛び降り自殺を図った妊婦を目撃したゴッドウィンは、彼女の死体を持ち帰り、お腹の中でまだ生きていた胎児の脳を女性に移植して生き返らせる。ベラと名付けられた身体は大人、知能は幼児の女性は、次第に学習し、外の世界を知りたいと、放蕩者の弁護士のダンカンと旅に出る・・・。 旅の中で色々なことを知っていくベラの成長物語です。ゴシック小説が原作だそうですが、胎児の脳を移植して蘇られせるなんて、フランケンシュタインヘのオマージュですかねえ。個人的にはストーリーとしては、あまり興味があるものではありませんでした。ただし、一般的な評価は高いです。3月に発表される第96回アカデミー賞の作品賞、主演女優賞、助演男優賞、監督賞など11部門でノミネートされています。主演のベラを演じるエマ・ストーンが性を知ってセックスにのめり込んだり、娼婦として様々な男とセックスをしたりするなど、よくここまで演じるなあと圧倒されます。彼女の主演女優賞が一番受賞に近いのではないでしょうか。 |
カラーパープル(2024.2.9) |
監督 ブリッツ・バザウーレ |
出演 ファンテイジア・バリーノ タラジ・P・ヘンソン ダニエル・ブルックス コールマン・ドミンゴ コーリー・ホーキンズ ガブリエラ・ウィルソン ハリー・ベイリー フィリシア・パール・エムパーシ ルイス・ゴセット・Jr アーンジャニュー・エリス=テイラー シアラ ジョン・バティステ |
ステイーブン・スピルバーグ監督により1986年に公開された同名作品のリメイク、 ミュージカル化です。 過酷な運命の中、生き抜いていく黒人姉妹の物語を姉の視点で描きます。黒人への迫害だけでなく、黒人の中でも男女の差別があり、女性たちは家事労働の担い手、そして子どもを産むためだけの立場に追いやられている様子が描かれます。 スピルバーグ監督作品も公開時に観に行ったのですが、すでに40年近くが過ぎており、ストーリーはすっかり忘れていました。黒人差別が激しい時代の中で、歌手として活躍していたシュグはもちろんですが、男尊女卑の中で男にも負けないソフィアの男にも抵抗するということは当時としては考えられないことだったのでしょうね。 主役のセリーを演じたファンテイジア・バリーノやソフィアを演じたダニエル・ブルックスは、舞台でも同じ役を演じていたそうですから、やはり聞いていてもその歌声には圧倒されますし、ダンスシーンも見応えあります。 それにしても40年前にこの作品を監督したスティーブン・スピルバーグという人は凄い人でしたねえ。 |
ボーはおそれている(2024.2.17) |
監督 アリ・アスター |
出演 ホアキン・フェニックス ネイサン・レイン エイミー・ライアン スティーブン・マッキンリー・ヘンダーソン ヘイリー・スクワイヤーズ ドゥニ・メノーシュ カイリー・ロジャース アルメン・ナハベシャン ゾーイ・リスター=ジョーンズ パーカー・ポージー パティ・ルポーン |
「ヘレディタリー/継承」「ミッドサマー」に続く、アリ・アスター監督の主演にホアキン・フェニックスを据えての第3弾です。とにかく、私にとっては理解不能な映画でした。 物語は話をしたばかりの母親が怪死したという連絡が入り、お葬式に向かおうとするホアキン・フェニックス演じるボーを描きます。ところが出かけるまでが大変。説明不能なドタバタ騒ぎが次々と起こり、挙旬の果て裸のまま逃げていたボウは車にはねられてしまいます。目が覚めると、そこはボーをはねた外科医の家。息子を戦争で亡くした外科医夫婦と娘に精神を病んだ息子の戦友・ジーヴスがいる家で、これまた意味不明のドタバタ騒ぎが起こり、殺されそうになった ボーは森の中に逃げます。そこで出会ったのは自然の中で演劇をする人々。劇では一人の男の人生が延々と語られていきます。その劇を見ていると、やがて、その場に現れたジーヴスは銃を撃ちまくり、手りゅう弾を投げるなど大暴れ。そこも逃げてようやくヒッチハイクで母の家に着くのだが・・・。 上映時間179分という長大な作品です。隣の座席に声を出して笑ったり、びっくりしたりする人がいなければきっと眠ってしっただろうなあというのが正直な感想です。裸で男性器をぶらぶらさせながら走り回ったり、ラスト近くでは男性器の形をした怪物が登場したり、理解不能です。更にはラスト、湖か海らしきところにボートで逃げ出したボーでしたが、なんと「トゥルーマンショー」みたいな状況になります。そして最後には・・・。カッコよくいえば、哲学的な作品ですが、私には意味不明、理解不能。行き過ぎた母親の愛情が生み出したのがボーとしか理解できません。いったいどういう話だったのでしょう。 |
落下の解剖学(2024.2.23) |
監督 ジュスティーヌ・トリエ |
出演 サンドラ・ヒュラー スワン・アルロー ミロ・マシャド・グラネール アントワーヌ・レナルツ サミュエル・セイス ジェニー・ベス サーディア・ベンタイブ カミーユ・ラザフォード アン・ロトジェ ソフィ・フィリエール |
第76回カンヌ国際映画祭のコンペティション部門で最高賞のパルムドールを受賞した作品です。今月発表になるアカデミー賞でも作品賞など5部門にノミネートされています。 フランス人の父・サミュエルとドイツ人の母・サンドラとフランスの山荘で暮らすダニエルは、犬と散歩に行って帰ってきたときに、庭先で父親が死んでいるのを発見する。果たして、自殺なのか、窓からの転落事故なのか、それとも殺人なのか。当日、妻で小説家のサンドラは作家を日指す学生からのインタビューに応対していたが、突然サミュエルが大音量で音楽をかけたために、インタビューを中止して寝ていたと警察に述べたが、前日、夫婦が争っていたという情報を得た警察はサンドラを逮捕し、起訴する・・・。 かなりの部分が法廷での検事、弁護士の丁々発止のやり取りや証人の証言を描く法廷劇となっています。ダニエルは幼い頃父親と出かけたときに交通事故に遭い、視覚に障害を負っており、父はそのことに対し、罪悪感を抱いています。法廷で浮かび上がってくるのは、夫婦の間の確執。検事が厳しく妻を追求します。売れっ子の小説家であるサンドラに対し、サミュエルも小説を書きたいがサンドラに代わって行う家事が忙しくて執筆の時間が取れない、自分が考えたアイデアをサンドラに取られたという不満を持っていたこと、喧嘩の際にサンドラが暴力をふるったことも明らかとなります。また、サンドラはバイセクシャルであり、ダニエルが怪我をした後、女性と関係を持ったことも裁判の中で赤裸々に語られます。 ダニエルの証言が判決に大きな影響を及ぼし、裁判の結果は出ますが、果たして真実はどうだったのかははっきりしません。ラスト、何らかのどんでん返しがあると思ったのですが、ありませんでしたね。私としては、サンドラがかっとなると暴力をふるうこと、嫌なことから逃れるために不倫に走ったこと、今も弁護士のヴァンサンとはただの依頼人と弁護士という関係とは思えない感情があること等の事実から、やはりサンドラの犯行が怪しいのではと思ってしまうのですが。状況証拠だけだから有罪にするのは難しいでしょうけど。 |
マダム・ウェブ(2024・2・23) |
監督 S・J・クラークソン |
出演 ダコタ・ジョンソン シドニー・スウィーニー セレステ・オコナー イザベラ・メルセド タハール・ラヒム マイク・エップス エマ・ロバーツ アダム・スコット |
私は知りませんでしたが、スパイダーマンのコミックの中でスパイダーマンを助ける“マダム・ウェブ"というキャラクターの若き頃を描いた作品です。 ニューヨーク市の消防局に救急救命士として勤めるキャシーことカサンドラ・ウェブは救急で向かった現場で事故に遭い、仮死状態から助かって以来、未来に起こることを見るようになる。ある日、電車の中で三人の女の子が男に殺害される場面を予知したキャシーは彼女らを連れて逃走する。その男、エゼキエルは、かつてキャシーの母とペルーに不思議な力を持つ蜘蛛を探しに行き、母を殺害して雲を奪った男だった。エゼキエルは毎晩三人の女性に殺害される夢を見ており、これが将来現実に起こると考えた彼は、現実になる前に彼女らを見つけて先に殺害しようとしていたのだった・・・。 マーベルコミックのスパイダーマンを読んでいないと、三人の女の子はいったい何者なのかわかりませんし、どうしてキャシーが“マダム・ウェブ"と名乗ることになるのかもわかりません。他のマーベルコミックのヒーローのようにスーパーパワーを持っているわけではなく、予知能力だけですから、敵との直接対決はなかなか厳しいものがあります。それにしても、三人の女の子たちはどうしてスパイダーマンみたいなかっこをして(スパイダー・ウーマンというらしいですが)悪と戦うことになるのかも、ここではよくわかりません。この辺りは続編でのお楽しみということでしょうけど、海外でも評価が低いようなので、果たして続編が製作されるでしょうか。 ところで、この映画ですが、マーベル・シネマティック・ユニバースではなく、スパイダーマンの映画化権を持つソニー・ピクチャーズが製作したものなので、ディズニーのマーベル・シネマティック・ユニバースとはちょっと雰囲気が違う感じがします。 また、キャシーの相棒の名前がベン・パーカーであるということは、彼の弟夫婦に生まれた赤ちゃんの名前はピーター・パーカーでしょうか。 |
ネクスト・ゴール・ウィンズ(2024.2.23) |
監督 タイカ・ワイティティ |
出演 マイケル・ファスベンダー オスカー・ナイトリー カイマナ デビッド・フェイン レイチェル・ハウス ビューラ・コアレ ウィル・アーネット エリザベス・モス ウリ・ラトゥケフ クリス・アロシオ セム・フィリポ イオネア・グッドフュー リーヒ・ファレパパランギ ヒオ・ペレサオ |
ワールドカップサッカー予選で31ー0という歴史的大敗をしたことのあるアメリカ領サモア。まずは1点を取ろうと新たな代表監督を探すことになり、ある出来事以来感情のコントロールができなくなり、すぐかっとなる性格からアメリカのテームを首になったトーマス・ロンゲンに白羽の矢が立つ。 実話をベースにした作品です。とてもワールドカップを戦えるように思えないチームが、1点を取るまで、そして勝利を掴むまでを描きます。なかなか思い通りに動かいない選手たちに監督は怒りを爆発させ、更にチームはうまく回らないというのはよくあるパターン。当時は珍しかったと思いますが、サモアで第3の性=ファファフィネと呼ばれるLGBTの選手もいて、相手チームからからかわれますが、今に思えば時代の最先端を行っていたんですね。そんなチームにやがて大敗を喫して以来チームを離れていたGKのニッキーも加わり、監督も最愛の娘を亡くした辛さを吐き出して、チームは一体となり、勝負よりも楽しもうとします。その結果がどうなるのかは誰もが思った通りに。タイカ・ワイティティ監督作品らしく、大いに笑わせてくれ、そして感動させてくれる作品です。それにしても、ラグビーの強豪のサモアとは違う“米領サモア"という別の国があるとは知りませんでした。 |
コヴェナント 約束の救出(2024.3.1) |
監督 ガイ・リッチー |
出演 ジェイク・ギレンホール ダール・サリム エミリー・ビーチャム ジョニー・リー・ミラー アレクサンダー・ルドウィグ アントニー・スター ボビー・スコフィールド ジェームズ・ネルソン・ジョイス ジェイソン・ウォン |
2001年、9.11同時多発テロへの報復措置として、アメリカは首謀者であるタリバン撲減のために、その本拠地となっているアフガニスタンに侵攻しました。当時、アメリカのビザ取得を条件にアフガニスタン人が軍の通訳として働いたそうですが、この作品はそんな通訳のアフガニスタン人とアメリカ軍人との友情、というより心の絆の物語です。 タリバンの爆薬倉庫の探索任務についていたジョン・キンリー曹長の部隊は、情報を得てある採掘工場に向かうが、タリバンの反撃を受け、キンリーと通訳のアーメッド以外は戦死し、二人はタリバンの探索を逃れながら100キロ先の基地を目指す。途中で負傷したキンリーを荷車に乗せ、アーメッドは幾多の危機を乗り越えながら基地へと戻ってくる。キンリーは除隊してアメリカに戻ったが、英雄となったアーメッドがタリバンから賞金を懸けられ、家族とともに姿を消したと知り、何とか彼を救おうと移民局や軍にかけあうが誰も手を貸そうとしなかった。そのため、キンリーは自ら彼を救出するため、アフガニスタンに戻る。・・。 映画の最後にテロップが出ますが、それによるとビザ獲得のためにアメリカに協力したアフガニスタン人の通訳は5万人とされています。しかし、アメリカが撤退後、政権を握ったタリバンにより、300人以上の通訳とその家族が殺害され、未だに数千人が隠れているそうおです。 この作品では二人の友情を描きますが、実際はアメリカは利用するだけ利用して見捨てたというのが実情だったのでしょうか。アメリカに都合の良すぎる映画かなと思ったのですが、最後のテロップには監督の気持ちが表れているのでしょう。 |
