スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム(2022.1.8) |
監督 ジョン・ワッツ |
出演 トム・ホランド ゼンデイヤ ベネディクト・カンバーバッチ ジェイコブ・バタロン アルフレッド・モリーナ ジョン・ファブロー ジェイミー・フォックス ウィレム・デフォー ベネディクト・ウォン マリサ・トメイ J・K・シモンズ トニー・レボロリ アンガーリー・ライス ポーラ・ニューサム ハンニバル・バレス マーティン・スター J・B・スムーブ トビーマグワイア アンドリュー・ガーフィールド |
(大いにネタバレあり。映画を観ていない人は読まないように) 前作ラストでミステリオによって正体が世間に明かされてしまったピーター・パーカー。一躍世間の注目を浴びるばかりか、地球を救いに来たミステリオを殺害した犯人として糾弾される。ピーター自身ばかりでなくMJやネッドにも迷惑をかけることとなることを苦慮したピーターは、ドクターストレンジに依頼して、世間の人から自分がスパイダーマンだという記憶を消してもらうこととするが、魔術の途中でピーターがいろいろ注文を付けたため失敗し、マルチバースの世界からスパイダーマンの敵だったヴィランを呼び寄せてしまう・・・。 トム・ホランド主演のシリーズ第3弾です。スパーダーマンの映画化といえば、2002年からのサム・ライミ監督、トビー・マグワイア主演の3部作、2012年からのマーク・ウェブ監督、アンドリュー・ガーフィールド主演の2部作、そしてトム・ホランド主演の現在のシリーズとなりますが、これらは別の世界での話という設定(いわゆる「マルチバース」の世界です。)で、それらの別のスパイダーマンがいる世界からヴィランが呼び寄せられてしまうという話になっています。 以前の作品でヴィランを演じていたウィレム・デフォーやアルフレッド・モリーナ、ジェイミー・フォックスらがそのまま登場するのですから凄いです。そしてヴィランがこの世界にやってくるのですから、その世界のスパイダーマンもと考えるのは当然のことで、予想通りトビー・マグワイアとアンドリュー・ガーフィールド演じるスパイダーマンも登場します。いやぁ~これは圧巻です。3人のスパイダーマンがそろい踏みするのですから。トビー・マグワイアはちょっと歳取りましたねえ。前髪が寂しくなっています。もう最初の作品から約20年がたっているのですから、無理ないですけど。向こうの世界でその年齢になってもスパイダーマンとして頑張っているということですね。マーベルの秘密保持が厳しくて、公開までなかなか明らかにならなかったし、購入したパンフレットにもトビー・マグワイアやアンドリュー・ガーフィールドの出演のことはまったく出てきていませんでした。 カメオ出演もありました。ピーターの部屋に石が投げ込まれたのを手で受け止めてしまう弁護士がいましたが、この人は“デアデビル”だそうです。マーベル映画らしくエンドロールの途中で“ヴェノム”も登場。いよいよ今後スパイダーマンとの絡みがあるのではないかと期待されます。更に、最後にはドクターストレンジのこの後の作品をうかがわせるシーンも出てきます。マーベル・シネマティック・バースは目が離せません。 スパイダーマンのシリーズ自体はこれで終わりのようです。愛する人を失い、記憶からも存在が消されてしまい悲しいラストとなりましたが、前を向いて行動するピーターの行動に希望が見えます。 |
コンフィデンスマンJP 英雄編(2022.1.21) |
監督 田中亮 |
出演 長澤まさみ 小日向文世 東出昌大 小手伸也 江口洋介 松重豊 瀬戸康史 城田優 生田絵梨花 広末涼子 織田梨沙 関水渚 赤ペン瀧川 石黒賢 梶原善 徳永えり 高嶋政宏 生瀬勝久 真木よう子 角野卓造 |
富豪たちから美術品を騙し取り、貧しき人々に分け与えたことから“英雄”と呼ばれた詐欺師・三代目“ツチノコ”が死ぬ。彼の下で腕を磨いた過去を持つ、ダー子、ボクちゃん、リチャードの3人は“ツチノコ”の称号をかけた勝負をすることとなる。舞台はマルタ島。狙うのは、スペイン人の元マフィアが所有する古代ギリシャ彫刻の“踊るビーナス”。果たして最後に笑うのは誰か。インターポールやいつも3人に騙される赤星も登場し、騙しあいが始まる・・・。 シリーズ第3弾です。前2作を観て、どんでん返しに次ぐどんでん返しなので、果たしてこれは事実なのか、騙されないぞと心して観ていたのですが、やっぱり騙されましたねえ。いったい、誰が騙す側で、誰が騙される側なのか、ふたを開けてみればびっくりです。でも、このシリーズは騙されての爽快感がいいんですよねえ。3作目でしたが、だれずにおもしろかったです。 気になるのは、このシリーズの行方です。ボクちゃん役の東出昌大さんは、懲りない行動が理由で事務所から契約破棄されてしまいましたからねえ。ボクちゃん役がどうなるのか・・・。 |
ナイル殺人事件(2022.2.25) |
監督 ケネス・ブラナー |
出演 ケネス・ブラナー ガル・ギャドット アーミー・ハーマー トム・ベイトマン アネット・ベニング ラッセル・ブランド アリ・ファザル ドーン・フレンチ ローズ・レスリー エマ・マッキー ソフィー・オコネドー ジェニファー・ソーンダース レティーシャ・ライト |
ナイル川を遊覧する豪華客船の中で結婚したばかりの夫・サイモンとともにハネムーンの旅をしていた美貌の資産家、リネット・リッジウェイが何者かに殺害される事件が起きる。その船にはリネットに自分の恋人だったサイモンを奪われた女性・ジャクリーンも乗っていたが、彼女には完璧なアリバイがあった。しかし、船にはジャクリーンだけでなく、リネットを殺害する動機を持った者たちが何人も乗船していた。たまたまエジプト旅行をしていたエルキュール・ポアロが“灰色の脳細胞”を駆使して、犯人を捜そうとするが、更に殺人事件が起こる・・・。 アガサ・クリスティの「ナイルに死す」の映画化です。監督、主演は「オリエント急行殺人事件」を監督、主演もしたケネス・ブラナーです。原作は読んでいないので、まっさらな気持ちで観に行ったのですが、ストーリー展開はミステリにはよくある話だったので、はっきり言って謎解きは簡単。犯人は見事に思った通りの人物でした。こんなに簡単にわかってしまうのは原作がいまひとつなのか、それとも映像化に問題があったのか、どちらでしょうか。原作は割と評価が高いのですけどね。 冒頭にポアロがなぜ口ひげをはやすことになったのかの理由が描かれています。中身のストーリー以上に強烈な印象を残します。 |
ナイトメア・アリー(2022.3.27) |
監督 ギレルモ・デル・トロ |
出演 ブラッドリー・クーパー ケイト・ブランシェット トニ・コレット ウィレム・デフォー リチャード・ジェンキンス ルーニー・マーラ ロン・パールマン メアリー・スティーンバージェン デビッド・ストラザーン |
一緒に暮らしていた父を故意に凍死させ、家を焼き旅に出たスタントン(スタン)・カーライルは、ある街でカーニバルの一座と出会う。そこでカーニバルの評判であった人間とも怪物ともいえない“獣人ショー”に目を奪われたスタンは、マネージャーのクレムから誘われ、カーニバルで働くこととなる。読唇術師のジーナに気に入られたスタンは彼女のショーの手伝いをしながら読唇術を学ぶ。やがて、スタンはショービジネス界での成功を夢見て、“感電ショー”で人気の女性・モリーとともに、カーニバルの一座を離れる。それから2年後、スタンは持ち前の才能を生かしてホテルのステージでショーをするまでになっていた、そのショーで出会った精神科医・リリスと組み、彼女から得た患者の情報を使い、金持ちたちに食い込んでいく。やがて、娘を亡くして苦しむ富豪のグリンドルに、モリーを娘に見立てた亡霊に会わせることにより、金を得ようとするが・・・。 小学生の頃のお祭りには、蛇女とかろくろ首とかの見世物小屋が出ていました。学校から、絶対近づかないようにと注意されていたので、入ることはなかったのですが、テントの外側に描かれたおどろおどろしい絵に気になって仕方がなかったものでした。蛇女なんて絶対いるわけないとわかっているのに、気になるんですよねえ。この作品にも“獣人”という見世物が最初に登場しますが、ラストで再びあんな形で話に出てくるとは・・・。驕れた男の末路はあまりにみじめです。 |
ベルファスト(2022.3.28) |
監督 ケネス・ブラナー |
出演 カトリーナ・バルフ ジュディ・リンチ ジェイミー・ドーナン キアラン・ハインズ コリン・モーガン ジュード・ヒル |
今年のアカデミー賞作品賞にノミネートされた作品です。同時期に公開された「ナイル殺人事件」のケネス・ブラナー監督が自分の少年時代を投影した作品です。 舞台は北アイルランド。一人の少年、9歳のバディの目を通して、後に北アイルランド紛争として多くの犠牲者を出したプロテスタントとカトリックとの争いの始まりが描かれていきます。何も考えずに友人に無理やり連れられて行った先で略奪行為に参加してしまい、洗剤を抱えて家に帰ってきたバディに母のカトリーナが略奪された店に洗剤を返しに息子を連れていきます。政治や宗教のことなんてわからないバディに、正しいことを教えようとするカトリーナの強い気持ちがよく表れています。 宗教を信じることとは無縁の私から見ると、顔なじみで同じキリスト教でありながら、宗派が異なるだけで他者を受け入れようとはしない頑迷さに宗教の恐ろしさを見てしまいます。宗教には寛容という考えがないのでしょうか、それともあったとしても、それは同じ宗教を信じる人に対してだけなのでしょうか。 それにしてもバディを演じた子役のジュード・ヒルくんの演技が上手なこと。 |
THE BATMAN ザ・バットマン(2022.3.28) |
監督 マット・リーブス |
出演 ロバート・パティンソン ゾーイ・クラビッツ ジェフリー・ライト ポール・ダノ コリン・ファレル アンディ・サーキス ジョン・タトゥーロ ピーター・サースガード バリー・コーガン ジェイミー・ローソン ピーター・マクドナルド ルパート・ペンリー=ジョーンズ |
子どもの頃、両親を殺害されたブルース・ウェインは、悪を憎み、夜はマスクと黒いコスチュームで素顔を隠し、犯罪者を痛めつけていた。そんなとき、権力者が標的の殺人事件が発生する。犯人のリドラーは、犯行の際、必ずなぞなぞを残し、警察やバットマンを挑発する・・・。 バットマン役としてロバート・パティンソンを据えた新しいバットマンシリーズの第1作です(たぶん、続編は製作されるでしょう。)。ティム・バートン、マイケル・キートンのコンビのバットマンもクリストファー・ノーラン、クリスチャン・ベールのコンビのバットマンも暗いイメージでしたが、このバットマン更に暗いです。ロバート・パティンソン、全然笑顔を見せません。とにかく、正義の使者というより、悪人へ復讐する者といった方が適切で、一般人からも、警察官からも嫌われていますからね。今後の活躍で正義の使者としての存在になっていくのでしょう。 この作品にはゾーイ・クラヴィッツ演じるキャットウーマンが登場しますが、歴代のキャットウーマンの中でショートヘアーという点ではハル・ベリーに似た雰囲気があり、ミシェル・ファイファーやアン・ハサウェイのような妖艶さはありません。でも、バットマンとの男女の関係でいえば一番近かったといえるのではないでしょうか。個人的には一番好きなキャットウーマンです。ラストでバイクに乗ったバットマンとキャットウーマンが分かれ道で右と左に分かれていくシーンは印象的でした。次作にもゾーイ・クラヴィッツ演じるキャットウーマンの登場に期待したいです。 |
ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密(2022.4.8) |
