サロゲート(22.1.22) |
監督 ジョナサン・モストウ |
出演 ブルース・ウィルス ラダ・ミッチェル ロザムンド・パイク ボリス・コドジョー ジェームズ・クロムウェル ヴィング・レイムズ ジェームズ・フランシス・ギンテイ |
舞台となるのは、少し先の未来。そこでは"サロゲート"と呼ばれるロボットが人間自身の代わりに社会生活を送り、人間は自宅にいてそのロボットを遠隔操作するだけという生活を送っています。ある日、サロゲートが破壊され、それとともに、それを操作する人間の脳も破壊されて死亡するという事件が起きます。 事件の捜査に当たるトム・グリアーを演じるのは、ブルース・ウイルスです。彼の最初の登場シーンには唖然としてしまいました。なんとなれば、あの禿げていた頭にフサフサとした髪の毛があり、それがまた似合わないときているのですから。結局、髪の毛があるのは“サロゲート"で、本物のトム・グリアーは、やっぱり髪の毛がなかったのでほっとしました(笑) トムの相棒役であるジェニファーを演じるのはラダ・ミッチェルですが、ヒロインの割にはあまりにあっけない退場の仕方でした。 人間は単に自宅で横になっているだけで、サロゲートが体験することを疑似体験するわけですが、あれではきっと人間は退化してしまいますよ。筋肉なんてあっという間になくなってしまいます。怠け者にはいいかもしれませんが、自分だったら一時は楽かもしれませんが、嫌になるのではないかと思いますけど。当然、映画の中でも“サロゲート"に反対する人々がいて、独立区を作っているという状況ですが、彼らの存在もそれほどインパクトがありません。 先月、「アバター」を観たので、SF映画となるとどうしても比較をしてしまいますが、あまりに小粒です(制作費が違うのだから仕方ないですけど)。かといって、ロボット社会を批判するようなメッセージ性も乏しいし、ストーリー的にもいまいちの作品でした。 |
パーフェクト・ゲッタウェイ(22.1.23) |
監督 デヴィッド・トゥーヒー |
出演 ミラ・ジョヴォヴィッチ ティモシー・オリファント キエレ・サンチェス スティーヴ・ザーン マーリー・シェルトン クリス・ヘムズワース |
ハワイ諸島の中のカウアイ島に新婚旅行に来たクリフとシドニーの夫婦。人里離れたビーチを目指す途中、オアフ島で新婚のカップルが惨殺され、犯人のカップルが自分たちがまさにいるカウアイ島に逃走したというニュースが入る。途中でヒッチハイクを断ったカップル、そして現在道連れになっているカップルが犯人ではないかという疑心暗鬼にとらわれながら旅を続けるが・・・。 果たして誰が犯人なのか。この手の話はどこまで内容を書いたらいいのかが難しいところです。誰もが怪しいといった様子を 描きながら話は進んでいきますが、あれこれ考えずに、素直に監督に騙された方が楽しいですね。最後はどんでん返し。それまで描かれていた事実が、実は別の意味を持っていたことが明らかとされます。犯人の正体がわかってからのラスト30分からは、犯人と生き残ろうとする者との血みどろの闘いが続きます。痛そうなシーンが連続します。 正直のところいわゆるB級映画です。有名俳優は、シドニーを演じるミラ・ジョヴォヴィッチだけです。相変わらず闘う女が似合います。怖いですけど(笑) |
ゴールデンスランバー(22.1.30) |
監督 中村義洋 |
出演 堺雅人 竹内結子 吉岡秀隆 劇団ひとり 香川照之 濱田岳 渋川清彦 柄本明 ベンガル 伊東四朗 大森南朋 貫地谷しほり 相武紗季 永島敏行 石丸謙二郎 ソニン でんでん |
昨年は「フィッシュ・ストーリー」「ラッシュライフ」「重カピエロ」と立て続けに映画化された伊坂作品ですが、どれも原作の雰囲気を描き出すことは難しかったようです。今回は突然首相殺害犯に仕立て上げられてしまった青年の逃走劇を描く「ゴールデンスランバー」です。 主人公青柳雅春を演じているのが堺雅人さんということで、堺ファンの妻も観たがっているのですが、妻の予定を待っていてはなかなか観に行くことができないので、こっそり公開初日に観に行ってきました。 今までの映画化作品と異なって、とにかく出演陣が豪華です。堺さんのほかに竹内結子さん、吉岡秀隆さん、劇団ひとりさん、香川照之さん、濱田岳さん、柄本明さん、ベンガルさん、伊東四朗さん、永島敏行さん等々ですからねえ。すごいですよ。それに大森南朋さんや相武紗季さんがまったくのちょい役で出演しています。そういう意味では贅沢な映画です。 青柳役の堺さん。最初はどことなく自信なげな表情が逃亡を重ねるうちにだんだんきりりとしてくるんですよねえ。いやぁ〜相変わらずうまいですよ。役柄に合っていましたね。 豪華出演陣の中では父親役の伊東四朗さんがよかったです。息子を信じて報道陣に対応する姿には感動です。最後に「ちゃちゃっと逃げろ」と言ったときには不覚にも思わず涙ぐんでしまいました(原作では「ちゃっちゃと逃げろ」とありましたが、伊東四朗さんの「ちゃちゃっと逃げろ」の台詞の方がいいですねえ。)。 永島敏行さんも登場シーンは少ないですが、印象的でしたねえ。耳に防音の耳当てを付けてショットガンを撃つ姿には笑ってしまいました。それと、伊坂作品には欠かせない濱田岳さんのキルオ役もよかったですね。「せんだい旅日和」に掲載された伊坂さんと武田こうじさんの対談の中で、キルオ役は濱田さんをイメージして書いたと言っていましたけど、ひょうひょうとした雰囲気がぴったりです。 映画の最初のエレベーターのシーンはどことなく気になっていましたが、ラストですっきりと明らかにされたし、満足して映画館を出ました。今までの伊坂作品の中で一番おもしろかったです。 |
パラノーマル・アクティビティ(22.1.31) |
監督 オーレン・ペリ |
出演 ケイティ・フェザーストーン ミカ・スロート |
総額15000ドルという低予算で制作した映画が大ヒット。アメリカンドリームを絵に描いたような話に大いに期待して見に行ったのですが・・・。 普通のビデオカメラで撮影されているので、 ドキュメンタリーのような感じで進んでいきます(「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」のような映画とも言われますが、残念ながら見ていないので比較できません。)。登場人物はケイティとミカのカップルと、友人の女性と超常現象の研究家の4人だけ。俳優も無名ですし、撮影場所も家の中だけですから費用がかからないはずです。 物語は、ケイティの周りで起きる不思議な現象の正体を暴こうと、寝室にカメラをセットし、何が起きているのかを撮影しようとすることから始まります。テレビCMで流される試写会での観客の恐怖の表情から、これはかなり怖い映画かもしれないぞ、心してかからなければと思つて見始めたのですが、なかなか恐怖の場面が出てきません。普通のホラー映画ならこのあと急に目の前に血だらけの顔が飛び出すのが常套だと身構えても肩すかし。 ただ、淡々と二人の様子をビデオカメラでとらえていくだけなのに、それほど退屈にならず見入ってしまったのは自分でも意外でした。怖い場面が連続するわけでもないのに不思議です。だからこそヒットしたんでしょうか。正直、あっとびっくりしたのはラストだけです。ラストもこれで終わりかどうかわからないエンドロールで、劇場内に電気がついて、終わりなんだぁとわかったくらいです。 でも、これで1800円は高いなあと思う映画でした。低予算なんだから、チケットももう少し安くすればいいのに。 |
板尾創路の脱獄王(22.2.21) |
監督 板尾創路 |
出演 板尾創路 國村隼 石坂浩二 阿藤快 津田寛治 笑福亭松之助 木村裕一 ぼんちおさむ 宮迫博之 千原せいじ オール巨人 木下ほうか 榎木兵衛 |
板尾創路さんが監督、主演を勤める作品です。板尾さんといえば、ホンコンと組んだ吉本興業のお笑い芸人というイメージがあったのですが、最近は俳優としてもいい味出しています。 今回は、無銭飲食という微罪で逮捕されてから、拘置所、刑務所を何度となく脱獄する男・鈴木を演じます。何故に、鈴木は脱獄を繰り返すのか、この映画のテーマはそこにあります。 ラスト、鈴木が脱獄を繰り返してきた理由が明かされます。心打たれる理由です。ところが、そんな感動が司法省の役人・金村を演じる國村隼さんのひとことによって一転します。やっぱり、ここは吉本映画ですね。 吉本興業のお笑い芸人が多数出演していますが、なかには演技力という点で疑問符がつく人もいるのも仕方がないでしょう。そこは周囲に國村隼さんや石坂浩二さんらの重鎮を配置してカバーしています。それにしても、驚くことに主人公である板尾さんには、台詞がまったくありません。しかし、台詞がないのにもかかわらず強烈な印象を残します。声を出すのは、うなり声と、なぜか突然、中村雅俊の「ふれあい」を歌うときだけです。歌い出したときには、唖然としてしまったのですが、このミスマッチとも思える歌が、意外に合うからびっくりです。まさしく"板尾印"の映画ですね。 |
NINE(22.3.21) |
監督 ロブ・マーシャル |
