レ・ミゼラブル 


         

                                 帝国劇場 1階 S席 R列38番
                                               



                     当日のキャスト



   ジャン・バルジャン 山口祐一郎  ジャベール 鈴木綜馬  ファンテーヌ 井料瑠美
   コゼット 剱持たまき  テナルディエ 徳井  優  テナルディエ夫人 森 公美子
   アンジョルラス 小鈴まさ記  エポニーヌ 新妻聖子  マリウス 藤岡正明
   ガブローシュ 大久保祥太郎
   
   

2005年3月19日(土)マチネ

昨年1月に博多座で「レ・ミゼラブル」に初めて出会ってから、
1年2ヶ月ぶりのレミゼ観劇に来ました。
2004年夏の「レ・ミゼラブル・コンサート」にも1回来てるのですけど、
やっぱり本公演の雰囲気は格別ですね。
今回はカード会社の貸切公演ということで、お客様もほぼ満員だったみたいです。




第1幕


「1815 ツーロン」

お馴染みのイントロが始まり、この文字が映し出されただけで、「レミゼだぁ・・」って
感じの私はもうウルウル。。。


囚人がぞろぞろうなだれて歩いて来ますが、一人だけ飛び抜けて背が高〜い。
あれは山口さんですね。うーん、ご本人のせいではありませんが、山口さんちょっと
目立ちすぎかしら☆



オープニングの感激もひとしおの中ですが、実は今回気になることが。
帝劇での観劇は昨年夏の「ミス・サイゴン」以来なのですが、冒頭から音響の悪さに
ちょっと「???」となりました。
山口バルの声の聞こえ具合が、こう、なんというか潤いのない響きなのです。
特に最初のうちは耳も慣れていないせいか、古いマイクを通しているような感じ。
トートと違って、生の人間らしい(つまり、あまり美しくない)声の出し方をされる
せいもあるのかな。


仮釈放されてから農場で働く山口バルジャン、土の堀り方がなんだか
子供みたいだな〜と思ったら、あれは土じゃなくて藁(わら)をかき上げてる
仕草らしいです。
いまいち違いがよくわかりませんが、そゆことなら藁だと思って見なくては(笑)。



バルジャンの独白

昨年の公演やCDと比べて今回一番驚いたのは、山口さんがメロディに
のらない声で叫ぶ部分が増えていたことでした。
しかも後半の盛り上がり部分、「また あの地獄へ!」は、激情のあまりセリフを
ちょっと噛んでしまったようです。
「あの」を先に言いそうになったみたいで、「あ☆※ま◎地獄へ!!」って
スゴイ声で怒鳴っていらっしゃいました。



工場

井料ファンテーヌにお会いするのはたぶん2回目だと思いますが、なかなか声が
色っぽい方ですね。
余韻の中に哀愁があって良かったと思うけど、このビブラートのかけ方は
長く聴いていると船酔いみたくなりそうで、好き嫌いが分かれそうな気も
いたします。


ところで、工場長がファンテーヌを罵る「このスベタ」ですけど、スベタって
ポルトガル語なんですって、ご存じでした? 
私は全然知りませんでした。トランプのスペードから来ている言葉で、
「点数にならないつまらない札」 という意味から転じて、女性を罵る言葉に
なったのだとか。 



波止場

娼婦になったファンテーヌが逮捕されそうになる場面。
いざこざを起こす男、バマタボアはグランテールの枠でしたっけ。
伊藤さん、酔っぱらいのイヤな客にしては、ちょっと前半は声が綺麗すぎ(笑)。


取り調べる鈴木ジャベ、歌のピッチが伴奏とちょっぴり合っていないところも
あったような気がしますけど、とにかく迫力があって良かった。
顔立ちが端正でクールな男という雰囲気にはよく合っていると思います。


今拓哉さんのジャベは甘さがあるし、岡幸二郎さんのジャベはちょっぴり若い
雰囲気がありますけど、個人的にはジャベールの外見は、風貌、年齢共に
鈴木さんがピッタリだなあ。
「エリザベート」の皇帝フランツももちろん良かったけれど、さらに確固とした
信念を感じるジャベールの方が、鈴木さんのイメージにはあっているような
気もします。