監督 デビッド・イエーツ |
出演 エディ・レッドメイン ジュード・ロウ マッツ・ミケルセン アリソン・スドル ダン・フォグラー エズラ・ミラー ジェシカ・ウィリアムズ カラム・ターナー ビクトリア・イエイツ ウィリアム・ナディラム キャサリン・ウォーターストン フィオナ・グラスコット ポピー・コービー=チューチ |
シリーズ第3弾です。 魔法界を支配し、人間との全面戦争をたくらむグリンデルバルトに対し、ダンブルドアは若い頃にグリンデルバルトとの間で結んだ血の誓いのために彼と戦うことができなかった。彼は教え子のニュート・スキャマンダーに命じてグリンデルバルトと戦う仲間を集める。ニュートの兄のテセウス、アメリカのイルヴァーモーニー魔術魔法学校の教師のユーラリー・ヒックス、妹をグリンデルバルドに殺され復讐を誓うユスフ・カーマ、ニュートの助手であるバンティ・ブロードエーカー、そして、愛するクイニーがグリンデルバルトの元へと去り、失意のジェイコブ。彼らはグリンデルバルトを倒そうと旅に出るが、グリンデルバルトは国際魔法使い連盟の現指導者であるアントン・フォーゲルによって罪を許されたばかりか、連盟の次期指導者選挙に立候補し、魔法界を牛耳ろうとする・・・。 字幕版で都合のいい時間がなかったので吹替版を観に行ったのですが、ダンブルドアが何度もグリンデルバルドのことを「愛していた」と言うのですよね。ダンブルドアがゲイだということは、作者のJ・K・ローリングは何かの折に言っていたようですが、どうなんでしょう。中国ではこの「愛している」の部分はセリフが替えられたかカットされたようです。題名のダンブルドアの秘密はこのゲイだということでしょうか。それとも、エズラ・ミラー演じるクリーデンスとダンブルドアの関係のことでしょうか。 グリンデルバルド役が前作までのジョニー・デップからマッツ・ミケルセンに代わっていますが(ジョニー・デップの元妻のアンバー・ハードへのDV疑惑によるためのようです。)、やっぱりジョニー・デップの方が個人的にはグリンデルバルト役に合っていると思います。 また、今作では前2作で重要な役柄だったクイニーの姉、ティナ・ゴールドスタインが、演じるキャサリン・ウォーターストンのスケジュールの都合かどうかはわかりませんが、ラストでちょっと登場しただけなのは残念です。 |
ホリック(2022.4.30) |
監督 蜷川実花 |
出演 神木隆之介 柴咲コウ 松村北斗 玉城ティナ 吉岡里帆 磯村勇斗 趣里 DAOKO モトーラ世理奈 西野七瀬 大原櫻子 てんちむ 橋本愛 |
(ネタバレあり) 幼い頃から人の心の闇に寄り憑く“アヤカシ”を見ることができる四月一日(ワタヌキ)君尋はその能力故、孤独な毎日を送っていた。ある日、一匹の蝶に誘われて不思議な“ミセ”を訪れた四月一日は、店の女主人・壱原侑子から四月一日のどんな願いでもかなえてくれると言い、その対価として彼の一番大切なものを差し出すよう言われる。一番大切なものが何なのか分からないまま、その日からミセを手伝うようになった四月一日は、ミセを訪れる様々な悩みを持つ客と出会う・・・。 正直のところ、映画の中に没入できず、あやうく寝落ちしそうになってしまい、ストーリーもよくわかりませんでした。結局、吉岡里帆さんが演じた女郎蜘蛛って何だったのでしょう。そして、柴咲コウさん演じた侑子は、もしかしたら四月一日のお母さんなのかな? 監督の蜷川さんの作品を観るのは初めてです。蜷川作品といえば映像美が評判ですが、この作品も映像は奇麗でしたねえ。でも、映像美の前にもう少しわかりやすい演出をしてほしかったです。 いつも真面目な役か、ちょっと抜けた役が多い吉岡里帆さんが妖艶な悪役を演じたのは印象的でした。最初は吉岡さんだとは気づきませんでしたもの。一方、四月一日を演じた神木くんは、役としてはぴったりだったかもしれませんが、ラストの横になって煙草をふかす姿には失笑です。あれは柴咲コウさんがやるからカッコいいのであって、演じさせられた神木くんはかわいそうだったですね。柴咲コウさんは今回の侑子やテレビでのインビジブルの役のような普通でない役が多いですが、雰囲気的に仕方ないのかなあ。そういう意味では普通の刑事役を演じるガリレオシリーズ新作「沈黙のパレード」は楽しみです。 |
ドクター・ストレンジ マルチバース・オブ・マッドネス(2022.5.6) |
監督 サム・ライミ |
出演 ベネディックト・カンバーバッチ エリザベス・オルセン レイチェル・マクアダムス ソーチー・ゴメス ベネディクト・ウォン キウェテル・イジョホー |
ドクター・ストレンジを主役とするシリーズとしては第2弾です。 怪物に追われていた少女、アメリカ・チャベスを助けたストレンジ。マルチバース=多次元世界を移動できる能力を持っている彼女は、その能力を何者かに狙われ別世界から逃れてきたのだった。ストレンジは彼女を守るためにスカーレット・ウィッチことワンダに助けを求めるが、実はスカーレット・ウィッチこそがアメリカの能力を狙っていた人物だった。彼女は別次元の世界に存在する自分の子どもたちとの生活を夢見てアメリカの能力を必要としていたのだった。ストレンジはウォンとともにカマータージにアメリカを匿うが・・・。 「スパイダーマン ノー・ウェイ・ホーム」で始まった“マルチバース”の概念が本格的にストーリーの中に展開されています。別の次元に存在するストレンジやアベンジャーズならぬインフィニティという世界を守る組織の存在、そしてその中の一員のある人物の登場など、マルチバースならではの驚きの展開が繰り広げられます。 監督はサム・ライミ。彼らしいホラー要素もそこかしこに。血だらけのスカーレット・ウィッチの顔や鏡の中から身をよじりながら現れるスカーレット・ウィッチ、そして、スカーレット・ウィッチがインフィニティの一員であるあの人の首をへし折るシーンは、サム・ライミならではのホラー感100%です。 なぜ、アベンジャーズの一員であるスカーレット・ウィッチがアメリアの能力を必要とするのか、そのために情け容赦なく人を殺害するのかはこの映画を観ただけではよくわかりません。このあたりはストリーミングサービスのディズニープラスで放映していた「ワンダヴィジョン」を観ていればわかるようですが、それでディズニープラスの囲い込みをしようとするなんて、ディズニーさん、それはひどすぎるでしょう。映画は映画で完結してほしいですね。 エンドロールのおまけ映像で、なんとシャーリーズ・セロンが登場します。次作に出演するのでしょう。これは楽しみです。 |
流浪の月(2022.5.13) |
監督 李相日 |
出演 松坂桃李 広瀬すず 横浜流星 多部未華子 趣里 三浦貴大 白鳥玉季 増田光桜 内田也哉子 柄本明 |
2020年の本屋大賞を受賞した凪良ゆうさんの同名小説の映画化です。 原作は文庫本を購入していましたが、積読ままで内容を知らないまま観に行ってきました。でも、原作を読まないまま言うのは何ですが、これが本屋大賞を受賞するほど多くの人の支持を受けたものとはねえ。個人的には今一つという印象です。 雨が降ってきた中、濡れながら公園のベンチに座っていた少女・更紗に文は傘をさしかける。家に帰りたくないと言う更紗に文は「家に来る?」と言って彼女を自分の家に連れ帰る。やがて、文は誘拐犯として逮捕される。それから15年が過ぎ、更紗は恋人の亮と同棲しながら、ファミレスでバイトをして働いていた。ある日、職場の同僚と飲み会のあとに入った喫茶店で、更紗はマスターとして働いている文と再会する。それから更紗は彼女に気づかないでいる文に会いに喫茶店に通うようになる・・・。 文を演じた松坂桃李さんは、この映画の役作りのためにかなりの減量をしたようで、当時結婚したばかりなのに激ヤセするなんて何か問題があるのではと散々噂されたものですが、この映画のためだと話せなかったのですね。更紗を演じたのは広瀬すずさんですが、恋人の亮を演じた横浜流星さんと大胆な男女の絡みのシーンも演じて体当たりの演技でしたね。つい、この前まで幼い少女だと思っていたのに、すっかり成長しました。更紗の恋人役を演じた横浜流星さんもいつものイケメンぶりとは異なるDV男を熱演でしたね。 2時間半という割と長い上映時間でしたが、眠ることはなく観ることはできました。ただ、映画を観ただけでは、本屋大賞を受賞するほど多くの人から支持された理由が僕にはわかりませんでした。松坂さんが演じた佐伯文が、なぜロリコンだったのかはラストで衝撃的といっていい事実が明らかにされますが、そういう事実があったにせよ、冒頭、家に帰りたくないと言った更紗に、「どうして」という理由を聞くこともなく「家に来る?」といって連れ帰ってしまうのは、やっぱり理解できません。また、更紗が恋人の亮に、文の幸せを壊すなと激高するシーンがありますが、でも、それはあなたが彼に近づいたことに原因があったのではないですかと言いたくなります。誘拐の被害者が加害者に近づけば、世間からどう見られるのか、大人になった更紗なら想像できたはずです。そのうえ、ロリコンの誘拐犯だったと世間から認識されている文の元に幼い女の子を連れて行けば、どう見られるのか想像できないのでしょうか。彼女の悲惨な生い立ちを理解しなくてあげなくてはとも思いますが、結局、文が好きだという自分の気持ちを優先させてしまった、エゴな女という印象しか持てませんでした。これは、きちんと原作を読まなくてはいけませんね。 |
死刑にいたる病(2022.5.21) |
監督 白石和彌 |
出演 阿部サダヲ 岡田健史 岩田剛典 中山美穂 宮﨑優 鈴木卓爾 佐藤玲 赤ペン瀧川 大下ヒロト 吉澤健 音尾琢真 |
高校生の年齢の男女24人を殺害したとされる榛村大和が逮捕される。中学生の頃、榛村が営むパン屋に通い顔見知りだった大学生の筧井雅也は、榛村からの会いに来てほしいという手紙をもらい、拘置所に面会に行く。榛村は雅也に立件された9人のうち年齢が20代の女性・根津かおるの事件は自分の犯行ではないと訴える。榛村の代理人の弁護士事務所で裁判の書類を閲覧した雅也は、弁護士事務所の職員を騙って関係者に話を聞きに行く。やがて、雅也は根津かおるの周囲にいた怪しげな男・金山の存在に気づくが、その人物は拘置所の面会の待合室にいた男だった・・・。 櫛木理宇さんの「チェインドッグ」(改題されて映画と同じ題名になっています。)が原作です。2015年に刊行された時に読んだのですが、もうすっかり内容は忘れていました。 冒頭に描かれる被害者たちをいたぶるシーンは目をそむけたくなる程残虐です。被害者が爪を剥がされるシーンでは思わず観ているこちらまで痛みを感じるようでした。そっと相手の心の中に入り込み、信頼を得てから残虐に殺害することに快感を覚えるのは、まさに稀代のサイコパス殺人鬼ですね。 一方、主人公である筧井雅也のキャラも最初かなり不気味です。また、自分の意思を持たないような彼の母親もちょっとおかしい。やがて、主人公のキャラは祖母が校長を務めるという教育一家の中で、いわゆる一流大学へ行くことができず、そんな息子の人間性も認めようとしない父親に原因の一端があることが分かってきますが、この父親もある意味異常です。こんな家にいれば、それはおかしくもなりますよねえ。 言葉で人を操ることは一種の才能であり、榛村が刑務所の中にいながらも、彼の才能によって、やがて恐ろしい事実を生じさせてしまうところが、この映画の見どころとなっています。いやぁ~サイコパスは恐ろしい! 何といっても、榛村を演じる阿部サダヲさんのやさし気な表情のサイコパスの演技が秀逸です。そして、雅也を演じる岡田健史さんについても、いつものイケメンで真面目な青年ではなく、どこか性格的に問題のある青年を見事に演じます。そして、金山を演じた岩田剛典さんですが、映画を観たあとでパンフレットを見るまで岩田さんだとは思いませんでした。彼もいつもとは異なる人物を演じてくれましたね。そのほか、ある人物のキャラが一番のびっくりだったのですが、ネタバレになるので伏せます。 |