出演 ダニエル・デイ=ルイス マリオン・コティヤール ペネロペ・クルス ジュディ・デンチ ファーギー ケイト・ハドソン ニコール・キッドマン ソフィア・ローレン |
ブロードウェイミュージカルの映画化です。 「シカゴ」の監督ロブ・マーシャル作品ですが、正直のところ「シカゴ」ほどのおもしろさはありません。物語は映画制作に行き詰まっている往年の名監督を描いていくのですが、話の筋がよく読めず、途中であやうく眠りそうになってしまいました(音楽が始まらなければ眠っていたかも。)。とにかく、ひとことでいえば好色な映画監督の物語です。 ただし、出演陣は豪華です。主役の映画監督グイドを演じるダニエル・デイ=ルイスを始め、ニコール・キッドマン、ペネロペ・クルス、マリオン・コティヤールとアカデミー賞俳優が出演。そのうえ、往年のイタリアの大女優ソフィア・ローレンや最近では007シリーズでM役を演じているジュディ・デンチのベテラン俳優が脇を固めます。 ミュージカルということからすれば、歌手でもある(らしいです。パンフレットによれば)ファギーの歌とダンスが一番の迫力でした。それから、ペネロペ・クルスのエロティックな踊りも印象的でしたねえ。ペネロペ・クルスといえば、スレンダーだという印象を持っていたのですが、ところが大間違い。ものすごい肉感的なボディーでした。主人公の愛人役にふさわしいです。 「エディット・ピアフ〜愛の賛歌〜 」で2008年のアカデミー主演女優賞を受賞したマリオン・コティヤールもさすがに聞かせました。個人的には今回の出演した女優陣の中では一番の好みです(笑)。 記者のステファニーを演じたのはケイト・ハドソン。彼女はコメディ女優として有名なゴールディ・ホーンの娘だそうです。コケティッシュなかわいい感じのお母さんに対して、娘はセクシーでまったく雰囲気が異なりますね。 ブロードウェイで初演当時「ドリームガールズ」とトニー賞を争ったというので期待して観に行ったのですが、ちょっと期待外れ。 |
ハート・ロッカー(22.3.22) |
監督 キャスリン・ビグロー |
出演 ジェレミー・レナー アンソニー・マッキー ブライアン・ジェラティ ガイ・ピアース レイフ・ファインズ デヴィッド・モース エヴァンジェリン・リリー クリスチャン・カマルゴ |
先頃発表されたアカデミー賞作品賞、監督賞など6部門の栄冠に輝いた作品です。 アカデミー監督賞史上初めての女性監督の受賞でしたが、女性が硬派な戦争を題材とした映画を撮るというのも珍しいことですね。 映画は、イラク戦争において爆発物処理に携わる兵士を描いていきます。ドキュメンタリーだと勘違いさせるようなタッチで撮影がされています。2時間以上の上映時間でしたが、最初から緊迫感溢れる映像が続き、観ているこちらも緊張のしっぱなしで飽きてしまうということはありません。映画であるし、スクリーンのこちら側で観ているからいいようなものの、もし本当に戦場にいたなら、精神的に耐えられなかったかもしれません。日常、常に死と隣り合わせにいる兵士たちが、酒を飲み暴れるという気持ちも理解できないでもありませんね。 有名俳優も出演してはいるのですが、映画が始まってすぐに爆死してしまう班長役を演じるガイ・ピアース(「L.A.コンフィデンシャル」や「メメント」に出ています。)、途中賞金稼ぎの請負人(?)を演じたレイフ・ファインズ(「イングリッシュ・ペイシェント」や「シンドラーのリスト」等々が有名です。)など、みんなちょい役ばかりです。ただ、主人公のジェームズたちを演じたのが無名の役者さんだったが故に逆にこの作品にリアリティーを感じさせることになったかもしれません。 気になったのは、少年のお腹の仲に爆弾を仕掛けるとか、同国人に爆弾のついたベストを着せるなどのシーンがあったこと。アメリカ人が観れば、イラク人というのはひどい人間だと思うでしょうね。これをイラクの人が観たらどう感じるのでしょうか。 妻子と過ごしている様子を描いてハッピー・エンドかと思いきや、ラストシーンは厳しい現実を観客に突きつけます。 |
シャッターアイランド(22.4.11) |
監督 マーティン・スコセッシ |
出演 レオナルド・ディカプリオ マーク・ラファロ ベン・キングズレー ミシェル・ウィリアムズ マックス・フォン・シドー エミリー・モーティマー ジャッキー・アール・ヘイリー パトリシア・クラークソン |
精神障害の犯罪者を収容する絶海の孤島「シャッター・アイランド」で、ひとりの囚人女性が失踪する。捜査にやってきたのは、連邦保安官のテディ・ダニエルズ(レオナルド・ディカプリオ)と相棒のチャック(マーク・ラファロ)。 マーティン・スコセッシ監督とレオナルド・ディカプリオのコンビによる4本目の作品です。デニス・ルヘインの原作は、最終章が袋とじとなっていて、発売されたときは話題を呼びました。僕自身も買おうか買うまいか、本屋さんで手にとって悩んだものです(結局、買いませんでしたが。)。 映画の本篇が始まる前に「目の錯覚」だとか脳がどうだこうだという解説が入るので、本篇が始まると、騙されないぞ!と力を入れての鑑賞です。 「このままだと話の流れとしてはあれだなあ〜」「まさか、このまま予想どおりにならないだろうなあ〜」「こんなに簡単にわかるのでは、原作の袋とじは大げさだよなあ〜」なんて思いながら観ていたのですが、結局ラストは思ったとおりの展開に・・・。ネタばれになるので詳しく言えませんが、冒頭からおかしさに気付きますよ。あの描き方では、身構えて観ていなくても、多くの人にきっとわかってしまいますよね。 印象的だったのは、最後のディカプリオのセリフだけという、マーティン・スコセッシとディカプリオのコンビ作品の中では最低と言っていいかもしれません。期待していただけに落胆が大きい映画でした。 |
第9地区(22.4.13) |
監督 ニール・ブロムカンプ |
出演 シャルト・コプリー デヴィッド・ジェームズ ジェイソン・コープ ヴァネッサ・ハイウッド |
今年のアカデミー賞作品賞の候補にもなった作品です。 南アフリカのヨハネスブルク上空に宇宙船が止まり、調査のために中に入ると、多数の衰弱したエイリアンを発見。難民として第9地区に収容する。28年後、スラム化した第9地区から新たな郊外へとエイリアンを移動させることになり、超国家機関のMNUがそれを担当することとなる。 手持ちカメラで撮影したような映像にニュースやインタビューが挿入され、一瞬ドキュメンタリーを見ているかのように思わせるタッチで描かれていきます。 移住計画の責任者に抜擢されたヴィカスが主人公です。彼がエイリアンが隠していた液体を浴びて、しだいにエイリアン化していくところが、なんともグロいです。それにしても、エイリアンの姿形がエビに似ていて、蔑称が"エビ"ですからねえ。その上、大好物がキャット・フードときているのですから、大笑いです。このあたり、B級映画に陥りかねないところですが、どうにか一歩踏みとどまったという感じです。後半は、人間の姿に戻してもらうため、エイリアンが宇宙船で故郷に帰るのを助けるヴィカスの奮闘を描きます。最初は優柔不断な頼りない、どこにでもいる普通の男が、ラストにとる行動にはほろっときてしまいます。 映画の舞台となるのが、アメリカとかヨーロッパの都市ではなく、アパルトヘイトのあった南アフリカのヨハネスブルクというのは意味深です。なにせ、看板に「Human only」と書いてあるのですから。これは、もう完全に白人至上主義の差別意識と同じです。 ヴィカスを演じたのは、シャルト・コプリーという日本では無名の俳優さん。監督も無名のニール・ブロンカンプという人ですが、彼を起用したのがプロデューサとして名を連ねるピーター・ジャクソンです。あの「ロード・オブ・ザ・リング」の監督さんです。この映画で唯一有名な人ですね。 |
時をかける少女(22.4.24) |
監督 谷口正晃 |
出演 仲里依紗 中尾明慶 安田成美 勝村政信 青木崇高 石橋杏奈 千代將太 榎本時生 キタキマユ 田島ゆみか 松下優也 加藤康起 |
筒井康隆さん原作の同名小説の映画化です。私にとって「時をかける少女」は、学生時代に夢中で見たNHK少年ドラマシリーズの第1作、青春時代を思い起こさせる作品です。