マッチング(2024.3.2) |
監督 内田英治 |
出演 土屋太鳳 佐久間大介 金子ノブアキ 真飛聖 杉本哲太 斉藤由貴 片岡礼子 後藤剛範 片山萌美 |
結婚式場でウェディングプランナーを務める唯島輪花。自身は男女の交際には消極的だったが、同僚にスマホに無理やり入れられたマッチングアプリで相性のいいと診断された永山吐夢と会ってみることにする。待ち合わせの水族館に現れたのは、アプリの中とは違って暗い雰囲気のコートに長靴をはいた男。輪花は会うことを止めるが、吐夢はその後もしつこく会うのを迫ってくる。輪花は仕事の関係で知り合ったマッチングアプリ運営会社のプログラマーである影山に相談する。世間ではマッチングアプリで出会って結婚した夫婦が惨殺されるという事件が続いており、やがて、結婚式を担当したのが輪花だということが判明する・・・。 男女の出会いといえば、私の若い頃は、合コンとか世話好きおばさんの紹介によるお見合いとかが主流でしたが、今では携帯のマッチングアプリでの出会いが一番のようです。私のような年配者からすれば、全く知らない人とスマホの中で出会うなんて、果たして、そこに書かれていることが本当なのか不安ですし、いざ実際に会うのは勇気がいります。会ったら会ったで、気が合えばともかく、この映画のようにしつこく付きまとわれるのも困りますしねえ。 こういった映画は、だいたい怪しい人が実はいい人で、いい人が実は犯人だったりするというパターンが多いのですが、この映画は捻りがありました。そこはちょっとうまく騙されました。ただ、この俳優さんがこんな役で終わるわけないなあと思ったとおりだったので、そこはいまひとつ。 吐夢を人気の”Snow man”の佐久間大介さんが演じていたせいか、若い女性客が多かったです。それもあってか、パンフレットは公開初日で売り切れになり、ようやく最近再販されてどうにか購入することができました。 |
ゴールド・ボーイ(2024.3.8) |
監督 金子修介 |
出演 岡田将生 黒木華 羽村仁成 星乃あんな 前出燿志 松井玲奈 北村一輝 江口洋介 |
中国人作家、紫金陳さんの「悪童たち」の映画化だそうです。 安室朝陽は母と二人暮らしの中学生。彼は自殺した同級生の女の子の母親から自殺ではなく、朝陽が殺したと嫌がらせを受けていた。そんな彼のもとに以前近所に住んでいた上間浩が、父親の結婚相手の連れ子である義妹の夏月が父親を刺したといって彼女とともに逃げてくる。そんな二人が撮った動画に、実業家の婿養子である東昇が、義理の父母を崖から突き落として殺害するシーンが映っているのを見て、三人は、昇から金を脅し取ろうと考える。 一方、昇の妻である静は、父母は昇によって殺害されたと従兄である刑事の東巌に相談するが取り合ってもらえない。やがて、今度は静が車を運転中に事故死する。昇と会った朝陽は、母と自分を捨てて別な女と結婚した父とその相手の女を殺害してくれたら黙っていると昇に持ち掛けるが・・・。 岡田将生さんが目的のためなら殺人も厭わない東昇を演じます。公開前に岡田将生さんが様々な番組に登場して番宣をしていましたが、主人公は岡田さんが演じる昇だけではなく、3人の少年・少女も主人公です。ネタバレになるので詳細は語れませんが、これ は恐ろしい映画です。ラスト、このまま話は終わってしまうのか、こんなことは許されないだろうと思ったら、どんでん返しがありましたねえ。道路を挟んで対峙する二人の人物の姿で終わるシーンは余韻が残ります。 ちなみに昇が決着をつけてかける音楽はマーラーの「交響曲第5番」でしたね。なぜにマーラーなのか。 |
マイホームヒーロー(2024.3.9) |
監督 青山貴洋 |
出演 佐々木蔵之介 齋藤飛鳥 高橋恭平 宮世琉弥 板倉俊之 大東駿介 淵上泰史 西垣匠 金子隼也 立川談春 神野三鈴 音尾琢真 津田健次郎 木村多江 |
テレビで深夜放映していた作品の7年後を描く続編です。 鳥栖哲雄が娘の零花に暴力をふるっていた彼氏の麻取延人を殺害し、そして、自分の息子を殺した哲雄を殺人犯に仕立てるために自殺した延人の父親・麻取義辰の遺体を山に埋めてから7年。零花は刑事となって家を出、妻の歌仙との間には長男の明が誕生し、哲雄は幸せな生活を送っていた。ところが、義辰の遺体を埋めた山で上砂崩れが起こり、遺骨が発見されたことから、事態は動き始める。義辰が属していた暴力団・間野会の会長・志野寛治は、哲雄が義辰を殺害し、義辰が管理していた金を奪ったのではないかと疑い、殺し屋の窪を使って哲雄を付け狙う。家族を守るため、哲雄はある理由から間野会をつぶそうとする大沢の協力を得て反撃を開始する・・・。 テレビドラマを観ていれば楽しめますし、私のようにテレビドラマは観ていなくても、一応最初におさらいのようなことを描いてくれるので、ストーリーについていけないことはありません。ただ、正義感が強く刑事になるような零花がなぜ半グレの延人と付き合ってしまうのかがよくわかりません。 哲雄を演じたのは佐々木蔵之介さん。普通のお父さんには、暴力団や半グレ相手に戦うなんてできないでしょうと思ったのですが、推理小説マニアという伏線が張ってありましたね。妻の歌仙を演じたのは木村多江さん。見た日は気弱そうですが、しっかり夫を支える気丈な妻役にビッタリです。間野会会長の志野を演じるのが津田健次郎さん。このところ、声優だけでなく、役者としても大活躍です。 父親が犯罪者であると明らかになった時点で、現実には零花は警察にはいられないでしょうから、本当はハッピーエンドではないですね。 |
変な家(2024.3.15) |
監督 石川淳一 |
出演 間宮祥太朗 佐藤二朗 川栄李奈 長田成哉 DJ松永 瀧本美織 根岸希衣 高嶋政伸 斉藤由貴 石坂浩二 |
”雨男”の名前で活動するユーチューバーの雨宮はマネージャーから引っ越し候補の家について友人の建築士・栗原に聞いてくれるよう頼まれる。栗原は、その家の間取りを見て、自分だったらこの家は買わない、この家には不思議な間取りがあるという。そんな矢先、この家の近くで左手のない死体遺棄事件が明らかとなる。事件とこの家の関連を疑った雨宮は、不思議な間取りの家のことを動画で流す。すると、動画を見たという女性・宮江柚希がこの家のことで心当たりがあると雨宮を訪ねてくる・・・。 これはトンデモ映画でしたねえ。ホラーだとは思いましたが、まさか「八墓村」や「悪魔の手毬唄」のような横溝正史テイストの話になるとは。その上、終盤では「悪魔のいけにえ」の殺人鬼レザーフェイスのようにチェーンソーを振り回す人物も登場するのですからねえ。びっくりです。 脇役が凄かったです。石坂浩二さんに斉藤由貴さん、それに高嶋政伸さんが異様な世界の住人として登場します。特に、石坂浩二さんはいつもの彼らしくない役でしたね。高嶋さんは、こういう狂気を帯びた役をさせると相変わらずうまいです。宮江柚希役を演じた川栄李奈さんですが、最初は川栄さんだとはわかりませんでした。 |
デューン 砂の惑星 PART2(2024.3.16) |
監督 ドゥニ・ビルヌーブ |
出演 ティモシー・シャラメ ゼンデイヤ レベッカ・ファーガソン ジョシュ・ブローリン オースティン・バトラー フローレンス・ビュー デイブ・バウティスタ クリストファー・ウォーケン レア・セドォ スエイラ・ヤクーブ ステラン・スカルスガルド シャーロット・ランプリング ハビエル・バルデム アニヤ・タイラー=ジョイ |
(ネタバレあり) シリーズ第2弾です。ハルコンネン家の陰謀により、国王の父を始め一族を滅ぼされ、母とともに砂漠に逃れたポールは砂漠の民、フレメンの力を借りてハルコンネン家に反撃を開始する。母は老教母に代わってフレメンの教母に指名され、ポールをフレメンの伝説の預言者とするため、預言者到来を信じる原理主義者が多く住む南の地に向かう。一方、ポールたちの攻撃で香料の貯蔵庫を破壊されたハルコンネン男爵は、司令官で甥のラッバーンに代わって、その弟で残虐なフェイドをデューンの司令官に据える。やがてフェイド率いるハルコンネンと救世主となったポールらの戦いの火ぶたが切って落とされる・・・。 前作はアカデミー賞の視覚効果賞を受賞しましたが、やはり映像は凄いです。砂嵐の中砂虫に乗って疾走するシーンを始め、特撮はやっぱりお金がかかっているのでしょうね。今回のアカデミー賞には期間が間に合わなかったそうですから「ゴジラ-1.0」にとっては幸運だったかも。 出演者がすごいです。この作品から新たに「エルヴィス」でアカデミー主演男優賞にノミネートされたオースティン・バトラーがハルコンネン男爵の狂気な甥フェイド役で、「ミッドサマー」で注目を浴びたフローレンス・ビューが皇女イルーラン役で、クリストファー・ウォーケンが皇帝役で、レア・セドォが謎の女性集団ベネ・ゲセリットのひとり、レディ・マーゴット・フェンリング役として出演しています。それぞれ皆主演級の俳優さんですよね。アニヤ・タイラー=ジョイが出演するとあったのになかなか顔を見せませんでしたが、ほんの一瞬登場しましたね。PART3では彼女が重要な役どころとして中心に登場してくるのでしょう。個人的に大好きなポールの母・レディ・ジェシカを演じるレベッカ・ファーガソンですが、今作では顔中に文字が書かれた怪しげな雰囲気の教母になってしまいました。彼女のアクションを期待していたのですが残念です。 ラストは宇宙船に乗って大領家との戦いに出て行くところが描かれますので、次作は宇宙空間での戦いとなるのでしょうか。 それにしても、ポールはフレメンのゼンデイヤ演じるチャニと恋人同士だったのに、皇帝の娘イルーランを娶ると宣言するとは、チャニはどうするの。 |
四月になれば彼女は(2024.3.22) |
監督 山田智和 |
出演 佐藤健 長澤まさみ 森七菜 仲野太賀 中島歩 河合優実 ともさかりえ 竹野内豊 高田聖子 島かおり 橋本じゅん 瀬奈じゅん 水澤紳吾 |
(ネタバレあり) 病院の精神科医の藤代俊は最初は患者として会った動物園で働く獣医の坂本弥生とその後交際するようになり、今では同棲し結婚を考えるまでになっていた。そんな藤代の元に、大学時代に同じ写真部で恋人だった伊予田春から手紙が届く。かつて二人で行こうと計画したが結局行くことのなかったウユニ塩湖等の場所を写真に撮りながら回っているとのことだった。そんなある日、弥生が動物園に長期体暇を取って忽然と姿を消してしまう・・・。 とにかく、この映画、よく理解できないことが多すぎました。弥生が精神科に通院していた理由がまずよくわかりません。何が彼女を精神的に苦しませるのでしょうか。それにしても、医師が自分の患者と交際してもいいのでしょうかねえ。それも藤代は心の病を診る精神科の医師ですからねえ。恋愛は自由だから、そんな堅いこと言わなくてもいいのかもしれませんが。 春を演じたのが森七菜さん。映画の設定上は藤代の大学の後輩で、弥生を演じる長澤まさみさんとは同じくらいの年齢の設定になると思うのですが、実際年齢に大きな差がありますし、森さん幼過ぎましたね。 また、春が手紙を送ってきたのは、別れたことに悔いがあったのであり、あの事情では理解できるにしても、それを藤代が弥生に読ませるのはどうなのかなあという気がします。隠しごとはしないということもあったのでしょうけど、わざわざ読ませる必要性はなかったのではと個人的には思います。 更に、弥生は春に会いに行きますが、どうして弥生が春の居場所を知っていたのでしょうか。藤代も大学時代の友人のペンタックスから連絡がなければ、春がその施設にいることは知らなかったようですし。 個人的にはかなりのところまで、弥生が不治の病で藤代の前から姿を消したものと思っていました。 藤代を佐藤健さん、弥生が長澤まさみさんが演じます。弥生の妹役を演じているのは、現在テレビで放映している「不適切にもほどがある」の出演で評判の河合優実さんですね。藤代が飲みに行くスナックのゲイのマスターを演じるのは仲野太賀さんですが、こういう脇役やらせるといい味出しますよねえ。再来年の大河ドラマの主人公・豊臣秀長役に決まりましたが、脇役から主人公になってどんな演技を見せてくれるのか楽しみです。 |
オッペンハイマー(2024.3.30) |
監督 クリストファー・ノーラン |
出演 キリアン・マーフィー エミリー・ブラント マット・デイモン ロバート・ダウニー・Jr. フローレンス・ピュー ジョシュ・ハートネット ケイシー・アフレック ラミ・マレック ケネス・ブラナー ディラン・アーノルド マシュー・モディーン デビッド・クラムホルツ ジェファーソン・ホール ベニー・サフディ デビッド・ダストマルチャン トム・コンティ グスタフ・スカルスガルド マイケル・アンガラノ デイン・デハーン オールデン・エアエンライク ジェイソン・クラーク ゲイリー・オールドマン |