トップガン マーヴェリック(2022.6.3) |
監督 ジョセフ・コシンスキー |
出演 トム・クルーズ マイルズ・テラー ジェニファー・コネリー ジョン・ハム グレン・パウエル ルイス・プルマン チャールズ・パーネル バシール・サラディン モニカ・バルバロ ジェイ・エリス ダニー・ラミレス グレッグ・ターザン・デイビス エド・ハリス バル・キルマー リリアナ・ウレイ |
前作が公開されたのは1986年ですから、36年ぶりの続編です。当初2019年に公開が予定されていましたが、新型コロナの感染拡大のため、なんと3年延期されての公開となりました。待たせましたねえ。冒頭、前作のテーマ曲が流れただけで、すっと映画の中に入り込んでいくことができました。 ピート・ミッチェルことマーヴェリックは未だに現役であることにこだわり、大佐として戦闘機パイロットを続けていた。そんなマーヴェリックに“トップガン”での教官就任が命ぜられる。“トップガン”に集まったパイロットたちに命ぜられた作戦は、ある国が稼働させようとしているウラン濃縮基地を稼働前に破壊すること。マーヴェリックは彼らの教官として作戦遂行のための訓練を行うこととなるが、パイロットの中にかつて彼の相棒であり、訓練中の事故により死亡したグースの息子・ブラッドリーがいることに気付く。マーヴェリックはグースの妻からの息子は戦闘機乗りにしたくないという願いから、ブラッドリーの士官学校入学を邪魔したが、そのことからブラッドリーはマーヴェリックを憎んでいた。 ストーリーとしては、厳しい訓練シーンがあり、訓練の中での事故もあり、そして最後は戦闘シーンという前作と変わらぬ単純な展開ですが、観ていて飽きさせません。俳優たちが実際に戦闘機に乗って撮影したというのですから、凄いです。これは、IMAX向きの映画ですね。 今回マーヴェリックたちが乗るのが第4世代のF-18で相手の戦闘機が字幕では第五世代と出ていましたが、この世代の違いはよく分かりませんでした。相手が第5世代ならアメリカも第5世代、たぶん冒頭でマーヴェリックがマッハ10を超えるときに乗っていたのが第5世代の戦闘機だと思うのですが、なぜ、この戦闘機を使用しなかったのでしょう。前作でマーヴェリックが乗っていたF-14が今作で登場したのは、あまりにできすぎです。 前作でアイスマン役をしていたバル・キルマーは咽頭がんを患っており、今作に登場するのかどうかと言われていましたが、何と海軍の最高司令官となっており、病気で声が出せないという現実と同じ設定で登場しています。二人の再会シーンは感動ですね。 前作から36年がたち、さすがにトム・クルーズも歳を取りましたが、そうはいっても今年還暦を迎えるとはとても思えない肉体です。常にスターであるためには鍛え方が違いますね。 前作と大きく異なるのはパイロットの中に女性がいること。前作が公開されたときはそもそもアメリカ軍にはパイロットに女性がなれなかったそうですが、時代は変わりました。実際にもアメリカ軍に女性パイロットが認められているそうです。 |
はい、泳げません(2022.6.11) |
監督 渡辺謙作 |
出演 長谷川博己 綾瀬はるか 麻生久美子 伊佐山ひろ子 広岡由里子 占部房子 上原奈美 小林薫 阿部純子 |
大学で哲学を教える小鳥遊雄司は幼い頃のトラウマから水に顔をつけることも怖くてできず、泳げないいわゆる“カナヅチ”だった。そんな小鳥遊が、ある日、大学の掲示板でスイミングクラブの新規会員募集中のポスターを見かけ、一念発起して見学に出かける。ところが、受付にいたポスターに写っていたコーチの薄原静香に初心者クラスの体験を勧められ、なぜか、そのまま参加することになってしまう。クラスの仲間は4人のおばちゃん。静香の優しくも厳しい指導の下、小鳥遊の泳げるようになるまでの道のりがスタートする。実は、小鳥遊には、泳げるようになりたいある理由があった・・・。 最初はコミカルなタッチで物語が進みます。水に入るのができない小鳥遊が、ああだこうだと理由をつけて水に入ろうとしないところを、おばちゃんに押されて水に落ちるシーンには笑いも。とにかく、小鳥遊の苦闘シーンと外野のおばちゃんたちの言動に思わず笑いがこぼれます。一生懸命頑張っている小鳥遊を笑ってはいけないのですけどね。 途中で、小鳥遊が泳げるようになりたい理由が明らかになってからは小鳥遊を応援したくなります。小鳥遊が泳げるようになったときは、映画館でなければ拍手をしたかったくらいです。 小鳥遊を演じるのは長谷川博己さん。なかなか、こういうコミカルな演技をする長谷川さんを見ることはできないです。一方、薄原静香を演じるのは綾瀬はるかさん。今回はちょっと抜けているとか、どこかおっちょこちょいな感じではなく、テキパキとした女性を演じます(水の中ではですが。)。 |
バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版(2022.6.17) |
監督 西谷弘 |
出演 ディーン・フジオカ 岩田剛典 新木優子 広末涼子 村上虹郎 渋川清彦 西村まさ彦 山田真歩 佐々木蔵之介 小泉孝太郎 稲森いずみ 椎名桔平 |
探偵事務所を営む若宮純一と誉獅子雄のもとに日本有数の資産家、蓮壁千鶴男から、娘が誘拐されたが身代金の受け取りに犯人が現れず、娘が無事に帰ってきた不可解な誘拐事件の真相を調べてほしいとの依頼がある。ところが、その依頼をオンラインで受けている最中に蓮壁は突然死亡する。若宮と獅子雄は蓮壁の家のある瀬戸内海の離島に向かう。その家には、蓮壁の妻の依羅、娘の紅、息子の千里、そして使用人の馬場杜夫が住んでいた。蓮壁千鶴男の死は狂犬病であったことがわかるが、その島には黒犬の呪いの言い伝えがあった・・・。 この映画はフジテレビで2019年10月から12月にかけて放映されたディーン・フジオカさんがホームズ役の誉獅子雄を、岩田剛典さんがワトソン役の若宮純一を演じた「シャーロック アントールドストーリーズ」の映画化です。放映から3年もたってから映画化というのも珍しいですね。 シャーロック・ホームズシリーズは子ども向けに書かれたいわゆるジュブナイル版の本を小学校の図書館で友人と競い合って読んだものでした。「バスカヴィル家の犬」はホームズものの中でも評判が良かった作品ですし、その際に読んだはずなのですが、あれから何十年も過ぎ、もうどんな話かも覚えていません。でも、Wikipediaであらすじを見ると、映画のストーリーとはまったく違うものといった方がいいですね。“バスカヴィル”が“蓮壁”とは笑ってしまいますけど。 上映時間の半分ほどで犯人一味はわかってしまいますし、この映画は、謎解きよりも人間ドラマの方が比重が高かったですね。 |
PLAN75(2022.7.1) |
監督 早川千絵 |
出演 倍賞千恵子 磯村勇斗 たかお鷹 河合優実 ステファニー・アリアン 大方斐紗子 串田和美 |
若者による老人襲撃事件が多発する近未来を舞台に、事態を重く見た政府が打ち出した政策、“PLAN75”という名の75歳になったときに、個人の意思で死を選択することができるという制度の創設の中で生きる老人とそんな老人に関わる若者を描きます。 主人公・角谷ミチは夫と死別し、78歳になった今でもホテルの掃除婦として同じ高齢者女性3人と働いていたが、ある日、一人が清掃中に倒れてしまう。それを重く見たホテル側はミチらを解雇する。住んでいた団地の取り壊しで、住居も失う状況となるが、新たな仕事は見つからず、高齢で身寄りのないミチに部屋を貸す者もいない。思い悩んだ挙句、ミチは“PLAN75”を申請する。一方、市役所で“PLAN75”の申請窓口を担当する岡部ヒロムは、申請者の中に音信不通だった伯父を見かける・・・。 ミチを演じるのは倍賞千恵子さん。ファンでしたねえ。寅さんの妹・さくらを演じていた倍賞千恵子さんもすっかりおばあさんになってしまいましたね。実年齢が81歳でミチより年上ですから、それも仕方ありません。歌を歌うシーンではわざとうまく歌わないようにしていたようですが、奇麗な声は隠しようがありません。最後のときを迎えるに当たって、横のベッドにいたヒロムの伯父を見て、ミチは何をそんなに驚いたのでしょうか。知り合いでしたっけ。ここはちょっとミチの心情がわかりませんでした。 フィリピンから子どもの病気の治療代を稼ぐために出稼ぎにきたマリアが、死んだ人の遺品を整理するシーンがありましたが、このシーンはまるでアウシュヴィッツでユダヤ人がガス室で殺害されたあとみたいです。 磯村勇斗さん演じるヒロムが伯父と関わることによって、仕事だと割り切っていた“PLAN75”に疑問を感じるようになってきます。確かに20代の若者にとってみれば75歳になった遥か未来の自分など想像もできないでしょうし、普通に生きていれば“死”というものに向き合うこともないでしょう。“PLAN75”なんて他人事だと思っても無理はありません。たまたま、ヒロムにとっては身近に“PLAN75”で死を選択した伯父がいたから、その意味を考えることになったのでしょう。 私の年齢も、次第に75歳に近づいていますが、75歳まで生きることができたとして、果たしてどういう選択をするのか、今のところ、まだまだ死にたくない、生を選択するつもりですが・・・。それは幸せなことなのでしょうか。この映画を観ていると、生きるのもかなり辛いなと思ってしまいます。 |
エルヴィス(2022.7.1) |
監督 バズ・ラーマン |
出演 オースティン・バトラー トム・ハンクス ヘレン・トムソン リチャード・ロクスバーグ オリヴィア・デヨング ヨラ ションカ・デュグレ アルトン・メイソン ケルヴィン・ハリソン・Jr ルーク・ブレイシー ケイリー・クラーク・Jr デヴィッド・ウェンハム デイカー・モンゴメリー |
最近、アカデミー賞作品賞にも輝いた、ロックバンド・クイーンを描いた「ボヘミアン・ラプソディ」とか、エルトン・ジョンを描いた「ロケットマン」という実在のスターを描いた映画がなかなか面白かったので、さて、今度はアメリカのロック・スター、エルヴィス・プレスリーを描いた映画はどうだろうと期待して観に行ってきました。 私の記憶の中にあるエルヴィス・プレスリーの姿は、映画の後半にあったような襟が高く白いパンタロンにひらひらの襞がついた、腰をやたらに振る体型がいささか太った男というイメージです。かっこよかった頃のエルヴィスの最盛期のファンの年代は私より上の世代になるのでしょうね。とにかく、薬物中毒で太ってだらしない体型だったという印象しか残っていません(ファンには怒られますけど)。そのため、当時はスーパースターだというという印象はまったくありませんでした。 ファンでもなかった私にとっては、マネージャーがトム・パーカー大佐と呼ばれる人物とは、当然のことながら知りませんでした。演じたのは名優、トム・ハンクスですが、いつもの好人物の役柄とは異なって、狡猾で計算高く、エルヴィスを利用して大金持ちとなる嫌な人物を演じます。あの太った体型はメイクなんでしょうか。まあ、トム・ハンクスですから何を演じさせても見事なものです。 エルヴィスを演じたのはオースティン・バトラー。私にとっては初見の俳優さんです。なかなかの歌声と、顔はそうエルヴィスに似ているとまでは言えないのですが、何より歌いながらの腰つきがエルヴィスそっくりです。やはり、このパフォーマンスがエルヴィスに似ているかどうかが一番の問題でしょうね。 最後までパーカー大佐に振り回された一生という感じで、哀れでしたね。 |
ソー ラブ&サンダー(2022.7.9) |
監督 タイカ・ワイティティ |