その後、この作品は映画化やテレビドラマ化されていますが、やはり一番有名なのは、大林宣彦監督の尾道三部作の一作品として原田知世主演で映画化されたものでしょう(僕としては、島田淳子(のちに浅野真弓)さんが芳山和子を演じたNHKドラマですけどね。)。 今回の作品は、芳山和子の娘あかり(仲里依紗)が、和子の代わりに深町一夫に会うために過去に行く話となっています。続編として観ることができますので、できれば以前の映画を観て、芳山和子と深町和夫の関係を知ってから観た方が楽しめるかもしれません。芳山和子が薬学部の先生となってタイムトラベルの薬を開発してしまうというのがすごいですけど、こういう細かいところにはこだわらない方が楽しく観ることができます。 あかりが向かった過去は1970年代。僕の青春時代真っ只中の時代ですので、それだけでもうれしくなってしまいます。なにせ、流れてくる歌がかぐや姫や吉田拓郎ですからねえ。それに二人で行く銭湯に脱衣所で飲む牛乳ですよ!! もう胸が熱くなってしまいましたよ(笑) 主人公のあかりを演じたのは、仲里依紗さんです。クォーターだそうですが、そういえば目元にそんなことを感じさせます。美少女というわけではありませんが、最近の若手女優さんでは珍しくちょっとぽちゃっとした温かみを感じさせる女優さんです。次作が「ゼブラーマン」のゼブラクイーンとは、イメージが違いすぎて絶句です。 芳山和子を演じたのは、安田成美さん。多くの人が原田知世さんを期待していたと思いますが、安田さんもなかなか雰囲気良かったです。 ラストは感涙ものです。過去は変えてはいけないのですね。最初の方で、あんなかたちで何気なく伏線が張られていたとは、 これは脚本家さん、お見事です。 映画館は、てっきり主演の仲さんのファンの若い人が多いだろうなあ、おじさん一人じゃちょっと気後れするなあと思いながら行ったのですが・・・。なんと、場内は中年の男女が半分以上を占めているという感じでした。やっぱり、私のようにNHK少年ドラマシリーズを観た世代か、あるいは、大林宣彦監督、原田知世さん主演の映画化作品を観た世代が懐かしくて観に来ていたのでしょうね。過去の作品を知るおじさん、おばさん世代におすすめです。 |
ウルフマン(22.4.25) |
監督 ジョー・ジョンストン |
出演 ベニチオ・デル・トロ アンソニー・ホプキンス エミリー・ブラント ヒューゴ・ウィーヴィング ジェラルディン・チャップリン |
題名のとおり、昔から怪物として"吸血鬼"と人気を二分する(とはいっても、かなり差はつけられていますが)"狼男"の話です。 兄が行方不明という兄の婚約者からの手紙を受け取ったローレンスは、久しぶりにふるさとに戻ってくる。そこで待っていた兄が惨殺死体で発見されたという報告だった。ジプシーのサーカス団の飼っている熊が犯人だと村人が騒ぐ中、正体不明の怪物が村人たちを襲い、ローレンスも噛まれてしまう。命を取り留めたローレンスだったが、やがて、身体に異常が生じてきているのに気づく。 CG全盛時代に、「狼男アメリカン」のリック・ベイカーによる特殊メイクとは、あれ懐かしい!という印象です。一昔前に戻ったかという感じです。精神科病院で狼男に変身するシーンは、「狼男アメリカン」を彷彿させ、特殊メイクとしては凄いなあと思ったのですが、パンフレットを見ると、あれってCGだったのですね。やっぱり、最近のCG技術にはかないません。それにしても、あの半分人間半分獣という狼男のメイクはどうにかならなかったのでしょうか。せっかく、最初の重厚な感じが台無しです。 舞台がビクトリア王朝時代のイギリスということで、怪物が出現するにはぴったりの雰囲気です。そのうえ、名優ベニチオ・デル・トロとアンソニー・ホプキンスですから、期待して観に行ったのですが、ちょっと期待外れです。確かに最初は、いったいローレンスを襲った狼男は誰だろうというミステリー風味もあったのですが、その正体もあっけなく明らかになるし、なった途端、いっきになんだこの映画!?はというレベルに落ちてしまいました。がっかりです。狼男なら「ニュームーン」の方がいいです。 |
マイレージ・マイライフ(22.5.8) |
監督 ジェイソン・ライトマン |
出演 ジョージ・クルーニー ヴェラ・ファーミガ アナ・ケンドリック ジェイソン・ベイトマン エイミー・モートン メラニー・リンスキー J・K・シモンズ サム・エリオット ダニー・マクブライド |
2010年のアカデミー賞作品賞等にノミネートされた作品です。 会社の上司に代わって首を言い渡す“リストラ宣告人"を主人公とした話です。アメリカ中を飛び回り、相手に感情移入することなく機械的に首切りの宣告をし、同じようにアメリカ中を飛び回る女性との後腐れのない関係もあり、満足いく生活を送っていた。そんな彼が、新入社員の大学出の合理主義の娘を伴ってリストラ宣告の旅行をしていくうちに、次第に今までの生活を振り返り空しさを感じるようになるというお話です。 通常はハッピーエンドで終わるのでしょうが、この作品は見事に観客の予想を裏切ってくれました。バックパックには、物はあまり詰め込まない、人生も重荷になるものは持たないという彼の主義は、二人の女性によって翻弄されます。結局、女性の方が一枚上手ということですね(笑) 題名は、ジョージ・クルーニー演じる主人公ライアン・ビンガムの生き甲斐が、飛行機に搭乗してマイレージを1000万マイル貯めることからきています。飛行機に乗ることなんてそうそうないので、マイレージなんて何のこと?と思うのですが、電器店やレンタルショップでポイントを貯めることと違いはないのでしょうね。でも、彼の場合は手段が目的となっています。よくあることですけど。 このリストラ宣告を請負う会社は、アメリカでは一般的なようですが、日本では垣根涼介さんの「君たちに明日はない」をはじめとするリストラ請負人を描くシリーズがありますが、実際にはあまり馴染みはありません。でもこの不況の中、パンフレットにありましたが、日本でもそれを商売にする会社が増えているようです。仕事とはいえ、相手の人生をどん底に突き落とすのですからねえ、なかなかできる仕事ではないですよね。 |
グリーン・ゾーン(22.5.15) |
監督 ポール・グリーングラス |
出演 マット・デイモン グレッグ・キニア ブレンダン・グリーソン エイミー・ライアン ハリド・アダブラ ジェイソン・アイザックス |
大量破壊兵器を有している危険なイラクを征伐する正義のアメリカという図式で始まったアメリカ(そして、多国籍軍)のイラク侵攻は、結局大量破壊兵器など見つからないまま戦闘は終結しました。フセインは死刑に処せられましたが、イラク国内は宗教の対立が激化し、そこかしこでテロが起こり長期駐留するアメリカ軍に大きな痛手を負わせています。 ブッシュ大統領の支持率は低下し、民主党政権となりましたが、アメリカ軍の駐留は終わっていません。だいたい、大量破壊兵器のなかったことに対し、いったい誰が責任をとったのでしょうか。その点については、グズグズッと、なし崩し的に誰も責任を負わないということで終わりなんでしょうかねえ。ブッシュさんンも今頃はのんびり余生を送っているのでしょうし・・・。 独裁者サダム・フセインの責任はともかく、道連れにされたというべきイラクの人々にとってはたまったものではないでしょう。この映画は、戦争の原因である大量破壊兵器の存在については、アメリカの謀略だと正面から主張しています。こういう映画を作ってしまうのですから、アメリカというのは凄いです。よくわからない国でもありますが。 主演のロイ・ミラーアメリカ陸軍上級准尉を演じるのはマット・デイモン。監督はポール・グリーングラスですから"ジェイソン・ボーン"シリーズのコンビです。ミラーは、大量破壊兵器は存在しないという事実を知って、それを日の目にさらそうと命をかけて奮闘します。これこそ本当に「アメリカの正義」を体現する男と言えるでしょう。 しかし、実はこの映画の影の主演ともいうべき人物は、ミラーに通訳として同行したフレディではないでしょうか。彼は言います「あななたちにこの国のことを決めさせない。」。まさしく、イラク国民の声を代弁しているようなセリフです。 手持ちカメラで撮っているのか、画面がぶれて臨場感もたっぷりです(おかげで、よくわからない部分もありましたが。)。硬派の映画でしたねえ。 ※題名の「グリーン・ゾーン」とは、バクダッド市中央部の多国籍軍や多国籍軍関係諸国政府・民間関係者や一部のイラク人が住み、現在のイラク政府の多くの建物が存在する地域をいうそうです。 |
告白(22.6.5) |
監督 中島哲也 |
出演 松たか子 木村佳乃 岡田将生 橋本愛 山口馬木也 西井幸人 藤原薫 新井博文 黒田育世 |
湊かなえさん原作「告白」の映画化です。 原作は、題名のとおり登場人物それぞれの告白というかモノローグで成り立っているので、映画でうまくこの感じが出せるのだろうかと思っていましたが、期待以上でした。特に、森口先生役を演じた松たか子さんの演技は“凄い"と言わざるを得ないほど見事でした(それまでは、親の七光りの女優さんという印象だったのですけどね。)。学級崩壊状態のホームルームの中、淡々と話しながら騒ぐ生徒たちの間を歩く姿は、声を荒げて生徒たちを怒るより怖いですね。このあたりの監督の演出も見事でした。 ストーリーは、ほぼ原作どおり。中学生による幼児殺害だとか、中学生による母親や同級生の殺害等々読後感最悪の原作作品ですので、評価も分かれるかもしれません。しかし、あの原作の雰囲気を損ねることなく、それ以上に衝撃的な内容になっています。最後の「な〜んてね」というせりふは、映画で付け加えられたものですが、これが松さんの怖さをいっそう引き立てます。 森口先生の後の担任、ウェルテルを演じたのはイケメン俳優の岡田将生さん。かわいそうにイメージ壊してしまいましたね(笑)。原作読んだときにも、いまどき、あんな独りよがりの、空気を読めない先生はいないでしょうと呆れながら読んでいましたが、今回の映画でも再び笑わせてもらいました。損な役でしたね、岡田さん。 今年観た日本映画の中でのbPです。原作を読んでいる人であっても、十分楽しめます。 |