今年の第96回アカデミー賞作品賞を始め13部門にノミネートされ、7部門で受賞した作品です。原爆製造の父といわれオッペンハイマーを描きます。第二次世界大戦末期、ドイツを始め各国は戦争を有利に進めるために新型爆弾の開発競争をしていた。原爆の製造ではドイツの後塵を拝しているアメリカだったが、オッペンハイマーを中心にアナハイムに科学者を集め、開発に取り掛かる。やがて、爆破実験に成功し、降伏したドイツに変わり、日本の広島、長崎に原子爆弾が落とされ、戦争は終結する。英雄視されたオッペンハイマーだったが、やがて彼は核製造競争となる水爆の製造に反対するようになり、当時の赤狩りの時代の中、共産主義者のレッテルを張られ、表舞台から降ろされてしまう・・・。 日本は唯一原子爆弾が落とされた被爆国であることから、当初、日本で公開されるのか明らかでありませんでした。確かに実験が成功し、広島に落とされた後のアメリカ人の歓喜のシーンを見ると、実際に家族や身近な人を原爆で失った人からすればたまらないでしょう。戦後、オッペンハイマーは核開発競争を憂え、水爆の製造にも反対していきますが、彼の心変わりの変化の理由がよくわかりませんでした。映画では広島や長崎に落とされたあとの悲惨なシーンは描かれませんでした。映画では唯一彼をたたえる聴衆の一人の顔面が焼けただれたように見えるシーンがあっただけです。原爆の悲惨さよりも、オッペンハイマー個人に焦点を当てた作品ということなのでしょう。 |
パスト ライブス 再会(2024.4.5) |
監督 セリーヌ・ソン |
出演 グレタ・リー ユ・テオ ジョン・マガロ |
今年の第96回アカデミー賞作品賞を始め13部門にノミネートされ、7部門で受賞した作品です。原爆製造の父といわれオッペンハイマーを描きます。第二次世界大戦末期、ドイツを始め各国は戦争を有利に進めるために新型爆弾の開発競争をしていた。原爆の製造ではドイツの後塵を拝しているアメリカだったが、オッペンハイマーを中心にアナハイムに科学者を集め、開発に取り掛かる。やがて、爆破実験に成功し、降伏したドイツに変わり、日本の広島、長崎に原子爆弾が落とされ、戦争は終結する。英雄視されたオッペンハイマーだったが、やがて彼は核製造競争となる水爆の製造に反対するようになり、当時の赤狩りの時代の中、共産主義者のレッテルを張られ、表舞台から降ろされてしまう・・・。 日本は唯一原子爆弾が落とされた被爆国であることから、当初、日本で公開されるのか明らかでありませんでした。確かに実験が成功し、広島に落とされた後のアメリカ人の歓喜のシーンを見ると、実際に家族や身近な人を原爆で失った人からすればたまらないでしょう。戦後、オッペンハイマーは核開発競争を憂え、水爆の製造にも反対していきますが、彼の心変わりの変化の理由がよくわかりませんでした。映画では広島や長崎に落とされたあとの悲惨なシーンは描かれませんでした。映画では唯一彼をたたえる聴衆の一人の顔面が焼けただれたように見えるシーンがあっただけです。原爆の悲惨さよりも、オッペンハイマー個人に焦点を当てた作品ということなのでしょう。 |
ゴジラ×コング 新たなる帝国(2024.4.27) |
監督 アダム・ウィンガード |
出演 レベッカ・ホール ブライアン・タイリー・ヘンリー ダン・スティーブンス ケイリー・ホトル アレックス・ファーンズ レイチェル・ハウス ファラ・チェン |
モンスターバースシリーズ第5弾です。 ゴジラが地上世界、キングコングが地下世界に君臨する中で、両者の前に新たな敵が登場します。その新たな敵にゴジラとキングコングが力を合わせて戦う映画です。幼い頃に観た、ゴジラやモスラなど地球の怪獣たちが協力してキングギドラと戦う映画を思い出しました。 そうそう、この映画にもモスラが登場します。でも、東宝のモスラと違って、もこもことした愛らしい感じはなくて、リアルに蛾に似ている造形でかわいらしさはありません。ただ、東宝映画と同様にモスラはこの映画でも人間の味方です。戦うゴジラとコングを説得して共通の敵に立ち向かわせます。 予告編を観たときにびっくりしたのは、ゴジラが腕を振って走ること。その上、ジャンプまでします。それまでノロノロと歩いていたゾンビが走った時以上の衝撃です。やはり、ゴジラは悠然とドシンドシンと歩かないとねえ。日本人のゴジラに持つイメージが狂ってしまいます。 新たな敵も見た目はそんなに強そうには見えませんでした。ネットでも話題になっていましたが、まるで先頃公開された「猿の惑星 キングダム」のようだったというのは見事に的を得ているという感じです。 |
猿の惑星 キングダム(2024.5.12) |
監督 ウェス・ボール |
出演 オーウェン・ティーグ フレイヤ・アーラン ケビン・デュランド ピーター・メイコン ウィリアム・H・メイシー |
(ネタバレあり) 1968年公開の「猿の惑星」をリブートした「猿の惑星:創世記」「猿の惑星:新世紀」「猿の惑星:聖戦記」に続くシリーズ第4弾です。 猿を率いて人間と戦ったシーザーが亡くなって300年が過ぎた時代の話です。人間は猿たちからエコーと呼ばれ、言葉も話せない状態に退化していた。ある日、イーグル族のチンパンジーのノアは人間の女性ノヴァと出会う。ノヴアはゴリラのプロキシマス・シーザーから追われており、ノアが匿ったと思ったプロキシマスはイーグル族を襲ってノアの父を殺害し、母や仲間たちを連れ去ってしまう。母たちを助けに出たノアは、途中で人間狩りをしているプロキスマスに遭遇し、追われていたノヴァを助けるが、再び襲われて捕らえられ、彼らの住処に連れていかれる。そこには、岸壁にかつて人間が作った基地が残されており、プロキシマスはどうにかして入り口を開けようとしていた・・・。 今回の作品には1968年公開の第1作に登場した人間の女性と同じノヴァという名前の女性が登場しますが、そのキャラクターはまったく異なりました。第1作のノヴァは退化した人間で話すこともできない女性でしたが、今回のノヴァは、実は話すことができないと偽っていた女性で、退化せずにいたメイという名前の人間でした。まあ、そのいでたちを見れば、上着もズボンも履いているのですから、これは退化した人間とは違うなあと分かりますよね。「彼女の目的は何か?」がこの作品のキモとなるのですが、やっぱり彼女は人間ですから猿に寄り添うことはできません。ノアからすれば、結局敵なんですよね。観ていると、メイは人の良い(猿の良い?)ノアを利用するだけ利用しただけという印象を持ってしまいます。彼女を助けるために命を落としたオランウータンのラカがあまりに可愛そう。ラスト、メイの目的は達成されるのですが、この流れでは、続編では人間と猿との再びの戦いが起こるのではと予想されます。 |
ミッシング(2024.5.17) |
監督 吉田恵輔 |
出演 石原さとみ 青木崇高 中村倫也 森優作 有田麗未 小野花梨 小松和重 細川岳 カトウシンスケ 山本直寛 柳憂怜 美保純 |
弟の圭吾に娘の美羽を預けて、アイドルのライブに出かけた森下沙織里。美羽は圭吾と遊んでいた公園から一人で帰ると言って家に向かったまま行方不明となってしまう。駅前でビラを配り、テレビにも出て美羽の行方を捜す沙織里夫婦だったが、SNSは子どもを置いてライブに出かけていた沙織里を非難する書き込みや一緒に遊んでいた圭吾を犯人呼ばわりする書き込みで炎上する・・・。 石原さとみさんが母親の沙織里を演じます。娘を探すためにある意味狂的なまでの感じの言動や行動を取るのですが、石原さんの演技がそれに見事にはまっています。彼女の甲高い声はあまり好きではないのですが、それも今回はピッタリです。彼女の代表作になるのではないでしょうか。 もう一人、沙織里とともにこの作品の主人公と言える立場にあるのは、地元テレビ局の記者・砂田裕樹です。砂田はスクープ狙いの後輩記者に対し、そうではないだろうという気持ちを持ちますが、スクープを取ってキー局にスカウトされる後輩に対し、実は心の中では嫉妬を感じていたのではないでしょうか。真実を伝えるのが記者の使命だと思いながらも、視聴率を取ることを目的とする上司に対し、最終的には自分の意思を通せないもどかしさを感じています。 後半、非常に重苦しい雰囲気にひとつの希望が見えるかもと思いましたが、肩透かしでした。SNS全盛の世の中で、誰でも匿名で発信ができることは、無責任を助長することになっているようです。警察を編って、美羽が保護されたという電話をしてくる人物など最低ですが、実際にもこうした輩はいるのでしょう。何だか、観ていて本当に辛い作品でした。 |
関心領域(2024.5.24) |
監督 ジョナサン・グレイザー |
出演 クリスティアン・フリーデル ザンドラ・ヒュラー |
第76回カンヌ国際映画祭でグランプリ、今年3月の第96回アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した作品です。物語は、第二次世界大戦中にユダヤ人の大量虐殺が行われる舞台となったアウシュビッツ強制収容所の壁を隔てた隣に住む所長一家の生活を描いていきます。 作品の中ではユダヤ人の虐殺の場面は描かれません。所長家族の生活の中に外部の音として怒鳴り声や泣き叫ぶ声、悲鳴が小さく聞こえてくるだけ。正面からユダヤ人虐殺を描く作品ではありませんが、逆に普通の生活が描かれている中で、悲鳴等が聞こえても何ら反応を示さない所長の家族の姿に恐ろしさを感じてしまいます。 上映時間105分、淡々と所長家族に起きること、転属命令がなされる中で、この座に留まろうと画策する所長、贅沢な暮らしを捨てたくないと夫が転属になっても自分はこの地に留まると宣言する妻の姿が描かれていくだけです。 アウシュビッツに収容されたユダヤ人から奪った高級な服や貴金属類を自分のものにすることが当たり前だと考える妻のヘートヴィヒが怖いです。また、ユダヤ人の歯で遊ぶ子どもも異様ですよねえ。このヘートヴィヒを演じたのが「落下の解剖学」での演技が評判を呼んだザンドラ・ヒュラーです。 ある意味、非常に退屈な映画ですが、この映画で描かれていない裏側を考えると、非常に恐ろしい映画です。 それにしても、唐突に登場するリンゴを置く少女の正体はいったい何なのでしょう。ラストまでわかりませんし、いまだにわかりません。 |
マッドマックス フュリオサ(2024.5.31) |
監督 ジョージ・ミラー |
出演 アニヤ・テイラー=ジョイ クリス・ヘムズワース トム・バーク アリーラ・ブラウン チャーリー・フレイザー ラッキー・ヒューム ジョン・ハワード リー・ペリー ネイサン・ジョーンズ ジョシュ・ヘルマン アンガス・サンプソン エルザ・パタキー |
2015年に公開された「マッドマックス 怒りのデス・ロード」の登場人物であるフィリオサを主人公に描く前日譚です。 前作でフィリオサを演じたシャーリーズ・セロンに代って、今回、フィリオサを演じるのはアニャ・テイラー=ジョイ。最近「デューン 砂の惑星PART2」や「ザ・メニュー」で活躍を見せる若手女優ですが、シャーリーズ・セロンの骨太な体格、そして「モンスター」でアカデミー賞も受賞している演技力に対し、きゃしゃで経験の少ない若手のアニャ・テイラー=ジョイに代って大丈夫かなあというのが観る前の個人的な思いでしたが、いざ観てみると強烈な目力に加え、アクションシーンも頑張っており、なかなかの存在感でした。公開前に観た方々の前評判が良かったのもうなずけます。 この作品では、フィリオサの生い立ちやなぜ左腕がないのかなど前作では描かれなかった彼女のすべてが描かれます。マッドマックスも愛車「インターセプター」とともに、ほんの一瞬登場しますので、見逃さないように。ラストは「マッドマックス 怒りのデスロード」に続くシーンが描かれているので、前作を観ている人は「そうか、ここから始まっているんだな」と前作のことを思い出すことができます。観ていない人は、この後、前作を見ると楽しめますよ。 |
ザ・ウォッチャーズ(2024.6.21) |
監督 イシャナ・ナイト・シャマラン |
出演 ダコタ・ファニング ジョージナ・キャンベル オリウェン・フエレ オリバー・フィネガン |