出演 クリス・ヘムズワース ナタリー・ポートマン テッサ・トンプソン クリスチャン・ベール ラッセル・クロウ ジェイミー・アレクサンダー |
“ソー”単独のシリーズとしては第4弾になります。 神ラプーを信じて生きてきたゴアは、娘の死に際して神は何もしてくれないばかりか、神から見捨てられた事実を知り、すべての神を殺すことを誓う。一方、サノスとの戦いの後、“ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー”の面々と一緒に宇宙に旅立ったソーは、自分探しの旅を続けていたが、滅亡した母星を離れて新たに地球に居を定めたアスガルドの住民たちの元に帰ってくる。そこにゴアの一団が襲い掛かり、ソーが戦っている中、ムジョルニアを手にしたかつてソーの恋人だったジェーン・フォスターが現れ“マイティー・ソー”と名乗り一緒に戦う。だが、ゴアによってアスガルドの子どもたちが連れ去られてしまう。ソーらはゼウスに助けを求めるが、ゼウスは聞き入れようとはせず。怒ったソーはゼウスから彼の武器・サンダーボルトを奪い、ゴアとの戦いに向かう・・・。 このソーのシリーズだけは他のマーベル・シネマティック・ユニバースの主人公たちのシリーズと異なって“神の世界”の話なので、ちょっと異質な感じがします。それに他のシリーズにはない笑いの要素もふんだんにあります。中年太りのようになってしまったソーの腹とか、全能の神であるゼウスのだらしなさなど笑ってしまいますよね。 ゴアを演じたのはクリスチャン・ベール。メイクのせいで名前を言われないとわかりませんでしたが、やっぱり一番心に突き刺さる演技をしますね。また、ゼウスを演じるのはラッセル・クロウ。クリスチャン・ベールとラッセル・クロウ、なぜだかパンフレットの中で紹介がありません。カメオ出演でもないのに、なぜ? ジェーンを演じるのはシリーズ久しぶりに登場のナタリー・ポートマンですが、二の腕が本当に逞しくて、この役柄のために相当鍛えたということがわかります。お姫様やお嬢様役が似合うナタリー・ポートマンがムキムキでした。さすが役者さんは役作りが凄い。 エンドロールの中で次回ソーと戦う人物(?)が登場します。また神の世界の戦いですね。 |
キングダム2 遥かなる大地へ(2022.7.15) |
監督 佐藤信介 |
出演 山崎賢人 吉沢亮 橋本環奈 清野菜名 岡山天音 三浦貴大 濱津隆之 真壁刀義 豊川悦司 渋川清彦 小澤征悦 大沢たかお 満島真之介 高嶋政宏 加藤雅也 玉木宏 佐藤浩市 要潤 山本千尋 高橋努 平山祐介 |
「キングダム」シリーズ第2弾、群雄割拠の中国の春秋戦国時代、前作から半年後が舞台となります。弟を倒し秦の王となったえい政だったが、ある日、何者かが放った刺客に襲われる。時を同じくして、隣国の魏が秦に向けて進攻してくる。信は初めての戦場に向かうが、そこで同じ村の尾平と尾到の兄弟、頼りなさそうな伍長の澤圭、そして少年のような羌かいと伍(5人組)を組むことになってしまう。蛇甘平原での戦いの火蓋は切って落とされ、信は魏の軍勢に突撃していく・・・。 いよいよ初の戦いに臨む山崎賢人さん演じる新の活躍を描いていきます。前作と異なり、今作品はほとんどが戦いのシーンとなっています。 前作に登場していた山の民の王・楊端和役の長澤まさみさんが出演していないのは残念でしたが、その代わりに圧倒的な輝きを見せるのは羌かい(きょうかい)を演じる清野菜名さん。元々、舞台「髑髏城の七人」やドラマ「今日から俺は!劇場版」等で切れ切れのアクションを見せてくれていましたが、この作品の中でも思わず「おお!」と叫んでしまいそうな素晴らしいとしか言いようのないアクションを見せてくれます。個人的にはこの映画の中で一番強烈な印象を受けました。羌かい(きょうかい)のための映画と言っても過言ではないと思ってしまいます。 わずかな出演でも存在感の凄さを見せてくれるのは、前作にも登場した王騎役の大沢たかおさん。ムキムキの胸板にちょっとオネエっぽい言葉遣いが何とも言いようのない印象を与えます。また、最初は部下に無理難題を言って手柄は自分のものにする嫌な上司の典型かと思わせた渋川清彦さん演じる縛虎申が最後はイイとこを見せましたねえ。 今回、えい政役の吉沢亮さんと河了貂役の橋本環奈さんの出番が少なかったです。吉沢亮さんはNHKの大河ドラマの撮影が忙しかった頃でしょうか。橋本環奈さんも色々引っ張りだこですからねえ。 そうそう、脇役では信と戦いの伍(5人組)を組むことになる伍長・澤圭を演じる「カメラを止めるな!」の濱津隆之さんが相変わらずの気の弱そうな善人を演じています。 エンドロールの後で「キングダム3」の予告編が流れます。その中に出ていた、あの足は、もしかしたら長澤まさみさんかも。これは期待したいです。 |
ジュラシック・ワールド(2022.7.29) |
監督 コリン・トレボロウ |
出演 クリス・プラット ブライス・ダラス・ハワード ローラ・ダーン ジェフ・ゴールドブラム サム・ニール ディワンダ・ワイズ マムドゥー・アチー B・D・ウォン オマール・シー イザベラ・サーモン キャンベル・スコット ジャスティス・スミス スコット・ヘイズ ディーチェン・ラックマン ダニエラ・ピネダ エルバ・トリル ジャスミン・チウ |
前作でアメリカ本土に連れてこられた恐竜たちが、メイジー・ロックウッドの手で人間の世界に解き放たれてから、4年の月日が流れた。恐竜たちは繁殖して世界中に生息地を広げ、今や地球は、人間と恐竜が混在する世界となっていた。オーウェンとクレアは、恐竜の保護活動をしながら、シエラネバダの麓でメイジーを匿いながら共に暮らしていた。近くの森には、オーウェンがかつてジュラシック・ワールドで調教したヴェロキラプトルのブルーと、ブルーの子供のベータが住んでいた。ある日、密猟者たちによって、メイジ―とベータが拉致されてしまう。密漁者を雇っていたのが、かつてジュラシック・パークを建造したインジェン社のライバル企業であったバイオシン社のCEOのルイス・ドジスン。彼はイタリアのドロミーティ山脈に恐竜の保護施設「バイオシン・サンクチュアリ」を設立していた・・・。 「ジュラシック・ワールド」第3弾であり、1993年から始まった「ジュラシック・パーク」シリーズの最終作となります。最終作とあってか、出演陣も豪華。「ジュラシック・パーク」からサム・ニール演じるアラン・グラント博士、ローラ・ダーン演じるエリー・サトラー博士、ジェフ・ゴールドブラム演じるイアン・マルコム博士の3人が登場します。それぞれシリーズの主人公たちのそろい踏みです。さすがに、「ジュラシック・パーク」の公開からすでに29年が過ぎていますので、皆さん、歳を取りましたけど。更に第1作、そしてジュラシック・ワールドシリーズ前2作にも登場した遺伝子工学博士のヘンリー・ウー博士も登場しますが、彼がそれまでとちょっと性格的に違うのではという人物になっています。 初めて「ジュラシック・パーク」を観たときには、登場する恐竜の姿にびっくりしたものでした。それまでの恐竜映画の概念を変えましたね。今作にも、いつものティラノサウルスやヴェラキラプトルをはじめ、ギガノトサウルスやディロフォサウルスなど多くの恐竜が登場します。最近、恐竜には毛が生えていたことがわかりましたが、この作品にもテリジノサウルス、ピロラプトルという毛が生えた恐竜が登場します。 なにはともあれ、最終作、理屈抜きに楽しむのが一番です。 |
アキラとあきら(2022.8.26) |
監督 三木孝浩 |
出演 竹内涼真 横浜流星 高橋海人 上白石萌歌 児嶋一哉 満島真之介 塚地武雅 宇野祥平 奥田瑛二 石丸幹二 ユースケ・サンタマリア 江口洋介 |
池井戸潤さん原作の同名小説の映画化です。銀行ものを書かせたら池井戸潤さんですから、ストーリーが面白くないはずがありません。 メガバンクに優秀な成績で入行した同じ“あきら”という名前を持った、倒産した町工場の社長の息子・山崎瑛と大企業・東海郵船グループの御曹司・階堂彬というまったく異なった環境で育ってきた二人を描いていきます。 人を救うバンカーになりたいという希望を持つ瑛は顧客に寄り添い上司の命令にたてつき左遷されてしまう。一方、彬は冷静に状況を判断し、着実に出世をしていった。ある日、彬の父が亡くなり、跡を継いで社長になった彬の弟は叔父たちに騙されて赤字のホテル経営に出資をしてしまい、大きな負債を抱えてしまう。それを知った彬は会社を立て直すため銀行を辞め社長に就任する。取引銀行として彬の会社の担当になった瑛は彬とともに、グループの全社員とその家族を守るため、倒産寸前の東海郵船を建て直そうとする・・・・。 瑛を竹内涼真さん、彬を横浜流星さんが演じていますが、それぞれ役柄にあったキャラを醸し出していましたね。嫌な叔父役のユースケ・サンタマリアさんと児嶋一哉さんもピッタリな役どころでした。一番の美味しい役は瑛の上司・不動公二演じる江口洋介さんですね。最初は倒産する取引会社から冷酷に資金回収を図ろうとする嫌な上司だったのに最後は瑛を理解して稟議書にハンコを押すのですから。 |
NOPEノープ(2022.8,29) |
監督 ジョーダン・ピール |
出演 ダニエル・カルーヤ キキ・パーマー スティーヴン・ユアン ブランドン・ぺレア マイケル・ウィンコット キース・デヴィッド |
ジョーダン・ピール監督作品なので単純な映画とは思いませんでしたが、それにしても理解困難な作品でした。 冒頭、テレビ番組に出演するチンパンジーが突然人間を襲い、唯一男の子だけが生き残ったエピソードが描かれます。チンパンジーが射殺されるシーンから場面は転換し、映画に登場する馬を貸し出す牧場を経営する牧場主が空からの落下物で死亡する場面が描かれます。牧場主の娘と息子は、それがUFOによるものではないかと、UFOを撮影して一獲千金を得ようとする・・・。 このUFOが実はUFOというより、UFO型の生物とくるのですから、これはもうびっくり、唖然です。いっきに“トンデモ映画”という感じになってしまいます。 冒頭のチンパンジーのシーンとUFO型生物とのシーンの関係もわかりません。また、牧場の近くで遊園地を経営していた男がチンパンジーの襲撃から生き残った男の子の成長した姿のようですが、この映画の中での立ち位置が理解できません。 正直のところ、これはちょっと期待外れの1作でした。 |
ブレット・トレイン(2022.9.2) |
監督 デヴィッド・リーチ |
出演 ブラッド・ピット ジョーイ・キング アンドリュー・小路 アーロン・テイラー=ジョンソン ブライアン・タイリー・ヘンリー 真田広之 マイケル・シャノン バッド・バニー ザジー・ビーツ ローガン・ラーマン |
(ネタバレあり) レディバグが受けた仕事は東京発の新幹線の中でブリーフケースを盗み次の駅で降りるという簡単な仕事。ところがブリーフケースを見つけて降りようとしたが、乗り込んできた殺し屋のウルフに復讐の相手だと勘違いされ、降りることができず乱闘になりウルフを殺害してしまう。一方、殺し屋コンビのレモンとタンジェリンは、裏社会の大物、ホワイト・デスに依頼され、ヤクザに拉致されていた彼の息子の救出と身代金のブリーフケースの奪還を終え、息子を連れて京都に向かっていた、しかし、何者かにブリーフケースを盗まれ(盗んだのはレディバグ)、犯人捜しの最中に今度はホワイト・デスの息子を殺害されてしまう。一方、息子をビルの屋上から突き落とされた木村は、犯人を追い、新幹線に乗車する・・・。 伊坂幸太郎さんの「マリアビートル」の映画化です。伊坂さんの小説の映画化にブラッド・ピットが主演だなんて、それだけで観に行きたくなりますね。 原作は東北新幹線が舞台となっていましたが、映画は東海道新幹線。やはり外国人にとっては日本といえば富士山と京都がなければというところでしょうか。でも、この映画では、富士山は名古屋駅を出てから窓の外に見えるんですよねえ。このあたり、よくある変な日本を描く映画です。こうした突っ込みどころは満載です。日本人という設定なのに、日本語のイントネーションがおかしかったり、車内販売の女性が金髪だったり(JR東海はそれは許さないでしょう!)、ホワイト・デスは席を全部買い占めて専用列車にしたといいながら、米原から真田広之さん演じるキムラの父・エルダーが乗車してきます(自由席での乗車か!)。そんなハチャメチャな映画ですが、これが意外とおもしろかったです。特に、原作でも愉快なきかんしゃトーマス好きのレモンとタンジェリンのコンビはこの映画の中でもユーモアたっぷりで、二人のキャラは原作の面白さを損なっていません。真田広之さんも「アベンジャーズ/エンドゲーム」のようにあっという間の退場ではなく、ブラッド・ピットと互角に渡り合っています。真田広之さん演じるエルダーとホワイト・デスの闘いの際に麻倉未稀さんの「ヒーロー」が流れるのが、心躍ります。 原作でも一番憎らしかった王子はこの作品では少し年上の女性に変更されていますが、さて、どういう結末を迎えるのかと思ったら、敵討ちされましたねえ。拍手。 |