アイアンマン2(22.6.11) |
監督 ジョン・ファヴロー |
出演 ロバート・ダウニー・Jr グウィネス・パルトロウ ドン・チードル スカーレット・ヨハンソン サム・ロックウェル ミッキー・ローク サミュエル・L・ジャクソン |
アメリカンコミックのヒーローといえば、バットマンにしろ、スーパーマンにしろ、そしてスパイダーマンもどこか陰のあるヒーローであって、正体も隠しています。なのに、このアイアンマンは正体も隠さず、というより積極的に市民の前に顔を出し、目立ちたがり屋といっていい、ちょっと他とは異なったヒーローです。 今作では、一応悩んだりもしますが、それもそんなに深くない。悩みをアルコールで誤魔化そうとするだけですからね。他のヒーローのように深刻さがありません。基本的には明るいヒーローです。こんなヒーローなので、深く考えることはなく、ただアイアンマンの闘いを楽しむ映画です。 アイアンマンを演ずるロバート・ダウニー・Jrは、ユーモアもあるこの役にすっかりはまっています。この作品の前には「シャーロック・ホームズ」にも主演し、乗りに乗っています。このまま、"3"にも出演するのは間違いないところです。 今回の悪役は、アイアンマンであるトニー・スタークの父に恨みを持つイワン・ヴァンコ。演ずるは、ミッキー・ロークです。一時、スクリーンから姿を消していましたが、このところ、「レスラー」でアカデミー賞主演男優賞にノミネートされたりして復活しました。若き頃は二枚目俳優で、ボクシングで"猫パンチ"を繰りだしていた頃とはまったく風貌が変わりましたけど。 ヒロイン役は前作に引き続き登場の秘書ペッパー・ポッツと今回初登場の会社の法務部社員のナタリー・ラッシュマン。ポッツ役はグウィネス・パルトロウが引き続き演じます。綺麗というより知的な雰囲気の女優さんですよね。一方、ナタリー・ラッシュマン役はスカーレット・ヨハンソンが演じます。体にフィットしたスーツを着て激しいアクションシーンをで、かっこよかったですね。女優のアクション俳優といえば、アンジェリーナ・ジョリーかミラ・ジョヴォヴィッチが思い浮かぶのですが、あの肢体からはアンジェリーナ・ジョリータイプですね(笑) 前作でラストにカメオ出演したサミュエル・L・ジャクソンが、今回は同じ役で登場しているのも楽しいところです。 エンドクレジットが流れると、席を立つ人が多いのですが、ぜひこの作品はエンドクレジットも我慢して観ていてください。あるシーンが始まりますよ。 |
ザ・ウォーカー(22.6.19) |
監督 アルバート&アレン・ヒューズ |
出演 デンゼル・ワシントン ゲイリー・オールドマン ミラ・クニス レイ・スティーヴンソン ジェニファー・ビールス エヴァン・ジョーンズ ジョー・ビング フランシス・デ・ラ・トゥーア マイケル・ガンボン トム・ウェイツ マルコム・マクダウェル |
(ちょっとネタばれ) デンゼル・ワシントン主演の近未来映画です。戦争によって破壊された地球に、ただ1冊残された本を持って西へと旅をするイーライ。その本が持つ意味を唯一知っていて、本の奪取を図ろうとするカーネギー。果たしてイーライは、カーネギーから本を守ることができるのか。 地球に残されたただ1冊の本が主役です。本がなくなってしまうなんて、本好きには辛い世の中です。いったい残された本とは何なのか。彼が西へ向かう目的な何なのか。映画を観る前から興味が尽きず、公開初日の第1回目の上映に臨みました。 オフィシャル・サイトでも「世界に1冊だけ残された本を西へ運ぶ」とあったので、世界にはその本しか残っていないと思ったら、これは思い違いでした。本は残っているけれど、"その本"は1冊しか残っていないという意味だったのですね。これは誤解を与える言い方ですよね。 "本"が何かは映画を観る前から推測できてしまうのではないでしょうか。僕自身も、「まさか"本"とは、アレではないだろうなあ」と、予想はしていたのですが、まさか予想通りの結果になるとは・・・。それも、上映開始から1時間もたたないうちに明らかにされてしまって、映画を観る前の楽しみがあっという間になくなってしまいました。だいたい、舞台がアメリカですからね。日本とはあることに対する考え方が違います。それを考えただけでも自ずと答えは出てきてしまいますけど。これでは当たり前すぎです。本当は予想を裏切って欲しかったのですけどねえ。ただ、もうひとつ、その本には驚きがあったのですが、そこまでは予想できませんでした。 デンゼル・ワシントンが、山刀を使っての派手なアクションシーンを見せてくれます。パンフレットの解説には、このシーンを、ある映画のヒーローを思い起こさせるとありますが、監督自身のインタビューでも影響を受けた映画がそのヒーローの登場する映画だと答えているので、似ているのも当然ですね。何の映画か分かってしまうとラストの驚きがなくなってしまいますから、この場では言えませんが。 本を奪おうとするカーネギーを演じるのは、ゲイリー・オールドマンです。この人は、やっぱり悪役が似合います。特に、「レオン」で演じていた悪徳麻薬捜査官のような、「この人、神経切れていない?」という感じの悪役がお似合いなんですが、今回は、それに比較すると、おとなしめです。もちろん、貴重なシャンプーを使って愛人の髪を洗ってやる優しさがあると思えば、愛人の娘に言うことを聞かせるために、容赦なく愛人に暴力を振るうという残忍な面も持つ悪役でしたが。 カーネギーの愛人役を務めたのが、何と、あの「フラッシュダンス」のジェニファー・ビールスです。名前を見なければ、わからなかったです。歳取りましたね。人のこと言えませんが。 ※ところで、30年間、西へ向かって旅をしていたとすれば、東海岸にいたとしても西海岸まではとっくに着いているのではないでしょうか。どこで、道草していたのでしょう。 |
マイ・ブラザー(22.6.27) |
監督 ジム・シェリダン |
出演 トビー・マグワイア ジェイク・ギレンホール ナタリー・ポートマン サム・シェパード メア・ウィニンガム ベイリー・マディソン テイラー・ギア パトリック・フリューガー クリフトン・コリンズ キャリー・マリガン |
兄は優秀な軍人、一方弟は銀行強盗で服役し、出所してきたばかりという、できた兄に不良の弟というのは、設定だけではよくあるパターンです。 兄が戦地に赴き戦死したという報に、次第に魅かれあっていく兄嫁と弟。しかし、ある日、死んだはずの兄が帰還してくるが、思いやりのあった兄は、人格がまったく変わっていた。 兄弟を演じるのは、トビー・マグワイアとジェイク・ギレンホール。兄嫁はナタリー・ポートマン。この映画を、ここまで見せるのは、やはり3人の演技力によるところが大でしょう。特に、兄役を演じたトビーマグワイアは凄いです。「スパイダーマン」のときのような人の良いお坊ちゃんという雰囲気とはがらっと変わり、頬がこけた精悍な顔つきになっています。軍人役なので髪を刈り上げていたせいもあるでしょうが、最初はトビー・ワグワイアとわからないくらいでした。役柄のために体重をかなり落したんでしょうね。まるで、ロバート・デ・ニーロみたいです。戦地に行く前と帰ってきてからの表情の違いなど、見事な演技です。 兄が無事に帰ってきたことから始まるドラマは、これだけでは昼メロドラマ風な流れです。しかし、そこで描かれるのはあまりに悲惨な戦争の姿です。実際に戦場を経験したことのない僕としては、簡単に「悲惨だ」などと一口で言ってしまいますが、現実はこんなに簡単には語ることはできないものなのでしょう。兄が捕虜となって、最後に強いられたことは、とても普通の人間であれば耐えられそうにありません。人格が変わるのも無理ないですね。 ラストが「あれで、終わり?」という点だけは残念でしたが。 |
踊る大捜査線 THE MOVIE 3 ヤツらを解放せよ!(22.7.9) |
監督 本広克行 |
出演 織田裕二 深津絵里 ユースケ・サンタマリア 伊藤淳史 内田有紀 小泉孝太郎 北村総一郎 小泉今日子 小栗旬 小野武彦 斉藤暁 佐戸井けん太 小林すすむ 甲本雅裕 寺島進 松重豊 岡村隆史 稲垣吾郎 |