オウムを届けに行く途中でうっそうとした森の中に迷い込んでしまったミナ。車が突然止まってしまい、車を出て助けを求めに行くが、戻ると車が消えてしまっていた。人影を見つけ、そのあとを追うと、そこには一軒の家があり、一部屋の前面が硝子(鏡?)張りの部屋にいたのはマデリン、シアラ、ダニエルの3人の男女。ここでは毎晩訪れる“何か"に監視されており、3つの守らなければならないルールがあると、一番年配の女性マデリンから聞かされる。3つのルールとは「監視者に背を向けてはいけない」「決してドアを開けてはいけない」「常に光の中にいろ」。いったい、彼らを部屋の外から見ているのは何者なのか。・・。 M・ナイト・シャマラン監督の娘、イシャナ・ナイト・シャマランが監督を務めた作品です。作品の雰囲気的にはお父さんの作品に似ていますねえ。ネタバレになるので詳細は語れませんが、個人的にはお父さんの作品同様、真実が明らかになっていくにつれ、なんだかなあと期待外れに終わってしまいました。 この部屋を作ったのは後半で誰かはわかるのですが、一面を全面ガラス張りにしたのは、わかっていてそうしたのでしょうか。だいたい3つのルールは誰が決めたのでしょう。とにかく、「なぜ?」「どうして?」ということが多い映画で、いまだにモヤモヤしたままです。 |
朽ちないサクラ(2024.6.23) |
監督 原廣利 |
出演 杉咲花 萩原利久 豊原功補 安田顕 森田想 坂東巳之助 駿河太郎 遠藤雄弥 和田聰宏 藤田朋子 |
柚月裕子さんの同名小説の映画化です。ストーカー被害を受けていた女1生が加害者によって殺害される。被害者は警察に被害を訴えていたが、警察は受理を先延ばしにしており、更に、先延ばしにしていた間に慰安旅行に出かけていたことが地元新聞社にスクープされ、警察への批判が巻き起こる。広聴広報課の職員の森口泉は、親友である地元新聞社の記者である津村千佳に慰安旅行の件を漏らしてしまっており、千佳に記事にしないようお願いしていたが、千佳がその頼みを破ったのではないかと糾弾する。千佳は自分が漏らしたのではないと、身の潔白を証明するために事件を調べるが、 1週間後、殺害死体となって川で発見される。泉は自分のせいだとして後悔し、犯人を捜そうとするが・・・。 この映画の見どころは、やっばり泉を演じる杉咲花さんの演技でしょうねえ。若手女優の中では飛びぬけた演技力という感があります。若手ながら存在感ありますよねえ。 題名の「朽ちないサクラ」の「サクラ」とは警察の隠語である公安のこと。オウム真理教事件を連想する新興宗教団体の毒ガス事件が描かれており、その毒ガス事件を自分のミスで未然に防ぐことができず、今は公安を離れ、泉の上司である広聴広報課長をしているのが安田顕さん演じる富樫です。 事件は思いもしない真相を観客の前に示しますが、大勢の命を助けるためには一人の命を犠牲にするのもやむを得ないと自分を正当化し、平然と罪もない人を殺す犯人に怒りを思えます。 小説には警察職員から刑事になった泉を描く続編の「月下のサクラ」があり、個人的には刑事になった杉咲花さんがどんな刑事を演じるのか興味深く、映画も続編の製作を期待したいです。 |
クワイエット・プレイス DAY1(2024.6.28) |
監督 マイケル・サルノスキ |
出演 ルピタ・ニョンゴ ジョセフ・クイン アレックス・ウルフ ジャイモン・フンスー |
シリーズ第3弾です。とはいえ、監督は交代し、前作までの主人公たちは出演していません(唯一、前作に登場していた謎の男・ ジャイモン・フンスーだけが出ていました。)。 物語は前作までの舞台となった田舎ではなく、ニューヨークの大都会マンハッタンに移り、宇宙から異生物がやってきた1日目を描いていきます。癌で余命幾ばくもなく猫のフロドとともにホスピスで暮らしているサミラ。ホスピスの入所者みんなで出かけたマンハッタンで、突然宇宙から異生物がやってきて、人間に襲い掛かる。マンハッタンは周囲の橋が落ち、生き残った人々は救出船が出港する波止場に向かう。しかし、サミラは最後にハンバーガーを食べたいと馴染みのハンバーガー店に向かうが、その途中、イギリスから法律の勉強に来ていたエリックと出会う。極度に憶病のエリックはサミラの後をついてきて、やがてサミラが住んできたアパートの部屋に二人は落ち着くが・・・. 襲撃1日日にして、宇宙からやってきた異生物が音に敏感であり、水を苦手とすることまでなぜかわかっています。その辺りはちょっとなあという感じがします。 前作には“赤ちゃん"という音を立てるなと言っても言うことは聞いてくれない存在があり、そのことが映画に緊迫感を与えていました。今作ではサミラの飼う猫がいたため、この猫が鳴いて主人公たちを危険に陥れるのだろうなあと思ったら、何とこの猫、鳴きません。まあいろいろやってくれますけど。また、前作までは聾唖者の娘がいて、音に反応する異生物との対比が印象的でしたが、今回はそれほど音ということに対しての道具立てというか何らかの要素は盛り込まれていませんでしたね。 更に前作まではエミリー・ブラント演じる戦う母親がいましたが、今回は戦うことなく逃げるだけ。そこはサミラがそもそも余命幾ばくもないことと関係があったかもしれません。 ラストに流れるあの歌、曲名は忘れてしまったけど(バンフレットも販売されないので、確認できませんでした。)、その歌とともに余韻の残るラストシーンでしたね。 |
先生の白い嘘(2024.7.6) |
監督 三木康一郎 |
出演 奈緒 猪狩蒼弥 三吉彩花 田辺桃子 小林涼子 森レイ子 板谷由夏 ベンガル 風間俊介 |
この作品、公開前の監督のインタビューでの主演の奈緒さんからのインティマシー・コーディネーター(IC)をつけて欲しいという要望を断ったという発言が炎上し、内容よりもそちらで話題になってしまいました。監督、主演女優の奈緒さんだけでなく、原作者である漫画家の鳥飼茜さん、更に日本にいるICを巻き込んでの騒動となりました。更にはHP上のある言葉が削除されるということもあり、たぶん、そのためだと思いますが、パンフレットも発売延期になってしまいました。観た作品のパンフレットは購入することにしているのに、残念です。今後発売されても、わざわざ東京まで買いに行くこともできず、メリカリで購入するしかないかなあ。 確かに、内容的には奈緒さんがICを付けてもらいたいと要望するのももっともな性描写がありました。主演が奈緒さんに決まるまでに10人以上の女優さんに断られているのも無理ないかなあという感じです。これは奈緒さんだけでなく、奈緒の友人の美奈子を演じた三吉彩花さんにも言えることですね。 テーマは男女間の性の格差を描くということのようですが、この作品での奈緒さん演じる美鈴と風間俊介さん演じる早藤の関係は、もう犯罪以外の何ものでもありません。格差という問題ではないですよね。早藤を演じた風間俊介さんも、なかなかこういう最低な男の役柄をこれまで演じることはなかったでしょうね。 また、美鈴と学校の教え子である新妻祐希との関係もよくわかりませんでした。どうしてああいう関係になってしまうのでしょうか。 奈緒さんの熱演はありましたが、話題が先に立ってしまったという作品にとって不幸な点もあり、ただ、それを除いたとしても個人的にはいまひとつというのが正直な感想です。 |
キングダム 大将軍の帰還(2024.7.12) |
監督 佐藤信介 |
出演 山﨑賢人 吉沢亮 橋本環奈 清野菜名 山本耕史 山田裕貴 長澤まさみ 玉木宏 新木優子 小栗旬 吉川晃司 大沢たかお 要潤 佐藤浩市 岡山天音 三浦貴大 佐久間由衣 高嶋政宏 加藤雅也 高橋光臣 平山祐介 萩原利久 田中美央 真壁刀義 濱津隆之 佳久創 草刈正雄 桜井日奈子 村川絵梨 金児憲史 |
キングダムシリーズ第4弾で最終章だそうです。 題名にある“大将軍”とは大沢たかおさん演じる王騎のこと。題名の「大将軍の帰還」とは、最後まで観るとそういうことだったのかあということがわかります(ネタバレになるので伏せます。)。今まで戦いの正面に出てこなかった王騎がいよいよ最前線に総大将として登場です。最終章ということでもあり、夏体み映画ということもあってか、地元のシネコンでも複数のスクリーンでの上映です。配給元の東宝さん、力入っていますねえ。 これまで、このシリーズは山崎賢人さん演じる信が主人公で、彼の成長物語だと思っていたのですが、今回の主役は王騎です。今作では前作のラストに顔を出した小栗旬さん演じる趙の軍師、李牧、そして、王騎との囚縁のある吉川晃司さん演じる趙の総大将、ほう煖が登場し、王騎と戦いを繰り広げます。王騎とほう煖との一騎打ちの戦いは特に見どころです。この戦い、ワイヤーアクション凄すぎです。 二人の因縁に関わりのある人物として今回登場するのが秦の六大将軍の一人である新木優子さん演じる摎です。退場のシーンは描かれず、あまりにあっけなかった感がありますね。また、これまでのシリーズで常に王騎の傍らに仕えていた王騎軍の副将である要潤さん演じる騰も今回は前面に出て大活躍です。凄い技を見せてくれます。 個人的に期待していた楊端和を演じる長澤まさみさんも重要な情報をえい政に伝えるために登場したのですが、残念ながら登場はこのワンシーンだけ。彼女が戦うシーンを観たかったですねえ。また、山田裕貴さん演じる趙の武将・万極も序盤で飛信隊を追ったまま、ラストの戦いでも姿を見せていません。まあ、これだけ登場人物が多くなると、なかなかひとりひとりにかける時間が短くなるのは仕方ないですかね。 ラストはあんな結果になってしまいましたが、まだ趙との戦いは終わっていませんし、ここまでは秦が覇権を握るまだ鳥羽口にしかすぎません。最終章と銘打っていますが、思うにこれは信を主人公にしたストーリーは今回までということで、次回からは別の人物を主人公にシリーズは続くのではないでしょうか。興行収入もいいようですし、次作を期待したいです。 |
フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーン(2024.7.20) |
監督 グレッグ・バーランティ |
出演 スカーレット・ヨハンソン チャニング・テイタム ウディ・ハレルソン ジム・ラッシュ アンナ・ガルシア ドナルド・エリース・ワトキンス ノア・ロビンズ コリン・ウッデル クリスチャン・ズーバー ニック・ディレンバーグ レイ・ロマノ |
かなり前に、火星への着陸を目指した宇宙船が打ち上げ前に故障が判明したが、公表せずに、今回の映画のようにセットを作って、あたかも着陸が成功したかのように偽装するという「カプリコン1」という映画がありましたが、今作は初めて人類が月着陸を成功させたアポロ11号の発射の裏側で、実は失敗に備えて成功のシーンを地上 にセットを組んで撮影していたというストーリーです。当時はアメリカとソ連が月着陸を巡ってしのぎを削っており、アメリカとしても失敗をすることはできなかったことが、この映画の背景となっているようです。 人類初の月面着陸を目指す「アボロ計画」の開始からすでに8年が過ぎ、国民の関心も薄れつつある中で、「アポロ計画」を推進し、国民の気持ちを盛り上げるため、ニクソンの側近のモーは、PRマーケティングのプロ、ケリーをNASAにスカウトする。彼女の戦略でアポロ11号の打ち上げは次第に国民の大きな関心事となっていくが、モーは失敗をした場合に備えて、セットで月面着陸のシーンを撮影し、当日はこの映像を流すようケリーらに指示する・・・。 「カプリコン1」はサスペンスタッチで描かれましたが、こちらはちょっとユーモラスなタッチで描かれます。スカーレット・ヨハンソンもこんなコメデイエンヌっぼい演技もできるんですね。政府の裏を取り仕切るウディ・ハレルソン演じるモーも秘密を洩らしたら命がないというような怖いことを言いますが、ラストはユーモアのある憎めない男として描かれます。 序盤で黒猫は不幸を招くと発射責任者、チャニング・テイタム演じるコールが言っていた伏線が、ラストで回収されます。 |
お隣さんはヒトラー?(2024.7.27) |
監督 レオン・ブルドフスキー |
出演 デヴィッド・ヘイマン ウド・キア オリヴィア・シルハヴィ ハイメ・コレア トマシュ・ソプチャク |
第二次世界大戦中のナテスによるホロコーストにより家族を失い、今は南米コロンビアの田舎に一人暮らすマレク・ポルスキー。ある日、隣の空き家にドイツ人男性が引っ越してくる。大切に育てていた黒バラを隣家の大に荒らされたポルスキーは抗議に行くが、その際、男のサングラスに隠された目の色がブルーであることを知ったポルスキーは、彼が自殺したはずのヒトラーに似ていることに気づく。イスラエル大使館に訴えても取り合ってもらえないポルスキーは、自分で監視を続け、隣家に忍び込んで証拠を探す。ところが、ひょんなことからチェスをし、自画像を描いてもらうような関係になり、ポルスキーは自分の誤解だったかと考えたが、ある夜、隣に来客があった際に、衝撃的な場面を見てしまう・・・。 戦後、ナチスの戦犯・アイヒマンが南米のアルゼンチンに逃れ隠れていたのを、イスラエルの情報機関によって拘束されるという実際の話がありました。この作品は、その事実を下敷きに、ヒトラーが自殺せずに南米に逃れ、自分の家の隣に住んでいるのではないかと考えた男が疑心暗鬼になる様子を描きます。題名からはコメディかと思いましたが、さにあらず。ラストで明かされる真実は辛いものがありました。ヒトラーは生きていたのか。落としどころが“そこ"とは想像できませんでした。 |