グッバイ・クルエル・ワールド(2022.9.10) |
監督 大森立嗣 |
出演 西島秀俊 三浦友和 斎藤工 鶴見辰吾 大森南朋 片岡礼子 宮沢氷魚 玉城ティナ 宮川大輔 奥田瑛二 奥野瑛太 螢雪次朗 |
暴力団の資金洗浄が行われていたホテルに銃を持った5人組が押し入り、金を強奪して逃走する。金を奪われた暴力団は、日頃から手なずけていた刑事の蜂谷に5人を探すよう命じる。やがて、強盗たちの間でも仲間割れが起き、殺し合いが始まる中、蜂谷の捜査は強盗の一員だった安西や浜田に迫っていく・・・。 西島秀俊さんが元やくざで暴対法の施行で食べられなくなり足を洗って妻の実家の旅館を手伝う安西を演じます。表面は温厚な顔を見せる安西が、同じ組にいた飯島に脅されて怒りを露わにして暴力をふるうシーンは怖かったですね。 浜田を演じた三浦友和さんは山梨県出身ですが、彼が潜伏していたのは甲府ということで、撮影場所はどこか見たことのある場所だったのはちょっと嬉しい。 玉木ティナさんが演じる美流とともにショットガンを撃ちまくる大輝を演じたのは宮沢氷魚さん。現在NHKの朝ドラで主人公のやさしい夫役を演じていますが、それとはまた違う切れた男の顔を見せてくれます。 ラスト、銃声は一発しか聞こえませんでしたが、二人にはどちらも撃たれる理由がありますが、果たして撃たれたのはどちらだったのでしょうか。 |
ヘルドッグス(2022.9.16) |
監督 原田眞人 |
出演 岡田准一 坂口健太郎 北村一輝 MIYAVI 酒向芳 大竹しのぶ 松岡茉優 吉原光夫 大場泰正 金田哲 村上淳 吉田壮辰 赤間麻里子 杏子 木竜麻生 中島亜梨沙 尾上右近 田中美央 小柳アヤカ |
出月梧郎は元交番勤務の警察官だったが、思いを寄せていた女子高校生がアルバイトをするスーパーに強盗が入り彼女らが殺害される事件が起きてから、彼は犯人を捜し続け、ついには復讐を遂げる。そんな出月に警視庁組織犯罪対策部特別捜査官の阿内は関東最大の暴力団である東鞘会に潜入し、若きトップである十朱が持つ警察の極秘ファイルを奪うよう命令する。その日から出月は兼高昭吾と名前を変え東鞘会に潜入する。 ストーリー的には出月=兼高がなぜ簡単に潜入捜査をOKしたのかがよくわかりません。それに、その後分かりますが、あれほどの戦闘能力を持つ兼高が簡単に警察に捕まったのも理解できません。復讐を遂げた後警察に電話していたから自首したのでしょうか? それはさておき、この映画は主演の岡田准一くんのアクションの凄さを見せる映画といっても過言ではありません。元アイドルとは思えないほど鍛え上げられた肉体で師範等の資格を持つカリ、ジークンドー、修斗の技を駆使して激しい闘いのシーンを演じてくれます。 岡田くんとコンビを組む室岡を演じた坂口健太郎さんの、いつもの役どころとは異なる狂気の演技も凄かったですね。また。東鞘会の若きトップ・十朱を演じたのは世界的に有名なギタリストであるMIYABIさんですが、彼の回し蹴りのシーンにも圧倒されました。彼は「キングコング 髑髏島の巨神」に日本兵の役で出演していたそうですが、まったく印象に残っていないのですが、今回は強烈な印象を残しました。 |
沈黙のパレード(2022.9.17) |
監督 西谷弘 |
出演 福山雅治 柴咲コウ 北村一輝 飯尾和樹 戸田菜穂 川床明日香 出口夏希 田口浩正 岡山天音 酒向芳 村上淳 吉田羊 檀れい 椎名桔平 |
東野圭吾さん原作のガリレオシリーズの同名作品の映画化、9年ぶりの第3弾です。 3年前に菊野市で行方不明になっていた女子高校生・並木佐織の遺体が遠く離れた町のごみ屋敷の火災現場から発見される。その家が実家であり、当時佐織に付きまとっていた蓮沼寛一が容疑者として浮かび上がり、彼が現在住んでいる部屋から佐織の血の付いた服が発見されたため逮捕されるが、蓮沼は完全黙秘を貫く。蓮沼が草薙が若い頃担当した少女殺害事件の容疑者であり、その際も完全黙秘で無罪となったことを知った内海は湯川に協力を求める。自分には関係ないと言った湯川だったが、その後、佐織の両親が営む居酒屋に顔を出すようになる。しかし、結局、完全黙秘を貫いた蓮沼は証拠不十分で再び釈放され、佐織の両親の店に嫌がらせのように顔を出す。そんな中、夏祭りのパレードの日、蓮沼が殺害される事件が起きる。 今回は珍しく湯川が積極的に事件に関わります。この理由は最後に語られますが、いやぁ~感動です。居酒屋で湯川が日本酒を飲むなんてシーンは考えられませんね。この作品のキーワードとなるのは題名にもある「沈黙」です。完全黙秘で罪に問われなかった蓮沼に対し、今度は町の人が事件に対し沈黙します。本屋さんの店主を演じる吉田羊さんの「偽証罪ってありますよね。沈黙罪はあるんでしょうか。」は強烈です。 芸人の「ずん」の飯尾和樹さんが佐織の父親を演じますが、芸人の時とは全く異なって笑いも見せず、娘の死に怒りを耐える演技は見ものです。 先のスペシャルドラマでは湯川の相手役の女性刑事を新木優子さんが演じましたが、この作品では内海薫役で柴咲コウさんが出演します。やはり、ガリレオシリーズは福山雅治さんと柴咲コウさんのコンビが一番です。 |
アイ・アム・まきもと(2022.9.30) |
監督 水田伸生 |
出演 阿部サダヲ 満島ひかり 宮沢りえ 國村隼 宇崎竜童 松下洸平 でんでん 松尾スズキ 坪倉由幸 |
2015年に公開されたイギリス・イタリア合作映画「おみおくりの作法」を原作にした作品です。 牧本壮は身寄りがなく亡くなった人を埋葬する市役所の“おみおくり係”の唯一の職員。自費で葬式まで出し、身寄りの人が骨を引き取りに来るかもしれないからと、なかなか埋葬をせずに自分の机の周囲に遺骨を保管している。そんな牧本に新任の市民福祉局長は無駄な仕事をしていると言って現在関わっている件を最後に“おみおくり係”の廃止を決定する。牧本の最後の仕事は、自分が住む市営団地の向かいの棟で亡くなった蕪木という男のおみおくり。彼の部屋で女の子の写真を見つけた牧本は娘がいたのではないかと行方を捜す。蕪木が以前警察のやっかいになったことがあると聞いた牧本は警察の神代に頼んで当時の書類から娘を探しだし、訪ねていく・・・。 空気を読めない、まったく人の話を聞かない、友達がいない等々、パンフレットに書かれた「まきもとの取説」に書かれた、牧本はこういう人という項目の多さ、それも社会生活にはマイナス面が多く感じられる牧本の人となりにびっくりします。信号のある横断歩道でも右見て左見て右見て横断という、普通の人とはちょっと行動の異なる牧本ですから、周囲の人に理解されるのも難しいのでしょうね。それにしても、このシーンがラストへの伏線になっているとはねえ。 阿部サダヲさんは、先頃の「死刑にいたる病」のサイコキラーもそうですが、こういう癖のある人を演じさせるとうまいですねえ。蕪木が若い頃働いていた缶詰工場の同僚を演じたのは松尾スズキさんですが、阿部サダヲさんが所属する大人計画の主宰者ですから、二人の掛け合いはさすがという感じです。蕪木を演じたのは宇崎竜童さん。とはいっても、登場シーンはラストだけ。それも一言もセリフはありません。あのシーンだけで蕪木という男を表現したということですね。宇崎さんが歌うエンディングのレゲエ調の「オーバーザレインボー」も聞かせます。 ラストは悲しい結末になってしまいましたが、ファンタジックな終わり方に胸が熱くなります。おススメです。 |
マイ・ブロークン・マリコ(2022.10.1) |
監督 タナダユキ |
出演 永野芽郁 奈緒 窪田正孝 尾美としのり 吉田羊 |
シイノトモヨはブラック企業に勤める女性。彼女は営業途中に入った食堂のテレビのニュースで、幼馴染で親友のイカガワマリコが飛び降り自殺したことを知る。マリコは幼い頃から父親に虐待を受け、大きくなってからは性的暴力も受け、更に交際相手の男からは暴力を振るわれるなど、年中、体に痣を作っている女性だった。シイノはマリコの実家を訪ね、マリコの遺骨を奪って逃走する。行先は、生前マリコが行きたいと言っていたまりがおか岬・・・。 シイノを演じるのは永野芽郁さん。これまでの可愛い、奇麗な女性の役とは異なり、股を開いて座って、タバコを吸い、「うるせえよ、くそが」とか「テメェ」なんて言葉を吐き出す、いわゆる“ヤンキー”な女性を演じます。これまでのイメージとは180度異なる役によく挑戦しましたよねえ。永野ファンはびっくりしたのではないでしょうか。これに対し、マリコを演じた奈緒さんは、これまでのように彼女に多い役柄のちょっと普通とは違う感覚の女性を演じます。そうならざるを得なかった彼女の叫びには何も言えません。 目的地の岬に向かう途中でひったくりに遭ったシイノを助けるマキオを演じたのが窪田正孝さん。あんまり近づきすぎない距離感のある役がピッタリです。マリコの父を演じたのは尾美としのりさんですが、観たときは気づきませんでした。いつもは、こんな悪人、演じませんものねえ。 最近の映画には珍しい上映時間85分という短さの作品です。いらないことは省いて監督が描きたいことだけをこの時間内に凝縮した感じがします。舞台を観る前の空いた時間で観ることができる映画がこれだけだったので、観たのですが、予想外にいい作品でした。おすすめです。 |
“それ”がいる森(2022.10.7) |
監督 中田秀夫 |
出演 相葉雅紀 松本穂香 江口のりこ 上原剣心 眞島秀和 野間口徹 宇野祥平 酒向芳 小日向文世 松浦祐也 尾形貴弘 中村里帆 |
義父との関係がうまくいかない田中淳一は、妻と離婚して郷里の福島県の田舎でオレンジ栽培に携わっていた。そんな淳一の元に息子の一也が妻と喧嘩して家出してくる。しばらく淳一と暮らすことになった一也は地元の小学校に通い始める。放課後、クラスメートの祐志に誘われて裏山に行った一也は、山の中で銀色に光る物体を見つけ、異様な生物に襲われて逃げるが、祐志は行方不明になってしまう。更に女の子が家から行方不明になり、クマに襲われたのではないかと山の中の探索が始まるが・・・。 題名にある「それ」がわかったときには、唖然。監督が「リング」等のホラーの巨匠とも言うべき中田秀夫さんだったので、それなりのホラー映画かと期待して観に行ったのですが、「勘弁してくれよ!」と言いたくなる作品でした。 「それ」の造形もひどいです。口を開けたときの姿はどこかの映画で見たような姿ですし、CGももう少しどうにかならなかったですかねえ。 個人的に今年一番の「金返せ!」と叫びたくなる作品でした。相葉君の演技には期待していなかったのですが、小日向文世さんや江口のりこさん、宇野祥平さん、酒向芳さんといった演技派の豪華俳優さんも出演しており、この映画ではもったいない気がします。 |