ファンとしては待ちに待つたシリーズ第3弾です。 青島刑事も強行班係係長となり、新庁舎移転の引越対策本部本部長として奮闘中。その慌ただしさの中で拳銃が盗難に遭い、それを使った殺人事件が起きる。犯人の要求は、かつて青島が逮捕した犯人たちの釈放だった。 署長、副署長、課長のスリーアミーゴスの3人組、恩田すみれ刑事、なぜか交渉人課課長を辞めさせられた真下警視(やっぱりキャリアの昇進は早い。)等々いつものメンバーが勢揃いのほか、新たに和久さんの甥が刑事となって登場、さらに テレビのスペシャルで女青島と呼ばれていた篠原夏海も青島の部下になっているなど、シリーズの登場人物が総登場です。 そのうえ、映画のスピンオフ作品に登場した木島丈一郎警視や、SATの隊長、爆発物処理班班長などお馴染みの人もちょい役で姿を見せます。ファンにとっては嬉しいことですが、あまりに大勢の人が登場しすぎて、個々の人の印象が薄くなってしまった感は否めません。 特に前宣伝では和久さんの甥役の伊藤淳史くんや篠原夏海を演じる内田有紀さんを大きく扱っていたので、彼らの活躍を期待して観たのですが、特に内田有紀さんは別にいなくても良かったのでは?と思えるほどの出番でした。 唯一、強い印象を残したのは、小泉今日子さん。映画化第1作に登場したときは、歯に矯正用のワイヤーを付けたりして、サイコな雰囲気を出していましたが、今回はそれはなし。しかし、あの独特な話し方は怖かったですねえ。 このシリーズのおもしろさは、現場で奮闘する青島と、キャリアとしてエリートコースを歩む室井との関わりにあったのですが、今回室井は、長官官房審議官という要職に付き、すでに現場から離れ、今では彼のやるのは捜査ではなく政治という状況。そのため、青島との関わりもあまりありません。もう、本庁の捜査官を引き連れて湾岸署に乗り込むということはないのでしょう。残念ですね。 また、室井のライバルであった筧利夫さん演じる新城は今回は登場していません。所轄のことを馬鹿にしながらも、実は共感をみせてしまう新城がいないのは寂しいです。彼も今頃は捜査の第1線からはすでに外れて政治をしているのでしょうか。 青島刑事を演じる織田裕二さんも歳をとりましたね。アップになると、もう青年だという感じがしませんね。40も半ば近いのですからやむを得ないのでしょうが。さて、シリーズ第4弾はもうないのかなあ。 |
クロッシング(22.7.10) |
監督 キム・テギュン |
出演 チャ・インピョ シン・ミョンチョル ソ・ヨンファ チュ・ダヨン チョ・インギ |
北朝鮮から脱北した家族の悲劇を描く韓国映画です。 同じ民族でありながら38度線を境に分断されている韓国と北朝鮮。最近では韓国の軍艦を北朝鮮が撃沈したといって敵対している両国関係の中での北朝鮮を描いた韓国映画ですから、その描写はいくらか割り引いて観た方がいいかもしれません。しかし、時にテレビで流れる隠し撮りされた北朝鮮の様子や、北京の外国大使館に亡命をしようとする北朝鮮の脱北者の姿を見ると、必ずしも大げさに描いているとは思えません。 結核となった妻の薬を得るために脱北して中国に渡ったヨンスは、中国公安に追われ、心ならずも韓国へと逃れることとなります。一方、息子のジュニは、母の死後、父を追って中国に行こうとするが、警備隊に捕まり、強制収容所へと送られます。父の尽力で収容所を出ることになったジュニは、再度脱北を図る。ひたすら会いたいと願う父と子。そんな二人にとって運命はあまりに過酷すぎました。 まだ幼い男の子が国境を越えるなんて、平和な現状にのほほんと暮らしている僕らには想像もつきません。残飯を貰い歩く子どもたちの姿には声も出ません。`また、子どもを強制収容所に入れて、思想教育を行い、労働を強制するなんて、どうしてそこまで人間は残酷になれるのだろうかと、考えざるを得ません。“強制収容所"なんて、第二次世界大戦下のナチの収容所しか思い浮かびませんが、今この時代に存在していることに恐ろしいとしか言いようがありません。でも、これが目を背けてはいけない現実です。親子の愛情は、どこの国でも変わらないものなのに・・・。本当に辛い映画です。 |
インセプション(22.7.19) |
監督 クリストファー・ノーラン |
出演 レオナルド・ディカプリオ 渡辺謙 ジョセフ・ゴードン=レヴィット エレン・ペイジ トム・ハーディー キリアン・マーフィー トム・ベレンジャー マリオン・コティヤール マイケル・ケイン ディリーブ・ラオ ルーカス・ハース |
クリストファーノーラン監督、レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙共演の作品です。 ホテルの廊下が無重力状態のような中で争う男たちや崩れ落ちる廃墟のビルなどの予告編の映像を観て、大いに期待して観に行ったのですが、それにしても一筋縄ではいかない映画でした。 他人の夢の中に入って、潜在意識からアイデアを盗むことを商売にしている男・コブをディカプリオが、彼に仕事を頼む日本人サイトーを渡辺謙が演じます。舞台が夢の世界、はたまた夢の中の夢、夢の中の夢の中の夢という重層の構造を持った複雑な設定で、ボケっとしていると映画の進行についていけません。集中して観ていないと、「あれっ?これってどういうことだっけ?」という状況に陥ってしまいます。やっぱり、あの前向性健忘症を描いた「メメント」のクリストファー・ノーラン監督らしい作品と言えるでしょう。 果たして、今ここが現実なのか夢なのか、この映画を観ていたら、岡島二人さんの「クラインの壺」を思い出しました。あの作品も今いる世界が現実なのか仮想世界なのかを描く作品でした。 レオナルド・ディカプリオも渋い俳優になってきました。渡辺謙さんも、もうすっかりハリウッド俳優ですね。娘の学校の英語の先生が、謙さんの英語もうまくなったなあと言っていたそうです。今回は「バットマン・ビギンズ」の時のようなチョイ役でなく出ずっぱりでしたからねえ。おいしい役だったのではないでしょうか。 マイルズ役がノーラン監督が「ダークナイト」でも起用したマイケル・ケインということはわかりましたが、ブラウニング役が「プラトーン」のトム・ベレンジャーだったとは、気がつきませんでした。歳をとりましたねえ。 できれば、もう1度観て細部を確認したい作品です。 |
ソルト(22.8.6) |
監督 フィリップ・ノイス |
出演 アンジェリーナ・ジョリー リーヴ・シュレイバー キウェテル・イジョフォー ダニエル・オリブリフスキー アンドレ・ブラウアー |
評判がいまひとつだったので、どうかなあと危惧しながら観に行ったのですが、意外に楽しむことができました。 とにかく、ストーリー展開のスピード感がいいですね。冒頭から北朝鮮にスパイ容疑で捕われたソルトの拷問シーンから始まり、釈放されて一息つくかと思った途端、今度はロシアの亡命者の口からソルトがロシアのスパイだという告白があり、あっという間にソルトの逃走劇が始まります。派手なアクションシーンに目が離せません。 ソルトを演じたアンジェリーナ・ジョリーのアクションには目を奪われます。かっこいいです。やっぱり、アンジェリーナ・ジョリーにはアクション映画はピッタリです。そのうえ、スタイルもいいし(相当節制し、鍛えてもいるのでしょうね。)、分厚いタラコ唇に人を射るような大きな目、妖艶としか言いようがないですね。あんな目に射すくめられたら、ホント、ごめんなさいってすぐ謝ってしまいますよ。 ラストの落とし所としては、やっぱりねと思ってしまうストーリーですが、飽きさせません。あの終わり方だと、今回の作品の興行収入がよければ、続編ができそうな感じです。 それにしても、天下のCIAやシークレットサービスが、一人の女スパイにああまで簡単に手玉に取られるなんて、実際はないでしょうね。一国の大統領が暗殺されてしまうのですよ。まあアンジェリーナ・ジョリーだとできてしまうかも。 |
パラレルライフ(22.8.7) |
監督 クォン・ホヨン |
出演 チ・ジニ イ・ジョンヒョク パク・ビョンウン ユン・セア オ・ヒョンギョン パク・グンヒョン チョン・ハンヨン コ・インボム オ・ジウン |
(ちょっとネタばれあり) 二人の人物が時を違えて同じ人生を歩むという“パラレルライフ"をモチーフに、出世街道を走る判事一家に起きた事件を描く韓国映画です。 キム・ソクヒョンは、史上最年少で部長判事に選ばれた男。彼は美しい妻とかわいい娘を持ち、幸せな日々を過ごしていた。そんなある日、彼の妻が何者かによって殺害される。 彼は、違う時代に生きるふたりの人間が同じ運命を繰り返すという“平行理論”の主唱者であるソン・ギチョル教授が起こした妻殺害事件を担当していたが、事件を取材する新聞記者から彼と同じ最年少で部長判事になったハン・サンジュも同じ日に妻を殺されていると告げられる。平行理論のとおりであるとすると、自分も娘も死ぬ運命にあることを知り、ハン・サンジュ事件を調べようとするが・・・。 映画の中では、リンカーンとケネディを対比して、下院議員と大統領になった日、両者の暗殺犯の生年が100年違いの同じ日であること、狙撃されたようbが同じ金曜日であること、副大統領の名前がジョンソンであることなどを示してパラレルライフというものは現に存在すると見せていますが、いろいろな要素を取り出せば、同じになることだってあるでしょうにねえ。設定としては、おもしろそうなんですがねえ。 終盤になって犯人らしき人物が二転、三転します。この辺り、やっぱりそうかと思ったとたんに、え!違うの?とびっくりさせられる展開でした。じっくり観ていると、きちんと伏線が張られていたことに気づくのですけどね。あれっと思ったのですが。ラストは救いようのない終わり方で、観終わって気分的に落ち込みます。果たして、パラレルライフというのは存在するのかどうかという点もあいまいのまま終わりますし。どうも韓国のサスペンス映画というのは後味悪いです。 |
バイオハザードW アフターライフ(22.9.4) |
監督 ポール・W・S・アンダーソン |
出演 ミラ・ジョヴォビッチ アリ・ラーター ウェントワース・ミラー キム・コーツ ショーン・ロバーツ スペンサー・ロック ボリス・コジョー セルジオ・ペリス=メンチェッタ 中島美華 |
