Desire




側の白い熱を見ていた。

友人の形をした白い熱。きれいなきれいな形。

肉を食べたい、と思うのは初めてだった。

月の力に開放されるとき、自分の中の獣は噛み裂くものを求めて暴れるけど、それは空腹感とはまったく別のものだった。

怒りや恐怖、征服欲や激しい憎悪は何かを食べたところで収まるものではないのだろう。自分に比べたらか弱い肉体しか持たぬくせに己を堅く戒める意思への憎悪。身を守る力すら持たない人間という生き物への怒りにも似た征服欲。獣が欲しいのは自分の力を見せつけられる贄だった。

命の糧ではない。

狂った獣。黒い憎悪に歪んだ思い。

理解は共感を生むとは限らない。

永遠に乾くことの無い餓えを叶える気は無かった。

いや、幾度か考えたことはあった。

奴の居所がわかったら、と。是非とも満月の夜に訪問してやるのに。

獣の肉体は人間に比べれば遥かに強靭で、魔法に対する防御は比べ物にならない。だからこそ、あの当時連中は人狼を仲間に引き入れようとしたが、魔力で操る事は出来なかった。そもそも人狼化に耐えられるという事事態が強い魔法耐性の証明でもある。連中の元で獣になっても、多少の時間で押さえられる代物ではないのだから。

自分から全てを奪ったものへの最高の意向返しだろう、と。




けれど、目の前のかたちはそんな不明瞭な想いとはまったく別に彼を魅了する。

白い熱が形作る生命はとてもきれいでおいしそうだった。

皮膚の内側の熱もそこを流れる血も暖かくて甘そうな匂いがする。

きれいな命は大切に食べなくちゃいけない。それは自分の力になって身体になっていつか次の命の糧になるものだから。

いつのまにか目覚めた友人の手が自分に伸びる。

彼は自分を拒否していない。

一番近くにあった肉にゆっくり歯を立てた。

生きてる肉の味。生きてる血の味。

眩暈のするような力の気配。

丁寧に食べなくちゃ。のこすなんてもったいない。

 

夢中になって食べていたので、彼はとても幸せだった。

暖かい気配が自分に触れて心地よさにうっとりする

何時の間にか動きが戒められていたけれど、気にならなった。

白い熱が今度は自分の体のうえにいる。

自分が全部きれいに食べたから、今度は彼が食べる番なんだ、と納得していた。

友人もきれいにたべてくれるといいな。

次の命にちゃんとなるようにのこさずたべてくれると良いな。

じぶんもきれいなきれいないのちになれると良いな。

 










つぶやき

 

これって、ぽえむか?ええおい?

先生はいつもの悪夢だと思ってます。でも新バージョン(笑)。

だから、翌朝は平静な顔をしているけど、ご飯が食べれません。『夢』のせいで食欲どころか食事する気力が吹っ飛んでいるからです。

シリウスさんは気が付いてますが知らぬふりできちんと食えとか言ってます。先生は具合が悪いのかとか言われるのを怖れて無理にでも食べるから。
そして、この日の夜は寝室を別にしようとする先生ですが、妙にゴーインな黒犬に阻まれます(笑)。


そして食われかけた人の報告がどっかにあります。





’04.03.18




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