カラダ探し(2022.10.14) |
監督 羽住英一郎 |
出演 橋本環奈 眞栄田郷敦 山本舞香 神尾楓珠 醍醐虎汰朗 横田真悠 柳俊太郎 西田尚美 柄本佑 |
主人公はクラスの中でハブられている高校生の森崎明日香。ある日、彼女は一人寂しく昼食を食べる場所を探していた時に体育館の裏で「私のカラダを探して」という少女の幻影を見る。その夜、明日香が眠って目覚めると、なぜかそこは学校の中で、そこには明日香の5人のクラスメートがいた。彼らは、バラバラにされた少女の遺体を探し出すまで、“赤い人”に追われて何度も惨殺され、目覚めると同じ日を迎えるというループを繰り返す。果たして6人は、このループから抜け出すことができるのか・・・。 6人の惨殺シーンが凄いです。橋本環奈さんも殺害されたシーンではものすごい形相を見せます。“赤い人”=血だらけの女の子も怖かったですねえ。あの「エクソシスト」を彷彿させるスパイダー・ウォークも見せてくれました。“赤い人”とぬいぐるみのエミリーが合体して巨大化したときには、これも「“それ”がいる森」同様の”トンデモ”映画になってしまうのかと危惧しましたが、土俵際で踏みとどまりました。“赤い人”から逃げ回る夢の中とは異なる現実世界での青春映画的な雰囲気が良かったですね。 エンドロール後のシーン、井戸の底にあった少女が殺されたニュースを報じる新聞記事が、変化したのはどういうことを意味しているのでしょうか。 |
天間荘の三姉妹(2022.10.28) |
監督 北村龍平 |
出演 のん 大島優子 門脇麦 寺島しのぶ 三田佳子 永瀬正敏 柴咲コウ 高良健吾 山谷花純 萩原利久 平山浩行 柳葉敏郎 中村雅俊 とよた真帆 大島容子 鈴木裕樹 高橋ジョージ つのだひろ 高橋かおり 藤原紀香 |
天界と地上との間に存在する三ツ瀬町の旅館・天間荘。天間のぞみは天間荘の女将であり、大女将の母・恵子と普段は水族館でイルカのトレーナーをしている妹・かなえと天間荘を切り盛りしながら暮らしていた。ある日、そんな天間荘に交通事故で意識不明ののぞみたち姉妹と母親を異にする妹・たまえが“イズコ”に連れられてやってくる。天間荘にやってきた人は、そこに滞在する間に天界に旅立つのか、生き返って現世に戻るのかを決めなければならないとされていた。その日から大女将の恵子の「働かざる者食うべからず」の方針により、たまえは天間荘の従業員として働くこととなる。たまえが担当するのは娘と引き離され、一人で生きてきたが癌に侵された盲目の女性・財前玲子と漫画が好きだったが盗作だとSNSで非難され、クラスメートからものけ者にされてビルから飛び降りた女子高校生・優那。二人はたまえの明るく屈託のなさにやがて決断をする・・・。 柴咲コウさんが演じる女性の名前が“イズコ”と聞いて、「あれ?どこかで聞いた名前だ」と思ったのですが、すぐに昔、釈由美子さんが同じ役を演じていたことに気付きました。この映画「スカイハイ」だったんですね。釈さんならぬ柴咲さんの「お行きなさい」が聞けたのは良かったです。 話が進むうちに舞台となる天間荘がある三ツ瀬町がどういう町なのかがわかってきます。ただ、いくら天間荘が天界と現世との狭間にあるとしても、その世界の描写がどこかの宗教団体の作る映画のようで、ちょっと勘弁してほしかったですねえ。 たまえを演じたのんさんが相変わらず元気。というか、のんさんはこうした元気な子の役を演じるときは輝いていますよねえ。 ちょっとした脇役にとよた真帆さん、藤原紀香さん、高橋かおりさんなど有名俳優さんたちがカメオ出演しています。なぜか、つのだひろさん、高橋ジョージさんという歌手も出演しています。 |
アムステルダム(2022.10.29) |
監督 デビッド・O・ラッセル |
出演 クリスチャン・ベール マーゴット・ロビー ジョン・デビット・ワシントン クリス・ロック アニヤ・テイラー=ジョイ ゾーイ・サルタナ マイク・マイヤーズ マイケル・シャノン ティモシー・オリファント テイラー・スウィフト ラミ・マレック ロバート・デ・ニーロ |
バートとハロルドは第一次世界大戦下の戦地で知り合った戦友。ある日、砲撃されて怪我を負った二人は野戦病院に運び込まれ、そこで看護師をしていたヴァレリーに出会う。戦後アムステルダムで過ごす3人は「何があってもお互いを守り合う」ことを誓うが、医者のバートはアメリカの妻の元へと戻っていく。やがて、ハロルドもアメリカに戻って弁護士として働こうとするが そんなハロルドの元からヴァレリーは突然姿を消す。それから12年、第一次世界大戦の英雄であるミーキンズ将軍が亡くなり、その死を不審に思った娘のリズからバートは解剖を依頼される。リズから弁護士として相談を受けていたのがハロルドで二人は12年ぶりに出会うが、リズが殺害され、二人は容疑者として追われることになってしまう。二人は容疑を晴らすために上流階級で金持ちのトム・ヴォーズに助けを請いに行くが、なんとそこでヴァレリーと再会する。ヴァレリーはトム・ヴォーズの妹だった。自分たちの無実を証明しようと奔走する中で、バートとハロルドは大きな陰謀に巻き込まれていることに気付く・・・。 ストーリーの骨子は実話に基づいているそうです。それは財界の大物たちがナチスに傾倒し、大衆に人気のあった将軍、映画ではロバート・デ・ニーロが演じたギル・ディレンベック将軍を押し立ててクーデターを起こそうとしたこと。この陰謀は将軍が受け入れず暴露したため現実には起こらなかったのですが、この際の将軍の発言をロバート・デ・ニーロが映画の中で完コピしています。 とにかく、出演陣が豪華。主人公の3人をクリスチャン・ベール、マーゴット・ロビー、ジョン・デビット・ワシントンが演じますが、そのほか、先に挙げたロバート・デ・ニーロを始めとして、レミ・マリック、クリス・ロック、アニヤ・テイラー=ジョイ、ゾーイ・サルタナテイラー・スウィフト等々が出演しています。 「マシニスト」で極限までの減量に挑んだクリスチャン・ベールですが、今回は戦争中の砲弾により右目を失い、背中は砲弾の破片が刺さった傷跡でいっぱい、更にその傷のため猫背でコルセットをしなくては歩けないという役を演じます。相変わらず一筋縄ではいかない役者さんですね。ヴァレリーを演じたマーゴット・ロビーがコケティッシュで魅力的です。彼女にはこういうちょっと破天荒な女性の役が似合いますね。久しぶりに見たロバート・デ・ニーロですが、やっぱりこの人がいると、映画に重みが出てきます。 豪華俳優陣で2時間14分楽しむことができましたが、ちょっとストーリーが分かりにくいところがあったのがちょっとマイナスです。 |
MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない(2022.10.29) |
監督 竹林亮 |
出演 円井わん マキタスポーツ 長村航希 三河悠冴 八木光太郎 高野春樹 島田桃依 池田良 しゅはまはるみ |
10月25日月曜日の朝、プレゼン資料の準備で徹夜明けで目覚めた吉川朱海は、後輩の2人から「僕たち、同じ1週間を何度も繰り返しています。」と言われる。最初はまったく信じなかった朱海だったが、後輩たちが先に起きることを言い当てることから、自分たちが1週間をループしていることを信じる。このループを終わらせるためには、部長が腕にはめている石の腕輪を壊すしかないと後輩から聞いた朱海は、部長に話をするが、部長は冗談だと取り合わない。後輩たちは、部長に信じさせるためには、下から上へと徐々に信じさせるしかないと言われた朱海は、まずは自分の先輩社員の森山に信じさせようとする。 名前を知っている俳優がマキタスポーツさんだけという、そういう点ではいわゆる“B級映画”ですが、話のおもしろさで見せます。タイムループをする原因が部長が腕にはめているパワーストーンに原因があると月間オカルト情報誌「ムー」の記事で知った社員たちが、部長にタイムループの事実を信じてもらって、パワーストーンを破壊してもらおうと悪戦苦闘します。部長に信じてもらうために、パワーポイントを使って説明するのが愉快です。さすが、この辺りは舞台が広告会社ということからでしょうか。そんな時代の最先端を行く広告会社であっても、部長にわかってもらうためには下から上に順番に理解を求めていかなければならないという流れが、日本の会社組織を皮肉っていますね。 マキタスポーツさんが地元テレビ局のインタビューで答えていましたが、ループの場面は、1回撮ったものを使い回しているのではなく、何度も同じシーンを演じているそうです。これは俳優さんも大変です。82分の上映時間、堪能しました。有名俳優が出演していなくても、アイデア勝負ですね。 |
窓辺にて(2022.11.4) |
監督 今泉力哉 |
出演 稲垣吾郎 中村ゆり 玉城ティナ 若葉竜也 志田未来 倉貫貴 穂志もえか 佐々木詩音 斉藤陽一郎 松金よね子 |
以前は本も出したことがある作家だったが、今はフリーライターとして生活していた市川茂巳は。出版社の編集者である妻の紗衣が、彼女が担当する作家・荒川円と不倫をしていることを知っても怒りがわかない自分に戸惑いを覚えていた。そんなとき、市川は文学賞を受賞した女子高校生・久保留亜の受賞記者会見で質問をしたことから、彼女と会って話をするようになる・・・。 上映時間2時間23分といういくらか長めの作品で、その内容は妻の不倫に怒りを覚えない夫の話という、大きな事件も起こらない淡々と進む映画に、これは途中で眠りそうだなと思ったのですが、ラストまで眠らずに観ることができました。でも、あまりに地味な映画で、観る前に映画の紹介記事を読んで、たぶん主人公を演じる稲垣吾郎さんのファンしか観ようとは思わないだろうという予想をしたのですが、予想が当たったのか、観客は私を入れて3人だけ。公開初日にこの人数ではまずいですね。 稲垣さんが演じた市川茂巳という男ですが、稲垣さんのこれまでに私が受けていた雰囲気が感情の起伏がない男の役にピッタリです。ラブホで女子高校生と二人っきりなのに、平気で寝てしまうというところからも稲垣さんが演じるのに相応しいと思ってしまいます。なかなか好演でしたね。不倫をしても別れない有坂夫妻という対照的な存在もあり個人的にはおススメです。 これを書いているのは観に行ってから1週間後ですが、予想どおり、わずか1週間で1日の上演回数が1回になってしまいました。 |
犯罪都市 THE ROUNDUP(2022.11.11) |
監督 イ・サンヨン |
出演 マ・ドンソク ソン・ソック チェ・グィファ パク・ジファン ホン・ドンウォン ハジュン チョン・ジェグァン |
「新感染」「エターナルズ」のマ・ドンソクが型破りな刑事を演じる「犯罪都市」の続編です。 クムチョン署の強行犯係に所属する刑事のマ・ソクトと上司のチョン・イルマン班長は、ベトナムの韓国領事館に自首してきた指名手配犯のユ・ジョンフンを引き取りにベトナムに向かう。ベトナムについてマ・ソクトはユ・ジョンフンから韓国からの観光客を拉致して金を奪って殺害するカン・ヘサンという男の存在を知り、彼を逮捕するためホーチミン市内の彼のアジトへと向かう。そこにはカン・ヘサンに息子を誘拐され身代金を奪われたあげく殺されたチェ・チュンベクが差し向けた殺し屋たちが一足早く訪れていたが、ヘサンによって返り討ちとなっていた。到着したマ・ソクトとも乱闘になったが、ヘサンは班長に傷を負わせて逃走する。ヘサンが韓国に戻ったことを知ったマ・ソクトは彼を逮捕するため仲間たちと捜査を始める・・・。 この映画の見どころは、何といってもマッチョなマ・ソクトのキャラです。とにかく、厚い胸板とマルタのような腕は驚異的です。あの腕で殴られたら無事ではいられないでしょうねえ。一方、相棒のイルマン班長とのユーモラスな掛け合いや同僚刑事たちとのセリフの応酬などのコミカルなシーンがあって思わず笑わせられます。また、人を殺すのも何とも思わない残虐な敵役のカン・ヘサンのキャラも強烈な印象を残します。マ・ソクトとの闘いの後、ヘサンが捨て台詞を吐きます。そんなことかまわずにマ・ソクトはヘサンに一発かますのですが、カン・ヘサンという男、このまま大人しくしているような男とは思えません。パンフレットによると第3作もすでにクランク・インしているそうでが、このままシリーズが続けば、カン・ヘサンの再登場があるかも。 |