シリーズ第4弾です。今回は、最近はやりの3D映像もあります。アンデッドが襲いかかってくるシーンを3Dで観れば、びっくりするでしょうけど、残念ながら地元は2Dだけの公開でした。 冒頭は日本の渋谷が舞台です。ハチ公前のスクランブル交差点での最初の感染者のシーンから始まりますが、この感染者の女性を演じているのが、歌手の中島美華さんだそうです。観ているときはまったく気がつきませんでした。でも、彼女の割とキツイ印象を与える顔立ちは、アンデッドにピッタリという感じです。 戦う女、ミラ・ジョヴォビッチは相変わらず惚れ惚れする強さです。同じ戦う女、グラマラスなアンジェリーナ・ジョリーとは異なりますが、カッコいいですねえ。アンブレラ社の日本支部を襲撃する場面のアクションシーンは最高です。 前作にも登場したアリ・ラーター演じるクレアも再登場、加えてドラマ・シリーズ「プリズン・ブレイク」でブレイクしたウェントワース・ミラーがクレアの兄として登場します。二人は今後のシリーズにも登場してくるようです。 それにしても、ゾンビとは言わずにアンデッドという名前はともかく、やっぱり走るのはイメージが違いますね。知能がないゾンビは、ゆっくりゆっくりと歩かなくては。それにゲームをしたことがないので、ストーリーは知らないのですが、今回の作品には顔に頭巾をかぶり巨大な斧を振り回す巨人が登場します。明らかに普通のアンデッドとは異なる存在なのですが、彼がどうして出現したかの説明はまったくありません。それまでのシリーズに登場した怪物については、それなりの説明があったのですが、あまりに唐突です。顔が割れるゾンビ犬もいまひとつ。どこかで観たような印象を持ってしまいました。このあたり、もうストーリーよりはゲーム感覚のおもしろさだけの追求です。そんなわけで、この映画、あまり真剣に観る必要はありません。ストレス発散で単純に楽しむことができればいいかなという映画でした。 監督は第1作目を監督したポール・W・S・アンダーソン。今ではミラ・ジョヴォヴィッチの御主人です。自分の奥さんを主役で使っての映画作りってやりにくくないんですかねえ。 |
悪人(22.9.19) |
監督 李相日 |
出演 妻夫木聡 深津絵里 岡田将生 満島ひかり 樹木希林 柄本明 宮崎美子 光石研 塩見三省 松尾スズキ 余貴美子 井川比佐志 モロ師岡 でんでん 永山絢斗 |
吉田修一さん原作の同名小説の映画化です。先頃のモントリオール映画祭で深津絵里さんが最優秀女優賞を受賞したこと から、いっきに注目を浴びていますね。 受賞されただけあって、深津さんは熱演です。そばかすが目立つ薄化粧で頑張っています。祐一役を演じた妻夫木くんと のラブ・ホテルでの大胆なシーンなど今までの深津さんでは考えられなかった体当たりの演技でした。深津さんが演じた光代は、原作小説では30直前の双子の姉ということでしたが、映画では双子ではなく、妹には恋人がいるという設定でした。そのことが、原作以上に光代の孤独感をよりいっそう感じさせる理由にもなっているようです。 祐一役を演じた妻夫木くんも、今までのイケメン俳優のイメージを捨てた演技を見せています。金髪に染めた髪だけが祐 一の自己主張を唯一感じさせるだけで、常に自分を押し殺した暗い若者を演じています。自らがこの役をやりたいと訴えただけのことはあり、深津さんに負けない熱演です。 ベテラン俳優の柄本明さんと樹木希林さんは、うまいとしか言いようがありません。柄本さんは、娘を殺された父親役を しっかり演じています。娘を持つ身としては彼の行動に自分を重ねてしまいます。いくら遊び歩いていた娘とはいえ、子ど もに対する親の愛というのは変わりませんからねえ。彼の心の痛みはどんなだろうと思わざるを得ません。 一方、樹木希林さんは、祐一を捨てて母親が出て行ったあと祐一を育てた祖母・房枝を演じています。当初、マスコミか らは逃げ回っていた房枝が、最後にマスコミに囲まれた中で深く頭を下げるシーンにはグッときてしまいました。 殺人事件の被害者となった佳乃。本当に嫌な女として描かれます。老舗旅館の御曹司と交際していると見栄を張り、出会い系サイトで男と遊び歩く女。手を差し伸べた祐一に対して、暴行されたと訴えるという、祐一からしてみればあまりに理不尽な言動に、彼が怒るのは無理もないことです。ただ、彼にはその怒りを暴力として発現してしまい、抑える理性がなかったのが不幸だったのですが・・・。佳乃を演じた満島ひかりさんは損な役柄でした。 同じように損な役柄といえば、有名旅館の御曹司を演じた岡田将生くん。今までイケメンのいい男ばかり演じていたのに 、今回は岡田君にとってはイメージを覆すような役に挑戦でしたね。 人間というのは誰かと繋がっていたいという欲求が強い生き物なのでしょうね。それゆえ出会い系などでの出会いでもいいから、お互いを求め合う人を探すのでしょうか。 |
十三人の刺客(22.9.25) |
監督 三池崇史 |
出演 役所広司 山田孝之 伊勢谷友介 沢村一樹 古田新太 高岡蒼甫 六角精児 浪岡一喜 近藤公園 石垣佑磨 窪田正孝 伊原剛志 松方弘樹 吹石一恵 谷村美月 内野聖陽 市村正親 稲垣吾郎 松本幸四郎 平幹二郎 岸部一徳 光石研 斎藤工 阿部進之介 |
江戸時代末期。将軍の異母弟で明石藩主・松平斉韶の残虐非道の暴君ぶりは目に余っていた。斉韶は近く、老中への就任も決まっていたが、彼に天下のまつりごとを任せれば、災いは万民に及ぶと危機感を募らせた老中・土井利位は、御目付・島田新左衛門に斉韶暗殺の密命を下す。さっそく、甥の新六郎をはじめ十一人の男たちを集めた新左衛門は、参勤交代で国に帰る途中で暗殺しようと落合宿を目指す。途中で加わった山の民・木賀小弥太を含む総勢十三人は、落合宿で松平斉韶一行の到着を待つ。一方、斉韶の腹心・鬼頭半兵衛は新左衛門らの動きを察知し、斉韶を守ろうとする。 おもしろかったぁ! これぞ、ザッツ・エンターテイメントです。上映時間2時間21分、飽きずに観ることができました。 刺客の人数は13人。集団で何かする場合の人数はというと、思い浮かぶのは「七人の侍」に代表される7人です。とはいえ、こちらの敵は300人ですから、さすがに7人では相手にならないでしょう。13人だって少なすぎますものね。そして、こういう集団ものとなると、やはり、仲間を集めていく過程が楽しみなのですが、残念ながら、この作品では、自分の家来や居候の浪人などあっという間に集まってしまいました。山の民、小弥太だけがあとから加わっていますが。これは、ラストの戦いのシーンが50分もあるので、仲間を集めるシーンにあまり時間が取れなかったのでしょうか。 もう一つ、集団もので気になるのは、誰が生き残るかということ。ネタばれになるので書けませんが、予想外の結果でした。どう考えても、あの傷では絶対死ぬはずの人が生き残っていたのにはびっくりです。あれは、ないでしょう。 前評判どおり、ラスト50分間の戦いのシーンは圧巻です。これだけ長い戦いのシーンというのはあったかなあ。とにかく、見所沢山で手に汗握りすぎて、こちらも疲れてしまいました。 ただ、意地悪く観てしまうと、島田新左衛門の「斬って、斬って、斬りまくれ!」の号令のもと、端から斬りまくって、どう考えても一人当たり何十人も斬っただろと思いましたが、敵は全然減りません(笑)うじゃうじゃと湧き出してきます。もう相手の人数以上に斬っているのではないかなあと思うほどです。だいたい、それまで屋根の上から矢を射かけたり、家を爆破したりで、相手勢力を減らしていたのに、わざわざ刀を持って相手の中に入っていくなどという無謀をどうしてするのか?と、思ったりもしますが、そんなこと考えずに死闘を楽しむのが一番ですね。 主役の島田新左衛門を演じるのは役所広司さん。鬼頭半兵衛が新左衛門を評して“すごく強いわけでなく、ギリギリのところで負けない男だ”と言っていましたが、そう評された新左衛門の雰囲気が役所さんの雰囲気に重なっていました。この作品は1963年に上映された同名映画のリメイクですが、その映画の脚本を書いたのが池宮彰一郎さん。役所さんは12月公開の池宮彰一郎さん原作の「最後の忠臣蔵」にも主演します。日本映画には欠かせない役者さんですね。 暴君だとわかっていながら「侍の為すべきことは、ただ一つ主君に仕えることではないのか!」と、主君を守ろうとする鬼頭半兵衛を演じるのは市村正親さん。ミュージカルスターの市村さんが時代劇初出演でどんな演技を見せるかと思いましたが、なかなか重厚な演技でした。 稲垣吾郎くん、残忍な暴君を熱演です。スマップの一員としては、悪役がこんなに似合っては困るのではと思うほど、ピッタリな役どころでしたね。ただ、周りが役所広司や松本幸四郎では荷が重すぎたかなという感はしますが。 参謀役である御徒目付組頭・倉永佐平太を演じた松方弘樹さんの殺陣は見事でしたね。さすが往年の時代劇スターですね。一番きまっていました。 戦場となる落合宿庄屋を演じた岸部一徳さんは、この重厚な時代劇の中で唯一のお笑い担当です。小弥太とのあのシーンは、ちょっとかわいそうでしたねえ。思わず笑ってしまいましたけど。 このところお騒がせな内野聖陽さん、上映開始あっという間に腹を切って退場です。 松本幸四郎演じる牧野靭負の息子の嫁を演じた谷村美月さん、当時の既婚者をリアルに表現した“お歯黒”“眉毛なし”で、最初誰かと思いました。はっきり言って、現代人にとって、あの姿は不気味です。この既婚者の身なりだけでなく、参勤交代中のお殿様のトイレのシーンなど、監督が細かいところにこだわりを見せていました。 首が切られるシーン、縛られている者に矢を射かけるシーン等々残酷なシーンが幾多ありましたが、一番すごかったのが、斉韶によって両手の肘から先、両足の膝から先、そして舌を斬られた女性のシーンです。着物を脱いで裸になりその姿を曝した場面には驚きました。さらに筆を咥えて「みなごろし」と書く場面には鬼気迫るものがありました。あの女優さん、凄かったです。 |