もしも徳川家康が総理大臣になったら(2024.7.31) |
監督 武内英樹 |
出演 浜辺美波 赤楚衛二 野村萬斎 GACKT 竹中直人 高嶋政宏 江口のりこ 池田鉄洋 小手伸也 長井短 観月ありさ 音尾琢真 山本耕史 梶原善 小籔千豊 足立英 酒向芳 |
コロナ禍で総理大臣が急死し、政府は窮余の策として歴史上の偉人をAIホノグラムで復活させ、内閣を組織する。総理大臣には徳川家康、内閣官房長官を坂本龍馬、経済産業大臣を織田信長、財務大臣を豊臣秀吉、そのほか徳川綱吉に徳川吉宗、聖徳太子、足利義満、紫式部が大臣となる。ひょんなことから放送局の報道部の西村理沙は家康からAIソフトの開発者から託された暗号の解読を依頼される。調べると、それはソフトにバグがあるというもので、そのバグは織田信長ではないかと思われたが、彼は何者かによって消されてしまう。世間からは織田の人気を妬んだ家康の仕業ではないかと総理大臣からの退陣を要求する声が上がる。ところが真のバグはある人物であり、彼は家康を幽閉し、自分が総理大臣となって世界を征服しようとする。梨沙は坂本龍馬とともにその野望を阻止しようとするが・・・。 歴史Lの偉人たちが内閣を組織したらという「if」の世界を描きますが、コロナで総理大臣が急死したからといって、なぜ偉人たちを復活させて内閣を組織しなくてはならないのか。まあ、その前提がないと物語ができないので、理由を追求すると野暮でしょうか。また、この内閣が具体的に何をしたかは描かれておらず(楽市楽座をしたと描かれますが、現代にとって楽市楽座がどういう政策なのか、具体的には語られていません。)、偉人たちが内閣を組織したらうまくいったというアバウトな状況を背景にするだけです。 だいたい、この偉人たちの選考の理由はなんでしょう。まあ、あまり深いことは考えずに楽しむのが一番でしょうか。 西村理沙を演じるのは浜辺美波さんですが、ショートカットもお似合いです。 |
ラストマイル(2024.8.23) |
監督 塚原あゆ子 |
出演 満島ひかり 岡田将生 ディーン・フジオカ 阿部サダヲ 火野正平 宇野祥平 大倉孝二 酒向芳 安藤玉恵 水澤紳吾 丸山智己 岩谷健司 石原さとみ 井浦新 窪田正孝 市川実日子 竜星涼 飯尾和樹 吉田ウーロン太 望月歩 薬師丸ひろ子 松重豊 綾野剛 星野源 前田旺志郎 金井勇太 永岡卓也 橋本じゅん 麻生久美子 |
TBSドラマ「アンナチュラル」と「MIU404」の監督・塚原あゆ子さんと脚本家の野木亜紀子さんが再びタッグを組み、「アンナチュラル」と「MIU404」と同じ世界線にある作品となっています。 巨大ショッピングサイトを運営する「デイリーファスト」の物流倉庫から出荷された荷物が爆破し、受け取った住人が死亡する。更に同じ物流倉庫から出荷された荷物が爆破する事件が連続する。物流倉庫のセンター長として赴任してきたばかりの舟渡エレナは部下の梨本孔とともに対応に当たるが、その結果、 12個の荷物に爆弾が仕掛けられていることが判明する。いったい、誰が、どのような目的をもって事件を起こしているのか・・・。 誰もが知っている外資系のショッピングサイトをモデルにしているのが丸わかりです。物語は事件に対処する舟渡エレナと梨本孔を中心に、日本本社の責任者である五十嵐、デイリーファストの配送を請け負う運送会社・羊急便の社員・八木、そして、羊急便のの下請けの佐野運送の佐野昭と佐野亘の親子を中心に描いていきます。 とにかく圧倒されるのは、巨大な物流倉庫。そして、そこには正社員は8人だけで派遣やパートが何千人も働いているという現状です。凄いですよねえ。人件費を抑えるだけ抑えるんですねえ。そして、大きな問題は、私たちはショッピングサイトを見て、簡単にポチってしまい、明日には届くなあと思ってしまうのですが、翌日配達の裏には多くの人にかなりのしわ寄せがきているということ。作品の中に描かれていましたが、荷物を選別・運ぶベルトコンベヤーが止まることなく動き続け、人が死んでも止めることをしないという実態は(事実であったとしたら)恐ろしいですよね。今年から運送業の時間外労働の上限規制が施行され、2024年問題として大きな話題となっていますが、この作品ではそんな運送業の大きなひずみを浮き彫りにしています。 「アンナチュラル」の登場人物であった石原さとみさん、窪田正孝さんら、「MIU404」の登場人物であった綾野剛さん、星野源さんらもちょい役ですが顔を見せており、ドラマのファンにとっては嬉しいところです。また、ストーリー的にも「え?まさか犯人はあの人?」と、観ている人をミスリーディングする展開もあって、ミステリ的な面白さもあります。 頭の回転が速いエレナを演じる満島ひかりさんが役にビッタリでしたね。 |
サユリ(2024.8.23) |
監督 白石晃士 |
出演 南出凌嘉 根岸季衣 近藤華 梶原善 きたろう 占部房子 森田想 猪股怜生 久保遥 照井野々花 |
ホラーだけど元気が出る映画という試写会を観た人の感想を見て、どんな映画だろうと鑑賞することに。念願のマイホームの中古住宅を購入して引っ越してきた祖父母、両親、3人の子どもの神木一家。ところが、その家に取り憑く霊によって最初は父が、次に祖父が、そしてついには母と長女と次男が死に至ってしまう。その状況で、認知症を患っていた祖母・春枝が覚醒。認知症が治って(?)霊に復讐すると宣言し、長男・則雄を鍛える。この映画の面白さは覚醒したおばあちゃんのキャラにあります。かつて元気な頃は大極拳の師範で、霊などまったく恐れないし、家族の復讐のためには犯罪になることも平気でやるという超ド級のキャラに圧倒されます。途中までのホラーテイストがおばあちゃん覚醒後はいっきにアクション映画あるいは極道映画もどきに転換です。あ~面白かったです。 それにしても、霊となった“サユリ"の生きている時はあまりに悲惨。悪霊となるのも無理からぬ事情ですね。 |
夏目アラタの結婚(2024.9.6) |
監督 堤幸彦 |
出演 柳楽優弥 黒島結菜 中川大志 丸山礼 立川志らく 福士誠治 今野浩喜 平岡祐太 佐藤二朗 藤間爽子 市村正親 |
夏目アラタは児童相談所の職員。担当していた日本中を震撼させた連続バラバラ殺人事件の遺族の少年から、アラタの名を騙って、犯人の品川真珠と手紙のやり取りをしていると言われ、まだ見つかっていない被害者である少年の父親の頭部の行方を真珠から聞いてほしいと依頼され、彼女に会いに行く。逮捕時にピエロのメイクをしていたことから「品川ピエロ」の異名で知られ、過食で太っていた真珠だったが、アラタの前に現れた真珠は細身になっており、逮捕時とはまったく印象が変わっていた。真珠から興味を失われ面会を終わりにされそうになったアラタは、思わず真珠に結婚を申し込む・・・。 児童相談所の職員・夏目アラタの役を演じるのは柳楽優弥さん。被害者の子どもに頼まれ、まだ発見されていない被害者の首の行方を探るため、品川に接近を試みます。しかし、いくら彼女の気を引こうとしたにせよ、死刑囚にプロポーズはないでしょう。こんな冒頭の設定がありえないなあと思ったのですが、これがないと物語が進まないので、そこは我慢。 品川真珠を演じるのは黒島結菜さん。これまでのきりっとした凛々しい表情とは180度異なる雰囲気の役を演じます。面会所の仕切りに顔を寄せる黒島さんの表情は怖かったですねえ。最初、黒島さんとは分かりませんでした。黒島さんにとっては大きな挑戦だったのではないでしょうか。虫歯だらけのような歯並びはどうするんだろうと思ったら、マウスピースのようですね。黒島さんのような美形でもあんな歯では引いてしまいます。やっばり、歯は大切です。 最初、留置場の中で真珠が臭いを嗅いでいるシーンがありましたが、それが重要な伏線となってラストに驚きの事実が浮かび上がってきます。 |
エイリアン ロムルス(2024.9.7) |
監督 フェデ・アルバレス |
出演 ケイリー・スピーニー デヴィッド・ジョンソン アーチー・ルノー イザベラ・メルセド スパイク・ファーン エイリーン・ウー |
植民地惑星で未来の見えない労働を強いられている6人の若者。彼らは宇宙空間を漂う宇宙ステーションを見つけ、希望の惑星ユヴァーガに行くために必要な資材を確保するために宇宙ステーションに乗り込む。ところが、事故が起き、ステーションの中で眠っていたフェイスハガーが動き出し、彼らに襲い掛かる・・・。 エイリアンシリーズ最新作です。時代設定としては、第1作と第2作の「エイリアン2」との間の話になるそうです。冒頭の設定が分かりにくかったのですが、「エイリアン」でリプリーが宇宙空間に排出したエイリアンをウェイランド・ユタニ社が回収し、宇宙ステーションで研究をしていたが、その途中でエイリアンにより研究者たちが全員死亡して、宇宙空間を漂っていた、そこに若者たちが何も知らず侵入したということでしょうか。 「プロメテウス」と「コヴェナント」が人類の創造とエイリアンの誕生を描く理解が難しい作品だったのですが、今回は原点回帰という感じで、閉鎖空間の中での恐怖を描く「エイリアン」らしい作品となっています。若者たちを襲うエイリアンは1匹ではなく、集団という点は「エイリアン2」でしょうか。やがて、「フェイスハガー」が顔に貼りついてお腹の中から「チェストバスター」が飛び出してくるいつものパターンとなります。 「エイリアン」といえば、欠かせないのはアンドロイド。今作ではレインの弟がアンドロイドですが、第1作で登場したイアン・ホルムが演じたウェイランド・ユタニ社のアンドロイド・アッシュも登場します。イアン・ホルムは2020年に亡くなっており、今回はCGでの登場です。何よりもウェイランド・ユタニ社の利益を優先する彼のアンドロイドは今回も印象的です。 レインを演じたケイリー・スピーニーは、第二のシガニー・ウィーバーになりそうです。レインの顔にエイリアンの顔が迫ってくるシーンは完全にシガニー・ウィーバーを意識しています。エイリアンの血液はすべてのものを溶かすほどの強力な酸性であるために、攻撃すれば酸性の血液をまき散らして船に穴が開いてしまうため、レインがエイリアンと戦うために取った方法はこの映画の中でも注目のシーンです。 また、妊婦のイザベラがウェイランド・ユタニ社が開発したカプセル液を自分に打ったことにより、生まれてきたものは人間とエイリアンのDNAが混ざった新たなエイリアンなんでしょうか。グロテスクでしたけど、あれは何っていう感じですね。 |
とりつくしま(2024.9.12) |
監督 東かほり |
出演 橋本紡 櫛島想史 小川未祐 楠田悠人 磯西真喜 柴田義之 安宅陽子 志村魁 小泉今日子 中澤梓佐 石井心寧 安光隆太郎 新谷ゆずみ 鈴木喜明 千賀由紀子 佐藤有里子 宇乃うめの 山下航平 山田結愛 村田凪 田名瀬偉年 富士たくや 富井寧音 松浦祐子 大槻圭紀 岩本蒼祐 大古知遺 平松克美 |
東直子さん原作の連作短編集の中の四つの話、どれも死後に未練があってモノに取り憑くことになった人、夫の好きなトリケラトプスの模様がついたマグカップになった妻、いつも遊んでいた公園のジャングルジムになった男の子、孫に買ってあげたカメラになった祖母、少年野球の投手をしている息子が使うロージンになった母の話を娘の東かほりさんが監督した作品です。 冒頭の「トリケラトプス」は、夫が好きなトリケラトプスの模様がついたマグカップにとりつくことにした妻の話です。自分が死んでしばらくして女性を部屋に連れてきたのを見るのは妻としては辛いですよね。でも、夫が一生一人でいるとは限らないし、夫のマグカップにとりついたのは、きっといつか辛くなるでしょうね。 公園のジャングルジムになった男の子の話が「あおいの」ですが、この作品が原作とは大きな改変がなされています。原作はジャングルジムになった男の子の独白だけで進みますが、映画では、大学生(?)の男女と二人を滑り台に隠れて見る女の子、公園の中のベンチに座る老夫婦、ネタ合わせをする女性お笑いコンビのエピソードも描かれ、ラスト、男の子が歌を歌うことによって、ああ、そういうことだったんだということがわかります。最初は子どもの話かぁとそれほど物語の中に入っていけなかったのですが、最後は監督にやられましたね。原作よりこちらの方が好きです。 「レンズ」は、孫に買ってあげたカメラにとりついたはずが、孫は祖母が亡くなるとカメラを売り払ってしまい、年寄りの男性が新しい持ち主になるという話。祖母が思うほど孫は祖母のことを思っていなかったんですかねえ。 個人的に一番好きだったのがラストの「ロージン」です。取り憑いていられるのはロージンの袋の中の粉が半分以上なくなるまでと説明された母親が、「あまり長くいすぎると、あとが辛くなると思うので、それでいい」と言います。いやぁ~泣けちゃいますよねえ。それを聞いたとりつくしま係の小泉今日子さんが「いいですね。いさぎよい!」と言いますが、このセリフ、原作では「あっさりしていてよろしいですね」となっています。ここは直子さんよりかほりさんのセリフの方がグッときますね。息子が私の息子と同じ名前だったこともこの物語に感動したひとつの理由でもあります。 出演者はワークショップに参加した人から選ばれたようで、有名俳優さんはいませんが、唯一、亡くなった人にその経緯を説明するとりつくしま係を小泉今日子さんが演じています。小泉さん自身、原作が好きだったようですが、彼女が「とりつくしま係」を演じていることで、この作品に一層の魅力を感じさせます。小泉さんの話し方が素敵なんですよねえ。 上映後には東監督と第一話「トリケラトプス」に出演していた3人の役者さんの舞台挨拶もあり、更にサイン会もありました。私も購入したパンフレットにサインをして貰いました。鑑賞日はまだ新宿武蔵野館だけの公開でしたが、全国で公開してほしいです。 |