ブラックパンサー ワカンダ・フォーエバー(2022.11.12) |
監督 ライアン・クーグラー |
出演 レティーシャ・ライト ルピタ・ニョンゴ ダナイ・グリラ アンジェラ・バセット マーティン・フリーマン ウィンストン・デューク ドミニク・ソーン フローレンス・カサンバ ミカエル・コール テノッチ・ウエルタ・メヒア |
「ブラックパンサー」「アベンジャーズ/インフィニティウォーズ」「アベンジャーズ/エンドゲーム」でブラックパンサー役を演じたチャドウィック・ボーズマンは2020年に癌で亡くなりました。今回、この作品では代役を立てずに、物語上もブラックパンサーであるワカンダの王、ティ・チャラは病気で亡くなった設定となっており、その後のワカンダのことが描かれます。チャドウィック・ボーズマンへのリスペクトからでしょうか。 ティ・チャラが亡くなって1年。ワカンダは前王の妻であり、ティ・チャラの母・ラモンダが王位についていた。ある日、ラモンダと娘のシュリがティ・チャラの追悼のため水辺にいると、水の中から男が現れる。男は海の王国・タロカンの王で、ネイモアと名乗る。彼はタロカンもヴィブラニウムで繁栄していることを話し、タロカンを脅かしかねないヴィブラニウム探知機を開発した科学者を連れてくるよう要求する。シュリと国王親衛隊・ドーラ・ミラージュの隊長であるオコエはアメリカに向かい開発者の大学生、リリ・ウィリアムズを保護したが、ワカンダへ向かう途中ネイモアの部下に襲われ、シュリとリリは拉致されてしまう。ラモンダはシュリを探すため、今はハイチにいる、ワカンダ王国の元戦士ナキアを訪ね、シュリの救出を依頼する・・・。 ブラックパンサーが主人公なので、このまま主役がいないまま物語が進むはずはないと思っていましたが、やはりブラックパンサーになる者が現れます。ネタバレになるのは避けますが、多くの人が思ったとおりではなかったでしょうか。更には、アイアンマンに似た“アイアンハート”の登場もあります。 しかし、タロカンがワカンダを敵と見る理由が今一つわかりませんでした。だいたいワカンダに探知機を開発した者を連れて来いなんて、自分で連れに行けばいいでしょうと思ってしまいます。個人的にはティ・チャラが亡くなったあとのブラックパンサーは考えられないなあ。 |
ザ・メニュー(2022.11.18) |
監督 マーク・マイロッド |
出演 レイフ・ファインズ アニヤ・テイラー=ジョイ ニコラス・ホルト ホン・チャウ ジャネット・マクティア ジュディス・ライト ジョン・レグイザモ リード・バーニー ポール・アデルスタイン エイミー・カレロ アルトゥール・カストロ ロブ・ヤン マーク・セント・シア |
マーゴとタイラーのカップルは、有名シェフのジュリアン・スローヴィクのなかなか予約の取れない孤島にある高級レストランに客として選ばれて訪れる。彼らとともに訪れた客は料理評論家のリリアンと編集者のテッド、グルメ&旅番組の司会者への転身を図る落ち目の映画スターとアシスタントのフェリシティ、レストランのスポンサーのIT企業の3人の幹部、金持ちの熟年夫婦のリチャードとその妻・アン、そして、マーゴとタイラー。更にはジュリアンの母だという女性の合計12人。カルト教団の教祖のようなスローヴィクの命令のもと、統率の取れた行動で料理を整えていくスタッフたちによって、次々と料理が出されてくる。しかし、料理が出されるに従い異様な雰囲気になっていく様子にマーゴは違和感を抱き始める・・・。 金に飽かせて高級レストランに通い、料理の味も判らないのに、ただ、評判のレストランに行ったという勲章を得るためだけの客に怒りを感じるのもわかりますが、そんな人は掃いて捨てるほどいるわけですし、なぜ彼らだけが選ばれたのかの説得力がいまひとつです。その上、なぜそこまでするのかとも思います。だいたい、わざわざ客たちを逃がしてスタッフたちに捕まえさせる鬼ごっこをする理由は何でしょうか。捕まったら殺されるというならまだわかりますが、そうではないのですから。また、タイラーの行動も「なぜ?」と思ってしまいます。この辺り、スローヴィク及び彼を崇めるスタッフたちの異様さは感じ取れますが、その行動はまったく理解できません。 結局、最後はスローヴィクと、たまたまタイラーが連れてこようとした人に断られてやむをえず代打として連れてきた客の中では異質なマーゴとの戦いが繰り広げられます。手がかかった見た目華やかな料理より、ハンバーガーがいいというマーゴには味音痴の私としても同感、喝采を叫びたくなります。 マーゴを演じるのはアニャ・テイラー=ジョイです。彼女は非常に特徴的な顔立ちをしていますね。 |
ザリガニの鳴くところ(2022.11.19) |
監督 オリビア・ニューマン |
出演 デイジーエドガー=ジョーンズ テイラー・ジョン・スミス ハリス・ディキンソン マイケル・ハイアット デビッド・ストラザーン スターリング・メイサー・Jr |
「このミス 2021年版」海外編第2位、「2021本格ミステリ・ベスト10」海外編第9位を獲得したディーリア・オーエンズの同名小説の映画化です。 舞台となるのは1969年。ノースカロライナの沼地で二人の少年が櫓の下に若い男の死体があるのを発見する。男はチェイスという地元の裕福な家庭で育ち、将来を期待されてい青年。捜査の結果、村人から“湿地の少女”と呼ばれ、わずか6歳で家族からも見捨てられ、学校にも通わずに一人で生きてきたカイアという女性が事件直前に彼と争っている姿を目撃されており、やがて彼女は逮捕され、裁判にかけられる。果たして彼女は犯人なのか・・・。 父親のDVで母も兄弟も家を出ていき、やがて父親自身も姿を消して幼い頃から一人で生きてきたカイアに手を差し伸べるのは雑貨店を営む黒人のジャンピン夫婦だけというこんな悲惨な状況が許されるのでしょうか。観客としてはそんな厳しい状況の中でも、一人で生きて行こうとするカイアの姿に感動を思えざるを得ません。そんな無垢なカイアを弄ぶチェイスには大きな怒りを禁じえません。 2時間5分という上映時間の中では原作で描かれる、一人で湿地帯で生活しなければならないカイアの思い(恐怖や孤独感等々)は描き切れません。ただ、ミステリという部分では伏線がしっかり張られており、原作を読んでいない人でも、また私のように原作を読んで事件の真相を知っている人にとっても、なかなか見応えがありました。 |
サイレント・ナイト(2022.11.21) |
監督 カミラ・グリフィン |
出演 キーラ・ナイトレイ ローマン・グリフィン・デイビス マシュー・グード アナベル・ウォーリス リリー=ローズ・デップ ショペ・ディリス カービー・ハウエル=バプティスト ルーシー・パンチ ルーファス・ジョーンズ |
あらゆる生物を死滅させるという毒ガスが全世界に広がり、明日にもイギリスにも到達するという中、ネルとサイモンの夫婦と3人の子どもたちは、屋敷に友人たちを呼んでクリスマス・パーティーを開く。集まったのは、自己中心的な妻・サンドラと控えめな夫・トニーにワガママ娘・キティの一家と、レズビアンのカップルであるベラとアレックス、医師・ジェームズと若い妻ソフィ。総勢12人は死を前にして最後のクリスマス・パーティーを楽しもうとする。政府からは苦しまずに死ぬことができるよう自殺用のピルが配布されており、皆が最後はピルを飲んでの死を覚悟する中、ネルの長男・アートは政府が言っていることに間違いがあるかもしれないと、ピルを飲むことを拒否する・・・。 人類滅亡前夜のクリスマスの夜を舞台に、それぞれの人生を振り返えるシリアスな群像劇かと思いましたが、さにあらず。子どもたちはいつものように喧嘩をし、大人たちは隠されていたドロドロした関係を明らかにし、コミカルな騒ぎを繰り広げるなど、予想とは大違いの作品でした。 政府は苦しまずに死を迎えるためにピルを飲むことを奨励しますが、アートだけはそれに疑問を差しはさみます。何だかコロナ禍の今の状況に似ていますね。アートを通して闇雲に政府を信じていいのかどうか疑問を投げかけているのでしょうけど、ただ、だからといって、あのラストシーンには唖然としてしまいました。この映画は“トンデモ映画”だったのか!わざわざこの映画を観ることを目的に東京に行ったとしたらきっと大いに後悔したでしょうね。ついでだからでよかったです。 アートを演じたのは、「ジョジョ・ラビット」のローマン・グリフィン・デイビス。相変わらず子役としての演技力は抜群です。キーラ・ナイトレイがその母親を演じます。パイレーツ・オブ・カリビアン」でおきゃんな女の子を演じていたキーラ・ナイトレイもさすがに母親を演じるような年齢になったんですね。 |
ドント・ウォーリー・ダーリン(2022.11.21) |
監督 オリビア・ワイルド |
出演 フローレンス・ピュー ハリー・スタイルズ オリビア・ワイルド ジェンマ・チャン キキ・レイン クリス・パイン ニック・クロール |
(ネタバレあり) 砂漠の中にある町・ビクトリーで何不自由なく暮らすジャックとアリスの夫婦。その町の男たちは朝になると車で砂漠の中にあるフランクが経営する会社へと出勤していき、妻は掃除や食事の支度に勤しむ。ある日、アリスは友人の主婦・マーガレットが屋上から落ち、赤い服の男たちに連れ去られるのを見る。その事実をなかったことのように振る舞う周囲の人々にアリスは次第に違和感を抱くようになる・・・。 これは難しい映画でしたねえ。舞台の設定としては服装や車から50年代から60年代のアメリカかと思ったのですが、実はこれが違うのがやがてわかります。男は外で仕事をし、妻は家でかいがいしく家事をして夫の帰りを待つ、そんな男中心の世界という考えに取り憑かれた男たちが望んだのが50年代、60年代のアメリカであり、それを具体化した世界がビクトリーという町という設定であることが物語が進むにつれて徐々に明らかになってきます。 しかし、この世界のありようがどんな形なのか、「マトリックス」のように、実際は本人はカプセルの中で培養液に浸されて寝ている状態というわけでもない様ですし、ラストにこの世界から逃げ出した彼女がどうなったのか明らかにされずに映画は終わります。 わからないと言えば、この世界の支配者ともいうべきフランクは、いったい何を目的としているのか。そして、彼の妻のシェリーはどういう立場にいるのか。彼女はラストであんな行動に出ますが、その後どうしようとするのでしょう。 |
ある男(2022.11.22) |
監督 石川慶 |
出演 妻夫木聡 安藤サクラ 窪田正孝 清野菜名 眞島秀和 小藪千豊 山口美也子 きたろう カトウシンスケ 河合優実 でんでん 仲野太賀 真木よう子 柄本明 坂元愛登 小野井奈々 |