ナイト&デイ(22.10.15) |
監督 ジェームズマンゴールド |
出演 トム・クルーズ キャメロン・ディアス ピーター・サースガード ジョルディ・モリャ ヴィオラ・デイヴィス |
トム・クルーズ、キャメロン・ディアス共演のひとことで言って、ハチャメチャ映画(!)です。永久エネルギーを奪って逃走したトム・クルーズ演じるロイ・ミラーと事件に巻き込まれたキャメロン・ディアス演じるジューンを追って、CIAや武器商人がドタバタを繰り広げます。 とにかく、トム・クルーズとキャメロン・ディアスを見せる映画といっていいです。ストーリーは二の次。トム・クルーズは万能。飛行機の乗員乗客になり済ましていた敵の全員をやっつけて自分が飛行機を操縦してしまうし、オートバイから走行中の車に飛び乗ってしまうわでやれないことは何もないというスーパーマン。 一方、キャメロン・ディアスは、コメディエンヌぶりを発揮、最初からキャーキャー大騒ぎです。彼女はやっぱりコメディエンヌをやらせると、うまいですねえ。相変わらずスタイル抜群ですし、今回はビキニ姿を披露してくれます。そのうえ、最初は銃を持たせると、きちんと撃てなかったのに、後半ではトム・クルーズ運転するオートバイに後ろ向きにまたがって、二丁拳銃でかっこよく銃を撃つんですからねえ。いつの間にそんなにうまくなったんだ!?と言いたくなりますが、それも御愛嬌です。キャメロン・ディアスのファンにはたまらないでしょう。 理屈抜きで、何も考えずに観て楽しむ映画です。 |
インシテミル(22.10.16) |
監督 中田秀夫 |
出演 北大路欣也 藤原竜也 片平なぎさ 綾瀬はるか 平山あや 武田真治 石井正則 石原さとみ 阿部力 大野拓朗 |
米澤穂信さん原作の同名小説の映画化です。 時給11万2千円という高額アルバイトにつられて10人の男女が“暗鬼館”に集まってくる。バイトの内容は「7日間の心理学の実験に参加すること」。 原作小説がおもしろかったので、期待して観に行ったのですが、裏切られました。確かに俳優陣は北大路欣也さんを筆頭に若手は藤原竜也さん、綾瀬はるかさん、石原さとみさんら豪華です。でも、残念ながらそれだけです。ホリプロ50周年記念と謳っているだけあって、ホリプロ所属の俳優の宣伝映画といってもいいかもしれません。 藤原竜也さんは、昨日テレビで放映していた「カイジ」を観たのが悪かったです。藤原さんには悪いですが、「カイジ」の演技と何ら変わっていないようにしか見えません。カイジがそのままこちらの映画に登場したという感じです。イメージが固定化してしまっていますね。 もちろん、原作自体が現実感のない荒唐無稽な作品ですから、人間の心の奥深いところを描くというようなことは期待していませんが、純粋なミステリの解決としても原作のおもしろさからはほど遠いできでした。やはり、2時間という映画の枠の中で、原作のおもしろさを描ききることは難しかったのでしょうか。原作を読んだ者としては、「あそこのとこ、どうして説明がきちんとないんだ!」と、大いに不満が残る映画でした。 |
桜田門外ノ変(22.10.20) |
監督 佐藤純彌 |
出演 大沢たかお 北大路欣也 長谷川京子 柄本明 生瀬勝久 伊武雅刀 西村雅彦 渡辺裕之 榎木孝明 中村ゆり 本田博太郎 温水洋一 田中要次 |
高校生の頃、日本史で習った「桜田門外の変」といえば、江戸城桜田門の外で当時、幕政をほしいままにしていた大老、井伊直弼が水戸浪士によって殺された事件だということです。アメリカのペルーなど諸外国が日本にやってきて開国を求めたため、日本側は開国だ、攘夷だと騒然としていた幕末に起こった歴史の転換点ともなるべき大事件です。 当然、映画は、井伊直弼の暗殺シーンを描くのですが、桜田門外の変が描かれるのは、映画が始まって30分ぐらいのまだ早い時間です。映画を観た人からは、クライマックスに描かれるのではなかったのかという驚きの感想が多いようです。でも、この映画の主眼は、事件に参加した武士たちのその後を描くことにあったのだと考えれば納得のいくところです。 暗殺シーンは見せ場たっぷりです。本当に人を斬るというのは、あんなふうなんだろうなあと思わせるほどの現実感、臨場感があります。それにしても、雪の中で、浪士がそこかしこに佇んでいて、これは何かするぞということが見え見えです(笑)まあ昔のことで雪の中行くところもないでしょうから、人通りはなかったでしょうけど。 教科書で習ったのは、井伊直弼が殺されたこと。殺した水戸浪士らの名前も、その後彼らがどうなったのかも、習うことはありませんでした。この映画では、大沢たかおさん演じる関鉄之介以下何人かの人物に焦点を当てて、彼らのその後を描いていきます。自分たちに正義があると信じてことを起こした彼らとしては、その後の藩や同時行動を起こすという約束だった薩摩藩らの心変りは悔しかったでしょう。 それにしても、徳川斉昭は、勝手ですねえ。尊王攘夷を唱え、藩士たちをその気にさせながら、彼らが事件を起こすと冷たく切り捨ててしまう。孤立していた水戸藩を守るためには、彼の行為を非難することはできないかもしれませんが。演じる北大路欣也さんは、こういう重厚な役はお似合いですね。 関鉄之介の子ども役で加藤清史郎くんが出演しています。時代劇といっても、彼を見ると、どうも子ども店長のCMを思い出してしまいます。 |
パンドラム(22.11.13) |
監督 クリスティアン・アルヴァルト |
出演 デニス・クエイド ベン・フォスター ガム・ジガンディ アンチュ・トラウェ カン・リー エディ・ローズ ノーマン・リーダス |
西暦2174年、地球は増加する人口と資源の枯渇により滅亡の危機に陥っていた。そんなとき、地球の遥彼方に地球と同じ環境を持つ惑星タニスが発見され、人類はタニスへの移住計画を進め、宇宙船エリジウムが地球を旅立つ。バウアーとペイトンの2人が冷凍睡眠から目覚めると、船内には他の乗組員の姿が見当たらず、バウアーは手掛かりを求めて船内を捜索始めるが、そこで目にしたのは襲いかかってくるクリーチャーだった・・・ 宇宙船内を舞台にしたSFスリラーです。題名になっている“パンドラム”とは、宇宙飛行をする中で生じる生物的副作用で、簡単に言えば、精神に異常をきたすようになる症状です。バウアーにしろペイトンにしろ、初期症状といえる手指の震えがあり、彼らがどこかで精神的におかしくなるのではないかという恐れを観客に感じさせながら物語は進んでいきます。宇宙船という閉鎖的な空間の中で、どこから何が襲いかかってくるかわからないという恐怖を観客に与えるところは、「エイリアン」の第1作のようです。 有名俳優はペイトンを演じたデニス・クエイドぐらいで(バウアーを演じたベン・フォスターは「3時10分、決断のとき」に出演していたようですが、まったく覚えていません。)、監督も名前も知らず、いわゆるB級作品と言っていいのでしょうが、意外に楽しめました。冷凍睡眠の影響で記憶障害になるという前提であるがゆえに、ある重要な事実が最後まで明らかにならないというところは、なかなかうまいですね。 細かいところでは、突っ込みどころは満載でしたが、最後まで、飽きることなく観ることができました。それにしても、宇宙飛行士たちを襲うクリーチャーの正体は、いったい何だったのでしょう。女性科学者のナディアが解答らしき話をしますが、それが正解だったのでしょうか。 |
SP 野望編(22.11.19) |
監督 波多野貴史 |
出演 岡田准一 堤真一 真木よう子 香川照之 松尾諭 神尾祐 山本圭 春田純一 野間口徹 大出俊 江上真悟 平田敦子 堀部圭亮 古山憲太郎 伊達暁 蛍雪次朗 丸山智己 |