「どこかで会った・・」 と、ファンテーヌに問いかける山口さんの声が優しくて
良いですね〜。
ファンテーヌが、「からかわないでよ」とバルジャンをなじるシーン。
初めて気がついたけど、ここってファンテがバルジャンの襟をつかんで
揺さぶるですね。でも、山口さんが大きいので多少揺さぶられたくらいでは
びくともしないところが、ちょっとツボでした☆



病院

前回見た山口バルジャン、一番好きだったのがこのシーン。
「この手 冷たくなるわ」 と訴えるファンテーヌに 「あたためよう」 と
答える声の甘さと、ベッドに座って彼女の手を握る大きな背中。
こういう時、中途半端に横顔を出さず自分は背中だけ見せて、
ファンテーヌにお客さまの視線を集めようとする山口バルジャンの演技って、
なかなかシブイと思います。


そういえば「エリザベート」1幕の終わりでもこういうのがありましたね。
あれは、シシィが鏡の間の階段から最高の正装で降りてくる場面。


内野トートは身体を正面向けてるけど、山口トートは階段の上で戸口に
もたれかかるように立って、横顔を見せていましたっけ。
フランツの後ろ姿とトートの構図が、シシィという太陽を回る星と月のように
絵画的に表現されていて、
「山口さんてば、これはスゴイよ・・。」と感心した記憶が蘇ってきました。



山口さんは、主役の自分がどう見えるかではなく、今、舞台全体が
どう観客に見えているかを常に考えていらっしゃるのかもしれません。
以前、岡幸二郎さんが
「病院の対決シーンで、バルジャンとジャベールの声が回転しつつも
立体的に聞こえるように、山口さんにアドバイスを受けた」 とテレビで
おっしゃっていた話も、同じ視点から発生しているような気がいたします。



テナルディエの宿屋

私は初めてお会いしましたが、徳井さんはテナルディエ役そのものは
初めてではないそうですね。 
とにかくきちんと歌うので精一杯というのが第一印象でした。


熟練工の域に達してきた(笑)駒田テナと比べるのはちょっと可哀想かも。
徳井さんの不慣れをかばおうとしているのか、森さんのアドリブが
えらく多く感じました。
笑いを取るのは良いのですけど、うーむ。限界ギリギリかなあ。


テナルディエの最初のナンバーは流れるような動きに、演技と歌が
一緒になって大変ですが、ミンチ機のハンドルを回すあたりでは、
徳井さんちょっと息切れ状態☆
この方は軽快さが持ち味だと思うのですけど、今回はスタミナ不足って
感じだったかな。



取引

バルがコゼットを迎えに来ている場面、盛大に鼻をほじる森テナ夫人が
えらく可笑しかったのですが、 「正直が一番、ばあちゃんの遺言だ〜♪」 は、
徳井テナルディエ独自のギャグみたいですね。


取引が終わって、去る二人を見送るテナと夫人ですが、森さんが子供に
するみたいに、小さな徳井さんの頭の後ろをつかまえて、お辞儀させたのが
大ウケしておりました。
・・・このテナルディエはもしかしてムコ養子?(笑)



10年後のパリ

博多座の「レミゼ」では、ガブローシュはすべて女性の局田さんが演じて
いらっしゃったので、私は今回、子役のガブ君に初めてお会いしました。
小さいながらも、表現力とパンチがある声で歌う大久保ガブローシュ君に
正直ビックリ☆


マリウスの藤岡さんも、今回の公演での新登場キャストですね。
声がとっても綺麗ですけど、顔つきがなんというか一筋縄ではいかない、
色気と毒のある方だなあというのが正直な印象。
年齢は若い方らしいのですが、どうしても世間知らずの学生という雰囲気じゃ
ないので、正直言ってマリウス役のタイプではないような気もします。



アンジョルラスはこちらも初対面の小鈴さん。
ちょっと音程が不安定で、声の響きが足りないのが残念!
でもこの方、背が高いだけでなく体つきのバランスがとっても良いので、
立ち姿がとにかく絵になります。
ご本人もアンジョルラス役抜擢に驚いたそうですけど、あの立ち姿を見れば、
外見的にはちょっと納得かも。



余談ですけど、グループの中で参謀的役割の学生・コンブフェールと
掛け持ちで演じる小鈴さんが、某ミュージカル雑誌でこの二人を語った
コメントが面白かったですね。



だってコンブフェールに関しては 「冷静で、ある意味アンジョルラスよりも
頭がいいと思う」 なのに 「アンジョルラスはちょっとね、バカなんですよ(笑)」
って、・・・・小鈴さん、大笑いして思わずファンになりましたわ私(笑)。