里枝は次男が病死したことをきっかけに離婚をし、長男を連れて実家に戻って実家の文房具店の手伝いをしていた。そこに画材を買いに町の森林会社で働く谷口大祐がやってくる。そんな交流が続いたのち、やがて大祐は里枝に友だちなってほしいと告白し、交際を始め結婚する。結婚から3年が過ぎ、二人の間に長女も生まれ、幸せに暮らしていたが、山での不慮の事故で大祐が亡くなってしまう。ところが、1周忌にやってきた大祐の兄は、大祐の遺影を見て弟ではないと言い出す。里枝は離婚の際に世話になった弁護士の城戸章良に大祐が何者なのかの調査を依頼する。城戸は戸籍の売買を斡旋していた男を突き止めて、男が収監されている刑務所に会いに行く・・・。 物語の中心は、谷口大祐と名乗っていた男は何者なのか、なぜ他人の名前を騙っていたのかにありますが、谷口の正体を探っていく中で、在日韓国人3世で日本に帰化しているにも関わらず、相変わらず周囲は在日という目で見ていることに悩む城戸のアイディンティティを描く作品でもあります。 よく小説では、犯罪者が身を隠すために他人の戸籍を買って他人に成りすますという設定がありますが、谷口が他人の名を騙ったのはそれとはまったく異なる理由です。確かに、後半明らかとなってくる谷口の名を騙った男の人生を見ると、別人になりたいと思う気持ちもわかります。あの状況を背負って生きていくのは本当に大変なことですね。 ラスト、バーのカウンターに座る城戸のエピソードはどういうことなんでしょう。ただ単にあの時間だけ他人の名前とその人生を騙ったということなんでしょうか。それとも・・・。強烈な印象を残したまま映画は終わります。 |
ブラックアダム(2022.12.3) |
監督 ジャウマ・コレット=セラ |
出演 ドウェイン・ジョンソン ピアース・ブロスナン オルディス・ホッジ ノア・センティネオ サラ・シャヒ マーワン・ケンザリ クインテッサ・スウィンデル モー・アマー ボディ・サボンギ |
DCコミックのアンチ・ヒーローであるブラックアダムの誕生秘話を描く作品です。 舞台は中東の架空の国・カーンダック。5000年前、ブラックアダムの息子はカーンダックを支配していたアクトン王の圧政から民衆を救うために自らの命を犠牲にし、その力を父に託して死ぬ。ブラックアダムは息子を奪われたことの怒りから暴走し、人々にとって危険な存在となったため、魔術師たちによって“終末の岩”に投獄され力を封じられてしまう。5000年後の現代、大学教授のアドリアナは山中で邪悪な遺物“サバックの王冠”を発見するが、カーンダックを支配するインターギャングに襲撃を受ける。追い込まれたアドリアナはとっさに遺跡に刻まれた呪文“SHAZAMU”を唱える。すると、5000年の眠りからブラックアダムが覚醒してしまう。破壊の限りを尽くすブラックアダムの前にスーパーヒーローチーム「JSA」が立ちはだかる。そのメンバーはホークマン、ドクターフェイト、サイクロンそしてアダム・スマッシャーの4人。彼らとブラックアダムとの戦いの火蓋が切って落とされる。そして、その裏では、かつての栄光を取り戻そうとするカーンダック王の末裔が暗躍していた・・・。 ちょっとストーリーが分かりにくいです。ブラックアダムが“シャザム”と唱えるのはなぜかなど、どうも来年2作目が公開される「シャザム」とも関係があるようなのですが、それを観ていない私にはこの辺り理解できません。 それはともかく、ブラックアダムを演じるドゥエイン・ジョンソンの筋肉隆々の身体が凄いのなんのって。筋肉があるように見せかけるスーツを着用する必要がなかったそうです。 マーベルコミックスに対抗するDCコミックスのヒーローものですが、新たな「JSA」という組織のヒーローたちの登場はありますが、これまでに映画化されたヒーローたちの登場はありません。ただ、エンドクレジットにあるヒーローのカメオ出演がありますので、見逃さないように。ブラックアダムの次作は彼との戦いでしょうか。 |
月の満ち欠け(2022.12.4) |
監督 廣木隆一 |
出演 大泉洋 柴咲コウ 有村架純 目黒蓮 田中圭 伊藤沙莉 菊池日菜子 丘みつ子 安東玉恵 波岡一喜 寛一郎 小山紗愛 阿部久令亜 尾杉麻友 |
第157回直木賞受賞作である佐藤正午さんの同名小説の映画化です。ひとことで言えば、生まれ変わりを描いたストーリーです。 物語は大泉洋さん演じる小山内堅と柴咲コウさん演じる妻の梢とその娘の瑠璃の家族の話とレコード店でアルバイトする“Snou Man”の目黒蓮さん演じる三角哲彦と店先で雨宿りをしていた有村架純さん演じる正木瑠璃との切ない恋の話が語られていきます。この2つの話を繋げる役が青森から小山内に会いに出てきた娘の親友である伊藤沙莉さんが演じる緑坂ゆい。彼女から小山内は娘の瑠璃が幼い時からある男に恋をしていたことを聞きます。小山内は瑠璃が亡くなった後に訪ねてきた三角という男のことを思い出します・・・。 個人的には原作は大好きですし、ファンタジーとでもいえるストーリーは好みなので、飽きずに観ることができましたが、荒唐無稽なストーリー展開ですから、合わない人もいるかも。意外にこの作品、観る人を選ぶかもしれません。 大泉さんがいつもの軽い三枚目というイメージとは異なり、愛する者を失い、心に空洞を抱えた男を見事に演じています。柴咲コウさんは今年は「沈黙のパレード」「天間荘の三姉妹」「Dr.コト―診療所」と出演作が続々公開でしたね。有村架純さんは最近のテレビドラマの「石子と羽男」とは違って「るろうに剣心」の時のように、はかなげな謎めいた女性を演じていますが、個人的には「石子と羽男」のようなはっきりとした役柄の方がお似合いだと思います。三角を演じた目黒蓮くんですが、芸達者な役者さんの中で彼だけ浮いてしまっている感がするのはやむを得ないですかねえ。 瑠璃の子ども時代、緑坂ゆいの娘、小山内の母の介護士の娘と3人の子役が登場しますが、みんな演技が上手ですよねえ。子どもであって、子どもでない部分の演技もありますが、大人の俳優さんに負けません。 |
MEN 同じ顔の男たち(2022.12.10) |
監督 アレックス・ガーランド |
出演 ジェシー・バックリー ロリー・キニア パーパ・エッシードゥ ゲイル・ランキン サラ・トゥーミィ |
ハーパーは夫婦関係がうまくいかず、ある日、夫からの暴力を受け、部屋から夫を閉め出したが、夫はアパートの上階の部屋に押し入ってベランダから転落死してしまう。夫の転落する姿を窓から見たハーパーはトラウマを抱え、心の平穏を取り戻すために田舎のカントリーハウスを借りてやってくる。ところが、散歩に出かけたハーパーを何者かが追いかけてきたり、丸裸の男が家の中をのぞき、挙句の果てに侵入しようとしたりする。男は駆け付けた警察に逮捕されるが、その後も彼女の周囲では得体のしれないことが起こる・・・。 よくわからない映画でした。カントリーハウスの管理人・ジェフリーをはじめ、警官、神父、少年、飲み屋のマスターと彼女の出会った人は皆同じ顔をしているのですが(違うのは女性の警官だけ)、なぜか彼女はそれを意識しません。ネタバレになるので詳細は語れませんが、ラスト、彼女に襲い掛かる恐怖はあまりにグロテスク。意味わかりません。正直のところ個人的には金返せと言いたくなる作品でした。 |
ラーゲリより愛をこめて(2022.12.10) |
監督 瀬々敬久 |
出演 二宮和也 北川景子 松坂桃李 中島健人 桐谷健太 安田顕 寺尾聡 奥野瑛太 金井勇太 中島歩 佐久本宝 朝加真由美 市毛良枝 奥智哉 三浦誠己 山崎聡真 渡辺真紀子 山中崇 酒向芳 |
第11回講談社ノンフィクション賞を受賞した辺見じゅんさんの「収容所から来た遺書」を原作とする作品です。 ハルビン特務機関で働く山本幡男は妻と4人の子どもの6人家族。終戦直前、日ソ不可侵条約を破棄して満州に攻め入ってきたソ連軍の攻撃で山本は妻子と離れ離れになり、ソ連軍に拘束され収容所に送られ、ハルビン特務機関やそれ以前に働いていた満鉄での活動がスパイ行動とされ、25年の刑期を宣告される。なかなか帰国が認められない状況に希望を失い極寒の地に倒れる者や逃亡を図り射殺される者が出る中、山本は妻と生きて帰ることを約束したと、帰国に希望をつなぐ。ところが、ある日、山本は病に倒れる。仲間の命を懸けた訴えにより、山本は病院で診察を受けることができたが、その結果は癌で余命3か月だった。同郷の先輩の原は山本に遺書を書くように言う・・・。 戦後、シベリアに抑留された日本人は約60万人と言われます。その中で6万人がシベリアの地で亡くなったそうです。この映画に登場する人たちが日本に帰国できたのが昭和32年。なんと戦後12年が過ぎています。その間、ソ連は理由を付けて日本人をシベリア開発の貴重な労働力として酷使してきたんですよね。そんな過去を見ても今のロシアは変わっていないと思わざるを得ません。 劇場内は珍しく多くの観客が、それも年配の人から若い人まで様々な年代の人が観に来ていました。とにかく泣かせます。私の両隣は若い女性だったのですが、途中から鼻をすすり始め、ハンカチを出して目元を覆っていました。私自身も、ラストに山本に反発していた相沢が自分は山本が嫌いだったと言いながらも、突然笑顔になって妻のもじみあての遺書を諳んじ始めたときには涙が浮かんできてしまいました。 パンフレットには山本が妻や子にあてた4通の手紙の全文が載っていますが(そもそもこの映画は事実に基づいています)、多くの人にこの手紙から戦争の悲しさを知ってもらいたいですね。ロシアとウクライナが戦争をしている今、ある意味、時にあった作品といえます。 |
ホイットニー・ヒューストン(2022.12.25) |
監督 ケイシー・シモンズ |
出演 ナオミ・アッキー スタンリー・トゥッチ アシュトン・サンダース タマラ・チュニー ナフェッサ・ウィリアムズ クラーク・ピータース ブリア・ダニエル・シングルトン |
グラミー賞を6度も受賞している、別名“THE VOICE”と呼ばれた類稀なる美声と圧倒的な声量を持つ歌姫、ホイットニュー・ヒューストンの半生を描いた作品です。 歌手の母親のバックコーラスをしていたホイットニーは、アリスタ・レコード社長のクライヴ・デイヴィスに見いだされ、やがて人気歌手となり、1991年のスーパーボウルでの国歌斉唱、1994年ネルソン・マンデラの要請を受けた南アフリカでのコンサートなどで圧倒的な歌唱力を披露し、映画にも主演、R&B歌手のボビー・ブラウンとの結婚、子どもの出産と幸せの絶頂かと思われたが、やがて麻薬に手を出すようになり、警察に拘束され、その後健康を害し、私生活上のトラブルもあり、人気は凋落する。そして2012年2月11日、グラミー賞授賞式前夜のクライヴ・デイヴィス主催のパーティーに出席するため滞在していたホテルの浴室で溺死しているのが発見される・・・。 彼女がなぜ麻薬に手を出すようになったのか、この映画では結論めいたことは言っていません。父母の不仲から幸せな家庭生活を夢見ていた中での夫の浮気、彼女の稼いだ金を湯水のように消費する父親等々他人には想像できない彼女なりの苦悩があったのでしょう。また、この作品では、ホイットニー・ヒューストンがバイ・セクシャルであることも明らかにしています。 どういうきっかけで購入したのか覚えていませんが、我が家には彼女の最初のアルバム「そよ風の贈り物」のCDがあります。また、彼女とケヴィン・コスナーが共演した映画「ボディガード」のブルーレイディスクも。ラストで流れる「オールウェイズ・ラヴ・ユー」は強烈な印象を残しましたよねえ。今回の映画の中で明かされていましたが、ケヴィン・コスナーがホイットニュー・ヒューストンを相手役に指名したそうですね。そして「オールウェイズ・ラヴ・ユー」を歌うきっかけを作ったのもケヴィン・コスナーだそうです。一瞬、映画のシーンのケヴィン・コスナーが映りましたがかっこよかったですね。 ホイットニュー・ヒューストンを演じたのは「スターウォーズ スカイウォーカーの夜明け」のナオミ・アッキー。アッキーは熱演ですが、さすがに歌はほとんどホイットニー本人のものを使用しているそうです。口パクですが、誰にもまねができないホイットニーの美声を真似て中途半端にアッキーが歌うよりもいいですね。というより、ホイットニー・ヒューストンのようには歌えないでしょうし。ただ、彼女はインタビューで自分も何シーンか歌っていると言っています。 それにしても、才能も金もある芸能人が薬に溺れるのは、だいたい同じような理由ですね。 |