フジテレビでオンエアされていたドラマの映画化です。ドラマが謎を抱えたまま終了したのは2008年1月ですから、あれから3年近くが経ってしまいました。待ちくたびれてしまいましたねえ。途中、主要メンバーである真木よう子さんの結婚、出産ということもあったのでしょうが、長すぎます。逆にこれだけ長く待ったせいもあって、期待も大きくなりました。 主役の警視庁警備部警護課四係の井上を演じるのはV6の岡田准一くん。小柄ですが精悍な顔つき(かなり濃い!)、そのうえ格闘技も習い逞しい体で、うちの妻も娘も大ファンです。今回も妻と娘の強い要望で観に行くことになりましたが、岡田くんは冒頭から派手なアクションシーンで、妻と娘も大満足です。 ドラマでは明らかにされなかった井上の上司・尾形の正体(というか、考えていること)が、今回の映画で明らかとされて、ようやく胸のつかえが下りました。尾形にあんな過去があるとは!! 井上の両親が暴漢に刺殺された現場で尾形がいたのは、あんな理由があったのですね(ネタばれになるので伏せます。)。 相変わらず、真木よう子さんはかっこいいです。あのどすのきいた低音がまた似合います。とても子どもがいるとは思えません。さすが女優です。気になるキャラは、井上と同期の公安の田中です。とぼけた顔ながら、いつも沈着冷静に物事を判断しているところがいいです。演じる野間口徹さんが役柄にぴったりです。 そのほか、印象的なのは、今回政権政党の幹事長役で登場する香川照之さん。この人は悪人であっても、善人であっても何をやらせてもうまいです。レギュラーを喰ってしまいますね。 ストーリーとしては突っ込みどころはいっぱいです。映画の後半は官房長官を官邸まで送り届ける中、彼らを襲う男たちとの闘いが描かれるのですが、車が動かなくなったといって、自分たちだけで官房長官を守って官邸まで歩くんですかねえ。連絡すればすぐパトカーが来るでしょうに。でも、いろいろ細かいことは考えないで、単純にハラハラドキドキ楽しんだ方がいいですね。 それにしても制作のフジテレビは嫌らしい。ここまでやって、あとは来年公開のSP革命篇に続くですからねえ。商売うまいです。ここまで観れば、絶対後編も観たくなりますよ。予告編を観ると、テレビドラマに登場していた4人組の掃除屋も登場してくるようですし、文句言いながらも、絶対観に行きます。 |
ミックマック(22.11.20) |
監督 ジャン=ピエール・ジュネ |
出演 ダニー・ブーン アンドレ・デュソリエ ニコラ・マリエ ジャン=ピエール・マリエル ヨランド・モロー ジュリー・フェリエ オマール・シー ドミニク・ピノン ミッシェル・クレマド マリー=ジュリー・ボー |
発砲事件に巻き込まれ、頭に銃弾が撃ち込まれたままになったバジル。入院中に仕事をなくし、大道芸で日銭を稼いでいたバジルに声をかけたのが“ギロチン男”ことプラカール。彼に誘われたバジルは彼のユニークな仲間とともに暮らすことになります。そんなある日、バジルは、彼の頭に残っている銃弾の製造会社と彼の父の命を奪った地雷の製造会社が向かい合わせに建っていることを知り、仲間とともに復讐を企てます。 「アメリ」、「ロング・エンゲージメント」の監督、ジャン=ピエール・ジュネの監督作品です。題名の「ミックマック」とは、フランス語で“いたずら”のこと。この映画の見所は、バジルが仲間たちと様々な“いたずら”で巨悪に立ち向かっていくところにあります(あるはずなんですが・・・)。 予告編では仲間たちと復讐をしようとするドタバタ劇で、これはおもしろそうだと思ったのですが、いざ観てみると、映画の中に入っていくことができず、観ているうちに意識が薄れそうに(つまりは眠りそうに)なることもたびたび。バジルの仲間たちは、ギロチンで死に損なったプラカール、人間大砲のギネス記録を持つフラガス、何でも即座に計算できる「計算機」ことキャリキュレット、ガラクタから精巧なからくりを作る「発明家」ことプチ・ピエール、冷蔵庫の野菜室に入ることができるほど体が柔らかい「軟体女」ことラ・モーム・カウチュ等々超個性的なキャラばかりで、それだけでも愉快なはずなんですが、どうもいけません。いまひとつ、彼らの個性的なキャラが印象に残らなかった気がします。 「ロング・エンゲージメント」もそうだったけど、やっぱり、この監督の作品は僕には合わないかなあ。 |
ゴースト(22.11.21) |
監督 大谷太郎 |
出演 松嶋菜々子 ソン・スンホン 鈴木砂羽 橋本さとし 芦田愛菜 嶋田久作 浪岡一喜 宮川大輔 樹木希林 温水洋 黒沢かずこ 松金よね子 樋田慶子 |
デミ・ムーアとパトリック・スウェイジ主演のアメリカ映画「ゴースト ニューヨークの幻」のリメイクです。オリジナルは大好きなゴーストもので泣かせる映画とあって、DVDを持っているほど好きな映画の一つです。今は貫禄のあるデミ・ムーアが、あの頃はショートカットのかわいい女性でしたよね。どうしてあんなに変わってしまったんだろう・・・ リメイク版の方は、デミ・ムーアの役を松嶋菜々子さん、パトリック・スウェイジの役を韓流スターのソン・スンホンが演じています。松嶋さんのスタイルの良さには見惚れてしまいますが、果たして相手役に韓流スターを起用する必然性はあったのでしょうか。穿った見方をすれば、単に韓流ファンの奥様方を呼ぶためだったのではないかと思ってしまいます。 あまりに有名なろくろを二人で回すシーンは、リメイク版でもきちんとありました。でも、オリジナルのインパクトには到底かないません。まあ、松嶋さんがデミ・ムーアのようにエロティックに演ずるのは難しいかもしれません。 ストーリーは男女の設定が逆転しているほかは、ほとんど同じです。異なっているのは、オリジナルでは映画の始めから恋人同士でしたが、リメイク版では偶然の出会いから始まること、オリジナルでは物を動かすコツを教えるのが男のゴーストだったのに対し、リメイク版では少女のゴーストだということなど、その違いはわずかです。缶(こちらでは紙のコップ)を蹴ろうとして空振りして転ぶところまで同じです。ということで、オリジナルを観たことのある人には、残念ながらオリジナルにあったサスペンスとしてのおもしろさを感じることはできませんね。 また、一番気になったのは「アンチェインド・メロディ」が使われるかということ。幽霊もののラブストーリー映画の音楽とくれば、僕にとっては、「ゴースト」に「アンチェインド・メロディ」、「オールウェイズ」に「煙が目にしみる」は欠かせません。あの音楽があってこその「ゴースト」です。この作品では、平井堅さんの歌が主題歌だと聞いていたので、えぇ〜と思ったのですが、「アンチェインド・メロディ」はオリジナルと同じシーンで流れましたね。できれば、平井堅さんの歌ではなく、オリジナルのライチャス・ブラザーズの方が良かったのですが・・・。 オリジナルでは、インチキ霊媒師役でアカデミー賞助演女優賞を獲得したウーピー・ゴールドバーグの演技が素晴らしかったですが、リメイク版の樹木希林さんもなかなかのものでした。樹木さん演じる霊媒師・運天の体に松嶋菜々子さん演じる七海が乗り移ると、樹木さんの表情がさっと穏やかな表情に変わるんですよ。このあたり、さすが樹木さん、うまいなあと唸ってしまいました。 演技がうまいといえば、七海に物に触れるコツを教える少女のゴーストを演じた芦田愛菜ちゃんです。テレビドラマで天才子役と騒がれましたが、確かに6歳の女の子が演技しているとは思えないほどのうまさです。恐ろしいほどですね。 評価としてはまあまあのリメイクです。でも、オリジナルを観ている人は泣けないかなあ。 |
ハリーポッターと死の秘宝 Part1(22.12. ) |
監督 デヴィッド・イエーツ |
出演 ダニエル・ラドクリフ ルパート・グリント エマ・ワトソン ヘレナ・ボナム=カーター レイフ・ファインズ ロビー・コルトレーン トム・フェルトン ブレンダン・グリーソン リチャード・グリフィス ジョン・ハート ジェイソン・アイザックス ヘレン・マックロリー ビル・ナイ ミランダ・リチャードソン アラン・リックマン マギー・スミス ボニー・ライト ティモシー・スポール イメルダ・スタウントン デヴィッド・シューリス |
ついにハリー・ポッターシリーズも最終章となりました。この作品と来年夏に公開予定の後編で大団円となります。当初は幼い子どもたちにも鑑賞に堪えうる映画だったのですが、シリーズを経るごとにだんだん話が暗くなり、それとともに鑑賞年齢が上がってきたようです。映画館の中も幼い子どもの姿はちらほらでした。 今作は、いよいよハリー・ポッターたちとボルデモードー派との最終決戦となります。上映直後から戦いが始まり、あっという間にハリー側の重要人物が死亡という、え!始まったばかりなのに?という結果に。 その後はボルデモードを倒すための重要なカギになる"分霊箱"を探して破壊するための旅に出たハリー、ロン、ハーマイオニーが描かれるのですが、その過程でハリーとハーマイオニーとの仲を嫉妬するロンという、よくある男2人、女1人のパターンの展開になります。シリーズ当初はハリーとハーマイオニーが恋人同士になると思っていましたから、こういう展開もありですね。ロンが嫉妬するのも無理もないという場面もありますし、ハリーにその責任の一端はあります。もちろん、結局は誤解が解けるのですが。 今回の作品が今までのシリーズ作品の中で一番手に汗握る展開となっており、前作でのダンブルドア校長の死に次いで、ハリーを助けてある登場人物が死ぬという悲しいシーンもあります。ボルデモード側ではヘレナ・ボナム=カーターが演じるベラトリックスのキャラが際だっています。今回も本当に嫌な女というシーンばかりで、ハリーファンにとっては、ボルデモード以上に、なんて憎たらしい奴bPです。 |