愛に乱暴(2024.9.12) |
監督 赤ガキ侑大 |
出演 江口のりこ 小泉孝太郎 風吹ジュン 馬場ふみか 水間ロン 青木柚 斉藤陽一郎 梅沢昌代 西本竜樹 堀井新太 岩瀬亮 |
初瀬桃子は結婚8年目の41歳の主婦。子どもはなく夫との二人暮らしで、同じ敷地内の別棟に夫の母親が住んでいる。結婚前に働いていた会社が開いている料理教室の講師を週に何回かパートでしながら、手料理を作って夫の帰りを待ち、奇麗な洋服を着て、夫の母の相手もそつなくこなす毎日。しかし、彼女が話しかけても夫は上の空という状況で、ついには浮気している女性と会ってくれと彼女に言う・・・。 吉田修一さん原作の同名小説の映画化です。原作は発売当時に読んだことがあり、オススメマークもつけてあるのですが、主人公の主婦・初瀬桃子が強烈なキャラだったこと以外詳細は忘れていました。今回、主人公の初瀬桃子を江口のりこさんが演じていますが、これは江口さんにピッタリの配役ですね。チェーンソーを持って微笑みを浮かべる江口さんは怖かったですねえ。 夫は桃子といても楽しくないと言い放ちますが、一番悪いのはあなたでしょう。結婚してはまた違う女に手を出すことを繰り返しているのですからね。夫を愛するがゆえに様々な努力をしているのにかかわらず、夫からは「一緒にいて楽しくない」と言われるなんて、そりゃぁ、おかしくもなりますよね。 ラスト、原作はすっかり忘れてしまいましたが、アイスクリームを食べる桃子の行く先はどうなるのでしょうか。 一方、夫の初瀬真守を演じた小泉孝太郎さんが、いつもの髪もきちんと梳かした好人物というキャラとは異なる人物を演じているのが印象的です。最初は前髪で額が隠れていたため、小泉さんとはわかりませんでした。 SNSで不倫を語るアカウントを桃子が見ているシーンが何度か出てきますが、観客をミスリードしましたね。 |
マンガ家、堀マモル(2024.9.12) |
監督 榊原有佑 武桜子 野田麗未 |
出演 山下幸輝 桃果 岡部たかし 坂井真紀 三浦貴大 占部房子 竹中直人 宇陽大輝 斎藤汰鷹 竹原千代 |
マンガの新人賞を受賞して以降、新たな作品が描けない真守の前に海、樹、愛と名乗る3人の幽霊が現れ、真守にマンガを描かせてあげると言う。海は働いている母に寂しいと言い出せなかった思いを、樹は周りとうまくなじめず孤独でいた自分を理解してくれた教師への思いを、愛は一緒に夢をかなえようと誓った友への思いを語り、真守はそれをマンガに描き上げていくが、愛の話を描こうとして真守は気づく・・・。 幽霊が登場するというファンタジックな内容に、これは観たいと東京まで観に行ってきました。観ているとわかってくるのですが、実は3人は“幽霊”という言葉でくくる存在とは違います。ネタバレになるので、詳細は述べませんが。 3人の幽霊の話を描いていく中で、幼友達で一緒に夢をかなえようと誓った春との別れに向き合って、前に進もうとする真守の成長の物語です。 かつて一緒にマンガを描こうといいながら病気で亡くなった春を演じた桃果さんの表情が素敵です。昨年観た「唄う六人の女」に出演していたとパンフレットで知りましたが、全然印象が違いました。 |
侍タイムスリッパー(2024.9.13) |
監督 安田淳一 |
出演 山口馬木也 冨家ノリマサ 沙倉ゆうか 峰蘭太郎 庄野﨑謙 紅萬子 福田善晴 井上肇 安藤彰則 田村ツトム 多賀勝一 吹上タツヒロ 佐渡山順久 柴田善行 きらく尚賢 ムラサトシ 神原弘之 五馬さとし 田井克幸 徳丸新作 泉原豊 岸原柊 戸田都康 矢口恭平 吉永真也 楠瀬アキ 佐渡太郎 高寺裕司 江村修平 山本拓平 西村裕慶 |
幕末の京都。会津藩士の高坂新左衛門は家老から長州藩士の山形彦九郎を斬る密命を帯び、彼と刃を交えるが、その瞬間落雷により気を失ってしまう。目を覚ますと、そこは幕末ではなく、現代の時代劇撮影所。新左衛門は行く先々で騒動を起こしながら、江戸幕府が140年前に滅んだことを知り愕然とする。再び幕末に戻ろうと、雷に打たれるが戻ることはできず、寺の前に倒れてるところを住職に助けられ、寺に住み込みながら現代で生きていくこととなる。やがて、自分ができるのはこれだけと、「斬られ役」として殺陣師の峰蘭太郎に弟子入りする・・・。 大好きなタイムスリップものです。あまり細かいことは考えずに観るのが楽しむためには一番です(戸籍や住民登録もないのに、よく生活できるなとか、健康保険はどうするんだ等々)。この映画の面白さは、幕末の侍が現代を生きるというギャップにあるのはもちろんですが、主人公の高坂新左衛門のキャラ、その誠実で真っ直ぐなところによるのも大きいのではないでしょうか。 初めは東京池袋の単館での上映でしたが、評判を呼んで全国ロードショーになり、地元のシネコンでも公開されました。有名俳優は出演していません。辛うじて主演の高坂新左衛門を演じた山口馬木也さんと、風見恭一郎を演じた冨家ノリマサさんを何かで観たなあという印象くらいです。ヒロイン役の助監督・山本優子を演じる沙倉ゆうのさんなど、出演者としてだけでなく、スタッフとして実際に助監督、制作、小道具としてもクレジットされていますから、手作り感満載ですね。完成した時に監督の預金通帳には7000円程度しか残っていなかったそうです。「カメラを止めるな」と同じ道をたどっていますが、第2の「カメラを止めるな」になるためには全国でどれだけの評判を呼ぶことができるのか、これからが勝負です。 |
アビゲイル(2024.9.13) |
監督 マット・ベティネッリ=オルピン タイラー・ジレット |
出演 メリッサ・バレラ ダン・スティーブンス キャスリン・ニュートン ウィル・キャトレット ケビン・デュランド アンガス・クラウド アリーシャ・ウィアー マシュー・グード ジャンカルロ・エスポジート |
ある屋敷の娘の誘拐を請け負った互いに面識のない6人の男女。外出から戻った娘を拉致し、郊外の家に連れ込み、あとは一晩少女を監視すれば多額の報酬が入るはずだった。ところが、彼らが拉致した少女は吸血鬼で、少女を監禁したはずが、逆に彼らが屋敷に閉じ込められてしまう。彼らは生きて屋敷から脱出するために、吸血鬼の少女との戦いに臨むが・・・。 吸血鬼映画ですが、他の吸血鬼映画と異なるのは、吸血鬼が少女の姿であること、その少女の吸血鬼がバレエを踊りながら襲ってくることでしょう。バレエのターンをしながら襲いかかってきたり、首のない死体と踊ったりするシーンには恐怖というより唖然としてしまいました。日の光や杭はこれまでの吸血鬼の弱点と同じでしたが(ただ、光を浴びたり杭を打たれると消えていくのではなく一瞬で派手に爆発してしまうというのは強烈です。)、 十字架やニンニクはダメでしたねえ。 ラストに少女の父親の吸血鬼が登場しますが、これはもう昔ながらの吸血鬼のキャラでしたね。 |
スオミの話をしよう(2024.9.14) |
監督 三谷幸喜 |
出演 長澤まさみ 西島秀俊 松坂桃李 宮澤エマ 瀬戸康史 遠藤憲一 小林隆 坂東彌十郎 戸塚純貴 阿南健治 梶原善 |
詩人・寒川しずおの妻・スオミが昨日から行方不明となる。警察沙汰にしたくない寒川の命令で担当の編集者・乙骨によって呼ばれたのは、スオミの元夫で刑事である草野とその部下の小磯。やがて、何者かからスオミを誘拐したとの電話が入り、身代金3億円が要求される。警察に通報すべきだという草野の主張に対し、大ごとにするなと寒川が主張する中、スオミの元夫たちが次々と寒川の屋敷に集まってくる。 三谷幸喜監督が長澤まさみさんで映画を撮りたかったと述べていましたが、これはもう長澤まさみさんのための作品以外の何ものでもありません。スオミの5人の夫・元夫が、スオミはこういう妻だったと語るスオミのキャラがまったく異なるのですが、長澤さんはそんなまったく異なる5人のスオミのキャラを見事に演じ切ります。彼女は「コンフィデスマンJP」でそのコメディエンヌぶりも見せてくれましたが、今回もコメディエンヌぶりは健在です。そして、何と言っても、そのスタイルの良さには目を奪われます。ミステリーコメディと謳っていますが、ミステリーとしての要素はほとんどないといっていいです。ストーリー展開は最初から予想できます。あとは、スオミ同様に様々なキャラになりきる宮澤エマさん演じる薊のキャラも見ものです。 エンデイングはミュージカル仕立てとなっていますが、どこかぎこちない男性陣に対し、長澤さんはカッコいいですねえ。長澤まさみさんファンには最高の映画です。 |
あの人が消えた(2024.9.22) |
監督 水野格 |
出演 高橋文哉 田中圭 北香那 染谷将太 坂井真紀 袴田吉彦 中村倫也 菊地凛子 |
新型コロナの感染拡大の影響で居洒屋でのバイトが首になった丸子夢久郎は大学の学費も払えず、退学して現在は宅急便のドライバーをしていた。ある日、同僚で小説家を志す荒川から小説投稿サイトの彼の作品を読むよう言われた丸子はたまたま目にしたコミヤチヒロという作家の作品に魅了され、更新される作品を読むのが楽しみとなっていた。新たに担当地域となったアパートに配達に行くと、そこに同姓同名の小宮千尋が住んでいることを知り、思い切って尋ねると本人であることがわかって、それからそのアパートに配達に行くことが楽しみになる。ところが彼女の部屋の1階上に住む男の不審な行動に、千尋が付け狙われているのではないかと不安になる。やがて、千尋の姿がアパートから消え・・。 ネタバレになるので詳細には書くことができません。簡単に言うと、お気に入りの小説を書く女性(それも美人の)に恋して、彼女を危険から守ろうと孤軍奮闘する主人公を描くのですが、観ていると、貴方の方がほとんどストーカーでしょうと言いたくなります。 途中、物語の雰囲気がガラッと変わってしまって、この作品はコメディーだったのかあ、とんでもない映画を観に来てしまったなあ、金返せと思ったのですが・・・。この作品、ある有名な作品のオマージュになっています。ラスト、アパートに乗り込んできた荒川の活躍によって事件は解決するのですが、荒川がいいとこ持って行き過ぎだろう、丸子にも気を遣えよと思ったら、そういうことだったんですね(ネタバレになるので言えません)。ここは監督にやられましたねえ。変なところに伏線が張られていましたけど、気づきませんでした。 主人公を演じた高橋文哉さんより、強烈な個性を発揮しているのは不審な行動をする島崎を演じている染谷翔太さん。彼にはこうしたどこか変わった役がお似合いです。奥さんの菊地凛子さんも出演しています。作家の小宮千尋を演じるのは北香那さん。彼女は私の中では以前テレビ東京の深夜に放映していた「バイプレイヤーズ」での中国人・ジャスミン役の印象が今でも強いです。 |
Cloud クラウド(2024.9.30) |
監督 黒沢清 |
出演 菅田将暉 古川琴音 窪田正孝 奥平大兼 岡山天音 荒川良々 赤堀雅秋 吉岡睦雄 三河悠冴 松重豊 山田真歩 矢柴俊博 森下能幸 千葉哲也 |