このコメントのあと、タイプが違うだけで二人の目指している方向性は
一緒なんだというお話へ続くわけですけど、きっと二人を演じ分ける大変さは
あるんでしょうね。


単純で純粋で、その情熱と華やかさで学生たちを引っ張っていくアンジョルラスと、
その姿に憧れながらも、自分はそうはなれないと冷静に分析してそうな
コンブフェール。
小鈴さんのコンブフェールも、機会があれば拝見したいなあと思いました。



さて、物乞いをする徳井テナは「恵みなせえ」の後、オットセイみたいな
妙な声で合いの手を入れて、お客様の笑いを誘っていらっしゃいました。


コゼットのかごからパンを出して、口一杯に頬ばっている森さんもスゴイわ〜。
あれはどなたのテナ夫人も、完食するのが決まりだそうですけど、
水無しで食べたらノドにひっかかりそう・・と、余計な心配をしてしまいました。



民衆の歌


ここを見ながら思ったのですけど、個人的には小鈴アンジョと藤岡マリウスって、
冷静なお兄さんとちょっと無鉄砲でわがままな弟という雰囲気に感じられます。
古くさいたとえで恐縮ですけど、まるで石原慎太郎氏と石原裕次郎氏の
兄弟みたいだな〜☆





第2幕



新妻エポニーヌのソロ 「オン・マイ・オウン」 は聴くたびに、良くできた
歌詞だと思える曲。 原詞を知っているわけではないので、翻訳がどの程度、
合致してるのかはわかりませんが、個人的には特に前半部分が好きです。



ひそやかな夜の闇に紛れて、エポニーヌがしばし浸ろうとする淡い空想。


現実の厳しさと実らない恋を知っているからこそ、エポニーヌのいじらしさが
胸に迫ります。


マリウスへの想いはずっと前から、つのっていくばかりなのに、
なぜ自分は愛されず、なぜ自分は一人なのか。


だけど、エポニーヌがエライのは、マリウスやコゼットを嫉妬のあまり
憎んだりしないところ。
マリウスが後に言うように、育ちには決して恵まれていなかったけど、
愛情と勇気がある女の子だったのですね。


孤独をひとり噛みしめるエポニーヌの姿には、毎回涙・涙です。



エポニーヌの死

この演目を初めて見たとき大泣きしたシーンですが、藤岡マリウスが
もうちょっと優しいとさらに良かったな〜。


それにしてもエポが撃たれたケガは、前からあんなに血が
一杯でしたっけ?
以前は 「エポニーヌ ケガしてる!」 あら〜そう(爆)? って程度の血だった
記憶があるのですけど、今回は他の方の衣装を汚しそうなくらい血糊が
ついてて、まさに 「どこも血だらけだ〜♪」 状態でした。



鈴木ジャベールが学生たちに捕まり、バルジャンとの再会に驚く場面。
「やるのは ナイフか」 が歌じゃなくて完全にセリフになっていました。
しかもこの言葉を、ちょっと小さめの声で囁くようにおっしゃったので、
ジャベールが思わずもらした 「死への恐怖心」 が感じられて
良かったと思います。


しかし 「市民は 来ない」 から始まるソロ、小鈴アンジョの音程が
ずっとズレっぱなしだったのは、ちょっと気になるな〜。
ここ、リズミカルな曲じゃないからかえって歌いにくいんでしょうね。
ヘタすると、お経みたいになってしまう難曲ですわホント☆



ガブローシュ少年が、皆の制止を振り切ってバリケードを飛び出します。
「見てろよ 子犬もデカくな・・」 非情な銃声と共に崩れ落ちる
小さな身体。


周りの席には、この演目初見の方も結構いらしたみたいで、
「うそ・・・・」 と、つぶやく声が聞こえました。
そうですよね〜、初めてだと子供が撃ち殺される場面を
見せるなんて想像もしませんもの。
あとは涙涙で、もう大変です。。。



下水道

ここも、徳井テナは歌詞を曲に載せるのが精一杯で、感情を歌に
のせているって感じではありませんでした。
徳井さんはテレビコマーシャルや映画で活躍している方ですけど、やっぱり
演技に歌をつけるということは大変なことなのですね。


ただ、動きが軽快で、森テナ夫人とのコントラストはハッキリ。
凸凹コンビぶりは良かったです。
こういう子キツネみたいなテナ(笑)も十分アリかもしれません。



ジャベールの自殺

再び巡り会うバルジャンとジャベールの対決シーン。
山口さん、 「見ろ ジャベール!」 がスゴイ怒鳴り声でびっくり。
今回の山口バルは、とにかく激しいな〜。
「待つぞ さあ 24653」 で鈴木ジャベが身を翻して二人を通す、
その手つきがシャープで、とっても綺麗でした。


「エリザベート」 のフランツ役は皇帝ということもあり、大きな動作が
少なかったので気がつかなかったけど、警棒の扱いやコートのさばき方など、
鈴木さんの動作はスマートで色気がありますね〜。


こういうのを見ると、鈴木さんの芥川さん時代のファントムが妖艶さ一杯で
良かったという話を思い出しては「あぁ残念〜」となってしまいます。
・・今からでも、戻るの遅くないと思うんだけどな〜(←無理です)



「Stars」

鈴木さんの 「バルジャンとジャベール」 は 「ジャッベール」 と、ちょっと
独特の発音をされます。 端正で冷酷でプライドの高い男が初めて味わう、
挫折と迷い。
信念を貫くことがすでに自分を裏切ることになってしまうのですね。 

鈴木ジャベールは橋の上で 「星さえ凍る」 の後
「ハハハ」 と高い乾いた笑いをして、セーヌに身を投げてゆきました。



カフェ・ソング

藤岡マリウスのソロ。
声が綺麗ですが、山本さんや岡田さんのような絞り出すような無念さと、
マリウスの痛みまでは感じられないような気がします。
たとえば 「ああ友よ 許せ」 の部分が、ずいぶんさらりと過ぎてしまった
印象でした。この方は全体にピッチが早くなるのがクセなのかな。



バルジャンの告白

山口バルジャンは 「牢獄に19年」 の言い方も 「もう行かねば 頼むよ」も、
歌じゃなくてほぼセリフ口調でした。


剱持さんのコゼットで特に好きなのは、ラスト近くでドレス姿のまま
バルジャンに抱きつくところ。
上手にドレスを傾けるように抱きつくので、少女らしさと美しさがあります。
エポニーヌに比べると、繊細さと上品さのあるコゼットは溺愛されて
大切に育ったひとり娘の雰囲気がよく出ていますね。
ラストはファンテーヌとエポニーヌに囲まれて、穏やかに
昇天する山口バルジャンという感じでした。




さて、終演後のカテコは一体何回あったのでしょう。
花を投げたり、ジャンプをしたり、両手を振り回したりと、自由で気さくな
カテコのご挨拶が楽しい♪


オーケストラに拍手を送るタイミングを、新妻さんが間違ってしまい、
「きゃ〜☆」っと恥ずかしがっていらっしゃる様子がえらく可愛かったです。
最後は山口さんが、舞台の端から端まで通りすぎてしまうので、
鈴木さんが捕まえにいくギャグもあり、お客様にも大ウケしておりました。



ただ、正直言って、今回の全般の感想としては、アンサンブルキャストさんを
中心に歌唱力のアベレージが下がっているような印象を受けました。
特に新登場したキャストの顔ぶれは、まだまだ発展途上の方が多いような
気がします。
個人的に大好きな演目ですし、ぜひぜひ皆様に頑張って頂きたいわ〜。




ところで、今回一緒に観劇したのが、 「エリザベート」 から山口さんの
ファンになった友人 (2日に1回は博多座版 「エリザベート」 CDを
聴いてるとか) だったのですが、レミゼ初見の感想としては
劇場全体を包んで揺るがすような山口さんの歌が少なかったので、
ちょっと欲求不満だったとか。



うーん、確かにトートは 「最後のダンス」 とか、山口節全開のパワフルな
ナンバーがありますからね〜。


トートの山口さんは例えるなら、青森ねぶたのセットをバックに 「まつり」 を
熱唱する北島サブちゃんとか、大漁旗をひるがえす漁船のセットに乗って
「北の漁場」 を熱唱する北島サブちゃんって感じでしょうか(笑)。





と、レミゼのはずがやっぱり「エリザ」話に落ちつきましたけど、観劇日記の
終わりに、今回も終演後のホワイエをご用意してみました。
ほんの少しですが、お楽しみ頂ければ幸いです☆☆





                        レ・ミゼラブル 終演後のホワイエへ