(ネタバレあり) エ場で働きながら転売屋をしている吉井良介。上司の滝本に管理職になるよう誘われたが、断って工場を辞め、家を借り、人も雇って本格的に転売屋としての商売を始める。しかし、ネットでは吉井のやり方に怒りを覚える者たちが集まり、吉井の居場所を特定し、彼に仕返しをしようと集まっていた。そんなある日、彼の家に侵入した男たちは彼を拉致し、廃工場に監禁する・・・。 しかし、吉井を殺害しようとする男たちの動機がよく理解できません。特に荒川良々さんが演じた滝本は自分が目をかけ昇進まで用意したのに、すげなく断られたからとはいえ、殺すまでに憎む理由がわかりません。妻子を殺害して警察から逃げているとはいえ、それは吉井とは関係ないことでしょうし。また、窪田正孝さんが演じた村岡は自分が転売を指導したのに、自分はうまくいかず吉井は稼いでいるという妬みがあるとはいえ、それが殺すほど憎いという思いも理解できません。まあ、赤堀雅秋さんが演じた町工場の社長や同じ転売屋の男のように、商品を安く買い叩かれたり、逆に吉井から買って売ったものが偽物だとバレてひどい目に合ったりという点で吉井を憎むのはわからないではありませんが、それが殺意にまでなる男たちの気持ちが描かれていない気がします。 それに奥平大兼さんが演じた従業員だった佐野の行動も理解できません。首にされているのに、なぜ吉井を助けようとするのでしょうか。その理由も語られません。拳銃を簡単に用意したり、死体の片付けを依頼したりできるなんて、いったい彼は何者。 更に理解できないのが古川琴音さんが演じた吉井の恋人の藤田秋子。何だか薄っべらい女性でしたねえ。 藤田に武器の手配を頼まれた男を演じていたのが松重豊さん。名バイブレーヤーである松重さんが名前もない出演時間1分ほどの役を演じるとはびっくりです。 |
傲慢と善良(2024.9.30) |
監督 萩原健太郎 |
出演 藤ヶ谷太輔 奈緒 倉悠貴 桜庭ななみ 阿南健治 宮崎美子 西田尚美 前田美波里 菊池亜希子 森カンナ |
長く交際した恋人から別れを告げられたビール会社を経営する西澤架は、婚活アプリで新たな出会いを求める。20人以上の女性との出会いを経て知り合った坂庭真実の他人への気遣いに惹かれ、彼女と交際を始める。それから1年が経ち、架は真実からストーカー被害に遭っていることを聞かされる。そんなある日、架が友人たちと飲んでいたときに真実から電話が入り、ストーカーが部屋に侵入したと言われ、その日から真実は架の部屋で暮らし始める。やがて二人は婚約するが、真実の勤め先での退職祝いの夜、彼女は突然姿を消してしまう。架は彼女の実家やストーカーが疑われる縁談相手やその紹介者のところを訪ねるが、彼女の行方は杳としてわからなかった。その頃、真実は災害地でボランティアとしての活動を始めていた・・・。 辻村深月さん原作の同名小説の映画化です。原作は購入したものの積読まま、文庫化もされましたが、いまだに読んでいないので、まっさらな状態で観に行きました。真実が婚約までしたのになぜ姿を消したのかを明らかにしていく物語です。題名にある「傲慢」とは何か、「善良」とは何かが語られていきます。 私などは婚活アプリで知り合うなんてできそうもないですが、今の若い人たちはSNSで知らない人と繋がるのですから、婚活アプリも当たり前なんでしょう。でも、婚活アプリで知り合うのですから、当然男女とも結婚を前提とした交際をしているはずなのに、1年たっても結婚を切り出さない架はどうかしています。誕生日祝いにとケースを出されれば、婚約指輪かと期待するのも無理ありません。男から見ても架のことは理解できません。 桜庭ななみさんらが演じたの友人女性たちが観ていて好きになれません。彼女らから聞かれた架が真実と結婚する可能性は70%と答えたのに、それは彼女の評価が70点ということだと決めつけて、真実に架があなたは70点だと言っていたと告げるとは。完全に二人の間が壊れればいいと思っていたとしか言えないですねえ。本当に嫌な女性たちだなあ。 ラストの落としどころはここかあとは思いますが、婚活アプリで交際しながらはっきりしない架も、結婚したいがために嘘をつき、挙句の果てに突然姿を消す真実も私にとっては理解ができませんでした。 この作品で名演技(?)を見せたのはラスト近くのヤギさん。気落ちしたある人物に近づいていくシーンが慰めにいった感じですよねえ。 |
シビル・ウォー アメリカ最後の日(2024.10.5) |
監督 アレックス・ガーランド |
出演 キリステン・ダンスト ワグネル・モウラ ケイリー・スピーニー スティーヴン・マッキンリー・ヘンダーソン ソノヤ・ミズノ ニック・オファーマン |
アメリカの19の州がアメリカから離脱し、カルフォルニアとテキサスの連合軍がワシントンDCを目指して進軍、政府軍と衝突する・・・。 内戦が起きた理由は説明されません。パンフレットを読むと、大統領が2期までという従前の制度を改正して3期目を務めることになったことも争いの一端と語られますが、それだけで内戦が起きるわけでもないでしょう。だいたい、現在の共和党、民主党の二大政党制の中で、カルフォルニア州は民主党が、テキサス州は共和党が強い地域ですから、それが手を組んで政府軍と戦うのは通常は考えられないところです。今までとは想像できない理由があるのでしょう。 シビル・ウォー(内戦)と題されながら、冒頭自爆テロのシーンはありますが、その後はワシントンDCに大統領のインタビューをしに行こうとする記者たちのロードムービーという感じで、当初の予想を大きく裏切ります。軍隊同士の激しい戦いは途中での市街戦のほかは本格的な戦闘はラストを待たなければなりません。それより、キルスティン・ダンスト演じる戦場カメラマンのリー・スミスに憧れ、カメラマンになりたいと願うケイリー・スピーニー演じるジェシー・カレンの成長物語といった方がいいかもしれません。最初は死体を見て吐いていたジェシーがラストには親しい人の死に対しても感情を露わにせず、写真を撮ることに徹するようになるのは成長というより、人間としての感情をなくしてしまった感がありますが・・・。 今年11月にはアメリカ大統領選が行われます。共和党候補のトランプは当選した際には前回の大統領選のときに議会に突入して逮捕された自分の支持者たちを恩赦し、バイデン氏らを理由を探して逮捕すると公言しているそうなので、当選したらもちろんですが、負けてもアメリカの分断が進むのではないかと思われます。アメリカの民主主義というのはどこに行ってしまったのでしょうか。映画のような形ではないにしろ、内戦が起こる可能性も無きにしも非ずです。 |
ジョーカー フォリ・ア・ドゥ(2024.10.11) |
監督 トッド・フィリップス |
出演 ホアキン・フェニックス レディー・ガガ ブレンダン・グリーソン キャサリン・キーナー ザジー・ビーツ リー・ギル スティーブ・クーガン ハリー・ローティー |
2019年に公開され、主役のジョーカーを演じたホアキン・フェニックスがアカデミー賞主演男優賞を受賞した「ジョーカ―」の続編です。 ジョーカーといえば、ヒース・レジャーが演じたジョーカーのようにバットマンとの戦いが思い浮かびますが、この2作にはバットマンは登場せず、売れない大道芸人であったアーサー・フレックがどうして“ジョーカー"という存在になったのかが描かれていきます。今回は前作で逮捕され精神病院に収容されているジョーカーことアーサー・フレックの状況から始まりますが、「マシエスト」のときのクリスチャン・ベールほどではありませんが、肩甲骨が浮き上がり、ものすごい痩せようです。「ボーはおそれている」のときとは見違えるほどです。相当体重を落としたんですね。 その病院で出会ったリーという女性と恋に落ちますが、演じていたのがレディー・ガガ。彼女の出演もあってか、この作品、全編を通してミュージカルの形式をとっており、二人の歌が披露されます。カーペンターズの「クロス・トゥ・ユー」ほか、どこかで聞いたことのある曲もあります。レディー・ガガが歌う「クロス・トゥ・ユー」も魅力的ですが、でも、続編でありながら前作とは異なる形式で描くのはちょっと違和感あります。 題名の「フォリ・ア・ドゥ」というのがフランス語で精神疾患の名称で「1人の妄想が別の人に感染し、複数人で同じ妄想を共有する」という意味らしく、それはジョーカーの出現によって熱狂するゴッサム・シティの群衆のことを語っている意味にもとれるし、このミュージカルのシーンもそうであるようにジョーカーとリーとの妄想ということなのかもしれません。 ラスト、面会だと言われたアーサーが向かう途中で予想外の展開が待っています。ナイフで自分の顔を切っていた男が意味するのは、多くの人が想像するようなことでしょうか。 |
室井慎次 敗れざる者(2024.10.14) |
監督 本広克行 |
出演 柳葉敏郎 福本莉子 齋藤潤 筧利夫 松下洸平 真矢ミキ 飯島直子 木場勝己 小沢仁志 いしだあゆみ 矢本悠馬 甲本雅裕 遠山俊也 升毅 生駒里奈 丹生明里 稲森いずみ 佐々木希 松本岳 西村直人 赤ペン瀧川 前山くうが・こうが |
踊る大捜査線シリーズのスピンオフ作品。警察のキャリア官僚である室井慎次を主人公にした来月公開の「室井慎次 生き続ける者」との2部作です。 室井は警察改革の夢破れ、警察を定年前に早期退職し、故郷の秋田に戻って、畑を耕しながら事件関係者の子ども2人の里親として家族3人で暮らしていた。そんなある日、室井は東京の里親の家を追い出され、室井のところに行くよう手紙を持った少女、日向杏を保護する。彼女はかつて猟奇殺人を犯し、湾岸署占拠事件にも関り無期懲役となっていた日向真奈美の娘だった。同じとき、室井は自宅近くに死体が埋められているのを発見する。鑑定の結果、死体の身元はかつてレインボーブリッジ封鎖事件で犯人だった男の一人であることがわかり、出所した犯人グループを特殊詐欺と強盗で調べていた警視庁が乗り込んでくる・・・。 小泉今日子さん演じる日向真奈美の娘・杏が母親同様、子どもたちを操って室井の家族の関係を壊そうとします。いったい、彼女の目的は何なのか(母親の復讐ならまずは青島を標的にしないとね。)。またレインボーブリッジ封鎖事件の犯人の一人は誰に、なぜ殺害されたのか。杏とこの事件には関わりがあるのか。来月に2部作の後半の公開が控えているので、今作はまだ事件の始まりが描かれるだけです。 シリーズを観ていない人にはストーリーが分かりにくかったと思いますが、シリーズファンにとっては、ところどころに登場人物たちの若い頃の一場面が挿入され、楽しく観ることができます。また、湾岸署の刑事になることを競っていた緒方と森下(先に刑事になった森下は再び立ち番の警察官に戻され、緒方が刑事となりましたが)が登場するのは嬉しい。緒方が捜査一課の刑事になるとはねえ。ただ、森下は警視庁の警官だったのに、なぜ秋田の拘置所にいるのでしょうか(警視庁を辞めて、秋田県警に採用されたのか?)。また、新城が秋田県警本部長とはねえ。本人がこれで退職と言っていますから、望んだようには出世しなかったですね。最初は出世のことしか考えない嫌な奴でしたが、途中から変わりましたから、出世できなかったのでしょうか。室井の家の囲炉裏端で 室井と新庄が酒を酌み交わすシーンは哀愁が漂います。 ラスト、後編のストーリーに大きな影響を与える人物が登場しました。この人が登場するとはサプライズですね。すべての謎が明らかとなる後編に期待を込めて、おススメとします。 なお、新城のことばで青島が現在警視庁の捜査支援分析センターに配属されていることが語られます。所轄ではなく監視カメラの映像分析などをする部署のようですから、後半でサプライズで青島が登場してくれば最高なんですが。 |
八犬伝(2024.10.25) |
監督 曽利文彦 |
出演 役所広司 内野聖陽 黒木華 寺島しのぶ 磯村勇斗 立川談春 中村獅童 尾上右近 大貫勇輔 土屋太鳳 栗山千明 渡邊圭祐 松岡広大 鈴木仁 板垣李光人 水上恒司 佳久創 藤岡真威人 上杉柊平 河合優実 小木茂光 丸山智己 真飛聖 忍成修吾 塩野瑛久 神尾佑 |
映画は「南総里見八犬伝」を著わした滝沢馬琴の人生と、「南総里見八犬伝」の物語世界を交互に描いていきます。 高校生の頃、夕方NHKで放送していた人形劇の「新・八犬伝」を見て、人形劇でありながらそのストーリーに魅了され、毎日楽しみに観ていたものでした。辻村ジュサブローさんが作られた人形も印象的でしたし、語りを務められた坂本九さんの名調子も忘れられません。そんな時、たまたま父親の本棚にあった白井喬二さんの現代語訳の「南総里見八犬伝」を見つけ、勉強も忘れて夏体中の時間を使って夢中で読みました。「仁・義・礼・智・忠・信・孝・悌」という8つの玉に浮き上がる文字は今でも忘れません。 ただ、白井喬二さんの現代語訳でも上・中・下の3巻で上下2段組という量でしたから、それを2時間30分弱の中で描くのはかなり無理があったと思います。それぞれの犬士のエピソードが十分描き切れなかった感があり、物語では8犬士が揃うまではかなりの紆余曲折があり、その過程が面白かったと思うのですが、映画ではあっという間に8犬士が揃ってしまいました。そこは映画ゆえやむを得ないところでしょうか。 そんな物語の世界より、現実世界での馬琴を演じた役所広司さん、葛飾北斎を演じた内野聖陽さん、そして馬琴の妻を演じた寺島しのぶさんの演技の方が見どころがありました。特に、馬琴が晩年、目が見えなくなって、息子の嫁のお路が口述筆記しているとき、二人がいる部屋に病床から這っていって畜生と言って息絶える馬琴の妻・お百を演じた寺島しのぶさんの演技は凄かったですねえ。いつもは作家となった馬琴を罵倒していたのに、自分が馬琴のために何もできず、お路が代わって行っていることが相当悔しかったのでしょう。また、馬琴の息子・宗伯を演じた磯村勇斗さんも、病弱な感じを出しており、体重減らしたのではないかという熱演ぶりでした。 それにしても、犬の八房がいかにも作り物という外観で、どうにかならなかったですかねえ。 |
十一人の賊軍(2024.11.1) |
監督 白石和彌 |
出演 山田孝之 仲野太賀 尾上右近 鞘師里保 佐久本宝 千原せいじ 岡山天音 松浦祐也 一ノ瀬颯 小柳亮太 本山力 野村周平 音尾琢真 玉木宏 阿部サダヲ 田中俊介 松尾諭 柴崎楓雅 佐藤五郎 吉沢悠 駿河太郎 松角洋平 浅香航大 佐野和真 安藤ヒロキオ 佐野岳 ナダル 木竜麻生 長井恵里 西田尚美 |
(ちょっとネタバレ) 戊辰戦争のとき、小藩の新発田藩は旧幕府軍の奥羽越列藩同盟から軍を出すよう求められていたが、はっきりとした返答をしないでいた。しびれを切らした旧幕府軍は城内に軍を進めてくる。一方、官軍も殿に会いたいと新発田領に向かって進んでくる。領内で両者がぶつかり、戦争になることを恐れた新発田藩の城代家老・溝口内匠は旧幕府軍が領内から立ち去るまでの間、官軍が領内に入らないよう、旧幕府軍の長岡藩を騙った軍で、官軍の領内への侵入を防ごうと計画する。そのために選ばれたのが10人の罪人と官軍との抗戦を主張する急進派の剣術道場道場主の鷲尾兵士郎。罪人たちは無罪にするという言葉を信じて、藩境の砦を守ろうとするが・・・。 実際に戊辰戦争のときに起きた新発田藩の奥羽越列藩同盟への裏切りを下敷きに作られた作品です。罪人と共に戦う鷲尾を演じたのが、このところ、朝ドラに出演したり、大河ドラマの主役が決まったりと、大活躍の仲野大賀さんです。直心影流の使い手で両手を広げる構えがカッコよかったですねえ。ラストの怒りには鬼気迫るものがありました。妻を手籠めにされ、怒って相手の武士を殺害して捕まった駕籠かきの駕籠政を演じたのが山田孝之さん。最初は逃げることだけを考えていたのに、やがて皆とともに命をかけて戦います。ラスト、逃げることができたのに、あれではあまりにカッコ良すぎです。罪人の中で最も強かったのは、一番の老人の元長州藩士の爺っつあん。演じる本山力さんは殺陣技術集団の東映京都撮影所の剣会に所属しているので、殺陣も決まっていました。一方、冷酷な家老・溝口内匠を演じたのが阿部サダフさん。旧幕府軍の疑念を晴らすため、挙兵に反対する農民(実際はコレラ患者とここもまた旧幕府軍を騙しているのですが)を端から斬り殺したり、無罪放免を約束した罪人たちの口封じをしたり、観客からすれば憎き役どころですが、小藩の新発田藩が生き残るために、家老として藩の存続を第一に考えなくてはならないのは無理からぬところでしょう。すべてを終えた後に自分自身が腹を切れば、親としてあんな不幸な目に合わなかったのでしょうけど。 「七人の侍」のように、様々な個性を持った者たちがチームを組んで戦う時代劇を久しぶりに観ました。面白かったです。堪能しました。 |
スマホを落としただけなのに-最終章-ファイナルハッキングゲーム(2024.11.1) |
監督 中田秀夫 |
出演 成田凌 クォン・ウンビ 千葉雄大 大谷亮平 白石麻衣 井浦新 佐野史郎 真飛聖 利重剛 猪塚健太 髙石あかり 田中圭 原田泰造 |
シリーズ第3弾にして完結編です。警察から逃れた浦野は韓国に潜伏していたが、韓国のテロ組織“ムグンファ"から日韓首脳会談の阻止を依頼される。その後、日本に対する大規模なサイバーテロ事件が起き、加賀谷は浦野が仕組んだものではないかと疑い、浦野に罠を仕掛け、発信元の韓国に公安部の兵頭とともに向かう・・・。 第1作では北川景子さん、第2作では白石麻衣さんがヒロインとして登場しましたが、今作では元ガールズグループ”IZ※ONE”のリーダーだったクォン・ウンビが“ムグンファ"の連絡役・チェ・スミンとして出演します。まあ、驚くほどスタイルのいいこと。次第に浦野に意かれていくスミンがヒロインとしてどうい0う役回りをするのかが見どころとなります。見どころということでは、警察関係者内に潜む“ムグンファ"の内通者は誰なのかが一番ですね。ただ、これはすぐに「ああ、この人だな」とわかってしまうかもしれません。また、加賀谷と結婚した自石麻衣さん演じる美乃里が仕事で韓国に行ったり、不審な行動を見せますが、彼女の行動の意味も気になるところです。 今回、北川景子さんは写真だけの出演ですが、彼女と結婚した冨田誠役の田中圭さんが特別出演しています。また、先頃、来年下期のNHKの朝ドラの主役に決まった髙石あかりさんが、浦野の協力者として出演しています。彼女、日立たないけど、いろいろな作品に出演していますね。 ラストシーン、あの舞台は富十五湖でよく映像作品に使用される洋館だと思うのですが(先頃まで日本テレビで放映していた成田凌さん主演の「降り積もれ孤独な死よ」でも舞台となったところかな)、テレビ番組に出演した成田さんは、あのシーンは笑ってしまうと言っていましたが、まあ確かに笑ってしまうかも。 |
アイミタガイ(2024.11.2) |
監督 草野翔吾 |
出演 黒木華 中村蒼 田口トモロヲ 西田尚美 藤間爽子 風吹ジュン 草笛光子 安藤玉恵 升毅 松本利夫 吉岡睦雄 近藤華 白鳥玉季 |
梓は結婚式場のウェディングプランナーだが、自身は父母が離婚していることから、恋人の澄人との結婚に踏み切れないでいた。そんなある日、中学生の頃からの親友の写真家・叶海が撮影の仕事で行ったパプア・ニューギニアで事故死してしまう。梓は叶海の死を受けいることができず、彼女の死後もスマホにラインのメッセージを送り続ける。一方、叶海の両親は児童養護施設から叶海あてのカードを受け取り、彼女が生前、その養護施設の子どもたちと交流をしていたことを知る。ヘルパーをしている梓の叔母は、気難しい老女・こみちの担当となるが、こみちがピアノを弾くことを梓に話すと、金婚式でピアノを弾く高齢女性を探していた梓から、こみちを紹介してくれるよう頼まれる・・・。 期待もせずに観に行ったのですが、とても素敵な作品でした。群像劇ですが、中学生の頃の梓と叶海が、こみちのビアノに心が癒されていたり、登場人物それぞれが実はちょっとした繋がりがあることが最後に明らかとされ、温かな気持ちになります。特に、眠っていて降りる駅を乗り過ごしそうになった男性と澄人とのエピソードは良かったですねえ。ものの見事に話が繋がりました。 荒木一郎さんの「夜明けのマイウェイ」を歌う黒木華さんの声がエンドロールに流れます。荒木さんとはまた違った温かみのある歌になっています。 題名の「アイミタガイ」とは「相身互い」と書き、同じ境遇にある者同士が同情し助け合うことを意味するようですが、それより、梓の祖母が言う「最近はあまり聞かんくなったけど、世の中は持ちつ持たれつ、お互い様というくらいの意味や」の方が何となくすっと胸に入ってきます。 |
ヴェノム ザ・ラストダンス(2024.11.4) |
監督 ケリー・マーセル |
出演 トム・ハーディ キウェテル・イジョフォー ジュノー・テンプル リス・エバンス ペギー・ルー アラナ・ユーバック スティーブン・グレアム |
シリーズ第3弾です。 ヴェノムらシンビオートの創造主・ヌルは自分が作ったシンビオートらによってクリンターと呼ばれる惑星に幽閉されていたが、脱出するための鍵”コーデックス”を持つヴェノムを探して、シンビオートハンター・ゼノファージを地球に送る。逃走の旅を続けていたエディ・ブロックとヴェノムはゼノファージとすトリックランドが率いる特殊部隊に追われて逃げるが、やがて特殊部隊により捕まり、エリア51にある基地に連れてこられる。そこにはヴェノム以外にも地球上にやってきたシンビオートたちが捕獲されており、死んだと思っていたグレアム刑事もシンビオートに寄生され生きていた・・・。 ヴェノムとエディ・ブロックとのコメディのような会話を楽しみながら、ヴェノムとゼノファージの戦いに手に汗握る作品です。今回は、シンビオートたちが協力してゼノファージに戦いを挑むところが見どころです。題名が「ザ・ラストダンス」ですし、あのラストではシリーズはこれで終わりかと思うのですが、エンドロールの前に挿入されたシーンでは、また何かが起こるようです。果たしてどうなるのでしょうか。 |
グラディエーターⅡ 英雄を呼ぶ声(2024.11.15) |
監督 リドリー・スコット |
出演 ポール・メスカル ペドロ・パスカル デンゼル・ワシントン コニー・ニールセン ジョセフ・クイン フレッド・ヘッキンジャー リオル・ラズ デレク・ジャコビ |
先月公開の「室井慎次 敗れざる者」に続く二部作の後編です。 前作ではレインボーブリッジ封鎖事件の犯人だった男の殺害死体が室井の家の近くで発見されたり、日向真奈美の娘である杏が室井の元に現れたり、室井の自宅の物置が放火されたり、そしてラストでは加藤浩次さん演じる室井の里子の凛久の父親が刑務所から出所したりという様々な端緒が描かれただけだったので、果たしてこの後編でどんな展開になるのか、そして何より、前編で警視庁の捜査支援分析センターにいると明らかにされた青島は顔を出すのか、大いに楽しみで観に行きました。 結局、この映画、題名どおり、室井慎次がどういう男なのかということを描く作品でした。殺人事件の犯人はあっけなく捕まりましたし、加藤浩次さんもそれほどの狂犬ぶりは見せませんでしたし(父親として引き取っても室井の話ばかりされるのでは、それはそれでかわいそうと思ってしまいます。)、日向杏も母親のようなサイコな感じを見せませんでしたしね。ラストは賛否両論あるのでしょうけど、室井慎次を演じてきた柳葉敏郎さんとしては納得のいくラストだったのでは。 そして、シリーズファンが待ち望んでいた青島が登場したかどうかは観てのお楽しみとしましょう。室井が牧場の跡取り息子を探すのを頼んだ刑事というのは青島ではなかったでしょうか。そうそう、すみれさんのその後がわかったのもシリーズファンとしては嬉しいのですが、その事実を受け止めるのはちょっと複雑です。 エンドロールの最後に「THE ODORU LEJEND STILL CONTINUES」と出てきます。果たして今回の作品のようにスピンオフ作品として青島以外の登場人物が主人公になった作品が続くのか、それとも、青島が登場するのか。これまた楽しみになりましたね。 |
室井慎次 生き続ける者(2024.11.16) |
監督 本広克行 |
出演 柳葉敏郎 福本莉子 齋藤潤 前山くうが・こうが 松下洸平 矢本悠馬 真矢ミキ 筧利夫 小泉今日子 マギー 飯島直子 小沢仁志 木場勝己 丹生明里 稲森いずみ 松本岳 加藤浩次 いしだあゆみ 西村直人 |
先月公開の「室井慎次 敗れざる者」に続く二部作の後編です。 前作ではレインボーブリッジ封鎖事件の犯人だった男の殺害死体が室井の家の近くで発見されたり、日向真奈美の娘である杏が室井の元に現れたり、室井の自宅の物置が放火されたり、そしてラストでは加藤浩次さん演じる室井の里子の凛久の父親が刑務所から出所したりという様々な端緒が描かれただけだったので、果たしてこの後編でどんな展開になるのか、そして何より、前編で警視庁の捜査支援分析センターにいると明らかにされた青島は顔を出すのか、大いに楽しみで観に行きました。 結局、この映画、題名どおり、室井慎次がどういう男なのかということを描く作品でした。殺人事件の犯人はあっけなく捕まりましたし、加藤浩次さんもそれほどの狂犬ぶりは見せませんでしたし(父親として引き取っても室井の話ばかりされるのでは、それはそれでかわいそうと思ってしまいます。)、日向杏も母親のようなサイコな感じを見せませんでしたしね。ラストは賛否両論あるのでしょうけど、室井慎次を演じてきた柳葉敏郎さんとしては納得のいくラストだったのでは。 そして、シリーズファンが待ち望んでいた青島が登場したかどうかは観てのお楽しみとしましょう。室井が牧場の跡取り息子を探すのを頼んだ刑事というのは青島ではなかったでしょうか。そうそう、すみれさんのその後がわかったのもシリーズファンとしては嬉しいのですが、その事実を受け止めるのはちょっと複雑です。 エンドロールの最後に「THE ODORU LEJEND STILL CONTINUES」と出てきます。果たして今回の作品のようにスピンオフ作品として青島以外の登場人物が主人公になった作品が続くのか、それとも、青島が登場するのか。これまた楽しみになりましたね。 |